閏秒

出典: Wikipedio


閏秒(うるうびょう、Template:Lang-en-short)は、現行の協定世界時 (UTC) において、UT1との差を調整するために追加または削除される1秒である<ref name="NICT-JJY-第24回QA">Template:Cite web </ref><ref name="NICT-JJY-原子時JPG">Template:Cite web</ref>。

目次

解説

画像:Leapsecond.ut1-utc.svg
UTCとUT1とのずれ

現行の協定世界時 (UTC) は国際原子時 (TAI) と同調している(時刻の値は違っても秒を刻む歩調は同じ)<ref name="NICT-JJY-原子時JPG" />。国際原子時 (TAI) は、「原子や分子が二つのエネルギー準位間の遷移によって、ある特定の振動数を持つマイクロ波を放射する」原理を利用した原子時計に基づいており<ref name="NICT-AFS-用語集">Template:Cite web</ref>、他方、世界時 (UT1) は地球の自転に基いている<ref name="NICT-JJY-第24回QA" /><ref name="NICT-AFS-用語集" />。

地球の自転に基づく世界時 (UT1) は、太陽が朝に出て夕方に沈むといった、日常生活に関係する時間観念からすれば便利であろう。しかし、地球の自転運動は一定しない<ref name="地球自転">による潮汐作用など、さまざまな原因が考えられているTemplate:要出典。</ref>ことから、世界時(UT1) は1秒の長さが一定せず、時の標準を(学術的に)正確に定めるには不向きである。この点では国際原子時 (TAI) は便利だが、地球の自転には従わないから、ずれが拡大すれば理論上は時間観念とも食い違うことになり、やはりこれだけでは時の標準を定めるには不向きである。

国際原子時(TAI) の利点を持つ現行の協定世界時 (UTC) において、世界時 (UT1) の利点をなるべく失わないようにする方法が、閏秒による調整である。1秒の長さや秒を刻む歩調は国際原子時 (TAI) に合わせ、世界時 (UT1) との時刻の差を閏秒による調整で縮めている。

参考: 1971年まで使用された旧・協定世界時は国際原子時(TAI) と同調しておらず<ref name="NICT-JJY-原子時JPG" />、世界時(UT2) との差を、歩調を変えることで調整していたTemplate:要出典。世界時(UT2) は世界時(UT1) の補正版だが、現在は使用されていない<ref name="NICT-AFS-用語集" />。
1958年1月1日0時…国際原子時(TAI) が、TAI = UT2 で開始される<ref name="NICT-AFS-用語集" />。
1967年…1の定義が、セシウム133原子を用いた現行の定義となる<ref name="NICT-AFS-用語集" />。
1972年1月1日0時…現行の協定世界時(UTC) が、UTC = TAI - 10秒 に調整されて開始される<ref name="NICT-JJY-原子時JPG" />。
1972年6月30日…第1回の閏秒調整で、UTC = TAI - 11秒 となる<ref name="NICT-JJY-実施日一覧" />。
2008年12月31日…第24回の閏秒調整で、UTC = TAI - 34秒 となる<ref name="NICT-JJY-実施日一覧" />。

閏秒と閏日(閏年)

閏秒と閏日閏年)は無関係である。閏秒が地球の自転の不整と原子時計の間の調整であるのに対して、閏日(閏年に挿入される臨時の2月29日)は地球の公転周期と地球の自転周期が簡単な比になっていないことを調整するためのものである。長期においては、閏秒などの時間調整がなければ正午に夜中などのズレが生ずる。閏日(閏年)がない場合には、カレンダーは12月なのに「北半球の季節は真夏」というズレが起こりうる。

閏秒による協定世界時(UTC) 調整の仕組み

基準とタイミング

協定世界時(UTC) の世界時(UT1) との差を±0.9秒以内に保つよう<ref name="NICT-JJY-第24回QA" />、閏秒による調整が実施される。これまでの実際の運用では、調整はすべて正の閏秒(後述)で、典型的にはUT1-UTCが-0.5秒程度のとき挿入され、そこでUT1-UTCが+0.5秒程度にジャンプする。差が-0.2秒台で早々と挿入され+0.7秒台にジャンプすることも、-0.6秒台になってからようやく挿入され+0.3秒台にジャンプすることあったが、差の絶対値で最大0.7秒台はあっても(1972年の導入直後の初期状態を例外として)0.8秒台にはならないように運用されてきている[1]。これはDUT1が0.8秒を超えないようにするというCCIR Recommendation 460-4とも合致している。

この調整は国際地球回転事業(IERS。国際観測を実施)が決定する<ref name="NICT-PRESS-第24回">Template:Cite web </ref>。実施日は協定世界時(UTC) の月末とされ、年12回の可能性があるが、第一優先が6月末日または12月末日、第二優先が3月末日または9月末日で、これまでの実際の運用では第一優先の6月末日または12月末日だけで間に合っている。実施日23時59分台の末尾で1秒が追加または削除される <ref name="ISO#8601@2004">Template:Cite web(英語): PDF p.10 (原典p.4)。</ref>。

