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{{Otheruses|概念としてのタブー|タブーのその他の用法|タブー (曖昧さ回避)}} '''タブー'''(Taboo)とは、もともとは未開社会や古代の社会で観察された、何をしてはならない、何をすべきであるという形で、個人や共同体における行動のありようを規制する広義の文化的規範である。[[ポリネシア語]]''tabu''が[[語源]]。18世紀末に[[ジェームズ・クック]]が旅行記において、ポリネシアの[[習俗]]を紹介する際に用いたことから西洋社会に伝わり、その後世界各地に同様の文化があることから広まった。'''禁忌'''という訳語も用いられる。 [[躾]]などを通して[[社会]]を構成する個々人の[[道徳]]の基となっていることも多いが、社会秩序の維持のためとして時の為政者に恣意的に利用される危うさも孕んでいる([[検閲]]・[[自主規制]]など)。 == 文化人類学でのタブー == ポリネシア語のtabu(もしくはtapu)は前後二つの部分に分けられる。taは徴(しるし)、あるいは徴づけられたもの。buは「強く」を意味する。すなわち「強く徴づけられたもの」を指す。 その社会における聖なるものや俗なるもの、日常と非日常、清浄と穢れなどの対立構造と密接に関連していることが多い。これらの関係性に着目したアプローチに[[構造主義]]がある。何がタブーとされるかは文化によって著しく変わってくるが一般に死、出産、生理、食物、[[貴種]]、被差別民、魔物、個人の名前はタブーとされることが多い。 すべきである、という形の場合も、忌避行動をすべきであるという形であることが多く、一般的には、禁止の形で現れる。ここから「禁忌」とも呼ばれる。タブーとされる行動のありようには様々なものが知られており、超自然的な力と関係付けられたり、霊との関係が強調されたりもする。タブーのありようを調べると、未開人や古代の人々が、できごとの生起をどのように捉えていたのか、ものごとの因果をどう把握してかが分かることがある。また、世界の存在の原理や、個人や共同体がどのような構造で成立しているのか、文化ごとで独特な世界観の前提が理解できることがある。 タブーとされる行動をなぜ取ってはならないのか、合理的な説明は存在しない場合が多い。しかし、タブーを侵犯すると、どのようなことが起こるとその社会では考えられていたかを調査すると、世界や共同体の存立の根拠とタブーの遵守は密接な関係を持っていることが分かる。 タブーという言葉とその概念は、[[宗教学]]的または[[文化人類学]]的な研究対象であり、未開人や古代の社会について論じられていた。しかし、タブーは現代社会にも存在していることが認められており、宗教学的なタブーの概念を比喩的に使った表現として「現代のタブー」というものが考えられる一方で、比喩的な意味ではなく、文字通り、現在に生きるタブーの存在も知られている。従って、タブーの現象とは、未開人や古代社会の問題に尽きず、現代の問題でもある。 タブーに関しては文化人類学で説明が試みられてきたが、代表的なものには次のようなものがある。 * [[デュルケーム]]流の[[聖と俗]]の[[二元論]]に基づくとするもの(これには、あまりにも硬直的な区分とする批判がある。なお人間の心理に聖と俗といった観念自体があるのを否定するものではない)。 * [[ジェームズ・フレイザー]]の[[呪術]]分類による[[感染呪術]]によるとするもの。 これらは初期のものであったが、現在では[[ファン・ヘネップ]]の[[通過儀礼]]研究や後世の[[メアリー・ダグラス]]、[[山口昌男]]、[[ヴィクター・ターナー]]などの研究により、むしろその境界領域にある[[両義性]]や[[境界性]]の問題に重点が移りつつある。日本[[民俗学]]でいう[[ハレとケ|「ハレ」「ケ」]]「[[穢れ|ケガレ]]」の議論もその範疇に入るだろう。例えばファン・ヘネップの著『通過儀礼』では分離・過渡・統合の3段階が提示されるが過渡期には「聖と俗」、「死と再生」などの間に境界性が認められるとした。[[死と再生の神|死と再生]]に関してはフレイザー『[[金枝篇]]』などの事例や[[エリアーデ]]などによる宗教学の観点から、古くは不可分の関係と捉えられていた事が有力視されつつある。ひとつの宗教圏内においても「正統」とされる[[キリスト教]]や[[仏教]]の教義では説明できない、地上に留まる[[霊魂]]の存在イメージは根強く、重層した[[基層文化]]の一部をなしていることが多い。蘇った[[死者]]([[魂呼ばい]]など)に対しても忌避感情<ref>非合理的な[[恐怖]]の面は[[ゾンビ]]などいわゆる「怖いもの見たさ」でしばしば[[怪談]]や[[ホラー]]作品の題材にされる。</ref>がある一方、(生前の)故人や親しい者にとっては蘇生・[[復活]]やなんらかの形での存続を願う気持ちを伴うことも珍しくはなく両義的な心情が見出されるであろう。また[[トリックスター]]の事例ではしばしば善悪の役割が越えられ境界性が侵犯される。 両義性を象徴する顕著な例には[[血]]に関するものが挙げられる。[[日本]]においては[[穢れ]]として忌避されるが、一方「[[血縁|血の繋がり]]」「熱血」といった用法からも窺えるように子孫の繁栄や生命力を象徴する場合もある。