PC-8800シリーズ

出典: Wikipedio

PC-8801 から転送)

PC-8800シリーズは、日本電気 (NEC) が販売していたパーソナルコンピュータシリーズ名である。富士通FM-7シャープX1と並ぶ8ビット御三家の筆頭格だった。

目次

概要

1981年に発売された初代機 PC-8801 は、同社の8ビットパソコンであるPC-8001 の上位機種であり、同社のパソコンラインナップの最上級シリーズとしてビジネス用途もターゲットとした位置付けであったが、1982年、16ビットパソコンのPC-9800シリーズが発売されると、ホビーユース中心の入門機というポジションにシフトしていった。

PC-8800シリーズは、NECの半導体開発部門が半導体の拡販のために開発したパソコンであり、情報処理部門が開発したPC-9801シリーズとは販売戦略が異なっている。

歴史

400ライン表示可能なビジネス機、PC-8801

基本仕様
前身となる機種PC-8001の仕様をほぼ全て継承しつつ新しい機能を追加する上位互換を実現していた。

thumb|right|320px|PC-8801のメモリマップ

メモリ構成
搭載メモリ容量は合計184KBであり、Z80Aで直接扱えるメモリ容量 (64KB) を越えていたためバンク切り換えの手法が用いられた。N88-BASICの通常モードにおいて、アドレス0000H(Hは16進数を表す)から7FFFHまではN88-BASIC-ROM(32KB)が割り当てられた。一方0000Hから7FFFHまでのメインRAMにはBASICプログラムが格納されていたが、ROMに隠れてCPUから直接アクセスできないため任意の1KBを8000Hから83FFHまでの領域に割り当て直してアクセスする方法が採られた。8400HからFFFFHまではの31KBにはメインRAMが割り当てられ、変数データやANK文字表示用メモリ、N88-DISK BASICなどが格納された。このメモリ構成により、当時の8ビットパソコンとしては異例の最大32KBのBASICプログラムを実行することができた。
400ライン表示
400ラインの表示を可能とするため、これまでのモニターに比べの2倍の走査線の数を持つ高解像度(又は高細精度)タイプの専用ディスプレイがラインアップされた。これにより、漢字をモニターに表示させた場合、縦に2倍の行数の文字数が表示できるようになった。縦横比のドットピッチ間隔がほぼ同じに成ったため、フォントの表示も縦に粗いフォントから縦横とも精細なフォント表示が出来るようになった。これにより、日本語表示を必要とするビジネスマシンとしても使用できるようになった。
200ライン表示
青、赤、緑それぞれ0%と100%の二階調を組み合わせて8色(0:黒、1:青、2:赤、3:マゼンタ、4:緑、5:シアン、6:黄、7:白)のカラー表示を行っていた。この方式は後に登場した「アナログRGB」との比較で「デジタルRGB」と呼ばれることもあった。但し現在では「デジタルRGB」とはおおむねDVIの事を指す。カラーパレット切り替え機能により8種類のパレット番号(0-7)を上記の8色から選んだ任意の色に対応させることができた。また、白黒3ページのモードも存在し、例えば1ページ目を表示しながら2ページ目に描画することもできた。
文字表示
PC-8001と同等のANK文字表示用ハードウェアが残されており、高解像度画面の上に合成表示されていた。VRAMへのデータ転送量が軽減されるためANK文字については高速表示が可能であった。このような構成は後のPC-9800シリーズにも継承されている。
ROMに内蔵されたソフトウェア
内蔵のROM-BASICは、N88-BASICを新たに採用し、PC-8001互換のN-BASICとは、本体のモードスイッチか、BASICの拡張命令 (new on) で本体を一旦リセットすることで、切り替えて使用した。機械語モニタには簡易的なアセンブラ逆アセンブラの機能が含まれていたが、Z80ではなくIntel 8080の文法であった。