現行の協定世界時(UTC) が始まった1972年当時は、世界時(UT1) との差を±0.7秒以内に保つよう6月末日か12月末日に調整することとされていたが、後に基準が緩和され、調整を実施しうる日も増やされたTemplate:要出典

正の閏秒

2009年9月までに計24回実施された閏秒調整はいずれも、追加される1秒(正の閏秒、英: positive leap second<ref name="ISO#8601@2004" />)による調整で、協定世界時(UTC) で6月末日または12月末日に1秒が追加された<ref name="NICT-JJY-実施日一覧">Template:Cite web </ref><ref name="香港天文台-実施日一覧">Template:Cite web(英語)</ref>。

実施日23時59分59秒の1秒後に、通常なら存在しない23時59分60秒が追加される<ref name="ISO#8601@2004" />。協定世界時(UTC) を、23時59分60秒台によって1秒、遅らせる仕組みである。

実施例<ref name="NICT-JJY-実施日一覧" /> Template:N

2005年12月31日23時59分59秒 (UTC) の1秒後が、
2005年12月31日23時59分60秒 (UTC)、ここで1秒追加されて次が
2006年1月1日0時0分0秒 (UTC) となった。

負の閏秒

2009年9月までに実施例がないが<ref name="NICT-JJY-実施日一覧" /><ref name="香港天文台-実施日一覧" />、削除される1秒(負の閏秒、英: negative leap second<ref name="ISO#8601@2004" />)による調整もある。

実施日23時59分58秒の1秒後に通常なら存在する23時59分59秒が削除され、翌日0時0分0秒とされる<ref name="ISO#8601@2004" />。23時59分59秒台をとばして、協定世界時(UTC) を1秒、進める仕組みである。

各種標準時刻サービスでの対応

NTTの時報サービス

NTT東日本NTT西日本時報サービス(電話番号117)は過去、正の閏秒の調整には、秒音追加ではなく秒音間隔を伸ばすことで対応している。すなわち、「午前8時58分20秒」の秒音の後、「午前9時」の秒音まで、秒音間隔を通常より1/100秒長い101/100秒にし、秒音100回で101秒となるようにしている <ref>"時報サービス「117」番の「うるう秒」調整の実施について" 東日本電信電話株式会社ならびに西日本電信電話株式会社: 2005年12月16日ニュースリリース. 2008年9月7日 閲覧。 </ref><ref>"別添資料" 東日本電信電話株式会社ならびに西日本電信電話株式会社: 2005年6月9日ニュースリリース. 2008年9月7日 閲覧。 </ref>。 この間につき日本標準時(JST) と比べると、「午前8時58分21秒」の秒音から「午前8時59分59秒」の秒音までの99回に限って符合せず、「午前9時」の秒音で符合することになる。

なお、両社の「ひかり電話」の時報サービスでは前述と異なり、挿入される「午前8時59分60秒」とその1秒後の「午前9時00分00秒」に2回続けて「ポーン」音を鳴らして調節している<ref>"時報サービス「117」の「うるう秒」調整の実施について" 東日本電信電話株式会社・西日本電信電話株式会社連名: 2008年12月15日ニュースリリース. 2008年12月29日 閲覧。</ref>。

電波時計

電波時計は標準電波を利用して時計の時刻を校正するサービスである。日本では独立行政法人 情報通信研究機構 (NICT) が提供する標準電波および標準時刻のサービスJJYを利用できる。

JJYの時刻送信フォーマットには閏秒の挿入または削除を予告する情報が含まれている。ただし電波時計は掛け時計や置時計、腕時計など生活時計に使われることが多く、(日本標準時)8時59分60秒の挿入や8時59分59秒の削除が問題になることは少ない。このため実際の製品では単に59秒を示すP0マーカーの次の1秒で00秒にリセットする動作だけが実装されていて、表示としては(日本標準時)9時00分00秒が2回繰り返される・8時59分59秒がとばされるだけという動作が多いと考えられる(実際の電波時計は常時受信可能とは限らないため、1時間に1回だけ校正する場合も多い。その場合は最初の校正時刻でこのような動作になる)。針式のアナログ時計では単に時計が1秒進んだ・遅れた場合と同様に徐々に閏秒挿入・削除後の時刻に同期していくだけという製品が多いと考えられる。

NTP(Network Time Protocol)

NTP(Network Time Protocol)はコンピュータどうしの時刻を同期させるプロトコルである。正確な時刻の同期が必要なサーバ系OSで広く使われており、現在ではMac OS・Windows系OS(『インターネット時刻に同期』)などPCでも利用可能である。

NTPサーバは時刻を比較する相手となる他のNTPサーバと時刻情報をやり取りするが、直前に閏秒が挿入・削除された場合にそれを示す警告情報も一緒にやり取りする。閏秒は1秒ステップさせるため、これがなければ突然他のNTPサーバより時刻が遅れた(進んだ)ようにみえ、閏秒挿入・削除後しばらくの間、時刻精度に影響を及ぼすと考えられるからである。

