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{{半保護}} {{物理量 |名称=質量 |英語=mass |記号=''m'' |次元=''M'' |階=スカラー |SI=[[キログラム]] (kg) |CGS=[[グラム]] (g) |MTS=[[トン]] (t) |FPS=[[ポンド (質量)|ポンド]] (lb) |MKSG=[[メトリックスラグ]] |FPSG=[[スラグ (単位)|スラグ]] |プランク=[[プランク質量]] |原子=[[電子]]の[[静止質量]] (''m''{{sub|e}}) }} '''質量'''(しつりょう)は、物体の動かし難さや重さの度合いを表す物体固有の[[物理量]]である。[[物理学]]的には厳密には、動かし難さから定義される[[慣性質量]](inertial mass)と、[[万有引力]]による重さの度合いとして定義される[[重力質量]](gravitational mass)の2種類の定義があるが、現在の物理学では[[等価原理|等価]]とされている。質量の発生原理は長年研究されているが未だに解明されていない。 [[単位]]は、[[MKS単位系]]では kg ([[キログラム]])、[[CGS単位系]]では g ([[グラム]])。 [[重さ]](重量)と混同される場合も多いが、両者は異なるものである。 ==質量の概念== <!--しばしば[[重さ]](重量)と混同されるが、これらの概念は(強く関係はするが)異なったものである。例えば、-->月面では物体の[[重さ]]が地球上の約1/6になる。しかし物体そのものが変化するわけではないので、その質量は変わらない。これらの違いは何であろうか。 重さとは実はその物体にかかる[[重力]]のことであって、月面では重力が地球上の約1/6になるということである。一方、質量はその物体を特徴付ける量であって、同じ物体である限りは変わらない。重力は[[万有引力]]とも言うが、二つの物体間に働く引力であり、その二つの間の距離とそれぞれの物体の性質とに応じて働く力である。この重力を決定する性質を「質量」と呼ぶ。 ある物体を月面に置いたとき、その物体と月との間に働く重力は、その物体の質量と月の質量、および月の中心からその物体の中心までの距離によって決まる。これをその同じ物体を地球上に置いた場合と比べると、物体の質量は同じだが、地球の質量と月の質量の違い、地球の半径(地球の中心と物体の間の距離)と月の半径の違いが合わさって、結果的に月面に置いた場合の重力は地球上に置いた場合の重力の1/6になる。すなわち、「質量」とは重力を生み出す元であり、生み出された重力が重さであると言える。<!--kg重等を使った専門的解説はもう少し後で出しましょう(重力方程式の辺り?)--> また、「[[運動の第2法則]]」と呼ばれるものがある。これは、言い換えれば軽いものは簡単に動かせるが、重いものを動かすには力が要る、という様なことである。あるいは、飛んできたものを受け止めるとき、軽いものは簡単に受け止められるが重いものはその勢いで後ろに下がったりしなければならない、ということでもある。これは重さといいながら実は重力とは関係が無く、[[慣性]]という性質による。この慣性の大きさを決めるものはやはり「質量」である。より正確な言葉で言い直せば、質量の大きな物体ほど動かすには大きな力が必要であり、止めるにも大きな力が要る、その逆に質量の小さな物体ほど少ない力で動かすことが出来、止めるにも少ない力で済む、ということになる。この慣性の大きさを表すために質量という量を用いる。<!--本当に正確には「動かす」「止める」ではなく、加速度を使うべきですが、それはもう少し後の方で出しましょう(運動方程式の辺り?)--> これら二つの場面で出てくる「質量」すなわち重力の元としての質量と慣性の大きさを示す質量とは力学的には別の概念であり、それぞれ「重力質量」「慣性質量」と呼ばれている。 ==2つの質量== 質量の定義には慣性質量と重力質量の2種類がある。 慣性質量 ''m''<sub>i</sub> は[[ニュートンの運動方程式]]で定義される量で、物体に働く[[力]] ''F'' と[[加速度]] ''a'' の比として次の様に表される。 {{Indent|<math>m_\mathrm{i} = {F \over a}</math>}} これは実際に実験を行い、物体をある力で引っ張ったときの加速度を調べ、比例係数を計算することで求められる。慣性質量は物体の動きにくさ(あるいは止まりにくさ)を表す値であるといえる。これに対して、[[重力質量]] ''m''<sub>g</sub> は、地球との間に生じるものについて言えば、物質物体に働く地球の[[重力]] ''F''<sub>g</sub>、地球の重力質量 ''M''<sub>e</sub>、地球と物質の重心間の距離 ''r''、[[万有引力定数|重力定数]] ''G'' を用いて次の様に表される。 {{Indent|<math>m_\mathrm{g} = {{F_\mathrm{g} r^2} \over {GM_\mathrm{e}}}</math>}} これは[[体重計]]などで計ることができる、我々の直感的にイメージする「重さ」を生じさせる質量である。 両者は全く別の定義であるが、これらは同一の値を取る。このことを[[エトヴェシュ・ロラーンド]]らは実験によって確かめた。これを[[等価原理#重力質量と慣性質量|等価原理]]という。 ==相対論的質量== 光速に近い速度で運動する物体の質量が増えるといわれることがある。これは相対論的質量とよばれる考え方で、ニュートンの運動方程式 ''F'' = ''ma'' が亜光速でも正しくなるように、相対論的効果を質量に押し付けた結果生ずるものである。現在では、このような相対論的質量の考え方を用いないのが一般的である。詳しくは[[特殊相対性理論]]を参照。 ==質量の発生== なぜ物体は質量をもっているのか、という自然界の根源を探るような研究もなされている。その答えとなりうるヒッグス機構では、真空中には[[ヒッグス粒子]]が満ちており、物体が加速度を受ける際にこのヒッグス粒子との相互作用の影響を受けるとされる。静止している物体を動かそうとするとその物体は周囲のヒッグス粒子から抵抗力を受ける。これが慣性として認識されるものである。物質によってヒッグス粒子から受ける力の大きさが異なり、したがってそれぞれに動かしにくさが異なる。この動かしにくさがその物質の質量である。「重い物体ほど動かしにくい」のはこのためである。相対性理論によれば、静止している物体と等速運動をしている物体とは全く同等に扱える。動いている物体を止めようとするのは静止している物体を動かそうとするのと同じことであり、やはりヒッグス粒子の作用を受ける。この作用の大きさは静止していた場合と同じであり、動かしづらい物体、すなわち質量の大きい物体ほど止めにくいことになる。なお、質量に素量が存在するかどうかは知られていない。仮に素量が存在すれば少なくともニュートリノ質量(具体値は未測定)以下ということになる。 == 他の物理量との関係 == マクロな物質の質量は同一物質で[[温度|同温]]・[[圧力|同圧]]の条件下においては、経験的に[[体積]]におおよそ比例することが知られている。この性質から、特に温度や圧力による体積変化が少ない[[固体]]・[[液体]]において、物質ごとに定まる物理量としての[[密度]]が用いられる。 これより、均一物質を分けた場合、その体積比と質量比はおおよそ一致することとなる。この性質により、物質を根源となる粒子まで細かく分けていけば、その粒子の種類ごとに質量が定まり、その粒子の質量の総和が物質の質量となるという、いわゆる[[原子論]]の類の説が説得力を持つことになる。[[アメデオ・アヴォガドロ|アヴォガドロ]]の分子説の根幹である「同温・同圧の気体中には同数の[[分子]]が存在する」という主張も、体積と質量の比例関係から一定の説得力を得られるのである。これらの[[化学]]の発展に基づき、同一物質であれば質量に比例する[[物質量]]が定義されるに至った。 現在は[[原子]]の存在も科学的に立証され、素粒子の質量の総和が物質の質量となるという仮説も近似的には(厳密には[[質量欠損]]の影響を受けるものの)正しいとされている。気体の体積に関しては、分子間力等が考慮されることにより、物質量に比例するとは言えなくなった。従って、質量と体積の比例関係も成立しない。