キーボード
本体はキーボードと本体部分のセパレート型となり、拡張ボードを本体に内蔵できるようになっていた。キーボードはパラレル入力で、同時押しもできたが、SHIFTやCTRLなどを除いてダイナミックスキャンの回り込み防止用のダイオードが入っていない。
フロッピーディスク
フロッピーディスクは、インターフェイスボードを介する事で、8インチ2D または5.25インチ1D,2Dの外付けフロッピーディスクドライブが使用できた。またDISK-BASICとしてN88-DISK BASICが用意されていた。
NECのシリーズでは、320KB (2D) までの5インチFDDは、「インテリジェントタイプ」と呼ばれるインタフェースで、本体CPUとは別のFDD制御用のCPU(Z80系列)を搭載し、本体とFDDとの間でパラレルインターフェース(i8255互換)によりデータ転送を行っていた。またこのFDD制御用のCPUは、プログラムをサブシステム側に送り込むことで、FDD操作以外の計算処理をさせることもできた。
なお、8インチFDDは、本体CPUからDMAによる直接制御となり、より高速な転送が可能である。I/F形式はPC-9801と同じであるため、PC-9801用の5.25インチ2HDドライブや、3.5インチ2HDドライブを接続し、使用することももちろん可能である。
ちなみに、後年のPC-8801mkIIMR等に搭載されている2D/2DD/2HD切り替えドライブは2Dの物と同じ「インテリジェントタイプ」であり、これ用の専用I/FもDMA転送は用いていない。
8801mkIIにおいては同様に内蔵FDDのためにサブCPUとしてZ80(μPD780/クロック4MHz)が搭載されており、メインCPUを止めずに(BGM再生などをしたまま)FDDの転送が可能。
拡張スロット
PC-8801のもう一つの特徴は拡張ボードである。インターフェースの仕様が公開されていたため、個人でも拡張ボードの自作が可能であった。しかし、実際これを多用したのは工作機械や制御機器を製造していたメーカーである。専用インターフェースの拡張ボードをメーカー個々にて作成し、ロボット、機器などの制御用に利用されていく事になる。後に、これらの分野を視野に入れた物がFC-98シリーズでRS-232Cで制御可能な物がPC-8200シリーズへと受け継がれていくことになる。
オプション
漢字ROMボードを使用することで、N88-BASIC のコマンドレベルでグラフィック画面に漢字を表示できた。後にN88-漢字BASIC(後期はN88-日本語BASIC)も用意された。
後継機種
1983年に登場した後継機、PC-8801mkII京セラが設計を担当)では、FDDを2基本体に内蔵または内蔵可能とし、縦置きも可能な新しい筐体を採用した。また、キーボードは人間工学に基づいたステップスカルプチャー方式が採用された。
漢字ROMは内蔵され、ブザーをスピーカーに置換することで、ソフトウェア的に周波数を生成しI/Oポートを叩くことで、BEEP音のほかに単音の音源(BASICからCMD SINGで利用可能)として使用する機能が追加された。
ただ、この最初の2つの機種(後にPC-8800シリーズの旧機種に分類される)は、テキスト画面の描画サイクルのDMA動作でメインCPUの処理が一時停止する、などのハード仕様のため、動作速度やグラフィックの描画などが遅かった。これは、テキスト画面の表示を無効にすると速くなった。表示タイミングを無視して書き込む「高速モード」もあったものの、ちらつきが生じて実用的ではなかった。ちなみにこのPC-8801mkIIから、CMキャラクターに武田鉄矢が起用され、PC-8801mkIIFR/MRまで起用された。

