青春18きっぷ

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青春18きっぷ(せいしゅんじゅうはちきっぷ)とは、旅客鉄道会社線(JR線)の普通列車快速列車が一日乗り放題となる、期間限定の特別企画乗車券(トクトクきっぷ)である。本項では前身の青春18のびのびきっぷについても述べる。thumb|270px|「青春18きっぷ」二回使用済券。のこり、三回(人)使用可能。

目次

概要

日本国有鉄道旅客局が増収策の一環として企画し、1982年3月1日に「青春18のびのびきっぷ」として発売を開始したトクトクきっぷ(特別企画乗車券)。1983年春季発売分から現名称に改称した。主に学生などの春季・夏季・冬季休暇期間を利用期間として発売され、新幹線を含む特急急行列車およびJRバスを除く旅客鉄道会社全線の列車に乗車することができる。

発行額は第1回発売時のみ8,000円で、のち10,000円に変更。1986年冬季に11,000円に値上げされた。のち消費税の導入と税率引き上げにともない、1997年夏季以降は11,500円で発売されている。主として学生向けの商品として企画されたが、利用者の年齢制限はなく、小児料金の設定もない。

現在は旅客鉄道各社とも1枚の券面に5カ所ある乗車船日記入欄に改札印を押印して使用開始を示す方式を採用しており、自動改札機は利用できない。このため自動改札機設置駅であっても、必ず有人改札を通るか管理駅と連絡をとって確認してもらう必要がある。

JRホテルグループの予約センターに宿泊を申し込み、当日現地で青春18きっぷを提示すると宿泊料金の割引等が受けられる<ref name="jre18">青春18きっぷ えきねっとJR東日本)</ref>などの特典が一部に設けられている(関連商品参照)。

「青春18きっぷ」の名称の由来についてはさまざまな説が存在するが、いずれも真偽は定かではない<ref>「「いっぱい乗って欲しい」という願いを込めて『18(いっぱい)』と付けられた」という説もある</ref>。当時旅客局長だった須田寛は後年、青少年・学生をイメージした「青春」と、その象徴的な年齢で「末広がりの8」にも通じる「18」を組み合わせたと説明している。また第1回発売開始直前の1982年2月25日には、当時現職の富山車掌区車掌だったシンガー・ソングライター伊藤敏博が同名の『青春18』という曲を発表し、ヒットした。

乗車できる列車

特急列車に乗車できる特例

以下の区間は当該区間内相互発着の場合に限り、普通乗車券のみで特急列車の普通車自由席に乗車することが認められているため、青春18きっぷのみで特急列車の普通車自由席に乗車できる<ref name="jre18"/>。

ただし、以下の場合は乗車全区間の乗車券及び特急券が必要となる<ref name="jre18"/>。

  • 特例区間を一駅でも超えて乗車する場合。
  • 特例区間の境界駅で特急列車から一旦下車して再度同じ特急列車に乗車し、特例区間を越えた場合。
  • 乗車列車が特例区間の境界駅を通過するため下車することができない場合。
  • 特例区間内であっても普通車自由席以外の座席を利用する場合。

例外規定については「特急料金不要の特例区間」も参照。

日豊本線日南線宮崎空港線 宮崎-宮崎空港間は、区間を跨いで乗車する場合は運賃・特急料金は特例区間外のみで計算される(一例として、宮崎空港から延岡まで特急に乗車する場合、青春18きっぷは宮崎空港~宮崎間で使用可能)。

一部では特急形車両が間合いで普通列車で運転される場合や特急列車の末端区間の一部が普通列車に変更されて運行される場合があるが、この場合は特急形車両を使用した普通列車であるため、青春18きっぷで特急形車両に乗ることができる。

特例が適用される例

特例が適用されない例

  • 青森-蟹田を普通列車、蟹田-函館を特急「白鳥」・「スーパー白鳥」の普通車自由席に乗車。
    後者が「蟹田-木古内間相互発着」の条件を満たさないため、本きっぷで蟹田-函館の乗車はできない。乗車するには蟹田-函館の自由席特急券と乗車券が必要となる。
  • 新夕張-新得を特急「スーパーとかち」、「スーパーおおぞら」の普通車指定席またはグリーン車指定席に乗車。
    特例は普通車自由席のみ適用され、普通車指定席・グリーン車指定席には適用されない。普通車指定席の場合は新夕張-新得の指定席特急券と乗車券、グリーン車指定席の場合は新夕張-新得のグリーン車指定席特急券と乗車券が必要となる。

使用できない路線

博多南線上越線越後湯沢-ガーラ湯沢在来線の扱いであるが全列車が特急列車であるためこの区間は利用することができない。

旅客鉄道会社線(JR線)以外の会社線(私鉄・公営鉄道・第三セクター等の路線)では一切使用することはできない。JR線と会社線を直通運転する列車を利用する場合、会社線内の乗車区間についてはその区間に有効な乗車券類が別に必要となる。

