PC-9800シリーズ

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PC-9800シリーズ日本電気(以下NEC)が開発及び販売を行った、独自アーキテクチャパーソナルコンピュータの製品群である。同社の代表的な製品であり、98(キューハチ/キュッパチ)などと略称されることもある。

PC-9800シリーズに厳密には含まれる、あるいは広義の解釈として含まれる場合もある以下のシリーズについてはそれぞれの記事を参照。

目次

概要

各社専用にカスタマイズされたマイクロソフトBASICをベースにした時代の終盤から、MS-DOS時代を経て、MS-Windowsの本格的な普及期まで約15年間(初代「PC-9801」発売の1982年から、後継アーキテクチャのPC98-NXシリーズが発売される1997年頃まで)にわたって、NECのパソコンの主力商品として製造販売が続けられ、全盛期には圧倒的な市場占有率を背景として、「国民機」と呼称された時代もあった。

本稿ではPC-9821シリーズおよびPC-H98シリーズについては、最低限の記述に留める。ただし、当時のNECのカタログでは、それらの派生機種のうち、パーソナルコンピュータにカテゴライズされる各機種については、「NECパーソナルコンピュータPC-9800シリーズ」と記載されており、派生機種独自のシリーズ区分はなされず、「98MATE」や「98FELLOW」、あるいは「HYPER 98」などといった愛称で区分が図られていた。その一方、サードパーティ各社の周辺機器ではその仕様表記などにおいて、PC-9821シリーズ対応であることを強調するためか、「PC-9800/9821シリーズ(に対応)」のようなPC-9800シリーズに含まれないかのような表現も見られる。

主力となるデスクトップ型のほか、モニタ一体型のCシリーズ、モニタに液晶プラズマディスプレイを使用して小型化したラップトップ型のL/Tシリーズ、さらに小型化したノートパソコン98NOTE」も多数、発売されていた。

略称

ソフトウェア・ハードウェアの互換性の観点からは、狭義には「PC-9801○○」や「PC-9821○○」<ref>1992年下半期に発売され、以降主流となった通称PC-9821シリーズ。</ref>の2つの型名をもった機種群を指す場合が多いが、公式には上述の通り「PC-98○○」型番や「PC-H98○○」などのようにハードウェアアーキテクチャの基本的な部分が共通でそれぞれ固有の拡張機能を与えられた機種群についても本シリーズに含まれる。一般的には「98」「98シリーズ」などと通称されることが多い。PC-9800、PC-9821シリーズを表すあらゆる通称のうち、PC98、PC-98という略称に関しては、ソフトウェア販売店等から浸透した可能性が高い。

1980年代当時の家電量販店や、ソフトウェア専売店、とりわけゲームソフト販売店で用いられていた在庫管理データベースはカード型を採用しており、在庫入力時の機種毎の識別符号に略称を使用した例が多かった。また、当時のパソコンソフトにはバーコードJANコード)が付いていない物も少なく無く、これらの略称とソフトの識別符号を含めて印刷したバーコードを、ソフトウェアのパッケージに直接貼り付けて販売するという形態をとっていた小売業者が多かった。このため、MSX2等正式名称が元々短いものは別にして、機種の識別符号には出来る限り短いものが採用され、記号を含めたアルファベット4文字以内で表現される事が多かった。当時普及していた各機種における略称の例では、X68000→X68k、PC-9801→PC98、PC-8801→PC88、スーパーファミコン→SFC等の略称があり、何れも4文字以内となっているのはこのためである。これに習い、これらの機種を表す際に同様の略称を用いる周辺機器メーカーも増えていった。しかし、後年になってWindows 98の実行に推奨されるコンピュータという意味で「PC98」という単語が使われるようになってからは、これを区別する意味でNEC PC-9800シリーズの略称にハイフン(-)を含めた「PC-98」を使用する人もいた。

歴史

PC-9800シリーズ(後継となったPC-9821シリーズを除く)は、採用したCPUグラフィックコントローラおよび筐体デザインの特徴により、大きく4つの世代に分けることができる。

  1. 8086互換CPU・GDC搭載機の世代 - PC-8800シリーズの資産を継承し、16ビット時代の地歩を築いた。この頃の筐体はその後と違い、茶色のアローラインが左向き(太い部分が右側)に走っていた。
  2. μPD70116(通称V30)CPU・GRCG搭載機の世代 - 標準的なハードウェア仕様が確立され、圧倒的なシェアを獲得した。アローラインは右向き(太い部分が左側)に変わった。
  3. 80286/80386CPU・EGC搭載機の世代 - MS-DOSの浸透と共に、爛熟期・絶頂期を迎えた。この頃の機種はアローラインに多数の溝が入っていた。
  4. FELLOW以降・486CPU搭載の世代 - Windows時代の乗り切りを図ったが、ついに終焉を迎えた。筐体はIDEO社によるPC-9821と同様のデザインが使われるようになった。

以下、各世代の機種と変遷を概観する。

初期の8086・GDCのみ搭載モデル、FDD内蔵への歩み

PC-9801 1982年10月

1982年発売の初代機「PC-9801」<ref>シリーズ名と区別するため「初代」「無印」とも呼ばれる。</ref>はCPUに16bitのNEC製μPD8086 (Intel8086互換)5MHz割り込みコントローラi8259Aカスケード接続、DMAコントローラにi8237を使用するなど、インテルの8086ファミリチップを採用したため、IBM PCに似た構成となったが、8ビットXTバスを搭載したIBM PCと異なり、筐体を開けずに抜き差し出来る16ビットCバス<ref>この名称はPC-H98シリーズにおいて新たに採用された32ビットバス(NESAバス)との区別の必要が生じた際に命名された。</ref>を採用した。

また、高速な日本語表示のために漢字テキストVRAMは搭載していた(ただし漢字フォントROMは別売であったため、この初代と後述のPC-9801Eのみ単体での漢字表示ができない機種でもある)。グラフィック画面(解像度)は640ドット×400ドット8色、1画面。後のモデルでは2画面となった。テキスト画面・グラフィック画面ともに、ハードウェアによる1ドット単位の縦スクロールおよび16ドット単位横スクロールが可能だった。

これらの高精細かつ高速なグラフィック処理のために、自社製の汎用グラフィックコントローラGDC (Graphic Display Controller μPD7220) を2個、テキスト用とグラフィック用に採用した。GDCは直線・円弧などグラフィック図形の描画機能、縦横方向へのスクロール機能を持つ<ref>ただし、直線描画時には直線の描画方向を事前に指定しなければならない。など、かなりオーバーヘッドを持つ仕様であったため、CPUで直接描画した方がむしろ早かった。このコントローラーの効用は、むしろ漢字VRAMにおいていかんなく発揮された。</ref>。テキスト画面にはPC-8000シリーズと同様のキャラクタグラフィックモードが実装されるなど、PC-8000シリーズ/PC-8800シリーズとのある程度の互換性を考慮してあった。

その他、PC-8800シリーズのN88-BASICと互換性を持つN88-BASIC(86)を自社開発し、ROMで搭載していた。

なお、PC-8800シリーズのキーボードは、メインCPUのI/Oにパラレル接続されており、I/O命令で直接リアルタイムスキャンすることが可能なため、ゲームなどではこの手法が多用されていた。一方、PC-9801のものはμPD8049HCなどのマイコンを内蔵したシリアル接続タイプで、ハードウェア的には直接読み取ることはできなかったが、BASICプログラムの移植性を考慮し、BASIC上からはPC-8800シリーズと同様にI/O命令で読めるようにエミュレーションされていた<ref>I/Oアドレスは異なるが、ビットの配置は合わせてあった。</ref>。このような点からも、ソフトウェア面でいかにPC-8800シリーズとの互換性確保に腐心していたかをうかがい知ることができる。

ちみなに、PC-8000/8800を開発していた部隊とは別部隊が開発している<ref>PC-8000/8800の開発部隊が開発した16ビットパソコンは、PC-100であり、これは当初からMS-Windows対応パソコンとして開発された、PC-9801を凌駕する高性能パソコンであった。</ref>。幅広く事務用途や工業組込用途に適合するよう、ハードウェア面では上記Cバスに代表されるように、PC-8000/8800シリーズに似たシステム構成を取り、従来のPC-8000/8800シリーズユーザーが取っつきやすいように工夫されていた。内部は8086向けにハードウェアを最適化し、CUI向けに性能を特化させた16bitパソコンである<ref>IBM-PCと対比的なのは、テキスト/グラフィック制御部分を独立した拡張ボードの形式とせず、マザーボード内に組込み、日本特有の漢字表示を高速に行うことに重点が置かれていたことである。</ref>。

世界初の市販16ビットパソコンはIBM モデル5150(THE Personal Computer)である。こちらの採用した8088は内部的には16ビット処理を行っていたが外部バスは8ビットとなっていた。対して、PC-9801は8086ベースにおいて本格的な構成を持ち、外部バスは16ビット、かつ20ビットのアドレス線を備えており、バスクロックは10MHz、最大転送速度は1MByte/secとなっていた。個人がなんとか購入できる範疇に限れば、このように本格的な16ビットパソコンプラットフォームとしては、PC-9801は世界的に見ても始めてであったのではないかと思われる<ref>日本初の16ビットパソコン、三菱電機のMULTI 16も初代機ではCPUは8088を採用している。IBM初のフルネィティブ16ビットパソコンは1984年PC/ATである。</ref><ref>また、PC-9801が海外に知られるようになった当時、まだIBM-PCの世界ではVGAがまだ充分に普及しておらず、カラーグラフィックで640×400ドットのピクセル数を持つ本機は、かなり先進的なパソコンと評されたこともあるという。</ref>。尚、企業向けとしては既にN5200が同じくNECより発売されており、このN5200と初代PC-9801はハードウェア構成において、大変類似性が高いことが知られている。

初代機以降、CPUを8MHzに高速化し、グラフィック画面を2画面に増強<ref>以後の各機種ではPC-9801U2、PC-98LT、それにPC-98HAの3機種を除く全ての機種でグラフィック画面は2画面実装となっている。</ref>、さらに漢字ROMを標準搭載したPC-9801E、PC-9801Eと同様の変更に加えて5インチ2DD(両面倍密度倍トラック)フロッピーディスクドライブを本体に内蔵したPC-9801F(FDD内蔵を強調しての命名)が発売された。

PC-9801F 1983年10月
μPD8086-2(Intel8086互換) 8MHz、グラフィック画面2画面、5インチ2DDドライブ内蔵、5インチ2D FDD I/F搭載、漢字ROM(第一水準)搭載 …(第二水準漢字表示にはオプションROMのPC-9801-12/Kが必要,拡張漢字表示にはオプションROMのPC-9801-18が必要)
PC-9801E 1983年11月
μPD8086-2(Intel8086互換) 8MHz、8インチ、5インチ2D FDD I/F搭載、漢字ROM非搭載…(漢字表示にはオプションのPC-9801-10ボードが必要。第二水準漢字表示にはオプションROMのPC-9801-12/Kが必要,拡張漢字表示にはオプションROMのPC-9801-18が必要)