ホビー志向となったPC-8801mkIISR以降

ホビーマシンとしてのPC-8800シリーズの地位を確立したのが、1985年に登場したPC-8801mkIISR である。

グラフィック機能では、640ドット×200ライン/512色中8色のアナログRGB(コネクタはD-Sub15ピン)へと発色数が強化された。GVRAMは48KBのままで、従来のデジタルRGB端子も引き続き使用できた。

また、テキストVRAM4KBをメインメモリから独立させ、GVRAMにサイクルスチールを採用してCPUの負担を軽くしたほか、CPUの演算ユニットALUを拡張してグラフィックVRAMのRGBプレーンへのリードライトの同時アクセスや論理演算を可能にするなど、仕様を改良し、処理速度の高速化が図られていた。ALUの拡張機能を利用するとソフト的に全画面を1バイト(横8ドット)、1ライン単位でスクロールさせることも出来た。

この拡張グラフィックはV2モード、以前のものをV1モードと呼んで区別し、本体のモードスイッチでN-BASIC/V1S/V1H/V2の4つのモードを切り替えて使うようになった(V1S:互換、V1H:高速)。もっとも両モード対応のソフトを書くことも可能で、V2でそのまま動作するV1用ソフトもあった。

サウンド機能では、それまでのBEEP音のみから、ヤマハの音源チップYM2203の搭載によりFM音源 3音 + SSG 3音のサウンド機能を新たに備えた。FM音源の1チャンネルを使って、音声合成(再生)をすることも一応できた(N88-BASICでは未対応)。このFM音源は旧機種用にも拡張ボード (PC-8801-11) で用意された(但し、SR以降の機種と旧機種PC-8801・PC-8801mkIIでの完全な互換性はない)。

これらの機能を活用して、PC-8801最大ヒット作「ハイドライド」からSR発売当初に登場した「テグザー」へ、その後に登場した「ザナドゥ」「イース」「ソーサリアン」「シルフィード」「ジーザス」「スナッチャー」など、主にV2モード向けにロールプレイングゲームアドベンチャーゲームを中心とした傑作ゲームが数多く登場した。また同人ゲームソフトやCGサウンド集も数多く作られ、後年のその一部には市販ソフトを凌駕したものもあった。

一方でV1モードの方は、「ハイドライド」「テグザー」「ザナドゥ」のようにV2モード用と併売されたソフトや、V2用のものにパッチを当てると動作するソフトがあったものの、市場からは早々と衰退した。

1985年PC-8801mkIITRではSRと同等の本体の横にモデムおよび電話機を装備した。ただし、このモデムの通信速度は300bpsと低く、当時この機械をレビューした雑誌ログインにおいてさえも「将来を考えると、通信速度が遅すぎるのではないか?」と指摘されるなど、実験的な要素が目立つ機種であった。

同年暮れには SR をマイナーチェンジしたPC-8801mkIIFR/MRが発売された。しかし、マイナーチェンジとはいえ、PC-8801mkIIMRは、当時上位機種であったPC-9800シリーズでも未搭載の機種が存在した 2HD 読み書きに対応した FDD、JIS第2水準の文字まで含んだ漢字ROM、128KBの拡張メモリ(バンク切り換え式)を搭載するなど、当時としては非常に先進的な部分もあった。ただし、2HD/2D兼用ドライブで書き込んだ 2D ディスクは、2D専用のドライブで読めなくなることがあったり(2Dと2HDでは、ドライブ・ヘッドの幅に物理的な相違点があった)、コピープロテクト対策が行われたり、極限ともいえる容量までディスクを使用することが多かったゲームソフトの中には動作しないものがあるなど、互換性に若干問題があった。また、このFR/MRあたりの機種からコストダウンの為の機能削除が目立つようになった。

なお、FR/MR 以降は、2HD対応で128KBの拡張メモリ(バンク切り換え式)搭載の「Mシリーズ」と2Dのみ対応の「Fシリーズ」が併売されるようになった。また、N-BASICモードが製品仕様から外れたことによりモードスイッチから削除され、切り替えはV1Sモード時にBASICで「NEW ON 1」する仕様となった(本体に細工してN-BASICの直接起動を可能にする方法もあった)。このため、N-BASICモードから起動する一部のPC-8801版ゲームソフトで起動しないものがある。

1986年PC-8801FH/MH が登場。CPUはZ80H相当のμPD70008で、駆動周波数が 4MHz / 8MHz(メインメモリのウエイトのため実質6MHz程度)の切り替え可能となり、処理速度の向上が図られた。従来機の設定用のディップスイッチは消えてメモリスイッチとなり、付属キーボードは設定メニューの表示用にPCキーや日本語入力用の変換キーがつくなど大幅に更新された。FHは黒色のモデルも発売された。

また、65536色(B:5ビット、R:5ビット、G:6ビット) 同時表示が可能な「ビデオアートボード (PC-8801-17)」も、オプションで用意された。N-BASICモードはV1Sモードの4MHz設定でキーボードから「N80」を押してリセットすることで起動できるようになった。これはGVRAMの内容が残るため、市販ソフトの画面を取り込むツールに利用された。なお、従来通りの「NEW ON 1」による起動もできる。

この頃にはPC-8800シリーズは次第に8ビットパソコン市場で一人勝ちの様相を呈するようになり、ゲームソフトが優先的に発売されるほか、PC-8801mkIISR以降用だけで発売されたタイトルも少なからず存在するようになった。FH/MHからFE/MA2/VA2/VA3までは斉藤由貴が広告に起用された。