受け取った側がどう処理するかはNTPサーバプログラムの実装に任されるが、削除された1秒に自動起動するサービスがあるかもしれないため注意が必要である。また現実には、他のNTPサーバの閏秒情報を鵜呑みにすると偽の閏秒情報で時刻が狂わされる危険が考えられるため、コンピュータの管理者が編集・設置する『閏秒情報ファイル』を使って時刻のオフセットを管理する場合がある。

GPS(Global Positioning System)

GPSは測位に使われるシステムであるが、人工衛星に積んだ原子時計(これはまた地上からの指令で校正される)から受信地点に電波が届く時刻を立体三角法で計測して位置を推定するため、その原理上受信機は極めて高精度の時刻を得ている。

GPS衛星がもっている時刻はGPS時刻とよばれ、1980年1月6日にUTと同一(TAI - 19秒)であった。その後閏秒が挿入(削除されたことはない)されても修正されていない。したがってGPS時刻はUTに比べ、このとき以降挿入された閏秒の実施回数秒だけ進んでいる。

ただし前述のようにGPS受信機は簡単に高精度の時刻を取り出せる基準時計として利用されることが多いため、ブロードキャストメッセージにUTとGPS時刻の差(閏秒の実施回数)が含まれており、受信機が修正して出力している。

調整実施日

協定世界時(UTC) での実施日付(すべて正の閏秒による調整)<ref name="NICT-JJY-実施日一覧" /><ref name="香港天文台-実施日一覧" />。

  1. 1972年6月30日
  2. 1972年12月31日
  3. 1973年12月31日
  4. 1974年12月31日
  5. 1975年12月31日
  6. 1976年12月31日
  7. 1977年12月31日
  8. 1978年12月31日
  9. 1979年12月31日
  10. 1981年6月30日
  11. 1982年6月30日
  12. 1983年6月30日
  13. 1985年6月30日
  14. 1987年12月31日
  15. 1989年12月31日
  16. 1990年12月31日
  17. 1992年6月30日
  18. 1993年6月30日
  19. 1994年6月30日
  20. 1995年12月31日
  21. 1997年6月30日
  22. 1998年12月31日
  23. 2005年12月31日
  24. 2008年12月31日

将来

廃止論と反対論

閏秒の存続については議論があり、2013年に閏秒を廃止することを目指す提案もなされている<ref>Template:Cite web</ref> <ref>Template:Cite web</ref> <ref>Template:Cite web</ref>。廃止するべき理由としては、次のようなものが挙げられている。

  • 閏秒があるとUTCは一様の尺度でない(例えば23:00 UTCから翌0:00 UTCの時間間隔が場合によって異なる)ので不便。
  • 閏秒の調整を手動で行わなければならず、間違いや時計間の不整合が起こりやすい。航空管制システムなどのトラブルにつながる可能性もあり、人命への余計なリスクとなる。
  • 一様の尺度が望ましい局面では、GPSの時系のように「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」という新しいシステムが用いられることがあるが、「ある時点のUTCと同期しつつ閏秒なし」は実際上、閏秒の数だけバリエーションがあり、時刻システムの乱立につながるうえ、相対的にUTCの価値・有用性・権威を低下させ、度量衡統一の観念にも反する。

一方、廃止に反対する理由としては、次のようなものがある。

  • 実質的に閏秒が原因で問題が発生したという報告がない。
  • 天体観測・アンテナ制御などのソフトウェア、ハードウェアなどにはUT1-UTCの絶対値が1秒を超えないという前提で設計されているものも少なくなく、その前提が破れると大きな改修が必要になり、予期せぬトラブルの原因ともなる。
  • 市民生活は依然地球の自転と同期しており、UT1-UTCの差が累積するのは好ましくない。

長期的な問題

地球の自転は、短期的にはさまざまな予測困難な小さい揺らぎを示しつつ、長期的には、潮汐力を主要原因として減速傾向にあり、変化率は過去2700年間の平均で(+1.70±0.05)ms/cy、つまり、1ユリウス世紀ごとに1太陽日の長さは0.0017SI秒ほど長くなってきたとされる<ref name="Stephenson">Template:Cite web</ref>。この状態が続くと正の閏秒の挿入頻度は徐々に増加し、21世紀中には毎年1回ずつが当たり前になるかもしれない。今後の地球自転の変動をどう推定するかによって予測時期は変わるが、恐らく22 - 23世紀には年2回の閏秒も一般的になり、西暦3000 - 4000年ごろには年12回の閏秒が必要になると考えられ、それを超えると現在の閏秒の方法では平均的に間に合わなくなってしまうし、常にUTCとUT1の差を±0.9秒以内に保つという目標も、遅くとも同時期(場合によってはより早期)には達成不可能になる<ref name="doomed">Template:Cite web</ref>。この問題について、いくつかの提案がなされている<ref name="Seaman">Template:Cite web</ref>。

脚注

<references />

関連項目

外部リンク

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