これらに続いて、富士通FM-11BS対抗のため急遽2HD(両面高密度)フロッピーディスクドライブとマウスインタフェースボードを搭載したPC-9801M(1MBドライブであることを強調した命名とされる)も登場した。

PC-9801M 1984年11月
μPD8086-2(Intel8086互換) 8MHz、5インチ2HDドライブ内蔵、5インチ2D FDD I/F、マウス I/F搭載、漢字ROM(第一水準)搭載…(第二水準漢字表示にはオプションROMのPC-9801-12/Kが必要,拡張漢字表示にはオプションROMのPC-9801-18が必要)

PC-9800シリーズのフロッピーディスクは、PC-8800シリーズから継承した5インチ2D(両面倍密度)のインテリジェントタイプのものを除き、内蔵のDMAコントローラを使用することで、CPUの動作と並列してファイル操作が出来た。

なお、PC-9800シリーズでは、その後の機能拡張でも互換性維持を大前提としてメモリやI/Oへアドレスを割り付けていった。その結果、VRAMのように同じ装置でも割り当てられたアドレスが飛び飛びになるものがあったほか、初代機の部品数削減の名残で一部のI/Oアドレスが一見無意味にデコードされていない、またユーザー用に予約されている箇所が極端に少ない、という状態になってしまった。

またPC/AT互換機同様、1MBのCPUのメモリ空間のうちVRAMやBIOS ROM等の予約領域を除くと、ユーザがRAMとして利用可能なメイン・メモリ空間は最大でも640KBで区切られてしまうメモリマップ<ref>I/OポートやVRAMの割付(高機能なグラフィックコントローラの実装を前提として、RGB3プレーンを並べてメインメモリ空間に配置するのを止め、1プレーン分にのみアドレス空間を割り当ててそれをバンク切り替えすることでアクセスするように改められた)を見直したハイレゾモードでは、最大768KBのメイン・メモリ空間が確保される。</ref>となっている。この時代にはそれが問題となることはなかったが、ソフトウェアが肥大化したMS-DOSの全盛期には、日本語入力システムなどのデバイスドライバを常駐させた後の少ないフリーエリアのやりくり、特に起動に500K〜600Kバイト程度のエリアを必要とするアプリケーションのための領域確保にユーザーは苦労することになった<ref>リアルモード対応OS上でのメモリ空間拡張の方法としてI/Oバンク方式EMSXMSなどが提唱されたが、根本的な解決はWindows(2.0で採用されたプロテクトモード。事実上は3.0以降)の普及を待つこととなった</ref>。

V30とGRCGの搭載、完全2HD化、3.5インチFDD搭載モデルの発売

この世代の機種は、CPUにNEC自身が開発した8086の上位互換高速CPUである V30を採用した。また、グラフィック機能が大きく強化され、従来機でのデジタルRGBによる8色表示から、アナログRGBによる4096色中16色同時発色表示となった(一部モデルではオプション)この表現力を生かすため、VRAM各プレーン同時書き込み制御に対応したグラフィック処理プロセッサGRCG (Graphic Charger) が追加された。また、キーボードにNFER(無変換)キーが追加された。

この頃から登場した3.5インチFDD搭載のモデルは、多くのモデルではホビーユースを意識して、5.25インチモデルよりも小型の筐体で、標準でPC-9801-26K相当のモノラルFM音源を搭載した。

PC-9801U 1985年5月
3.5インチ2DD FDD を初搭載。V30を搭載した最初の98でもある<ref>V30 8MHz版を搭載。グラフィックVRAMは初代機と同様に1画面分のみ実装していた(増設不可)。</ref>
PC-9801VF 1985年7月
5インチ2DD FDD を搭載(VF/0を除く)
PC-9801VM 1985年7月
5インチ2HD/2DD自動切換え型 FDD を搭載(VM/0を除く)
PC-9801UV 1986年5月
3.5インチ2HD/2DD自動切換え型 FDD を搭載
PC-9801CV 1988年3月
カラーCRT一体型モデル

これらの機種のうち、PC-9801VMは、「V30搭載・アナログRGB2画面・5インチ2HD」というこれ以降のPC-9800シリーズの標準的な仕様を確立することとなり、以後多くの市販ソフトに「PC-9801VM以降対応」との表示がされた。 また、3.5インチFDDモデルではフロッピーディスクドライブ以外の仕様がPC-9801VMに準じるPC-9801UVがこの役割を果たし、「PC-9801VM/UV以降」という表示も多く見られた。

皮肉なことに、GRCGの搭載と、UVやCVといったシステムセット価格の安いエントリーモデルの順次投入により、ゲームなどのホビーユースでも一気にPC-8800シリーズからPC-9800シリーズへのシフトが進んだ。このため、ハイローミックスでの商品展開を想定していたNECの目論見ははずれ、PC-88VAの失敗もあってPC-8800シリーズは一気に撤収を余儀なくされ、逆にPC-9800シリーズで廉価機を展開しなければならない状況になった。

80286/80386とEGCの搭載

80286 / i386の登場により、新開発の高解像度グラフィックに対応し実験機的な性格が強く見られたPC-98XAやPC-98XL2などのPC-98型番の機種での試行的な導入を経て、本流となるPC-9801型番の機種においてもこれらのCPUを採用した高性能機が開発されるようになった。この際、80286のみ搭載でしかもPC-9801型番の機種とはグラフィック画面の互換性がなく苦情が寄せられたV30のハードウェアの動作タイミングや命令拡張部分にi80286等と非互換な部分<ref>例えばintel 8080命令セットのエミュレーション機能など。</ref>が存在したため、これらに依存していたごく一部のソフトウェアが動作するようにV30も合わせて搭載し、切り替えて使えるようになっていた<ref>ただしV30動作時には1MB以上のメモリ空間に存在するデバイスが認識されないなど、幾つかの制約事項が存在する。</ref>。 また、PC-98XA以降ではサポートされる物理アドレスが従来の20ビットから24ビットに拡張されたi80286の搭載に伴い、Cバスのアドレス線を未定義の信号線に割り当てて24ビットに拡張する仕様変更が行われている。ただし、この機能についても従来の20ビットアドレス対応拡張ボードとの互換性を維持するため本体側スロット右上にスイッチを追加搭載し、拡張ボード右奥のバーがこれを押下しない限り有効とならないように配慮されている。

PC-9801VX 1986年10月
5インチFDD搭載、大型筐体、FM音源なし。CPUは前期モデルが80286/8MHz+V30/10MHz、後期モデルが80286/10MHz+V30/10MHzを搭載。
CPU切り替え使用可能な機種ではこの機種(とPC-98XL)のみ、搭載されているV30の最大動作クロックが10MHzとなっている。
PC-9801UX 1987年10月
3.5インチFDD搭載、小型筐体、FM音源搭載。CPUは80286/10MHz+V30/8MHzを搭載。

筐体のカラーリングはこれまでのものを踏襲しているが、茶色のアローの下に多数の溝が追加されているという過渡的なデザインになっている。VM2の後継機もVM21としてVXと同じデザインになった<ref>VM21はVXから80286とEGCを省略したものに相当する。両機はグラフィック回路とCPUボードがドータボードになっており、筐体とマザーボードはほぼ同じものが使われている。</ref>。

この世代以降、GRCG上位互換のEGC (Enhanced Graphic Charger) と呼ばれる、VRAM各プレーン同時制御を読み出しにも対応させて高速化を実現した新グラフィック処理プロセッサが追加されている。また、GDCのクロックモードを従来の2.5MHzから5MHzに選択することができるようになった<ref>周波数はディップスイッチで指定するが、このディップスイッチによってハードウェア的に直接GDCの周波数が設定されるようにはなっておらず、周波数設定はソフトウェア(BIOSおよびGLIO等)によって行われていた。なお5MHzでの動作が可能なのは400ライン表示時のみであり、200ラインでの表示時にはBIOSまたはGLIO等によって自動的に2.5MHzに変更され、その後400ライン表示に戻る段階で5MHzに戻されるようになっていた。また5MHzに対応していないソフトウェアでは5MHzに設定すると問題が出ることもあった。</ref>。

PC-9801RA/RX前期 1988年7月/9月
5インチFDD搭載、大型筐体、FM音源なし。CPUはRA2が80386DX/16MHz、RX2が80286/12MHzを搭載。
PC-9801RA/RS/RX後期 1989年10月
5インチFDD搭載、大型筐体、FM音源なし。CPUはRA21が80386DX/20MHz、RS21が80386SX/16MHz、RX21が80286/12MHzを搭載。
PC-9801EX/ES 1989年4月
3.5インチFDD搭載、小型筐体、EXがFM音源搭載でCPUはが80286/12MHz、ESがFM音源無しでCPUは80386SX/16MHzを搭載。

この世代から、筐体のデザインと本体色が変更され、アイボリーブラウンの組み合わせから、ブルーグレーになっている。また、東芝J-3100シリーズに対抗すべく開発が進められていたラップトップ用カスタムLSIが完成したのを受けて搭載されており、これにより前世代より機能強化しつつ筐体寸法のダウンサイジングが実現している。実際、VM21相当の機能でこれらの筐体デザインを採用したVM11という機種も存在した。

また、キーボードにはvf・1〜vf・5キーが追加された。この頃のキーボードは非常に出来が良く、21世紀になった今でも変換コネクタ経由でPC/AT互換機で使用しているユーザがいる程である。

Rシリーズの後期型から、PC-8001以来続いてきたロゴタイプが変更され、縦長の曲線が弧を描いたものから、曲線角を使った正方形に近いデザインに変更された<ref>本来尖っているべき角の一部が丸い・繋がっているべき縦棒と横棒の一部が繋がっていないなどデザイン性のある字体になっている。そのためFELLOWシリーズの「B」のロゴは左上の角が丸く左下の角が繋がっていないため、エスツェット(ß)と読めるほどデフォルメされている。</ref>。なお、RSは後期型からの追加である。

デスクトップ完全互換ラップトップ機の完成

1986年に衝撃的なデビューを飾り、欧米で「King of Laptop」と絶賛されたラップトップ型PC/XT・AT互換機である東芝T-3100シリーズは、日本語対応を施された上で1987年にJ-3100シリーズとして日本市場での発売が開始された。

同シリーズの出現は、新規市場の開拓であったが故に直接対抗する手段が存在せず、日本市場におけるパソコンのトップメーカーとしてデスクトップ機を主軸に据えた販売戦略を組み立てていた、当時のNECに大きな衝撃を与えた。

NECは急遽J-3100対抗機種の開発に乗り出すが、長い開発期間をかけて実現をみたJ-3100シリーズに対抗するのは容易ではなく、互換性を犠牲にして市場投入時期を優先した機種をまず投入、その後でデスクトップPC-9801との完全互換を実現したマシンを追加投入する、という2段構えの戦略を採った。