東京モノレール(JR東日本の子会社)や東海交通事業城北線(JR東海の子会社)、JRバスなどのJR旅客鉄道会社の系列会社であっても利用することはできない。これと同じく、九州旅客鉄道(JR九州)の子会社であるJR九州高速船が運航する「ビートル」はJRグループが運航する定期航路であるが、国際航路であり、運賃形態も異なるため有効となっていない。唯一の例外は前述のJR西日本宮島フェリーである。

私鉄の一部には線路の所有がJRとなっているところもあるが、JRの運賃が適用される区間(この場合七尾駅-和倉温泉駅)であれば利用できる。ただし、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線のように、JR線となる区間(この場合鹿島神宮駅-鹿島サッカースタジアム駅)についての詳細を運賃表などに記載していない場合もある。

なお、三陸鉄道肥薩おれんじ鉄道北近畿タンゴ鉄道では、有効な青春18きっぷを提示した場合のみに発売される企画乗車券がある(後述)。

発売期間・利用期間

利用期間は学生が概ね長期休暇(春休み夏休み冬休み)に入る期間で、その約10日前から発売される。 基本的な発売期間・利用期間は以下の通り。確定しているわけではなく、あくまで目安である点に注意。しかし、2000年代に入ってからは毎回以下の日程通りとなっている。2010年版に関しては春・夏季については上記通りとなったが<ref name="jre18"/>、冬季の発売・利用期間は現時点では未定<ref name="jre18"/>。

時期 発売期間 利用期間
春休み 2月20日-3月31日 3月1日-4月10日
夏休み 7月1日-8月31日 7月20日-9月10日
冬休み 12月1日-1月10日 12月10日-1月20日

これら以外で旅行者の多い時期であるゴールデンウィークには例年発売されていない。初期には春用がゴールデンウィークまで使えた時代もあった。

払い戻しは、利用期間内で未使用の場合に限り取扱箇所で行える。

列車の運行不能・遅延等による場合でも、使用開始後の払い戻し及び有効期間の延長は出来ない。払い戻しは前述したように5回分が未使用の場合に限られる。

効力

1枚の乗車券で利用可能期間中5回(人)まで利用できる。1回分は乗車日当日限り有効。乗車時に改札口または車掌から乗車船日の記入を受けることで有効となる。現在では、日付の入るスタンプ(改札印)を押印し、入鋏と利用日記入を兼ねることがほとんどである。乗車船日内であれば、何度でも乗り降り自由。日付をまたいで運転する列車については、0時を過ぎて最初に停車する駅まで有効(0時を跨いで停車している列車はその停車駅まで有効)であり、東京及び大阪近郊の電車特定区間大都市近郊区間ではないので注意)では終電まで有効である。

例:常磐線下り・上野駅23時42分発の土浦行きの場合、0時を跨いで最初に停車する松戸駅ではなく、電車特定区間の取手駅まで有効となる。
  • 乗車船日の24時(翌日0時)以降終電までに、電車特定区間の駅ぼ�または、本きっぷのもう1回分の押印)が別に�の境界の駅と、区間外の乗降駅との間の乗車券(または、本きっぷのもう1回分の押印)が別に必要となる。
  • このような制度となっているため、特に夜行列車を利用する旅客にとって青春18きっぷを2回分使用したほうが得か否かは、その列車が0時を過ぎて最初に停車する駅によって左右される。そのためその駅がどこなのかはひとつの関心事であり、一部では俗にその駅のことを「日付変更線」と呼ぶこともある。例えば2007年のダイヤ改正において、下りムーンライトながらの日付が変更する駅が横浜駅から小田原駅へと大きく移動したことが話題となった。

歴史

thumb|200px|right|国鉄時代の券面 thumb|200px|right|5券片時代の券面(1987年夏季JR東日本発行) thumb|200px|right|5券片時代の表紙 前述の通り、青春18きっぷは日本国有鉄道の増収策の一環として企画された。当時、国鉄内部では利用者層を青少年(学生)・中年社会人主婦)・老年と分けた場合、中年男性は出張などで長距離の利用が多いものの、それ以外の年齢層では比較的短距離の利用が多いと分析していた。そこで、それらの層にも長距離の利用を勧めるためのトクトクきっぷを発売することとなった。当時国鉄には、長距離区間を運転する普通列車が数多く存在していたほか、老年向けには「フルムーン夫婦グリーンパス」、中年女性向けには「ナイスミディパス」を発売し、それぞれ好評を得ていた。

これらの成功を受けて、Template:和暦から青春18きっぷの前身にあたる青春18のびのびきっぷの発売が開始された。「青春18」とある通り、青少年(学生)を主な発売対象としたきっぷであったが、当時から年齢制限などはなかった。発売当初は1日券3枚(赤い地紋)と2日券1枚(青い地紋)のセットで、価格は8,000円であった。また青少年の利用を意識して、バックなどに貼付できるシール状の「青春18ワッペン」が附属していた。

