銀行

出典: Wikipedio


銀行(ぎんこう)とは、預金の受入、資金の移動(決済)や貸出(融資)、手形小切手の発行などを行う金融機関である。ここでは、主に日本の銀行法に基づく銀行について、記載する。固有名詞ではバンクとも呼ばれている。

目次

銀行の業務

銀行の業務目的は、第一義的には、市場経済の根幹である通貨の発行である。貨幣機能説によれば、通貨は通貨としての機能を果たすがゆえに通貨であり、交換手段であると同時に価値保蔵手段であり、価値尺度であるという機能をもつ。銀行の発行する預金は、まさにこうした通貨としての機能を果たすがゆえに経済社会において重要な預金通貨として流通している。またそれゆえに、政府当局としても、預金通貨の安定を経済政策の根幹においている。預金通貨は銀行の負債であるので、預金通貨の価値の安定のためには、銀行の資産が安定的な価値を有するものでなければならない。このため、金融庁をはじめとする銀行監督当局は、定期検査を通じて、銀行の資産は安全かという点を厳しくチェックする。

銀行業務を行うにあたっては、信用が重要な位置をしめる。そのため、経営が悪くなっても活動を続けることが出来る他の産業とは根本的に異なり、経営が悪くなれば信用がなくなり、あっという間に破綻する。 端的に言えば

「銀行の経営は信用があって成り立つか、融資する価値がないと判断されて成り立たなくなるかのどちらかだ」(モルガン・スタンレー、ローレンス・マットキン)<ref>「ベアー買収の動揺、欧州に波及 破綻の危機にある金融機関はいくつあるのか」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年3月27日付配信</ref>より引用

ということになる。

銀行の起源

バンクという語はイタリア語banco(机、ベンチ)に由来する。これはフィレンツェの銀行家たちによってルネサンスの時代に使われた言葉で、彼らは緑色の布で覆われた机の上で取引を行うのを常としていた。最初の近代的銀行は1406年(または1407年)にジェノヴァで設立されたサン・ジョルジョ銀行とされている。

現在のような形態の銀行が誕生したのは、中世末期のイギリスにおいてである。

当時、ヨーロッパでの主要な決済手段は(ゴールド)であった。貨幣経済の興隆に伴い商業取引が増大し、多額の金を抱える者が出てきた。金を手元に抱え込むリスクを懸念した金所有者は、ロンドンでも一番頑丈な金庫を持つとされた金細工商・ゴールドスミスに金を預けることにした。ゴールドスミスは金を預かる際に、預り証を金所有者に渡した。

しばらくして、ゴールドスミスは自分に預けられている金が常に一定量を下回らないことに気付いた。これは、支払いに用いられた金を、受け取った業者がすぐに預けに来ることが原因であった。また、中にはキリのいい単位で金を預け、その預り証をそのまま取引に用いる金所有者も現れた。

ゴールドスミスは、預けられた金を運用しても預金支払い不能にならないことを知り、貸し出し運用を開始した。これが銀行の始まりであり、この過程で生まれた預り証が、現代の紙幣の起源である。紙幣(預り証)は金の預金証書であり、価値の裏づけがなされているから価値を持つことが出来た(金本位制も参照)。

また、貸し出した金も再び預け入れられ再度貸し出しに回ることにより、預り証が大量発行され、貨幣経済成長の原動力となった。このように、預り証を保証する金よりも、預り証の量が多くなることを信用創造と呼び、現代の銀行においても重要な機能である。

やがてイギリス全土に同業者が現れ、それぞれが独自の預り証を発行するようになり、多種多様な紙幣が現れた。しかし、それぞれの紙幣が業者の信用力に依存することになったため、やがて預り証を発行する権限を持つ銀行が統合され、中央銀行となった。それ以外の銀行は、預り証を預かる商業銀行として発展することになる。

増加した貨幣(預り証)の価値を保証しているのは、借手の返済力である。このため、借手の経営が危機に陥ると貨幣も信用を喪失した(金融危機)。そのため19世紀から今日まで、金融危機に端を発する恐慌が頻発している(1927年の日本における昭和金融恐慌など)。