PC-98LT 1986年10月
詳細は#小型化を参照のこと。

最初に市場に投入されたPC-98LTはフルスペックのデスクトップ機互換ラップトップ98を求める市場の声にこたえうる製品ではなく、十分な成功を収めるには至らなかった。

この時期のPC-9800シリーズのデスクトップモデルでは周辺チップの集積がいまだ進んでおらず、デスクトップ完全互換のラップトップ機を開発するには、まずPC-9800シリーズとしての固有機能を集積したチップセット<ref>μPD9012 - 9014と付番された。型番からも明らかなように半導体事業部が開発したカスタムLSIで、以後PC-9821登場までPC-98・PC-9801型番の各機種に幅広く搭載された。</ref>を開発する必要があった。もっとも、NEC府中(PC-9800シリーズ)・玉川(半導体)の両事業所が総力を挙げて開発していたチップセットは開発が難航したことから、NECによるPC-9801型番のデスクトップ完全互換ラップトップ機はJ-3100の市場投入から約1年遅れでの出荷開始となった<ref>この間に互換機メーカーであるエプソンは集積度の高いチップセットの開発でNECに先んじていたことが功を奏して、PC-286LとしてV30搭載のPC-9801UV互換のラップトップ機をいち早く市場に投入し好評を博している。</ref>。

PC-9801LS 1988年10月
J-3100同様のプラズマ(15階調)を搭載する、PC-9801US相当のデスクトップ完全互換ラップトップ機。コンセントからのAC給電専用。
PC-9801LV 1989年1月
EFLバックライト付き青液晶(8階調)を搭載する、PC-9801UV相当のエントリーモデル。バッテリ駆動可能。NEC米沢が開発<ref>Template:PDFlink 山形大学 2004年5月11日</ref>。
PC-9801LX 1989年4月
EFLバックライト付き白黒液晶(8階調)あるいはSTNカラー液晶(LX5Cのみ)を搭載する、PC-9801UX相当機種。コンセントからのAC給電専用。

これは従来より市場で求められていたものだけに大ヒットを飛ばしたが、先行するJ-3100シリーズと同様に高速CPUを搭載する上位モデルの提供が強く求められ、まずインテル80386SXとV30を搭載するLSが同年秋に市場投入され、これに続いてLVとLSの中間に位置する低コストハイパフォーマンスモデルとして80286とV30を搭載するLXが翌年に順次出荷開始された。

なお、既存ソフトウェア資産の継承のために必要であることから、ラップトップ機であるにもかかわらず、フロッピーディスクドライブが各2基ずつ標準搭載されていたのもこのシリーズの大きな特徴の一つである。

しかし、このラップトップ機シリーズはLXデビューから間もない1989年に更なる衝撃を伴って市場に投入された東芝の歴史的傑作、J-3100SS001「ダイナブック」によって事実上、可搬機としての命脈を断たれた。ただし、省スペースデスクトップ機としてのこの種のパソコンの市場ニーズは法人を中心に根強く存在したことから、クラムシェル型ラップトップ機としての性質を残したまま、キーボードの本体からの分離機能や汎用拡張スロットの標準搭載など、省スペースデスクトップ機にシフトした実装を行った機種が翌年になって出荷され、以後これを基本にPC-H98、PC-9821の両シリーズにも省スペースデスクトップに特化した液晶ディスプレイ内蔵モデルが細々と継承されることとなった。

PC-9801T 1990年2月
PC-9801LSの後継機種。テンキーレスのキーボードが分離可能な大型筐体が新規設計され、2本のCバススロットが搭載された。
PC-H98T 1992年12月
PC-9801Tの上記機種。筐体の特徴はPC-9801Tに準じるが、386SX 20MHzに代えて486SX 25MHzを搭載し、NESAバス・ハイレゾ対応としたために更に大型化した。

また、これらとは別に生命保険会社などの法人向けニーズにこたえ、回路設計がコンパクトなPC-98LTをより小型・低消費電力化したモデルが開発されている。

PC-98HA 1990年10月
詳細は#小型化を参照のこと。

ノート型

ラップトップ型で小型化が図られたが、持ち歩くという使い方は重さや電源の観点からまだ現実的ではなかった。J3100がダイナブックという愛称で発売されたのに対して、薄さや軽さを強調するノートという言葉を使った98NOTEシリーズを発売した。 以後ノートパソコンという言葉/ジャンルが確立され、ビジネスユースなどのパーソナルコンピュータの利用範囲を広げる一端を担った。

  • なお、下記の動作時間はFDDモデル、FDD10%仕様の公称値(カタログスペック)である。
PC-9801N 1989年11月
初代98ノート。CPUはV30-10MHz。3.5インチFDDを1基搭載。標準バッテリーパックとは別に内部にニッカド電池を搭載することで、バッテリーバックアップされたメインメモリの一部がITF/BIOSレベルの機能として提供されるRAMドライブ<ref>ドライバを起動したOS上で組み込んで利用するRAMディスクとは異なり、ブート直後の段階で認識される。</ref>に割り当て可能となっている。これにより、マシンに2台のFDDが搭載されていることを必須条件とするアプリケーションを1ドライブ搭載のこのマシンで利用可能とした<ref>もっとも、このメモリディスクはその性質上プロテクトのかかったディスクを複写できない。それゆえ、本機種発売以降に出荷が開始された複数メディアで構成される商用アプリケーションの多くでは、従来は2台目のFDDに入れるディスクにかけるのが定番であったディスクプロテクトを、1台目のFDDに入れるディスクにかけるように変更されている。</ref>。チップセットはラップトップ機やデスクトップ機と共通のμPD9012 - 9014をキーボード直下に詰め込むようにして実装してある。バッテリーで1.5時間動作。
PC-9801NS 1990年6月
386SX搭載の98ノート。20MB-HDD搭載モデルも登場した。
PC-9801NV 1990年11月
初代98ノートの後継機。V30HL-16MHzを搭載し高速化が図られた。レジューム機能搭載。
PC-9801NS/E 1991年7月
NSをベースにセカンドバッテリーを搭載し、動作時間が3.4時間に増加。HDDも内蔵可能になった。
PC-9801NL 1992年1月
V30HL(16/8MHz)初代98NOTE LIGHT ジャストA4サイズ、FDDを外付けにして本体を1.3kgに軽量化。JEIDAVer.4.0規格メモリカードスロット、MS-DOS 3.3D相当をROMで内蔵。オプションでアルカリ乾電池バッテリーケースが有る。なお、後のLIGHTはB5ファイルサイズに。
PC-9801NS/T 1992年1月
インテルとNECが共同開発した386SL(98)-20MHzを搭載、動作時間3.8時間(標準+セカンドバッテリー)。
PC-9801NC 1991年10月
TFTカラーLCDを搭載した世界初のノートPC。しかし価格も598,000円と高価だった。
PC-9801NA,NA/C 1992年10月
486SX-20MHz搭載。モノクロモデルで動作時間2.4時間(標準+セカンドバッテリー)。
PC-9801NS/R 1993年1月
インテルジャパンが開発した486SX(J)-16MHzを搭載、動作時間5.4時間(標準+セカンドバッテリー)。3モード(640K/1.25M/1.44M)FDD搭載。
PC-9801NX/C 1993年7月
486SX(J)-20MHz PCカードスロット(PCMCIA2.0/JEIDAVer.4.1)搭載

通信機能の拡張

NECはかつて「電電御三家」と呼ばれたほど電電公社→NTTと密接に結びついてきた企業であり、PC-8800シリーズでも音響カプラー搭載のPC-8801mkII TRという機種を発売するなど、パソコン通信やネットワークへの関心の強い企業でもあった。

このため、PC-9800シリーズのアーキテクチャをベースとして、通信機能を拡張した機種が発売されている。

RC-9801 1991年10月
1991年に登場した、PC-9801nに無線機能を備えた機種。「テレターミナル」という専用のホストに無線で繋ぐことで、パソコン通信をすることができた。今でいうモバイル通信機能を備えたパソコンのはしりといえる。1機種のみで終息した。

ホビーユースへの進出

従来、デスクトップモデルでは3.5インチFDDモデルは小型で拡張性が低くFM音源を搭載したホビー指向、5インチFDDモデルは大型で拡張性の高いビジネス指向という住み分けを行っていたが、DA/DS/DXからは原則的に全ての機種にFM音源を搭載し、ビジネス向け大型筐体機でも5インチFDD搭載モデルの他、3.5インチFDD搭載モデルが用意されるようになった。また、互換性維持の為に残されていたV30や、ディップスイッチ、マウスポート割り込み変更ジャンパスイッチも削除され、代わりにVM相当の速度で動作するモードとソフトウェアディップスイッチ(現在のBIOS設定画面のようなもの)が追加され、内蔵DMACの性能向上が行われた。

PC-9801DA/DS/DX 1990年11月
PC-9801RA/RS/RXの後継となる機種。5インチFDD搭載を搭載したRA/RS/RXと同様の大型デスクトップモデルで、CPUも同一であるが、このシリーズより小型筐体機と同様にFM音源を搭載し、5インチFDD搭載モデルの他、3.5インチFDD搭載モデルも設定され、PC-9801ES/EXの後継も兼ねた。この頃、8ビット機市場の衰退により、ホビーユースでPC-9800シリーズを所有するユーザーが急増した。しかし、PC-9800シリーズにはスプライトといったアクションゲーム向きの描画機能などは備わっていないため、発売されたゲームは当初、RPGシミュレーションゲームアダルトゲームが中心であった。しかしDシリーズの登場により、PC-9800シリーズの性能下限が実質的にV30系から80286に底上げされたため、CPUのパワーに頼った“力技”でこれらを解決しPC-8800シリーズから移植されるゲームが相次いだ。
PC-9801UR/UF 1991年2月
CPUはV30HL/16MHz。DA/DS/DXで3.5インチ、5インチモデルを統合後も小型筐体機の需要は根強く、UV11と同様のA4サイズでノート型機をベースにしたUR/UFが販売された。両機種ともノート機で用いられていたメモリカードスロットを備える<ref>UF/URはCPUがV30系であることから実質的にEMS専用スロットである。当時の98ノートと同様にPCMCIA 1.0準拠のPCカードスロットだが、UR/UFでは機能が制限されており、ノートドライブなどには利用できない場合がある。また当時の98ノートのカードメモリは遅いことで知られており、Cバスメモリが利用できればそちらのほうがパフォーマンスが良い。</ref>。URは通常のフロッピーディスク1台の他にノート機で用いられていたフロッピーディスク互換のRAMドライブを装備するモデルである。PC-9801型番のデスクトップでありながらFDDが1台しか無いモデルが用意されたのはPC-9801M3以来であり、当時としては珍しい構成だった。そのHDDモデルUR/20ではFDD1台分の空いた隙間にHDDを搭載しており、デスクトップ型PC-9800としては初めてIDE HDDを搭載した。UFは通常のFDDを2台装備するモデルとなる。これらは本質的にはV30機でありながら例外的にEGCを搭載しており、またCPUクロックの向上で286に近いCPU処理速度を持っていたことから、PC-9801VX以降対応とされるソフトの動作可否が微妙な機種となった。
PC-9801CS 1991年10月
CPUは80386SX/16MHz。14インチCRT内蔵モデルで、CVの後継機に当たるが、デザインはまったく異なる。デスクトップのPC-9800シリーズの中では珍しい「アローデザイン」を採用していないモデルである。
PC-9801US 1992年7月
CPUは80386SX/16MHz。ノートの基本設計を流用しているUR/UFは、特にゲームでの互換性に問題があり(ゲームソフトハウス側でも、この2機種での動作を保証しないことが多かった)、CSのコンポーネントを流用する形で、すでに生産中止されたUV/UXの後継機種として急ぎ投入された。
PC-9801FA/FS/FX 1992年1月(FA) / 5月
PC-9801DA/DS/DXの後継となる機種。大型筐体を持つ機種はユーザによる拡張が前提であるため、そのアクセサビリティ強化のため、ファイルスロットや筐体を開けずにCPU交換やメモリ増設が行える前面アクセス方式を備えたFA/FS/FXが発売された。Fはファイルスロットを意味すると思われる。FAはi486SXを搭載した最初のPC-9801。FSは80386SX/20MHzに向上。FXはDXの80286/12MHzから80386SX/12MHzに変更され、一応32ビット化された。PC-FXとの関係は無い。

