MZ (コンピュータ)

出典: Wikipedio


MZ(えむぜっと)は1970年代から1980年代にかけてシャープが販売していたパソコンのシリーズ名。当時はシャープは日本におけるパソコン御三家の1つに数えられていた。

目次

概要

MZシリーズの始まりは、1978年5月に発売されたマイコン博士MZ-40Kという4ビットマイコンのトレーニングキットである。MZ-40Kの名前の由来はたまたま風呂ブザー用に用意してあった登録コードを流用したものであった<ref>『パソコン革命の旗手たち』関口和一 日本経済新聞社 2000年</ref> 。MZの由来は通常信じられているMicrocomputer Z80の頭文字を取ったというものではないが、すべての8ビット機のCPUにはZ80シリーズが使用されている。

シンボルマークとしてアルゴ号が描かれていた。当初は、MZ-80Kを半完成キットとして発売を始めた。80K/K2/K2Eのキーボードは角型のスイッチを碁盤の目状に配列したものであったが、MZ-80C(完成品として発売)は通常のキーボードとなった。MZ-80Tというワンボードトレーニングマイコンも用意されていた。

最初の機種から、MZ-700、MZ-2200より前までは、本体・ディスプレイ・キーボード・データレコーダを一体としたオールインワンの筐体を採用していた。また、それに加え、1980年代頃から主流となったPC/AT等のPCと同様に、BIOS以外の、BASICなどの言語や、OSROMとして持たせない設計(クリーンコンピュータ)に特徴があった。そのため、ハドソンソフトキャリーラボをはじめとしてシャープ以外のさまざまなソフトハウスから言語、オペレーティングシステム等が発売された。当時、フロッピーディスクドライブの価格は高かったが、一体化されているデータレコーダの信頼性は高いものであった上に他社より高速であったので、それだけでもそれなりに有用だった。そのためか、逆に他社の競合製品に比較し、フロッピーディスクの標準搭載への対応が遅かった。MZ-80B系の特徴にはデータレコーダの性能が特によかった(電磁制御、2000ボー)ことが挙げられるが、ピンチローラーの原材料のためか、年月の経過によってテープ送りのピンチローラーが溶けて、カセットテープからのデータの読み込みができなくなる現象がある。

附属マニュアルには、関西弁を話すキャラクタが使われ、個性的な解説がなされている。

製品系列

系列としてはMZ-80K系(40×25文字のテキスト画面を持つ。グラフィックキャラクタを使用した80×50ドットのセミグラフィックが可能)やMZ-80B系(320×200のモノクログラフィックを最大2画面分、テキストと別プレーンで持つ)、MZ-3500系(同社内の他系列PC、PC-3100S,PC-3200の後継機の型番をMZとした)、MZ-5500系(MZ-3500系を16bit化)などがある。

また、1982年からは、シャープテレビ事業部から、まったく別系統の製品として、型番がCZの新シリーズが通称「パソコンテレビX1」としてリリースされた。テレビ画面とのスーパーインポーズ機能が特徴的なこの系列は好評で、MZシリーズからも対抗するようにグラフィックやサウンド機能を強化したMZ-1500/2500を発売したものの、こちらは成功したとはいえなかった。このXシリーズは後に1986年に発表されたX68000シリーズに引き継がれた。

なお、MZの名称は同社のMebiusZaurusの頭文字に、分割して引き継がれていると宮永好道がコラムで語っている。

MZ-80Kグループ

thumb|right|MZ-80K MZ-40を祖とするマイコンキットから派生したグループで、MZシリーズの中では低価格普及機である(低価格とはいえ、MZ-80K/CにI/Oボックス、プリンター、FDD、PCGなどを揃えると100万円を越えた)。データレコーダは 1200bps。 データはPWMで同じ内容を2回記録する(1回目の読み込み時にエラーを検知すると2回目の読み込みを行う)。