日本では江戸時代に、「両替商」と言う銀行に近い商売があった。初の商業銀行は、明治維新後に誕生した第一国立銀行第一勧業銀行を経て、現在のみずほ銀行)となっている。これは日本初の株式会社(解釈により異なる場合があるが)でもあった。なお、明治時代にバンク(bank)を銀行と訳したのは、漢語に依拠している。は漢語で店を意味し、またではなくであるのは(当時東アジアでは銀が共通の価値として通用していたため)金と銀の双方が候補で、一説によれば語呂が良いから銀行とされた<ref> 日本銀行ホームページ/教えて!にちぎん/銀行はなぜ「銀行」というのですか?</ref> という。 日本の企業で、店を意味するを使っているのは銀行と洋行(貿易会社)だけであると言われている。また、中国では行を使う会社は少ない(公司などを使用する)。

日本の銀行

日本においては、広義には主に中央銀行銀行法に基づく銀行(いわゆる普通銀行)、信託銀行、個別の法律により設立された銀行(商号に「銀行」とついているもの)を、狭義には銀行法に基づく銀行(いわゆる普通銀行)を指す。

業務の範囲

銀行は次の業務を営む。

  • 預金普通預金定期預金等)又は定期積金等の受入れ
  • 口座自動振替などの口座管理・決済
  • 資金の貸付け又は手形の割引
  • 内国為替取引(送金・振込等)
  • 外国為替取引
  • 債務の保証又は手形の引受け
  • 有価証券の売買、有価証券店頭デリバティブ取引、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引又は外国市場証券先物取引
  • 有価証券の貸付け
  • 国債、地方債若しくは政府保証債の引受け又は当該引受けに係る国債等の募集の取扱い
  • 金銭債権の取得又は譲渡
  • 特定目的会社が発行する特定社債等の引受け又は当該引受けに係る特定社債等の募集の取扱い
  • 短期社債等の取得又は譲渡
  • 有価証券の私募の取扱い
  • 地方債又は社債その他の債券の募集又は管理の受託
  • 銀行その他金融業を行う者の業務の代理
  • 国、地方公共団体、会社等の金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い
  • 有価証券、貴金属その他の物品の保護預り(貸出金庫
  • 両替
  • 取引所金融先物取引等
  • 金融先物取引の受託等
  • 金融等デリバティブ取引(金利、通貨の価格、商品の価格その他の指標の数値としてあらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引)
  • 金融等デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理
  • 有価証券店頭デリバティブ取引
  • 有価証券店頭デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理

銀行の区分

日本においては、慣習的に次の様に区分される。一般に「銀行」という場合、銀行法に基づく銀行(いわゆる普通銀行)を指す。銀行法第6条により、(銀行法に定める)銀行は「銀行」を名称に付ける事が義務付けられており、銀行でないものは、「銀行」を名称に付ける事が禁止されているからである。中央銀行や政府系金融機関は、銀行法ではなく個別の法律により、その設立が規定されている(日本銀行法など)。

かつて存在した形態の銀行

  • 国立銀行 → 明治時代初期に国立銀行条例に基づき設置、経営は民間で行われていたが政府に代わって紙幣発行などの公的業務も行う。日本銀行設立後、普通銀行に転換
  • 貯蓄銀行 → 普通銀行に転換
  • 相互銀行 → 普通銀行に転換(早期に転換し、都市銀行(日本相互→太陽)又は地方銀行(西日本相互→西日本、弘前相互→青和と合併しみちのく)となった一部を除き第二地方銀行協会を構成)
  • 外国為替専門銀行 - 東京(現三菱東京UFJ。外国為替銀行法に基づく唯一の銀行として営業していたが、三菱銀行との合併に伴い消滅)
  • 長期信用銀行 - 日本興業(現みずほ、みずほコーポレート)、日本長期信用(現新生)、日本債券信用(現あおぞら)(長期信用銀行法に基づく銀行として営業。2006年4月までに全て普通銀行に転換または普銀に合併)