Template:和暦青春18のびのびきっぷ青春18きっぷに改称され、1日券4枚と2日券1枚のセットで10,000円となった。Template:和暦夏期用から1日券5枚となった。使用できる期間が1日短くなったが、価格は10,000円のままであった。1986年冬期に価格が11,000円に改定され、Template:和暦夏期より消費税が導入されたことを受けて11,300円に改定された。Template:和暦からマルス端末による発券が可能となった。

Template:和暦春期より、現行のように、5回(人)分を1枚の券片にまとめた様式となった。これは、金券ショップなどで1枚ずつバラ売りされるのを防ぐためとも言われているが、特に複数人数で同時に使用する場合の使い勝手が悪くなった。またこの形式に改められた最初のシーズンは入場時に改札印を押印した際、印が回数欄にかかり、残余回数が判別できなくなるトラブルが多発した。また現在も残り4回-1回の青春18きっぷが金券ショップで時々売られていたり、インターネットオークションでも取引されている。

Template:和暦夏期から消費税の税率変更に伴い、価格が11,500円に改定され、現在に至る。

2000年代における販売枚数はJR東日本によると、前半から中盤は毎年25万枚〜30万枚で、2007年は35万枚以上の販売実績があった<ref name="ichigaya20080811">イカロス出版「青春18きっぷ」ガイド本が好調-誌面も大改訂 市ケ谷経済新聞 2008年8月11日</ref>。

Template:和暦にはJR各社が発足20周年を迎えたのを記念し、春季のみJR発足20周年・青春18きっぷが発売開始時の価格と同じ8,000円(乗車できる列車・回数などは通常のものと同じ)で発売された。

夜間の長距離移動については、1980年代後半以降に広範囲で「ムーンライト」など、当きっぷでも利用可能な夜行列車が運行され需要を満たす役割を担ってきた。しかし、2000年代に入り次第に運転休止をする列車が増え、2009年春のダイヤ改正で、それまで定期運行されていた「ムーンライトえちご」、「ムーンライトながら」が当きっぷ有効期間に合わせて運行される形となり、他の「ムーンライト」については多客期の運転予定がなく、Template:和暦7月には「ムーンライト九州」の廃止が報道されるなど<ref>ムーンライト九州、事前発表もなく姿消す 読売新聞 2009年7月12日</ref>、2000年代後半以降は夜行列車で移動できる地域は限定される傾向となっている。

発売箇所

青春18きっぷは基本的にみどりの窓口旅行会社マルス端末で発行されている。

JR東日本の指定席券売機Kaeruくん、JR西日本のみどりの券売機(一部の設置駅を除く)でも発券可能である。

赤い地紋の青春18きっぷ

thumb|200px|現行の「常備券」 JR北海道(北海道旅客鉄道)・JR西日本(西日本旅客鉄道)・JR四国(四国旅客鉄道)の一部駅窓口では赤い地紋の用紙に印刷された常備券での販売が継続されており、ナマ券赤券とも呼ばれる。常備券とマルス端末発行の券とで効力などの違いはないが、貴重あるいは風情があるとして、遠方から常備券を扱う駅まで購入しに行ったり、一部の駅では現金書留郵便為替と返信用封筒を送付した上での販売を受け付けていることから、郵送での販売を利用したりするファンもいる。

主にマルス端末が設置されていない駅での発売だが、JR北海道・JR四国では利用者が多い一部のマルス端末設置駅でも発売している。JR西日本では大阪環状線の一部駅や米原駅東口で発売していたが、2008年春の取扱を以って終了し、筒石駅での郵送販売は2009年冬で終了した。JR北海道宗谷北線運輸営業所管内各駅など、一部駅では貴重な収入源となっており固定客も多い。

関連商品

青春18きっぷ発売時期と同時期に、以下の鉄道において全線乗り放題きっぷなども発売されている。

  • 智頭線満喫 普通列車一日乗り放題きっぷ智頭急行) - 大人1,000円、小児500円。青春18きっぷの使用期間内に発売される。
  • 三鉄1日とく割フリーパス三陸鉄道) - 青春18きっぷまたは北海道&東日本パスを呈示すると、片道運賃の半額程度で乗り放題になる(北リアス線用・南リアス線用)切符を発売。
  • おれんじ18フリーきっぷ肥薩おれんじ鉄道) - 青春18きっぷを呈示すると2,000円(通常の一日フリー乗車券は2,800円)で乗り放題になる切符を発売。

かつて、北近畿タンゴ鉄道では2007年春から2009年1月までの間、青春18きっぷを呈示すると、北近畿タンゴ鉄道全線乗り放題の「KTR青春フリーきっぷ」を500円で発売していた。

青春18きっぷを活用する方法などを記した書籍は多数出版されている。多くはルールの解説や便利な列車の紹介、モデルコースの案内などで構成されている<ref name="ichigaya20080811"/>。

かつては、利用できる夜行列車ときっぷの解説をした本が多かったが、インターネットの普及と中高年需要、夜行列車の廃止を反映して、中高年向けに旅行プランを提案する書籍・ムックが増えている。

脚注

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関連項目

外部リンク

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