486DXの搭載と、MS-DOS・MS-Windows3.1からWindows95の時代へ

1990年代に入り、Windows 3.0/3.1の登場と、安価なPC/AT互換機DOS/V)の本格的な日本上陸という大きなムーブメントが起こり(後述)、これに対処するためNECはハイエンドPC-9821シリーズ(愛称は98MATE)を投入した。 そのためPC-9800シリーズ(PC-9801型番のシリーズ)は、MS-DOSベースの市場向け、またPC/AT互換機との価格対抗のための廉価版として傍流に位置づけられ、98FELLOWと言う愛称がつけられた。デザインや色もPC-9821に準じた丸みを帯びた形状とアイボリーに変更となっている。

価格低下のために、FM音源や増設用FDD端子の削除、拡張スロット数の削減、専用HDDユニットから汎用IDEへの変更、ファイルスロットから5インチベイへの変更等が行われているが、最も影響を受けたのがキーボードであろう。今までのメカニカルスイッチ式からメンブレンタイプの安価な物に変更になっているが、入力性能に強く影響を及ぼすNキーロールオーバー機能は死守されていた。

この価格低下と9821シリーズへの移行は、それまでの(高価な)既存機のユーザーに、衝撃をもたらした。既存機の性能を少しでも上げようと、286/386CPUをサイリックスなどのピン配置が386と同等の486互換CPUに交換するためのボードが流行した。CPUソケットを使用した機種の多いPC-9800シリーズならではの現象だったが<ref>ただしPC-9801USのユーザーがかなり多かったため、フラットパッケージ使用のi386SXマシン用Cyrix4x86CPUユニットも発売された。</ref>、しかしこれらは動作が不安定な上に起動時にキャッシュドライバを組み込む必要があり、ネイティブな486機と比較すると十分な実行速度が得られるとは言い難かった。

またPC-9821移行の直前に発売されたPC-9801FAは、高価な割には売れており、しかもクロックが8MHz系統の486SX-16MHzという仕様のため、CPUを486DX2などに交換しても性能が大して向上せず、多くの98FAユーザーが涙を飲んだ<ref>もっとも、PC-9801DA等の旧機種にサードパーティ製のCPUボードと各種拡張ボードを併用するなどして、Windows95/98をインストールした者もいた。また後年には、CPUバスクロックが16MHzあるいは20MHzの386機とFA、それに初期のFellow用として、専用設計のドーターボード上にクロックダブラー回路を搭載することでボード上のローカルバスクロックを2倍速の33MHzあるいは40MHzとした上で、Cx5x86-100MHzやAm5x86-133MHzといった高速CPUと、16M以上のメモリ空間に配置される大容量メモリモジュール(対応機種によりソケットの実装位置は異なったが、後期の98ノートで用いられていたDIMMを2枚実装可能。このDIMMは最大32MBのものまで使用可能で、つまり最大実装時のメモリ容量は32×2+14.6=78.6MBとなる。このDIMMはCPUと同じバスクロックで動作するため、本体搭載のメモリと比較して大幅に高速アクセス可能であり、Windowsでは絶大な効果を発揮した。ただしこれは専用のメモリマネージャ(MELEMM386)を用いない限りアクセスできないため、Windows 95・98には対応したがNT系には対応しなかった)を駆動する、ハイパーメモリCPUという製品がメルコから発売されており、これを使用するとCPU周りに関しては最高でPentium75MHz並みの速度が得られた。</ref>。

この「98FELLOW」「98MATE」のシリーズからは、内蔵3.5インチFDDは、従来のPC-9800シリーズのフォーマットに加え、PC/AT互換機で使われている1.44Mバイトフォーマットにも対応するようになった。

PC-9801BX/BA 1993年1月
CPUは486SX-20MHz/486DX-40MHzが搭載された。それぞれ、それぞれ内蔵ドライブ構成の相違から、/U2(3.5FDD*2)/U6(3.5FDD*1+HDD=80M)/M2(5.25FDD×2)の3種に仕様が分けられていた
PC-9801BX2/BS2/BA2 1993年11月
CPUは486SX-25MHz/486SX-33MHz/486DX2-66MHzが搭載され、これらの機種もそれぞれ内蔵ドライブ構成の相違から、/U2(3.5FDD*2)/U7(3.5FDD*1+HDD=210M)/M2(5.25FDD×2)というサブモデル名が存在する
HDD搭載モデルはFDDが1基搭載であるが、この機種から前面パネルの一部を交換でき、オプションで2つに増設することも可能であった。また、FDDの下にファイルベイが追加されている
このモデルより汎用SIMMが利用可能となり、最大14.6Mバイトの制限が撤廃されたほか、パラレル端子がハーフピッチに、マウスの端子が丸型に変更されるなど、PC-9800シリーズ過渡期のモデルといえる。なお5インチFDD内蔵モデルはこの機種が最後となった
PC-9801BX3/BA3 1995年1月
定価が10万円を切る低価格(98,000円)で発売された初の98。i486SX-33MHz(BA3はi486DX2-66MHz)を搭載する。仕様別に/U2(3.5FDD*2)と、ウィンドウアクセラレータB3を汎用拡張スロットに実装し、HDDを搭載してWindows3.1をプリインストールした/U2/W(3.5FDD*2+HDD=210M)が存在する
PC-9801BX4 1995年7月
グラフィックアクセラレータを内蔵したPC-9801型番の最終モデル。PC-9801型番だがPC-9821Xe10と共通の部品を使用し、PC-9821相当の性能を持つ(これによりPC-9801シリーズとして唯一VGA256色モードを持つ)。i486DX2-66MHz又はAMD486DX2-66MHzを搭載する/U2(3.5FDD*2)及び、Pentium ODP63MHzをCPUとして搭載する/U2-P(3.5FDD*2)が存在する。また2倍速CD-ROMをそれぞれ搭載した/U2/C、/U2/C-Pも存在する

ペン入力への挑戦

通常はキーボードを使わず、液晶モニタ上をスタイラスペンを用いて操作する形態の、ノートパソコンサイズの小型パソコン。PC-9821シリーズ世代に発売されたが、当時の技術では、マルチメディア志向までカバーできる液晶モニタの開発が困難なことや、きょう体の小型化の阻害になる事などから、PC-9801の形式に位置づけられた。

PC-9801P 1993年7月
MS-DOSのペン入力対応版である日本語PenDOS2.0、Windows3.1のペン入力対応版である日本語Windows for Pen1.1、そしてGO社の開発したPenPoint2.0を搭載した3モデルが発売された。ジャストA4サイズ、厚さ31mm、重さ1.6kgという小型機で、CPUとしては低消費電力の486SX(J)を搭載しバッテリで連続6時間駆動を実現した。しかし、Microsoft製OS2種はペンパソコンOSとしての完成度の低さから、PenPoint2.0はアプリケーション資産がほとんどないことから、ハードウェア技術の稚拙さも相まって商業的には完全に失敗した。

なお、この形態のパソコンは後に三菱電機コンパックも挑戦しているが、いずれもひとつの流れにはなることなく終わっている。

PC-9801シリーズの終焉

長らく続いたPC-9801型番のシリーズも、Windows 95と同時に発売されたPC-9821の廉価版のVALUESTARシリーズが販売された時点で、その使命を終えた。

その後のPC-9800シリーズの動向については後述する。

ソフトウェア資産

自社開発のN88-BASIC(86)をROMで搭載し、同社の8ビットパソコンPC-8800シリーズと言語レベルで高い互換性を持つ。また、当時としては強力な日本語処理機能を持ち、さらにNEC自身が積極的にソフトウェア開発の支援を行なったため、多数のPC-9800シリーズ専用アプリケーションが登場した。

また、非常に多くのOSが移植されており、NEC自身により、MS-DOS、CP/M-86、OS/2 1.x/2.11/Warp V3/Warp Connect/Warp 4、Windows 1.x/2.x/3.x、Windows 95/98/98SE、Windows NT/2000、PC-UXが、サードパーティにより、UNIX SVR4が、ユーザコミュニティにより、386BSDFreeBSDNetBSDLinuxFreeDOSがそれぞれ移植されている(PC-UNIXの中では、FreeBSDが比較的早くから実用的に動いていたためユーザを増やし、その影響で今日でも日本ではPC-UNIXユーザに占めるBSD系のユーザの割合が多い)。

ホビーユースにおいても多数のゲームソフトが発売され、日本独自のパソコンゲーム文化の形成に大きく影響した。

これらの圧倒的なソフトウェア資産を背景に、日本国内市場においては、一時期はほぼ寡占状態に近く使われていた。

N88-BASIC、MS-DOSなどには、純正の日本語入力システムが付属していた。時代が下るにつれてかな漢字変換能力が向上し、それにつれて名称がNECDIC(単文節変換)、NECREN(連文節変換)、NECAI(AI変換)などと変わっていった。 また、サードパーティ製の日本語入力システムも、主にワープロソフトに付属する形で普及した。代表的なものにATOKVJE-β松茸WXシリーズなどがある。

ソフトウェアエミュレーター

PC-9800シリーズの機能をソフトウェアエミュレーションによって再現しようとする試みが、私的プロジェクトとして行われている。高度な再現には、利用者自らが所有権を持つ実機から取得したBIOSが必要となることが多い。以下に、ソフトウェアとプロジェクトについての代表的な公開されている実例を動作環境とともに示す。