銀行と協同組織金融機関

日本では、法律に基づかない預金の受入れは出資法第2条で禁止されているが、銀行以外に信用金庫信用協同組合農業協同組合漁業協同組合労働金庫など、特別法により預貯金の受入れを業とする協同組織形態の金融機関(協同組織金融機関)が存在する。商業銀行も営利会社といえど、金融の高い公共性を担う存在として銀行法はじめ様々な法令の規制下におかれるが、協同組織金融機関は、同様に公共目的をもった金融機関と位置づけられている。

即ち、協同組織金融機関は、一般に利用者(組合員・会員)自身の出資に拠って存立し、私的な営利目的の銀行とは異なり、中小事業者や一般個人の発展繁栄を通じて、福祉の向上と社会秩序の安定に資するという公共的な事業目的を有しており、そうした目的を達成する観点から、業務の地域や取引相手が、限定される一方、営利組織である銀行よりも有利な税制、商品の取り扱いが認められている。特に出資については、株式会社と異なり、協同組合原則(ロッチデール原則)により、組合員・会員(総代)の議決権は、出資額にかかわらず、一人一票であり、株式会社とは異なり、大資本の買占めによる経営支配はできず、利用者一人ひとりの意思を反映した、民主的で安定的な経営が出来る仕組みとなっている。

協同組織金融機関の業容が拡大する中、取引先中小企業の業容もまた大企業へと進展する事例も多く、1991年に東京都の旧・八千代信用金庫が転換した八千代銀行は、このような出資・預金・貸付に関する制限は業務(取引継続)の制約となるととらえ、銀行への改組を図った。

銀行が小規模な(または親密先の)協同組織金融機関の手形交換、外国為替業務などを受託することも多い。

銀行代理店

銀行の業務の一部を、アウトソーシングなどによって任せられ、サービスを提供する銀行以外の企業のこと。

日本では銀行法により定められており、預金の預入やローンの取り扱いを、銀行以外の個人や企業が行うことができる。当初は銀行の100%子会社であることなど条件が厳しかったが、何度か規制緩和が行われ、2006年4月施行の改正では参入条件が大幅に緩和された。

尚、○○銀行××代理店の名称を使用する場合、立地としては郊外部や農村部に立地する場合が多いが数は少ない、取扱い業務の内容は一般の有人出張所に準ずることが多い、また銀行によっては、有人出張所に変更していてかつてよりむしろ減少している(店舗統廃合によって廃止されたケースもある)。

民営化後の郵便局の貯金窓口は、ゆうちょ銀行における銀行代理店という位置づけになっている。当然ながら、ゆうちょ銀行の直営店が併設されている郵便局については、銀行代理店にはなっていない。

日本の銀行の休業日

日本の銀行は、原則として日曜日土曜日国民の祝日、12月31日から翌年の1月3日までの日を休業日としている(銀行法第15条第1項、銀行法施行令第5条)。ただし、住宅ローンなどを扱うローンセンターのような部門では、土曜や日曜に営業する店舗もある。

かつては土曜日は午前中のみ営業していたが、1983年頃に第2土曜日が休業となり、1988年頃に全土曜日が休業となった。現金自動預け払い機(ATM)については、この流れで土曜日の14時までは自行キャッシュカードでの利用には手数料を取らなかったが、土曜日にも手数料を取る銀行が増えている。逆に、(埼玉)りそな・近畿大阪(りそなグループ)ないしは福井県に本店のある銀行(福井銀行福邦銀行。こちらの場合は、コンビニATMイオン銀行ATM利用時も対象)のように、夜間や休業日の自行カード手数料を全廃した銀行もある。