ただし、比例すると仮定した時の[[比例|比例定数]]である密度が温度や圧力等の影響を受けてどう変化するかを考察することにより、近似的に質量と体積の比例関係が用いられる場合も今なお少なくない。 [[ニュートン力学]]においては、[[力]]と質量、[[加速度]]の関係を表す '''''F''''' = ''m''<nowiki></nowiki>'''''a''''' ('''''F''''': 物体に働く合力、''m'': 物体の質量、'''''a''''': 物体の加速度)という公式が[[運動の第2法則]]として名高い。<!-- 力の他に質量に明確な定義を与え、それにより物体の運動に関して様々な考察を与えることができるようになったのはニュートンの大きな功績である。質量に定義を与えたのはニュートンであるか明確でないのでコメントアウト-->[[運動量]]の原始的な定義として質量を[[速度]]に乗じた物理量というものがあり、これを用いて運動方程式を表すこともある。 [[特殊相対性理論]]においては、物体の[[エネルギー]]は :<math>\frac{E}{c}=m\frac{d(ct)}{d\tau}</math> (''E'': 物体のエネルギー、''c'': [[光速度|光速]]、''m'': 物体の静止質量、''t'': 観測者の時刻、''τ'': [[固有時]]) で定義される。これを計算すると、 :<math>E=mc^2\frac{1}{\sqrt{1-\left(\frac{v}{c}\right)^2}}</math> (''v'': 物体の[[速度|速さ]]) が求められる。ここで ''v'' = 0 とすると、''E'' = ''mc''<sup>2</sup> という有名な公式を導くことができる。これが「質量とエネルギーの等価性」を示しているのである。また、''v'' << ''c'' の時、 :<math>E\simeq mc^2+\frac{1}{2}mv^2</math> である。この右辺の第2項がニュートン力学における運動エネルギー、即ち質量に速さの平方を乗じ2で除したものを示している。 ==関連項目== {{Wiktionary|質量}} *[[質量保存の法則]] *[[質量の比較]] {{DEFAULTSORT:しつりよう}} [[Category:質量|*]] [[Category:物理量]] {{Link FA|it}} {{Link FA|ast}} [[af:Massa]] [[als:Masse (Physik)]] [[an:Masa]] [[ar:كتلة]] [[ast:Masa]] [[az:Kütlə (fiziki kəmiyyət)]] [[be:Маса]] [[be-x-old:Маса]] [[bg:Маса (величина)]] [[bn:ভর]] [[br:Mas]] [[bs:Masa]] [[ca:Massa]] [[ckb:بارست]] [[cs:Hmotnost]] [[cy:Màs]] [[da:Masse (fysik)]] [[de:Masse (Physik)]] [[el:Μάζα]] [[en:Mass]] [[eo:Maso]] [[es:Masa]] [[et:Mass]] [[eu:Masa]] [[fa:جرم (فیزیک)]] [[fi:Massa]] [[fiu-vro:Mass (füüsiga)]] [[fr:Masse]] [[gan:質量]] [[gl:Masa]] [[gu:દળ]] [[hak:Tsṳt-liông]] [[he:מסה]] [[hr:Masa]] [[hu:Tömeg]] [[ia:Massa]] [[id:Massa]] [[io:Maso]] [[is:Massi]] [[it:Massa (fisica)]] [[ka:მასა]] [[ko:질량]] [[ku:Bariste]] [[la:Massa]] [[lb:Mass (Physik)]] [[ln:Libóndó]] [[lt:Masė]] [[lv:Masa]] [[mk:Маса]] [[ml:പിണ്ഡം]] [[mn:Масс]] [[mr:वस्तुमान]] [[ms:Jisim]] 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