  • T98-NEXT - Windows(x86)
  • Neko Project II(np2) - Windows(x86,x64),Windows CE,Macintosh(PowerPC)
  • PC98E - DOS/V

エプソンプラットフォーム・エミュレータ98/V は、私的プロジェクトでなく、PC-9800シリーズ互換機を発売していたセイコーエプソンPC/AT互換機に参入する際にPC-9800シリーズのソフト資産をPC/AT互換機で活用できるようサポートとして1995年に発売したものである。ソフトのみで9,800円、エミュレートの際に表示を高速に行うためのハードウェアを29,800円で発売していた<ref>セイコーエプソン98/Vキット発売 BCN This Week 1995年1月16日 vol.581</ref> <ref>DOS/Vパソコン上で98用DOSアプリケーションソフトの動作を可能にするプラットフォーム・エミュレータ「98/V」Windows95に対応した新バージョン(Ver2.10)を新発売 EPSON公式サイト 1996年5月21日</ref>。同じく互換機を発売していたトムキャットコンピュータも1991年にVirtual-98というエミュレータを開発・販売した<ref>会社案内 トムキャットコンピュータ公式サイト内</ref>。

  • エプソンプラットフォーム・エミュレータ98/V - DOS/V
  • Virtual-98 - Windows(x86)

なお、PC-9800シリーズでなく、互換機であるEPSON PCシリーズを再現するエミュレーターもあり、事実上、PC-9800シリーズのエミュレーターとして使用されている。シェアウェアのANEX86は、EPSONのPC-286のエミュレータである。

  • ANEX86 -Windows(x86)

PC-9800シリーズでなく、PC-98シリーズであるPC-98LT/HAを再現するエミュレータもある。

  • ePC-98LT, eHANDY98 - Windows(x86)

型番

本体の型番

PC-9800シリーズでは、ソフトウェアの互換性をアピールする意味もあって、コンピュータ本体の型番には一貫してPC-9801xxnn(xxはアルファベット、nnは数字)という名称が用いられた。アルファベット1文字目はシリーズ名、2文字目は初期はFDD、後期はCPUのグレードを、数字1文字目はFDD数若しくは搭載HDDを、2文字目はリビジョンを示す。ただし「11」を持つ2機種(PC-9801VM11、PC-9801UV11<ref>ちなみに前者はRシリーズの筐体を流用したVM21の廉価版であり、後者は後のUS/UR/UFに連なる小型筐体であるが、デザインはRシリーズ以前の物を踏襲していた(発売時期も後者の方が先)。</ref>)についてはこの例に当てはまらない。

なお、PC-9821シリーズの型番もPC-9801シリーズと同じくアルファベット2文字での付番を継承しているが、PC-9801では2文字とも大文字であるのに対し、PC-9821では2文字目が小文字であるという違いがある(例:PC-9801RA21 / PC-9821Ra20)。

周辺機器、拡張ボードの型番

純正の周辺機器、汎用拡張ボードには、他のPCシリーズ同様、PC-98nn(nnは数字)という型番が与えられた。

  • PC-9805/K: 増設RAM(PC-9801-02/L/17増設用128KBytesRAM)
  • PC-9806: 数値データプロセッサ(8087、本体内専用ソケット用)
  • PC-9808: 数値データプロセッサ(8087-2、本体内専用ソケット用)
  • PC-9811/N: I/O拡張ユニット
  • PC-9831/-4W: 2DD5インチFDD
  • PC-9831-MW: 2HD5インチFDD
  • PC-9831-UW: 2DD3.5インチFDD
  • PC-9832/-4W: 拡張用2DD5インチFDD
  • PC-98H31/32/33/34: 外付けHDD(SASI 5MB 1st/2nd, 10MB 1st/2nd)
  • PC-9845/K: ライトペン
  • PC-98H51/52/53/54: 外付けHDD(SASI 20MB 1st/2nd, 40MB 1st/2nd)
  • PC-9861/K: RS-232C拡張インタフェース
  • PC-9868: パーソナルカップラ
  • PC-9871/K: マウスセット
  • PC-9881/K/N: 8インチFDD
  • PC-9882/K/N: 拡張用8インチFDD

PC-9801U発売以降、番号の不足や型番から製品が区別しにくい等の理由で、プリンタはPC-PRnnn、HDDはPC-HDnnnn、FDDはPC-FDnnn、CD-ROMはPC-CDnn、光磁気ディスクドライブはPC-ODnnnのような命名基準に改訂されている。

汎用拡張ボードにはPC-9801-nny(nnは数字yは英字)という型番が与えられた。PC-9801-を省略してnnボードと呼ばれることが多かった。

  • PC-9801-01: 第1水準漢字ROMボード
  • PC-9801-02/N/L: 増設RAMボード(128Kbytes実装)
  • PC-9801-03: CMTインタフェース
  • PC-9801-04: ユニバーサルボード
  • PC-9801-05: ODAインターフェイスボード
  • PC-9801-06: GP-IB(IEEE-488)インターフェイスボード
  • PC-9801-07: SASIインターフェイスボード
  • PC-9801-09: 5インチFDインターフェイスボード
  • PC-9801-10: 漢字ROMボード
  • PC-9801-12: 第2水準ROMチップ
  • PC-9801-13: CMTインターフェイスボード
  • PC-9801-14: ミュージックジェネレータボード
  • PC-9801-15: 8インチ標準フロッピーディスクインターフェイスボード
  • PC-9801-16: 68000ボード(8MHz)
  • PC-9801-17: 68000用増設RAMボード(68000用、128KBytes実装)
  • PC-9801-18: 拡張漢字ROMチップ
  • PC-9801-19: GP-IB(IEEE-488)インターフェイスボード
  • PC-9801-21/N: 増設RAMボード(128KBytes、U2/VF2本体、PC-9801-31増設用)
  • PC-9801-23: 8086ボード(8MHz)
  • PC-9801-25: スーパーインポーズボード
  • PC-9801-26/K: FM音源ボード(PC-8801mkIISR相当)
  • PC-9801-27: SASIインタフェース
  • PC-9801-29/K/N: GP-IB(IEEE-488)インタフェース
  • PV-9801-31: 増設RAMボード
  • PC-9801-32: PC-UX用V60 CPUボード
  • PC-9801-55/L/U: SCSI ホストアダプタ
  • PC-9801-61/R/U: 増設RAMサブボード
  • PC-9801-73: FM音源ボード(PC-98GS相当)
  • PC-9801-86: FM音源ボード(PC-9821相当)
  • PC-9801-91: フルカラーウィンドウアクセラレータB
  • PC-9801-92: SCSI ホストアダプタ
  • PC-9801-100: SCSI ホストアダプタ(アダプテック製 AHA-1030P OEM品。PnP動作とASPIマネージャに対応)
  • PC-9801-107: B4680インタフェースEC<ref>B4680とはNECのLANシステム・BRANCH4680のこと。10BASE系のサブネットワークをサポートしている。</ref>
  • PC-9801-108: B4680インタフェースET
  • PC-9801-118: FM音源ボード(Windowsでの使用に特化。Sound Blaster16相当のFM音源とPC-9801-86下位互換のFM音源を排他利用可能で、併せてWSS-PCM音源とローランドMPU-401互換のMIDIインタフェースを搭載。PnP動作対応)
  • PC-9801-122: バーコードリーダ

各機種専用のオプションは、PC-9801yy-nn(yyは機種名、nnは数字)という型番が与えられた。

  • PC-9801DA-01: PC-9801DA用増設RAMボード
  • PC-9801LV-01: PC-9801LV用テンキーボード
  • PC-9801LV-02: PC-9801LV用PC-98LT互換ボード
  • PC-9801P-01: PC-9801P用デスクステーション
  • PC-9801P-02: PC-9801P専用ペンセット
  • PC-9801P-13: PC-9801P用キャリングバッグ
  • PC-9801U-02: PC-9801U2用16色グラフィックボード
  • PC-9801U-03: PC-9801U2用サウンドボード
  • PC-98LT-14: 拡張装置接続ケーブル
  • PC-98XA-01K: PC-98XA用増設RAMボード
  • PC-98XA-03: PC-98XA用数値データプロセッサ(8087-2)
  • PC-98XL-01: PC-98XL用増設RAMボード
  • PC-98XL-06: PC-98XL用縦置き台

キーボード一覧

純正キーボードとして、PC/AT互換機と同配列の106キーボードや、特定のNEC製ソフトウェアに対応した専用キーボードも発売されていた。

  • PC-9801-98: 楽々キーボード
  • PC-9801-106: 98標準キーボード(Windowsキー、アプリケーションキーなし)
  • PC-9801-114: PC-PTOSキーボード
  • PC-9801-115: 文豪DPキーボード
  • PC-9801-116: 106キーボード
  • PC-9801-119: 98標準キーボード(95)(Windowsキー、アプリケーションキーあり)

プリンタ

純正プリンタとしては、PC-PRxxxという型番が付けられた。

  • PC-PR101x: 11インチのシリアルプリンタ
  • PC-PR201x: 15インチのシリアルプリンタ

xは枝番。アルファベットだけのものやアルファベットと数字が組み合わされたものが付けられていた。晩年は枝番が印字速度に変わり、/80Lなどとなっていた。 純正シリアルプリンタにはPC-PR型番のほかにNMnnnnといった型番のものもあった。

レーザプリンタではPC-PR1000や2000など4桁の数字も使われた。

PC-98シリーズ

「NECパーソナルコンピュータPC-9800シリーズ」の一つに位置付けられていたものの、「PC-9801」型番ではなく、少数ながら「PC-98yy」(yyはアルファベット)という名称を持つシリーズが存在する。

これらはCADソフト向けの高解像度グラフィック+高速CPU搭載モデル<ref>このグループに採用された高解像度グラフィック機能はPC-H98シリーズに継承され、さらにPC-H98シリーズの終息後はPC-9821シリーズの一部機種において専用拡張ボードにより対応が図られており、市場において一定の支持があったことと、Windows時代になってなお根強い需要があったことがわかる。</ref>をはじめ、いずれもアーキテクチャについて何らかの改変・拡張機能の付与が行われた実験的なモデルであり、そこで得られた実績は次世代のPC-9801型番各機種に少なからず反映されている。

実験機的な性格が特に強かったPC-98XA・LT・HAの印象が強いためか、このグループに含まれる機種はPC-9801型番の機種とのソフトウェア互換性が低いと理解されるケースが多い。だが、後半のPC-98XL・XL2・DO・DO+・GSの拡張部分以外のPC-9801型番の機種との互換機能についてはごく初期のデジタルRGB出力対応ソフトウェアなどに一部互換性がないものも見られたものの、それ以外はほぼ完全なソフトウェア互換性を備えており、拡張ボード等についてもノーマルモードで動作させる範囲ではほとんどの製品がそのまま動作する。

また、これらは外見上、通常のPC-9801シリーズとは区別がつけられており、RA/RS/RX世代以降の機種では前面のスリット部分が濃いブルーグレーに塗装されている。