日本の銀行の特長

  • 審査能力について
    • 長年不動産(物的)や保証人(人的)担保に融資をするビジネススタイルをとっていたため、外資系銀行に比べて企業資産の審査能力が低いとされ、近年は、プロジェクト・ファイナンスM&A等で、企業の生み出すキャッシュフローにて企業価値の判断やそのリスク管理を行う審査制度の確立を急いでいた。
    • しかし、2007年から2008年にかけて、アメリカやヨーロッパの一流大手銀行が、軒並みサブプライムローン関連の証券化商品による巨額の損失を計上し、世界的な金融システム不安が発生する中で、「外国系銀行が審査能力が高い」とは、決して言えないこと、むしろ外国系銀行が統計学に基づくリスク管理手法を過信しリスクテイクバブルに陥っていたことが露呈した。
    • また、中小企業融資に際して審査の迅速化を目的に、統計学を用いてスコアリングを行い、書類提出のみで手続きが完結するスコアリング判定ビジネスローン(以下BL)を多くの銀行が展開したが、一方で提出書類を偽造した詐欺事件が発生し、銀行員自身の目利き能力の低下にもつながるという問題も指摘されている。定量評価のみの機械的な与信判断で融資量を拡大したBLは、結果として不良債権を増加させることになった(メガバンクが相次いでBLを導入したのは、中小企業向け融資を拡大しなければならない金融庁の意向が反映していた側面もあり、事実、一時期、金融庁はスコアリング融資を各金融機関に推奨していたが、現在はとり止めている)2007年現在、りそな、三菱東京UFJの各行が相次いで新規取り扱いを停止している。
  • 利益率について
    • 大半の邦銀は、利益原資の8~9割が預貸金利鞘であるが、この伝統的業務に依存するビジネスモデルでは利益率が低く(邦銀の純利益率は2005年現在、1%~0.4%と外銀に比べ非常に低い)、さらに、間接金融から直接金融の流れの中で、縮小傾向にあるため、邦銀は、アメリカの銀行に追随して、消費者ローンや投信販売などの、リスクの高い金融商品の販売に活路を見出そうとしている。
    • この為、一時期、三井住友銀行プロミスに、三菱UFJフィナンシャル・グループアコムといった様に、利益率の高いとされた消費者金融業(サラ金)に出資、グループ傘下にし、連結収益のかさ上げを図った。しかし、近年の出資法改正議論によるグレーゾーン金利撤廃の動きの中、2007年現在、相次いだ過払い金返還請求により、消費者金融業界はビジネスモデルの変更を余儀なくされている。
    • また、外銀のように利益に占める役務収益(M&Aや、金融商品販売の手数料)割合の増加に力を入れているものの、短期での利益を追求するため、優越的地位の濫用を行い、意味合いの異なる金融商品を矢継ぎ早に客や取引先に半ば強引に、または損失リスクを告げずに売りつけて不利益を被らせることが多々ある。最近では、2005年に三井住友銀行法人営業部は、中小企業に融資する際、金利スワップ商品の購入を強要したため、公正取引委員会から排除勧告を、金融庁からは一部業務停止命令を受けた。
  • 国際マーケットでの存在感の低迷と直近における逆転優位
    • 失われた10年の間に、多くの銀行が海外から撤退・縮小し、日本では強みがあるが外国では振るわない「お山の大将」「井の中の蛙」のようになっている。近年、メガバンクは、アジア圏を中心に再進出を図っているが、セグメント収益に占める海外割合は依然2割前後と低い。例えば、HSBCの欧州・香港外地域からの収益の比率、シティグループの米国外地域からの収益の比率は、いずれもおよそ50%である。
    • 上記のように、失われた10年と揶揄された日本の銀行だが、2007年に入り、サブプライム問題を契機に、これまで利益率が高い、先進的ともてはやされていた、欧米の銀行、投資銀行などの金融機関が、相次いで破綻するという未曾有の国際金融危機を招いている中で、にわかに、日本の銀行が世界的に見て、圧倒的に優位な地位を占めるようになった。アメリカの状況は失われた10年どころではない、壊滅的な状況であり、欧州も同様である。これをみても、銀行の本質を利益率などで考えるような短絡的な評価を行ってきた外国ならびにそれに迎合してきたマスコミの論調は、自らの短期的視野についての反省を強いられている。
  • リレーションシップについて
    • 例えば、銀行員の人事異動サイクルは公務員同様、平均2~3年である。この短いサイクルの理由は、横領経済犯罪浮き貸しなど)を防ぐためである。しかし、バブル景気崩壊以降は、無理な融資や、十分な査定を行わなかったために不良債権となった融資などの責任の所在を不明瞭にするための隠れ蓑に利用される場合があるとされる。