2007年1月に発売されたニンテンドーDS向けゲームソフト「世界樹の迷宮」ではこのPC-8801FHからサンプリングした音色をメインに据えた楽曲となっている(ドラムパートなどにはPCM音が使われている)。担当したのはイースソーサリアンアクトレイザー等で有名な古代祐三

1987年PC-88VA(後述)の発表後に発売された PC-8801FA/MAでは、音源チップをYM2608に変更し、ステレオFM音源6音 + リズム6音 + SSG3音 + ADPCM音源1音(波形メモリ256KB)と、サウンド機能が大幅に強化された。同機能をVA、FH/MHとそれ以外の旧機種向けに対応するために「サウンドボード2」と呼ばれる拡張ボードが用意された(後にFE/FE2用も用意)。また、メインメモリのウエイトはOFFに設定出来るようになった。

しかし、肝心のPC-88VAの失敗もあって、PC-8800シリーズは一転、斜陽の時代に入る。ただしそれはPC-8800シリーズに限ったことではなく、MSXとゲーム専用機を除く全ての8ビットパソコンが、その役割を終え始めたのである。ホビーユースにおいても、PC-9800シリーズへの本格的なシフトが始まり、NECはPC-8800シリーズを整理し、ハイエンド志向だったPC-9800シリーズのラインを見直して需要に応えなければならなくなった。

1988年PC-8801FEで家庭用テレビに接続可能なモデルが用意された。このFEシリーズはコストダウンによって、BASICは添付されず、汎用の拡張スロットもなかった(サウンドボード2は専用スロットに装着する専用品で対応)。一方で、これまでの流れを汲むPC-8801MA2も用意された。これらの機種では、モニタの種類を選択するスイッチは起動時にキーボードを押して選択するようになり、V1/V2のモード切替スイッチはメモリスイッチに取り込まれた。このメニューにより画面がクリアされるため、MA2/FEでは、V1SモードからのN80リセットは可能だが、これを利用したV2モード時の画面取り込みは出来ない。このため同機では「N80リセットが出来ない」とされることもあった。

1989年PC-98DO(後述)を挟んで登場した PC-8801MC では、システムの起動も可能なCD-ROMドライブが装備された。このドライブは、PCエンジンCD-ROM²としても使用可能なものであった。旧機種向けにCD-ROMインターフェースも用意された。同時期にPC-8801FE2も発売された。MC/FE2ではさらに8MHzHモード(メモリアクセスノーウェイト動作)が追加された。また、N80リセットがV2モードから実行でき、画面取り込みが復活した。広告には松下進のキャラクターが起用された。

しかし、純粋な88シリーズはこのMCで打ち止めとなり、CD-ROM対応ソフトはあまり出なかった。そして、88アーキテクチャを持つ機種は1990年に登場したPC-98DO+(後述)が最後となる。

Z80互換モードを持つハイブリッドV30マシン、PC-88VA

PC-8800シリーズは、他社に先駆けてCPUクロックの高速化などを行っていたものの、8ビットCPUを使用する以上、基本性能の向上はほぼ限界に達しつつあった。

1987年3月に登場した PC-88VA は、16ビットCPUを採用することで、大幅な性能向上を図った上位機種である。外観ではフロッピーディスクドライブは横並びからPC-9800同様の縦並びとなり、筐体も大きくなった。

CPUには、NEC独自の16ビットCPU、μPD9002(8MHz、V50のカスタム品)を採用。このCPUはV30としての動作に加え、8ビットCPUZ80の高速エミュレーションが可能で、従来の8ビットPC-8800シリーズのV1/V2モードのソフトウェアの大部分が互換モードで動作が可能だった(テキスト画面の仕様の差異などの理由で、正常動作しないソフトもそれなりにあった)。メモリは512KBを備えた。

VDPの搭載により640ドット×400ライン/256色 や 640ドット×200ライン/65536色、スクロール機能・複数画面の合成 といった強力なグラフィック機能、4096色中16色のサイズ最大256×256ドットで最大同時表示32枚のスプライト機能などを備えた。

OSとしては、MS-DOSVer.2と、システムコールが概ね互換である独自のOS、PC-Engineを搭載していた。そのため、同社の16ビットパソコンであるPC-9800シリーズとのソフトウェア互換性は、MS-DOSの基本的なアプリケーションに限られ、大多数のユーザーにとっては、互換性は無いのも同然であった。このOSではN88-日本語BASICV3が動作し、N88-DISK BASICのディスクもフォーマットを自動判別して読み込めた。