高解像度(ハイレゾ)系

ハイレゾ(1120×750 16色、24dotフォント)表示を持つCAD向きの機種。ハイレゾモードでは、マウスI/Fの割り込み番号やテキストVRAMの開始アドレスやVRAMのアドレスがノーマルモードとは異なるが、アクセス方式は変わり無いため、テキスト版のソフトウェアやワープロ等はかなりの数が移植された。

この系列はPC-H98シリーズへと発展し、後のPC-9821 A-mateで互換動作ボードが販売されるなど数少ない成功例である(が、個々の商品が成功したとは言い難い)。

なお「ハイレゾ」とは高解像度の意味である「ハイ・レゾリューション (High Resolution)」の略称だが、PC-9800シリーズ・PC-H98シリーズによって広まった呼称である為、日本では「ハイレゾ(ハイレゾリューション)=PC-98のハイレゾモード」という図式が出来上がってしまっている。

PC-98XA 1985年5月
98シリーズ初の80286機。当時最高水準の解像度を誇ったが、他のPC-9800シリーズが備えるノーマルモード(640×400)表示を備えていないため、ソフトウェア、周辺機器の互換性が低い
PC-98XL 1986年10月
XAにノーマルモード機能も持たせ(起動時切り替え)、他のPC-9800シリーズとの互換性を高めたもの。以降ハイレゾ機はノーマルモードを兼ね備えたものとなる
PC-98XL2 1987年9月
エックスエルダブルと読む。XLのCPUを80386<ref>仮想86モード使用不可能な初期リリース版が搭載されていた。</ref>にし、メモリバスを32ビット化したもの。PC/AT互換機のISAバス対応拡張カードのような筐体前後方向に長いライザーボードの形態でCPUボードやメモリボード、あるいはグラフィックボードを搭載しており、PC-98xxシリーズでは一番筐体が大きい。98シリーズ最大の筐体は、SV-H98 model60であり、最高の価格のダブルレコードを保持している
PC-98RL 1989年1月
XL²を高速・コンパクト化したもの。同時期のPC-9801RA/RS/RXと同様、ノーマルモードに関わるチップセットはラップトップ機用として開発されたものが流用されており、これによりメモリとCPUのライザーボードは廃止され、2段重ねのマザーボードに実装される形式となった。

小型化

ラップトップタイプの初代機で、グラフィックVRAMが1枚に削減(単色分のみ)された上にテキストVRAMも削除(グラフィックVRAMに描画)されている。互換性の低さと直後にPC-9801互換のラップトップが発売されたため、一部のワープロが移植されたのみにとどまる。主に、ラックタワー系機器のコンソールとして活用される事が多かった。後記のFC-98シリーズの小型版としても使用された。

当時の可搬機としては重量と寸法の点で及第点を与えうる内容を備えていたが、その一方でデスクトップ機とのハードウェア互換性が完全でなく、ことにテキストVRAMがなくグラフィックVRAM容量が少ない点がネックとなり、高速描画のためにこれに依存する形でプログラムが書かれていた当時の「一太郎」シリーズが動作しないことは大きな弱点であった。NECはジャストシステムに依頼し、「一太郎 Ver.3」のサブセット版であり、かつ標準搭載の辞書ROMを使用することで、FDD1基搭載のマシンでも運用可能な専用FEPであるATOK6Rを同梱する、ワープロソフトの「サスケ」を本機種の発売に合わせて用意する、という対策を講じていたものの、他のPC-9800シリーズと表示系の互換性が低く、ほとんどの既存のPC-9800シリーズの市販ソフトはPC-98LTで動作しなかったために十分な成功は収められなかった。

しかし、極力PC-9800シリーズのサブセットとなるような設計されており、差異を踏まえた上でPC-98LT/PC-9800両対応のアプリケーションを作るということは容易に行える様になっているなど、差異を少なくする努力は見られる。

このPC-98LTはROMドライブという装置を搭載している。これは、今日のノートパソコンに見られるSSDの様なもので、OSからはディスクドライブとして見える。但しROMなので書き込み(内容の変更)は出来なく、容量も数百KB程度である。このドライブに、MS-DOSおよびN88-BASIC(LT)を内蔵している。また漢字変換FEPもこのROMドライブに搭載しているため、ストレスの無い漢字変換が行えるようになっている。後のデスクトップ互換ラップトップ機(PC-9801LV等)には、このROMドライブが搭載されていない。

N88-BASIC(LT)は、N88-BASIC(86)MS-DOS版をPC-98LTに移植したものである。このMS-DOS版N88-BASICがあるため、いわゆるDISK BASICは移植されていない。

PC-98LT 1986年10月
ラップトップPCで、μPD70216(通称V50)CPU(8MHz)。3.5インチフロッピーディスクドライブを1基搭載。メインメモリ容量は、初期モデルでは384KB標準搭載(640KBに増設可能)だったが、後期モデルでは標準で640KBを搭載していた。
さらにグラフィックVRAMが1画面しかなかったためPC-9800シリーズのソフト資産が流用できず、しばらくしてPC-286L・PC-9801LVが発売されたことから、失敗作と評される事も多い。しかし「実用的に携帯可能なパソコンの重量の上限は5kg」とされていた当時、PC-98LTが3.7kg、PC-9801LVがその倍以上の重さだったので、携帯型パソコンそのものとしての完成度はPC-98LTの方が勝っていた部分もあった。このためPC-9800シリーズのソフト資産よりも機動性に重きをおくユーザーにはPC-98LTの方が好評の場合があった。
またPC-286L・PC-9801LV登場前のPC-98LTの競合機種は、いずれも既存デスクトップ機非互換アーキテクチャか漢字表示不能機種であった。PC-98LTに位置づけが近かった機種はIBM PC ConvertibleとFM-16πであったが、IBM PC Convertibleは重さが約6kg・PC-98LTの半分の画面サイズのCGA解像度で漢字表示不能(当時はまだDOS/Cが存在しなかった)で、FM-16πはIBM PC Convertibleと同様の640x200ドットでOSはCP/M86、記録メディアはマイクロカセットだった。
PC-9801LVはオプションの「PC-9801LV-02(PC-9801LV用PC-98LT互換ボード)」を使用することによってPC-98LTと互換可能となった。
PC-98HA 1990年10月
愛称は「HANDY98」(ハンディ98)。LT互換だがさらにハンディサイズまで小型化、CPUをV50(10MHz)にし、アプリケーションソフトをROMに搭載したもの。ファイル装置は内蔵S-RAM、メモリカードのみ。カードでMS-Worksを搭載可能。この機種は専用ソフトをメモリカード形式で供給すれば電源オンと同時にソフトを起動可能で、ディスク型の外部メディアを必要としないという仕様が評価されて、ソニー・プルコ生命保険(当時)のセールスマン/レディ用携帯端末として大量納入された<ref>『<活用事例 HANDY98ユーザーに聞く> ソニー・プルコ生保』週刊BCN 1991年3月11日更新</ref>(NECらしからぬ本体色(白・黒のほかにワインレッドのモデルが存在した)の設定と、丸みを帯びたその筐体デザインは、セールスレディが持ち運び使用することが前提にあった為である)。カードスロットは、後のPCカード規格の前身である初期のJEIDA規格であった。
本機は当時としては突出した高い携帯性から、強く支持するユーザーも一部に存在したが、大多数のユーザーからは互換性に乏しく、小さいだけの機械であるとみなされ、「ハンディキャップ98」と揶揄される場合もあった。
N88-BASIC(LT)のバージョンが2.0に上がっている。PC-98LTのバージョン1.0との相違点は、新FEPへの対応である。

PC-8800シリーズ互換

起動時のスイッチ切り替えでPC-8800シリーズとの互換性を持たせた複合ハイブリッド機種。PC-8801からの移行ユーザの取り込みを目指したが、DOは機能の不足で、DO+は互換性に問題はないものの時期を逸したために、商業的には失敗に終わった。キーボードはDOシリーズ専用で、GRPHキーを押した状態で88モードを起動すると、88モードのセットアップ画面を表示する機能(PC-8800シリーズのPCキーに相当)が追加されており、他のPC-9800シリーズのキーボードではこの機能は使えない。

PC-98DO 1989年6月
PC-8801MH相当とPC-9801VM21/11相当のモードスイッチによる切り替え機能を持つ(内部的には一枚の基板になっている)。88モードは拡張バス・コネクタがない上に、サウンドボード2相当の音源が搭載されておらず、アタリ規格ジョイスティックやRS-232Cも使用出来ない(プリンタは使用可能)。また、98モードにはEGC、増設用FDD端子が無く拡張スロットが1つなので、本体だけではHDDと拡張メモリ(EMSバンクメモリ)の併用が出来ないと言う非常に使い勝手の悪い機械であったため、結局は双方のユーザから敬遠されてしまった。
PC-98DO+ 1990年10月
CPUにV33A 16MHz、EGC、サウンドボード2相当音源(98モードでもPCM以外は86ボード同様の手順で使用可能)、増設用FDD端子を搭載し、HDD内蔵可能、98NOTE用の増設EMSメモリカードスロットを文字通り内蔵することで、当時のPC-8801、PC-9801の標準的なソフトウェアを動かすに足る仕様を備えていた(80286以上用のプロテクトメモリやソフト、拡張カードは使用出来ない)。
また、マウス変換コネクタ PC-98DO/P-11 をマウスコネクタに装着することで、98モードでもYM-2608B内蔵のジョイスティックポート経由でアタリ規格のジョイスティックを使用出来る。この機能は後のPC-98GSや初代PC-9821、A-mate、それにMULTiシリーズに引き継がれている。
しかし、発売時点で既に、PC-9801DXや80286 16MHzを搭載したEPSON PC-98互換機が同価格帯で販売されていたために乗り換えユーザの大半はそちらを購入し、併用する事を選択した。

マルチメディア指向

オーサリングを目的とするマルチメディア指向の実験機。Windows3.0 + 独自マルチメディア環境がプリインストールされていた。ハードウェアによる高機能のグラフィックとサウンドを搭載。マルチメディア部分の仕様は後のPC-9821とは異なっているが、一部の機能はMS-DOS用のドライバ・ソフト間で互換性が図られている。PC-9801シリーズのアーキテクチャに追加する形で機能拡張しており、ハード、ソフトとも互換性の問題は特にない。もっとも、丁寧に作り込み過ぎた為か、PC-H98シリーズに匹敵するほど価格が高く設定された結果、ビジネスとしては失敗に終わっており、その反省がPC-9821(初代)誕生の原動力となった。