[[殺害]]・[[屠殺]]の際のように[[死]]をイメージさせるものでもあるが、他方[[月経]]や[[出産]]のように新生に繋がるものでもあり、両義的な性質を兼ねているといえるだろう<ref>[[女人禁制]]はこれによるとする解釈もあるが、本土と類縁の文化を持つ[[沖縄]]([[琉球の信仰]]参照)では逆に男子禁制の色が濃い。</ref>。血の象徴とされる[[赤色]]についても呪術的用途を持っていたことが窺え、[[お守り]]や[[破魔矢]]などの色に多用される他、[[ハレ]]の日に用いられるものであった。また[[辰砂]](朱、丹)は[[神仙思想]]における不老長寿の術([[錬丹術]])に用いられたとされる。血の色が[[生命力]]を想起させたのであろう。日本でも[[大物主神]]・[[賀茂別雷神]]などに関する[[神話]]では「丹塗りの矢」は妊娠をもたらす物として描写されている。 [[キリスト教]]圏においては、[[救世主イエス・キリスト|イエス]]の[[最後の晩餐]]におけるパンと葡萄酒を肉体と血になぞらえた故事が知られ、重要な儀式の一つをなす。これはイエスが[[受肉]]によって自ら[[贖罪]]を引き受けた死と[[復活]]に感謝を捧げ祝福するものである。逆の意味合いを持たされた例としては民間の[[吸血鬼]]伝承が挙げられ、これには[[土葬]]された死体への恐怖が関わっている。死後[[最後の審判]]の日に裁かれるまでに甦ることは、[[異教]]的なものと見なされていたのである。 また古代においては[[生贄]]を[[祭壇]]に捧げる儀式が広く見られ、[[収穫祭]]などと共に共同体の繁栄を祝い、祈るものであった。ここにも犠牲からの一種の甦りという死と再生の信仰を見てとることができよう。これらは『[[金枝篇]]』、[[ハイヌウェレ型神話]]、[[創造神話]]の一部(始まりは[[比喩]]的に誕生と同一視される)など豊富な事例で裏付けられる。 性に関するタブーも広く見られるものであるが、行為がそのまま自然である動物ではあまり観察されないものであり、[[自我]]や[[意識]]の認識、社会[[規範]]などと深く関係していると思われる。 [[心理学]]的には[[無意識]]とその葛藤といった人間の両義性を孕んだ複雑な心理(アンビヴァレンツ)が明らかにされ、これには[[フロイト]]による[[精神分析]]の功績も大きい。 == 現代社会におけるタブー == 現代における「タブー」は意味の拡張により本来の使用法とはかけ離れた用法となっていることもしばしばある。身近な例としては、[[言霊]]信仰がある。これは[[死]]など[[縁起]]が悪いとされることや本名である[[諱]]の[[避諱]]のように、それについて極力、言及しない。口にしなくてはならないときは、遠まわしに言う、などといったものがある。 == タブーの対象の例 == 婉曲に言うもの * [[死]] ** [[崩御]] ** 天に召される ** 永眠 ** 逝去 ** 鬼籍に入る ** 世を去る ** 星になる * 暴力や好ましくない行為 ** [[強姦]] ** [[暴行]] * みだら、ふしだらな行為 ** [[性行為]] ** [[露出プレイ|露出]] ** [[排泄]]行為の公開 触れるのが憚られているもの * 文化的な禁忌 ** [[血]]・[[月経|生理]]・[[出産]] ** 食事の禁忌([[食のタブー]]) ** [[避諱]](中国や日本で、[[皇帝]][[皇族]]の名前に使われている文字) ** [[近親相姦|近親姦]]([[インセスト・タブー]]) == 脚注 == <references /> == 関連項目 == * [[女人禁制]] * [[ヤハヴェ]] * [[YHWH]] * [[報道におけるタブー]] * [[創価学会]] * [[菊タブー]] * [[言霊]] * [[穢れ]] * [[大人の事情]] * [[見るなのタブー]] {{DEFAULTSORT:たふ}} [[Category:価値観]] [[Category:習俗]] [[Category:民間信仰]] [[Category:迷信]] [[Category:文化人類学]] [[Category:オセアニアの文化]] {{Socsci-stub}} [[ar:تابو]] [[arz:تابو]] [[bg:Табу]] [[ca:Tabú]] [[cs:Tabu]] [[da:Tabu]] [[de:Tabu]] [[el:Ταμπού]] [[en:Taboo]] [[eo:Tabuo]] [[es:Tabú]] [[et:Tabu]] [[fa:تابو]] [[fi:Tabu]] [[fr:Tabou]] [[fy:Taboe]] [[he:טאבו (סוציולוגיה)]] [[hr:Tabu]] [[hu:Tabu]] [[id:Tabu]] [[it:Tabù]] [[ko:터부]] [[ku:Tabû]] [[lb:Tabu]] [[lt:Tabu]] [[nl:Taboe]] [[nn:Tabu]] [[no:Tabu]] [[pl:Tabu]] [[pt:Tabu]] [[ro:Tabu]] [[ru:Табу]] [[simple:Taboo]] [[sk:Tabu (náboženstvo)]] [[sl:Tabu]] [[sr:Табу]] [[sv:Tabu]] [[th:คำต้องห้าม]] [[tr:Tabu]] [[uk:Табу]] [[yi:טאבו]] [[zh:禁忌]]
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