拡張スロットは8ビットCPU を搭載するPC-8800シリーズとは互換性がなく独自のものだが、 実際にはPC-9800シリーズとほぼ互換性があり、非公式ではあるがPC-9800シリーズ用のRAMボードやSASI、SCSIインタフェースを増設することができ、フリーソフトなどでデバイスドライバやMS-DOSエミュレータ、PC-9801用ソフトへのパッチ等が公開されていた。

PC-88VAの後継機PC-88VA2/VA3ではステレオFM音源(PC-8801FA/MAと同等)の採用など、サウンド機能も強化された。V1/V2モード機との互換性も少し向上した。VA3は容量9.3Mバイトの3.5インチ2TDドライブを搭載し、2DD/2HDのディスクの読み込みも可能だった(VA/VA2にはオプションで用意)。付属ソフトには「アニメフレーマ」が追加された。初代VAにはソフトウェアバージョンアップボードが用意され、PC-Engineのバージョンアップ(1.1)や辞書ROMなど、数値演算コプロセッサが装着できないこと以外はサウンドボード2(VA専用)と併せてVA2とほぼ同等の機能にすることが可能になった。

PC-88VAは、ライバルとなるX68000と比較され、購入者を大いに迷わせた。一方で、X68000より安くて既存のPC-8801より高いという価格設定、CPU速度やスプライト表示性能などはX68000より下、V1/V2モードでの互換性が不完全、既にある16ビット機のPC-9800シリーズとの非互換性、同じ1987年にPCエンジンを発売、などマイナス面も多かった。結局、専用ソフトが揃わないまま、シリーズは二代目のVA2/VA3で打ち止めとなってしまった。結局、後にX68000も買った、という人も多い。

88VAの失敗とPC-98DOから、PC-9800への統合

1980年代の終盤になると、日本国内ではPC-9800シリーズの普及など、ビジネスの分野だけでなくホビーユースでも16ビット機への移行が加速していた。

PC-88VA は、PC-9800シリーズとの互換性を明確に打ち出さなかったこともあって、その性能を発揮する16ビット専用のソフトウェアがあまり出揃わず、また、ホビーユースにおいては、X68000 などの強力なライバルが存在した。

しかし、一方で、NECはPC-9800シリーズはあくまでビジネスユースと位置づけた為、1991年になってPC-98GSからPC-9821シリーズへと移行するまでの間、サウンド機能などでは、PC-8800シリーズより劣っていた。

その為、8ビットパソコンでも能力が充分なロールプレイングゲームアクションゲームなどは、PC-8801で発売されるものも多かった。PC-9801と並行発売されるケースもあった。

一方、グラフィックを多用することからデータ容量が膨大となるアドベンチャーゲーム、分けてもアダルトゲームはグラフィックの画質向上の為、PC-9801への移行が進んだ。

88VAの失敗の後、NECは1989年にPC-8800シリーズとPC-9800シリーズの両方のソフトウェアが利用できる PC-98DO を発売し、88シリーズと98シリーズを一本化した。98DOはサウンドボード2やアタリ規格ジョイスティックが使用できないなどの問題があったが、PC-8801FE2/MCの発売を挟んで、次のPC-98DO+では解決した。市場的には成功しなかったものの、この試みは一応の完成をみて、88シリーズは完結した。

しかしその後は大した混乱もなく、ほとんどのユーザーはそのままPC-9800シリーズに、一部はX68000などに移行していった。

機種一覧

PC-8800シリーズは必ず上位互換を持ち、特に、PC-8801mkII SR以降の機種は、基本仕様は全く変わっておらず、また、機能追加が行われる毎に旧機種にもそれと同等の機能を実現するための拡張ボードが提供される(サウンドボード、サウンドボード2、CD-ROMインターフェースなど)、と言う徹底した互換性対策が行われている。

他には、後の2HD機でデータレコーダ端子を廃止(代わりに拡張カードで用意)した一方で、PC-8000シリーズ互換のN-BASICモードをVAシリーズを除いた全ての機種で持っている。