PC-98GS 1991年10月
CD-ROM搭載(非搭載モデルもあり)、フルカラー表示や複数プレーン表示、PCM + FMサウンド機能、DSPによる音響効果。オプションでビデオ処理機能。オーサリングソフトの非常に秀逸なデモが添付されていた。
ちなみに本機のオプションであったビデオ処理機能をCバスボード化したPC-9801-72、標準搭載のDSPを含むサウンド機能を抜き出したPC-9801-73という2枚の拡張ボードにより、通常のPC-9801シリーズでもグラフィック以外は本機と同等のマルチメディア拡張が可能であったが、こちらも非常に高価であったため、普及せずに終わっている
なお、この機種は開発スタートがかなり早かったらしく、CPUとして80386SXだけでなくV30も搭載しており、PC-9801ESがその基本となったと推測される。
98GSは翌年に発売されたPC-9821シリーズのプロトタイプであったと思われる。両者の拡張機能には共通点が多いが、互換性はない。発売時期は富士通が「FM TOWNS」でPC-9800のホビーユースシェアを脅かしていた時期であり、PC-98シリーズでCD-ROMを初めて標準搭載したことで、その対抗機のプロトタイプという見方も当時はなされたが、実際にはマイクロソフト社が同じ 1991 年に発表した MPC(Multimedia PC)規格 1.0 に呼応した市場テストモデルとしての性格が強い(後に富士通はFM TOWNSと併売でPC/AT互換機FMVを発売、各社が次第にPC/AT互換機に参入し、PC-98シリーズに対抗していく)。

PC-H98シリーズ

Template:See ハイレゾ系PC-98シリーズの後継として、32ビット高速バスNESAを搭載した上位モデル「PC-H98」(エイチきゅうはち)が存在する。このモデルは、通称「ハイパー98」シリーズとも呼ばれ、AGDC、E²GC、32ビット転送が可能なDMAC搭載、256色表示、16MB以上のメモリ実装が可能、ハイレゾモードのノンインターレース化、専用ケーブル採用による、ディスプレイへのキーボード接続と電源の連動、NESA対応拡張ボード上にインテリジェントコントローラを搭載することによるプラグアンドプレイ相当の機能の実現、Windows上でのノーマルモードでハイレゾの解像度を使用可能とする、等といった様々な改良や機能追加がなされ、高品質な部品の採用、大出力の電源、縦置き使用を考慮して底面まで塗装された筐体、徹底的なノイズ対策等々、バブル時代特有の贅沢な作りとなっており、主にCAD等の使用を目的としていた事もありセットで100万円を軽く超える価格設定になっていた。また、本機をベースとしたPCサーバSV-H98シリーズや産業用のFC-H98シリーズも販売されていた。

本流のPC-9801シリーズとの互換性は世間で言われているように低いものでは無く、NESAのレベルトリガ割り込みによるINTの共有を行わず、C-BUSボードのリソース登録を確実に行えば、NESAのボードを使用していても市販ゲームはもとよりFreeBSD(98)等も全く問題なく動作する。

特定I/Oポートを叩いた際の一定時間のウェイト挿入や、アナログパレット設定値の読み出し機能は本機種から搭載が始まっている。

PC-H98model60/70 1990年1月(70) / 9月(60)
80386DX搭載。98シリーズ初のキャッシュメモリを標準搭載
PC-H98model100 1990年9月
98シリーズ初の486DX搭載。販売価格215万円が有名
PC-H98Smodel8 1991年5月
i486マシンをPC-9801DAの10万円高でリリースする事を目標に開発されたPC-H98からハイレゾモードを外した機種。そのためディスプレイコネクタは通常の2列D-sub15pinを採用している
PC-H98model80/90 1991年11月
i486SX搭載。Windows3.0での運用を重視し、標準で256色表示が可能となっている
PC-H98model105 1992年11月
98シリーズ初のi486DX2を搭載。PC-9801FAに準じたファイルスロットや前面アクセス方式を備える

PC-9800シリーズ外の派生機種

FC-9800/FC-H98/FC-9821シリーズ

PC-9800シリーズではなく、「ファクトリーコンピュータFC-9800シリーズ」とカタログに明記された製品群である。 PC-9800/PC-H98/PC-9821シリーズのハードウェアを防塵・防振・防爆対応にすることで、使用環境に制約の多い工場でも使用できるように再設計されている。

安全性と信頼性を確保するために、機種ごとに「設置可能条件」が定められている。

型番のFCとは、「ファクトリーコンピュータ」の略である。産業用・工業用に設計されたモデルのため、事務所や一般家庭向け機種が販売されるパソコンショップでは取り扱われず、ファクトリーオートメーション工作機械の中核部分として組み込んだ形で販売された。このような組込目的で使われることを想定し、筐体を取り去ってボードのみとなったモデルのFC-9821Kシリーズもあった。

本体を19インチラックに取り付けることができることや、拡張ボードのスロットやRS-232Cポートの数が一般のPC-9800シリーズに比べて多いことも特色である。最終モデルとなったFC-9821Xにおいては7本、その他のモデルでは主に6スロットを設けている

システム構築を行う側にとっては、中身が一般に販売されているPC-9800シリーズと同等のため、ハードウェア部分を独自に開発する負担がないこと、ソフトウェアの開発も使い慣れているPC-9800シリーズ対応OS・言語で行えるため、短納期・低コスト・保守の容易さが実現した。

納入して利用する側としても、PC-9800シリーズの操作方法がそのまま利用できるため学習の手間が省けること、カラー・高解像度の見やすい画面であること、PC-9801用ソフトがそのまま動作するためCADデータの編集から製品の加工が一元化できること、他企業とのCADデータ授受が行いやすいことなどが好評となった。

PC-9800シリーズを基にしたFC-9800シリーズの生産終了後、2002年よりPC98-NXシリーズを基にしたFCシリーズが新たに登場している。

OP-98シリーズ

これも厳密にはPC-9800シリーズではなく、「オフィスプロセッサ」と位置付けられた製品。 1991年に登場した、NECオフコン3100シリーズのOSが動作するシリーズで、PC-H98系のソフトウェアの実行が可能。「ABCの歌(きらきら星)」の替え歌で「オーピーキューハチ、エヌイーシー」というテレビコマーシャルも流れたが一般ルートでは販売されず(中小企業対象のオフコンの販売ルートで扱われた)、売れ行きは良くなかったといわれている。

98互換機の登場

Template:See 前述のように、PC-9800シリーズのソフトウェア資産は圧倒的であり、NEC自身が投入したものも含め、別アーキテクチャのコンピュータは苦戦を強いられた。

セイコーエプソンは98互換機である「EPSON PCシリーズ」を開発したが、初代機PC-286に対しては、NECが互換BASICおよびBIOS著作権侵害を訴え、発売延期の後にBASICを外し、修正されたBIOSを搭載して再発売するという波乱もあった。その後もNECは自社開発のDISK-BASICやMS-DOSに自社製ハードウェアであるか確認する処理を付け加えるなどした(通称:EPSONチェック)が、セイコーエプソンではそれを解除するパッチ(SIP)を供給<ref>当時は今日ほどの法整備もされておらず、ソフトウェアの改竄行為やリバースエンジニアリング行為への意識が低く、モラルの線引きがきわめて曖昧であった。そのため、このような他社ソフトウェア製品に対する環境設定の枠を明らかに超えた、改竄目的のツールをメーカーが公に提供するという選択肢が有り得た。なお、当時、SIPとともに販売店で配布されていたPCシリーズの動作確認ソフトや周辺機器の一覧冊子には、「ソフトをPCシリーズで動作するように修正することは法的にも問題ない」と記載されていた。</ref>し、サードパーティー機器の互換性検証を行い情報提供するなどして、地道にシェアを伸ばして行った。その後、AT互換機が普及するにつれて劣勢となってきた頃、NECはこのエプソンチェックを取り除くようになった。

このNECとエプソンの訴訟合戦を見て、PC-9800シリーズ互換機を計画していた他社が、AXに流れたという経緯もある。また、NEC最大のライバルである富士通は独自のFMRシリーズを貫き、それをベースとしたホビーユース向けFM TOWNSを発売する。

エプソン以外にも、トムキャットコンピュータプロサイドPC/ATとPC-9800のデュアル互換機を販売したり、シャープMZ-2861がソフトウェアエミュレーションによりPC-9800シリーズ用のソフトを動作させるなどのユニークな試みもあったが、定着には至らなかった。

但し、組み込み用を中心とする産業用コンピュータとしてワコム(現ロムウィン)社98BASEシリーズやエルミック・ウェスコム社iNHERITORシリーズなどが存在しており、これらはNECによるPC-9821シリーズを含むPC-9800シリーズ全体の打ち切り後も生産が続けられたため、既存ハード・ソフトウェア資産の継承が必要な工場向けや鉄道用信号機器向けなどを中心に一定の生産実績を残している。

サードパーティー機器

前項の如く、互換機の販売には否定的であったNECであるが、周辺機器や拡張カード、特に純正品互換周辺機器の開発、販売には協力的で、非常に多くの製品が多くのメーカから販売されていた。特に、純正メモリにおいてはNECがサードパーティ製品の購入を積極的に推薦しているのではないかとユーザに思わせるような価格設定であった。

55ボード問題

サードパーティー機器と互換性に関する話としてよくやり玉に上げられるのが55ボード問題である。

これは、PC-9801-55 SCSIホストアダプタ、及び、その相当品を内蔵する機種は、接続されているHDDが自社製のものであるか否かを判定するため、SCSIベンダIDの「NEC」という文字列を参照するチェックを行い、該当しないHDDが接続されていた場合その存在を無視、若しくはハングアップして起動しないと言う動作を指す。

この機器チェックは、黎明期にSCSIを導入したことに起因する。

PC-9801-50/PC-9801-55ボードが発売された当時、SCSIの規格は今で言う所のSCSI-1であり、CCS (Common Command Set) すら確定されていなかった。しかも、当時のNECが製造していたSCSI-HDDはSASI時代の仕様を引き継いでおり、SCSIのModeSenseコマンドに対して返す総セクタ数の値に代替セクタを含まず、しかも代替セクタ数を取得パラメータから逆算で算出可能な総ブロック数を返すReadCapacityコマンドにも対応していなかった<ref>いずれもSCSI-1の段階ではベンダユニークコマンドとして取り扱われていたため、NECのこの仕様も許容されていた</ref>。

このため、NECは自社製SCSI-HDDを使用する限り、正しい容量情報を取得するにはModeSenseコマンドをHDDに対して発行してCHSデータを取得する他無かったのであるが、他社製SCSI-HDDの大半はこのコマンドに対して代替セクタを含めたセクタ数を返してくる仕様であったため、同じ方法で容量取得を行った場合、ディスクの論理破壊が発生する危険があった。55ボードのベンダチェックは本来その危険を未然に防止する目的で実装されたものであり、それゆえこの問題に無関係のMOやCD-ROM、スキャナといったHDD以外のデバイスIDを持つ機器についてはチェックは行われていない。事実、NEC純正の3.5インチMOドライブは松下電器のものをOEMで採用しており、ベンダIDも変更されていない。