  • MZ-80K系列 (CPU は Z-80(LH0080) 2MHz)
    • MZ-80K - 1978年発売。オールインワン筐体・キーボード未組立のセミキット。標準価格198,000円。
    • MZ-80C - 1979年発売。48KB RAM搭載・フルキーボード。モニターのグリーン化。部品も80Kに比べて高価なものがつけられていた。標準価格268,000円。
    • MZ-80K2 - 1980年発売。80Kの完成品販売版。32KB RAM搭載。標準価格198,000円。
    • MZ-80K2E - 1981年発売。32KB RAM搭載。80K2の廉価版。CPUにICソケットを使用せず、直接基板に半田付けされているなど、コストダウンが随所に見られる。標準価格148,000円。
    • MZ-1200 - 1982年発売。海外向モデルMZ-80Aの国内版・完全一体型筐体。キーボードの改良他。標準価格148,000円。
  • 割当メモリアドレス(出荷時)
    • 0000~0FFF MONITOR ROM
    • 1000~CFFF RAM
    • D000~D3FF VRAM
    • E000~ メモリマップドI/O
    • F000~ 拡張メモリ主にFDC制御のROMに
  • MZ-700系列(CPU は Z-80A 3.58MHz。64KB RAM 搭載。MZ-80K系列のカラー版)
    • MZ-700 - 1982年発売。モニター一体型筐体を廃止、データレコーダプロッタを内蔵可能。MZ-80Kとバイナリレベルでほぼ互換性がある。モニター出力は単色の場合青地に白が基本。
    • MZ-800 - 640*200ドットグラフィック搭載(※日本国内では未発売、de:Sharp MZ-800 および pt:Sharp MZ-800 を参照)
    • MZ-1500 - 1984年発売。320*200ドットグラフィック兼PCGPSG音源搭載。データレコーダの代わりにQD(QuickDisk)を内蔵。標準価格89,800円。

MZ-80Bグループ

MZ-80Kグループより派生。Bはビジネスの意味でMZ-80Kシリーズより高性能・高価格であった。

  • MZ-80B系列 データレコーダは 2000bps。
    • MZ-80B - 1981年発売。CPUはZ80A。64KBオールRAM構成。オールインワン筐体・320*200ドットグラフィック可(ソフトウェアバンクで切り替えるG-RAM1,2は別売り)データレコーダ部を電磁的に完全ソフトウェアコントロール可能(高機能データレコーダ)。オプションで外付けカラーモニター対応可。付属BASICはSB-5520。標準価格278,000円。
    • MZ-80B2 - 80BにG-RAMを搭載したもの。MZ-2000の発表後に発売。(2000としばらく併売)
  • MZ-2000系列
    • MZ-2000 - 1982年発売。640*200/320*200(メインメモリ64Kのうち16Kをソフトウェアバンクで切り替える。G-RAM1,2,3は別売り)ドットグリーン(モノクロ)ディスプレイ、高機能データレコーダ内蔵。オプションでカラーモニター対応可。付属BASICはMZ-1Z001で、MZ-80BとはBASICレベルでの互換性にとどまっていた。標準価格218,000円。
    • MZ-2200 - 1983年発売。MZ-2000の一体型筐体(本体 + ディスプレイ + データレコーダ)を廃止し、ディスプレイ(モニター)や外部記憶装置(データレコーダやフロッピーディスクドライブなど)が選択可能となった。付属BASICはMZ-1Z001に加えてカラー対応のMZ-1Z002が追加された。標準価格128,000円。
  • MZ-2500系列 - (SuperMZ) 1985年発売。本体・キーボード分離型。Z80B(6MHz)搭載。標準でRAM 128KB。256KBまで拡張可。高機能データレコーダと3.5インチ2DDフロッピーディスクドライブを両搭載し、FM音源+SSG音源 (YM2203) 、スムーススクロール機能つき独立2画面合成、16色または256色表示、PCG、漢字VRAMなど。オプションで4096色中16色モードのアナログパレットや文節変換、音声合成も可能に。MZ-80B互換/MZ-2000互換/MZ-2500モードをスイッチで切り替える。MB-S1FM77AVと並び「最強の8bit機」、雑誌等では不死鳥(フェニックス)とも呼ばれた。メモリーマップは8分割され、マッピングレジスタによって8KB単位で自由に組み替え可能になっていた。専用モデム・モデムフォンなども用意され、簡易通信ソフトであるテレフォンソフトも同梱されており、通信パソコンの側面も持っていた。付属していたBASICは2種類あり、マイクロソフトBASICに準拠したBASIC M25 (MZ-6Z002)と、S-BASIC系に準拠したBASIC S25 (MZ-6Z003)であった。
    • MZ-2511(FDD1ドライブタイプ)
    • MZ-2520 - MZ-80B,MZ-2000モード無し、内蔵データレコーダ無しの廉価版。
    • MZ-2521(FDD2ドライブタイプ)
    • MZ-2531(MZ-2500V2) 1986年発売。先に発売されていたMZ-2521へ増設RAM/増設VRAM等を追加し、専用ディスプレイテレビのコントロールをサポートしたモデル。また付属のBASICやテレフォンソフトのバージョンアップもされている。
  • MZ-2800系列 - 1987年発売。本体・キーボード分離型。MZ-2500互換モードをもつ8bit (Z80) & 16bit (80286) CPU両搭載のハイブリッドマシン。16bitモードはMS-DOSのほか、付属のソフトウエアでPC-9801エミュレーションが可能。高機能データレコーダは対応しない。i80286専用に設計された唯一のコンピュータ。