しかし、SRモードでそれまでのモードと拡張モードをV1とV2に切り分けたことや、CPUクロックの向上などにより、他機種ユーザーからは旧機種を切り捨ててきたようにも見られる。とはいえ、この「CPUのクロックアップに積極的」な姿勢は当時の競合機であったFM-7X1MSX等にあまり見られないもので、ライバル機種がCPUのスピードを据え置きにしたままグラフィックやサウンド機能を強化することで全体の処理速度を落としたのとは対照的である。

発売
年月
機種名モデル定価
(円)
特徴
1981 11 PC-8801 228,000 初代機
1983 11 PC-8801mkII model10 168,000 FDD・第一水準漢字ROM内蔵、単音の音源 (CMD SING) 追加。これ以降、model10はFDドライブなし、model20は2Dドライブ1基、model30は2Dドライブ2基搭載
model20 225,000
model30 275,000
1985 1 PC-8801mkII SR model10 168,000 グラフィック機能を拡張したV2モード、FM音源(YAMAHA YM2203)を搭載。この機種以降、背面のI/Oポートアタリ規格(D-sub 9pin)になる
model20 213,000
model30 258,000
9 PC-8801mkII TR 288,000 SR model30に全2重300bpsモデム(電話機)を追加。この機種以降、縦置き用の脚が削除される
11 PC-8801mkII FR model10 99,800 SRの廉価版、モードスイッチからNモード廃止
model20 148,000
model30 178,000
PC-8801mkII MR 238,000 モードスイッチからNモード廃止、2HDドライブ2基搭載。この機種以降、第二水準漢字ROM内蔵。また、2HD搭載のMシリーズには128KBの増設RAMが搭載され、データレコーダ端子が削除(増設可)
1986 11 PC-8801 FH model10 98,000 FRに4/8MHzモード切り替え追加、ディップスイッチ廃止、キーボード変更
model20 138,000
model30 168,000
PC-8801 MH 208,000 MRに4/8MHzモード切り替え追加、ディップスイッチ廃止、キーボード変更、2HDドライブ搭載
1987 3 PC-88 VA 298,000 16ビット、PC-Engine(OS)搭載、N-BASIC削除、2HDドライブ搭載
10 PC-8801 FA 168,000 FHにサウンドボード2(YAMAHA YM2608)相当機能追加、メモリウエイトのOFFが可能、Fシリーズでもデータレコーダ端子が削除(増設可)かつドライブ2基搭載モデルのみ発売
PC-8801 MA 198,000 MHにサウンドボード2相当機能・辞書ROM追加、メモリウエイトのOFFが可能、2HDドライブ搭載
1988 3 PC-88 VA2 298,000 VAの88互換性の改善、サウンドボード2相当機能追加、2HDドライブ搭載
PC-88 VA3 398,000 VAの88互換性の改善、サウンドボード2相当機能追加、2HDドライブの他に2TDドライブを搭載
10 PC-8801 FE 129,000 FHの廉価版、TVへの出力が可能、モードスイッチ・拡張スロット廃止、サウンドボード2はオプション
PC-8801 MA2 168,000 MAの後継機、モードスイッチ廃止、2HDドライブ搭載
1989 10 PC-8801 FE2 119,000 FEの後継機、拡張スロット廃止、サウンドボード2はオプション。8MHzH(高速)モードを追加
11 PC-8801 MC model1 169,000 88シリーズ唯一のCD-ROMドライブ搭載(model1はオプション)の縦置き筐体、MA並の性能に加え8MHzHモードを追加、2HDドライブ搭載
model2 199,000
(その他・88機能を持つ他シリーズ)
1989 6 PC-98DO 298,000 モードスイッチにより98と88の切り替えが可能。88モードはMH並の性能だが拡張スロット使用不可。そのため、サウンドボード2相当の機能は実装不可
1990 10 PC-98DO+ 278,000 モードスイッチにより98と88の切り替えが可能。88モードはMA並の性能だが拡張スロット使用不可。アタリ規格のマウスジョイスティックはオプションのマウス変換コネクタ (PC-98DO/P-11) を装着することで使用可能

エピソード

PC-8801は日本のロケットに深く関係している。主に、衛星追跡所などで近年まで使用され、打ち上げのロケット追尾から人工衛星の分離などの監視には欠く事の出来ない存在でもあった。故障率が判りにくい最新のハイテクより、安定期に入ったローテクの方が良しとされたようである。

参考図書

  • アスキー書籍編集部(編集)『蘇るPC-8801伝説 永久保存版』、アスキー(2006/3/14発行)

外部リンク

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