この後、CCSが制定された際にもModeSenseコマンドは厳密に規定されず、その為この段階では互換性維持の観点からチェックが外されることは無かった。

この措置は最終的に、SCSI-2が策定された際にModeSenseでHDDのCHSとして代替セクタ数を含めた値を返すようになり、またReadCapacityコマンドの実装も正式に規定された事から、NECが生産するSCSI-HDDもこれに準拠するように変更<ref>これに伴いNEC製SCSI-HDDはベンダ名を「nEC」に変更してコマンドの対応状況を判別可能としている。</ref>されてその意義を失った。そこでNECはまずベンダチェックを行って初期のNEC製HDDであるかどうかを判定してから55ボード互換動作をするか、それともセクタ長512byte、8ヘッド、32セクタとパラメータを決め打ちして(これが92互換ボード上での「8GBの壁」の主因である)ReadCapacityコマンドを用いる、標準的な容量取得方法を採るかを自動切換えする、PC-H98-B12・PC-9801-92 SCSIホストアダプタをリリースした。

これらの純正SCSI-2対応ボード登場までは、サードパーティーメーカー各社はこのチェックを回避するため、独自のディスクパラメータを採用する自社製のより高性能、高機能なSCSIホストアダプタとHDDを抱き合わせて販売するか、さもなくばNECのHDDを使用していた。これについてはサードパーティ各社がPC-9801-92登場後、自社製ホストアダプタが採用していたディスクパラメータとNECの新パラメータの両互換性を備える新ホストアダプタを、「マルチベンダ対応」と称して販売する事で対処している。なお、このマルチベンダ対応機能は自社製品のみならず同業他社のホストアダプタのパラメータにも対応するのが通例で、この機能の登場後は、Windows NT 4.0以降でPC-9801-55系のパラメータが事実上排除されたこともあってPC-9800シリーズ用SCSI HDDのディスクパラメータはPC-9801-92のものに急速に収斂して行くこととなった。

また、MOドライブ黎明期においては、MO非対応のMS-DOS5.0以前で使用する際、MOドライブをHDDとみなして接続する使用形態があった。そのため、富士通など一部のメーカー製MOドライブには、スイッチを切り替えるとHDDのデバイスタイプを返し、また55ボード問題を回避するため、例えば「NECITSU」などにベンダIDを変更してSCSI-1のNECベンダユニークコマンド互換モードで動作する機能を実装して販売されていた<ref>ちなみにこの対応についてはNECも許容しており、それゆえ55ボードのBIOSではベンダIDの先頭3文字以外をベンダチェックの判定対象から外していた。</ref>。

もっとも、MS-DOS 3.xにおいても以前から販売されていた純正5.25インチMOとの互換モード<ref>1メディア4ドライブを1メディア1ドライブとして認識させる。</ref>での利用は可能であり、普及期が前述のPC-9801-92 SCSIホストアダプタの販売時期とも重なっていたため、ベンダID変更機能が本当に必要であったのかは疑問が残る。

このチェックがかかっていた時代に主に利用されていたOSはMS-DOSとその上で動作するWindows1.x〜3.xであり、BIOSレベルでの互換性さえあれば問題なく動作したため、抱き合わせで販売されていたSCSIホストアダプタの価格も非常に安価であった事もあり殆どのユーザにとっては全く影響がなかった筈であるのに不必要に喧伝され過ぎていた嫌いがある。この当時はベンダにより異なったジオメトリが採用されていたため、ベンダ間の互換性の無さの方がユーザにとっては切実な問題であり、NECのHDDを採用したドライブユニットを購入するのが実は一番楽にデータの移行が可能であると言う皮肉な事態が発生していた。

とはいえ、起動後はBIOSを使用しないOS/2やWindows NT等を使用していた少数のユーザにとってはドライバが供給されないことは深刻な問題であり、純正品互換と騙ってBIOS互換製品を販売していたサードパーティーメーカー各社が自社製SCSIホストアダプタの当該OS用ドライバを供給しなかった事の方がより問題であった。この問題については、ユーザー数が極端に少なかったOS/2<ref>但しICMの様に対応ドライバを提供したメーカーもわずかながら存在した。</ref>はともかく、Windows NTについては確かにサードパーティ各社の対応に不満が出るのも致し方ない状況であったが、PC-9800シリーズ用NT系OSは実装上PC-9801-55/-92互換パラメータでの動作が前提となっており、仮にパラメータの異なる旧ホストアダプタのためにドライバを書くとすると、プログラミングと検証、それにサポートに新型ホストアダプタを開発するのに匹敵する巨額のコストが発生したため、サードパーティ各社にその対処を求めるのは酷というものであろう。前述のマルチベンダ対応機能にはそのアフターケアという意味合いも含まれており、事実、緑電子のようにサポートの手間が増えるのを嫌って、旧ホストアダプタユーザーに対しWindows NTに対応する新ホストアダプタ(マルチベンダ対応)への格安料金での有償アップグレードサービスを行っていた例も見られたのである。

これから数年後NECが生産するSCSI-HDDのベンダ名が「nEC」から「NEC」に戻った時、逆方向の互換性問題が発生したのだが、その時点ではIDEのHDDが主流となっていたためあまり知られていない。

モデムとの通信速度

PC-9800シリーズのCPUのクロック周波数は、機種によって5/10MHz系のもの(5MHz、10MHz、12MHz、20MHzなど)と8MHz系のもの(8MHz、16MHz)が存在し、この系統によってRS-232Cの通信速度の設定が異なっていた。 どちらでも仕様上サポートされているのは9600bpsまでであり、これを超える速度を設定しようとすると、5/10MHz系では19200bps、38400bpsという一般的な速度になるのに対して、8MHz系では20800bps、41600bpsという半端な速度になってしまっていた。

モデムが高速化して、パソコンとの間の通信速度が9600bps以上になると、5/10MHz系の機種では問題なく通信速度の設定ができるのに対して、8MHz系の機種ではモデムが対応している一般的な速度に設定できないため低速通信を強いられる、という問題が表面化した。 この問題に対処するため、サードパーティから高速対応のRS-232C拡張ボードが発売された<ref>PC-9800シリーズのRS-232CはPC-9821AnまでFIFOバッファが搭載されておらず、高速通信ではとりこぼしの恐れが大きかったため、5/10MHz系の機種であってもこのようなボードは有用であり、草の根BBSなどで重宝された。</ref>。また、国産のモデムでは、8MHz系で設定可能な半端な速度に対応するものが増えた。

ちなみに、PC-9821シリーズでは通信系統のクロック供給が5/10MHz系に統一された上で、最初期の機種を除いてOSからの設定が115200bpsまでに強化されている。また、互換機のEPSON PCではCPUのクロックとは別に通信系統には5/10MHz系のクロックが供給されている。

PC-9800シリーズの終焉

1990年PC/AT互換機上でソフトウェアのみで日本語処理を実現するIBM DOS J4.0/V、通称DOS/Vが登場し、コストパフォーマンスに優れたPC/AT互換機の本格的な日本市場上陸が始まった。1991年には、日本語版のWindows 3.0が登場し、MS-DOSからWindowsへ、ソフトウェア環境の移行が始まった。Windows上では、PC/AT互換機もPC-9800シリーズも基本的に同じソフトウェアが利用できるため、ソフトウェア資産を背景としたPC-9800シリーズの牙城を揺るがすこととなった。また、ビデオカードの交換で簡単に画面表示能力を向上できるPC/AT互換機と異なり、PC-9800シリーズは基本的に画面表示回路が作りつけであったため、Windowsに求められる高解像度画面を提供する上で不利な立場にあった。

このような流れの中、PC-9800シリーズはPC/AT互換機に対抗しWindowsへ対応するため、PC/AT互換機と同等の画面表示モードを備えたPC-9821シリーズを投入。販売数そのものは順調に増大していたが、PC/AT互換機の販売はこれを上回る勢いで拡大し、PC-9800/9821シリーズは次第にシェアを落としていった。 これは、パーソナルコンピュータとWindowsの爆発的な普及により、従来とのハードウェア・ソフトウェア互換性を必要とするユーザが相対的に少数派となったためである。

さらにこの頃、CPU・チップセット・ビデオチップ・拡張バスなど、PCを構成する各種の要素技術が急激に高度化したが、それらのほとんどがPC/AT互換アーキテクチャを前提としていたことから、PC-9800/9821シリーズに採用する上でさまざまな困難に直面することとなった。 またWindowsの移植においても、Windows 3.1および95の時代にはFMRシリーズ / FM TOWNSなど他社独自アーキテクチャ機も存在していたのに対し、Windows 98の時代にはPC-9800/9821以外はほぼPC/AT互換アーキテクチャに収斂したため、NECにはWindowsや各種ドライバの移植コストが重くのしかかることとなった(なお、PC-9800/9821に対応しているWindowsは、Windows 2000 / 98SE までで、Windows Me / XPは対応していない)。 このようにして、独自アーキテクチャの維持に次第に限界が見えてきた。

1997年10月、NEC製のPC/AT互換機といえる<ref>ただしNECは当初そのようには呼んでいなかった。その後、プリンタ等一部NEC製の周辺機器のカタログで「PC-98NXシリーズを含むPC/AT互換機」という表現が見られた。なお、DOS/Vの動作は保証していない。</ref>PC97規格準拠マシンであるPC98-NXシリーズが発表され、一般市場におけるPC-9800/9821シリーズは事実上その使命を終えた。

しかし実際は、多くの制御機器等でPC-9800シリーズが使用されており、これらの資産をPC/AT互換機等に移行するにはユーザー側に莫大なコスト増を強いるため、CバスやMS-DOSなどの資産を継承する必要に迫られた(建設用の計算ソフトなどでも、開発経費節減のためPC-9800シリーズと抱き合わせ販売されていた)。このため、その後も一部機種を継続販売していたが、2003年9月30日をもって受注終了となった。最終モデルは「PC-9821Ra43」「PC-9821Nr300」。

その後は、前述の通りサードパーティによるPC-9800互換機(ロムウィン社98BASEシリーズ<ref>98Baseシリーズ</ref>、エルミック・ウェスコム社iNHERITORシリーズ<ref>iNHERITOR(インヘリター)</ref>など)の製造・販売が長く続けられたが、後者は2006年末のインテルによる486系プロセッサの製造終了に伴い、製造終了となることがアナウンスされている。

なお、FreeBSDでは、2008年10月時点でも最新の安定版(7.0-RELEASE)においてPC-9800シリーズのサポートが継続されている。

累計出荷台数の推移

(PC-9800互換機は含まない)

  • 1982年11月 - 1万台
  • 1983年3月末 - 4.5万台
  • 1987年3月 - 100万台突破
  • 1989年2月 - 200万台突破
  • 1990年5月 - 300万台突破
  • 1991年3月 - 400万台突破
  • 1992年1月 - 500万台突破
  • 1994年6月 - 800万台突破
  • 1995年6月末 - 1000万台突破
  • 1996年12月4日 - 1500万台突破
  • 1998年9月25日 - 2000万台突破

脚注

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関連項目

参考文献

外部リンク

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