MZ-3500/5500/6500グループ

ビジネス向けの一体型PC、PC-3000シリーズの、本体・キーボード分離型にした新型機の型番をMZに移行したもの。5.25インチフロッピーディスクドライブを搭載。

  • MZ-3500系列 - 1982年発売。Z-80A×2基搭載、日本語表示。ビジネス向けPC-3000シリーズの上位機。
    • MZ-3531 - 5.25インチフロッピーディスクドライブを1基搭載。標準価格320,000円。
    • MZ-3541 - 5.25インチフロッピーディスクドライブを2基搭載。標準価格410,000円。
  • MZ-5500系列 - 1983年発売。16ビットの8086CPUを搭載、CP/M採用。BOOT-ROM付MS-DOSが発売された。
    • MZ-5501 - RAM128KB搭載。フロッピーディスクドライブはオプション。標準価格218,000円。
    • MZ-5511 - RAM128KB搭載。5.25インチフロッピーディスクドライブを1基搭載。標準価格288,000円。
    • MZ-5521 - RAM256KB搭載。5.25インチフロッピーディスクドライブを2基搭載。標準価格388,000円。
  • MZ-6500系列 - 1984年発売。クロック周波数を8MHzに高速化。CAD向けとして販売。
    • MZ-6541 - 5.25フロッピーディスクドライブを2基搭載。標準価格650,000円。
    • MZ-6545 - 5.25フロッピーディスクドライブを1基&10MBハードディスク搭載。標準価格998,000円。

回路図・ソースコードの公開

  • MZ-80B/2000/2200においては、全回路図、モニタプログラム、IPLの全アセンブラソースがマニュアルで公開された。また、CPUZ80の内部動作説明を含めたプログラミング解説にもマニュアルのページが割かれており、技術者向けの仕様がそろっていたともいえる。ただ、当時としてはフリーソフトウェアの文化がまだ育っておらず、価格も高く、これらシャープ純正の言語や開発ツールを使いこなしていた人は多くはなかった。シャープ社内開発担当者ではこれらの開発ツールが縦横無尽に有効活用されていたことが、前記モニタプログラムのソースコードから読み取れる。
  • MZ-1500の回路図、およびROMモニタのソースコードは、工学社『MZ-1500 テクニカル・マニュアル』に掲載された。
  • MZ-2500の回路図は、工学社『MZ-2500 テクニカル・マニュアル』〈Super Series 1〉に掲載された。BIOSやBASICのソースリストも工学社から発売された。
  • シャープ純正オプションの一部では付属マニュアルに回路図が記載されている。

その他

  • MZ-8000系列 - (AX286/AX386) 型番はMZだが、PC/AT互換機(AX)仕様に移行。MZシリーズに含めるかは賛否両論ある。
  • プリンターインターフェースはMZ-80K系、MZ-80B系列それぞれ異なる独自仕様だった。MZ-1500では本体背面にMZ専用仕様とセントロニクス準拠仕様とを切り替えるディップスイッチがあった。それを除くMZ-2000以降は一般的なセントロニクス準拠仕様に変わっている。なお、最初に発売されたMZ-80P2は放電破壊プリンターだった。その後のMZ-80P3以降はドットマトリクスプリンターである(MZ-700専用のMZ-1P01、MZ-1500用のMZ-1P09は例外的にカラーペンプロッター)。
  • MZ-80Kシリーズの標準BASICであるSP-5000系の文法は、コモドール社のPET 2001に搭載されていたものと酷似している。ちなみに、PET 2001はCPUにモステクノロジー6502を採用しているため、マシン語レベルでの互換性はない。この文法は後の80BシリーズのSB-5500系にも受け継がれた。
  • またハードウエアもCPUが異なるが周辺のチップの配置や回路構成もPETと似ている。

搭載言語

クリーンコンピュータを標榜した本シリーズは80Kシリーズではモニタのみが搭載され、80Bシリーズ以降はIPL以外全てソフトウェアを読み込んで動作するため、他社のPCの様に当初から搭載されている言語だけでなくそのほかの高級言語も搭載できるようになっていた。

自社供給

MZ-80K系(SP系)

  • BASIC SP-5001
    • MZ-80K 初代のBASIC
  • BASIC SP-5002
  • BASIC SP-5010
    • SP-500x 系の処理速度を高速化した初代のBASIC
  • BASIC SP-5020
  • BASIC SP-5030
    • MZ-80K/K2/C/K2E 系での最終版BASIC
  • DISK BASIC SP-6010 ディスク版BASICで倍精度演算を搭載していた
  • インタプリタ Pascal SP-4010
    • コンパイラを通さないインクリメントコンパイルにより即時記述・即時実行が可能だった。

MZ-80B/2000/2200系

  • BASIC SB-5520/MZ-1Z001
  • Color BASIC MZ-2Z001
  • 倍精度BASIC SB-5521/MZ-1Z003
  • RS-232C/GP-IB BASIC MZ-1Z010
  • DISK BASIC SB-6520/MZ-2Z001
  • Color DISK BASIC MZ-2Z002
  • 倍精度DISK BASIC SB-6521/MZ-2Z003
  • 漢字Color DISK BASIC MZ-2Z010
  • Quick Disk BASIC MZ-5Z007
  • Pascal Interpreter SB-4510/ MZ-1Z004
  • Floppy Disk Operating System (FDOS) SB-7010/ MZ-2Z004
  • System Program SB-? / MZ-1Z005
  • Machine Language SB-? / MZ-1Z006
  • P-CP/M MZ-6Z001 (MZ-2500用)
  • BASIC M25 MZ-6Z002 (MZ-2500用)
  • BASIC S25 MZ-6Z003 (MZ-2500用)

BASICについては、カセットテープのほか、フロッピーディスク対応版も販売された。 さらに、カラーグラフィック制御可能なBASIC、アセンブリ言語、マシンランゲージモニタ(現在でいうバイナリエディタ)も別売されていた。このうち、アセンブラ言語については、リロケータブルバイナリ出力でユーザー定義のマクロ命令記述も可能なマクロアセンブラリンカシンボリックデバッガP-ROMフォーマッタ含む)であり、テープメディアゆえ使い勝手に難ありといえども極めて強力な開発ツールであった。Floppy Disk Operating System(FDOS)には前記アセンブラのほかBASICコンパイラも同梱されており、Z80のセルフ開発環境としてはコストパフォーマンスを考慮すると当時のCP/M-80をも凌駕するものであった。

シャープ純正の言語は前記のとおりバリエーションが直交している場合が多かったため、プログラマーはさまざまな言語を選択できたかわりに、アプリケーション使用者はその言語を購入する必要がある場合もあった。

サードパーティによる供給

ハドソン

  • Hu-BASIC(マイクロソフトBASICに似た高機能BASICインタープリター)
  • Hu-BASICコンパイラ(マイクロソフトBASICに似た高機能BASICコンパイラー)
    • 数多くのバグを含んでいた。
    • MZ-80K系列のみの販売
  • Hu-G-BASIC(Hu-BASICのグラフィック機能実装版)
  • GAL (GAME言語コンパイラ)
    • ハドソン風に拡張したGAME言語だが、バグの存在やアスキー社からのクレームにより回収処理された。
    • MZ-80K系列のみの販売
  • Tiny Pascal PALL (Pascal言語コンパイラ)
    • ハドソン風に拡張したTiny Pascal言語。MZ-80K用ゲーム開発言語として重宝された。
    • MZ-80K系列のみの販売
  • Tiny FORTRAN FORM (FORTRAN言語コンパイラ)
    • ハドソン風に拡張したFORTRAN言語。

キャリーラボ

  • BASE(BASIC記述風アセンブラ)
    • WICSインタプリタはBASEで記述されていた。
  • WICS(整数型高速BASICコンパイラ/インタプリタ)
    • 工学社刊の雑誌I/O、およびその別冊で、BASEで記述されたインタプリタのソースとWICS自身で記述されたコンパイラのソースが公開された。

アスキー(ACP)

  • GAME-MZ(GAME言語コンパイラ)
  • TOS-80B(テープオペレーティングシステム)

デービーソフト (dB-SOFT)

  • dB-BASIC (MZ-2000/2200 BASICインタプリタ)
    • 当時Hu-BASICのある意味でライバル。
  • dB-IBASIC (MZ-2000/2200 BASICインタプリタ・コンパイラ)
    • 機械語へのコンパイルが可能。ソフトウェア的にPCGを実現するなど、画期的な言語だった。整数型BASIC。

COMPAC(工学社)

  • いずれもSB-5520の追加機能版。単体では動作しないので、SB-5520をロードした後、ソフトを読み込み、一旦上書きされたBASIC自身を別のメディアに保存する必要がある。
  • BASIC機能拡張(SB-5520にTRACE機能などをつけたもの)
  • COMMAND UP(機械語モニタの高機能化)

S-OS

  • 雑誌Oh!Xの連載で発表されたソフトウェア群。プログラミング言語や開発ツール、ゲーム、ユーティリティなど。詳細はTHE SENTINELの項を参照されたい。

脚注

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関連項目

外部リンク

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