    • 耐震偽装問題における被害者の住宅ローン(※1)、保険会社が倒産した変額保険ローンやゴルフ場が倒産したゴルフ会員権ローン(※2)等の、返済が免責されない、などの問題がある。
      ※1 アメリカでは、住居が瑕疵等で不動産担保としての価値が無くなればローンが法的に免責になる。これは、アメリカの住宅ローン制度が、担保物件以上に債務が訴求しないノンリコースローンとして“ローンの返済をしなくても、家を返せば完済となる”2008年1月21日付J-CASTニュース(枝川二郎のマネーの虎-借りてはいけない住宅ローン)仕組であり、銀行自身もローンの価格変動リスクを負うためである。ただし、不動産取引においてその担保価値の品質保証としてエスクロー制度が利用され、また、住宅ローンはすぐに証券化されモーゲージブローカによって有価証券として取引される。このため、サブプライムローンのようにリスクを第3者に転嫁してモラルハザードを行うような状況を招くなど、アメリカの住宅ローン制度は極めて問題がある制度であることが顕在化した。ローン免責が可能な背景には、法制度の前提として、制度的にその品質管理能力とリスクの分散が図られている点に留意が必要である。しかし、その品質管理能力やリスク分散が、結局は、モラルハザードによる国際金融危機を招く引き金となったという点で、アメリカの制度は欠陥が大きすぎる。日本の場合は、不動産証券化が途についたばかりであるゆえに、問題を生じていない。さらに、法的にも免責される制度はない(例えば、通常の売買契約で、耐震偽装問題のように商品に瑕疵また契約に錯誤・無効・詐欺がると、買主は、民法571条により担保責任との同時履行を主張して代金の支払を拒める。しかし、割賦購入斡旋、この場合の住宅ローンでは、売買と立替払契約とが別々になされているため、買主の売主に対する抗弁、つまり支払拒否が銀行に対して主張しうるかという問題が生ずる。判例による結論から言えば、信義則違反、つまり銀行が売主と密接不可分な関係であったことを買主が証明しない限り、その支払義務は免責されない。それゆえに、日本ではモラルハザードが生じにくいというメリットがある)。
      ※2 前述の住宅ローンと同様に免責がなされないが、これらは主にバブル期を中心に業者と銀行が一体となって販売を推進したため、より銀行の責任が大きいと言え、実際に各地でローン無効の訴訟が提起されている。
  • CSRの問題
    • また、2006年3月期決算は、各メガバンクともバブル期を上回る利益(もっとも、前年度の貸倒引当金戻入益の計上があるため、一時的な数字である)をあげた。朝日新聞は2006年11月26日付の社説で、預金者への利益還元のあり方、特に、手数料やサービスの是正が進んでいない、と主張した。一方、2006年より三菱東京UFJ銀行をはじめとする三菱UFJフィナンシャル・グループは、自行ATM及びコンビニATM(イーネットローソンATMセブン銀行)での振込手数料の一部を無料化した(窓口振込、ATMでの現金による振込、三菱東京UFJダイレクト(有人対応分)による振込、他行あては対象外。ATM時間外手数料は所定の手数料がかかる)。また、同グループの三菱東京UFJ銀行は上記3社が運営するコンビニATMでのコンビニ利用手数料を2007年3月に全面的に廃止した。そして、同年のゼロ金利政策解除により、各銀行の普通預金金利は上昇した。
    • なお、大手金融機関は失われた10年で相次いだ赤字決算の繰越控除が続いているため、2007年現在で法人税等を納付しているのは、住友信託銀行のみである。

外国の銀行

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銀行証券分離について

1929年の金融大恐慌を契機に、アメリカではグラス・スティーガル法が制定され、銀行による株式保有が禁止された。これは、預金通貨を発行する銀行が、価格変動のある株式を資産として保有すると、預金通貨の安定が損なわれるためである。しかしながら、日本では、戦後の財閥解体の結果、株式持ち株会社が禁止され、便宜的に銀行が株式を保有するという変則的で異例な措置がとられた。右肩上がりの経済が続く中で、こうした株式保有のリスクは、バブル景気の崩壊まで顕在化しなかったが、平成に入って、株価が暴落を続ける中で、銀行の株式保有制限を行ってこなかった金融当局と株式保有を当然と考えていた銀行経営者は、深刻な事態に陥り、塗炭の苦しみに陥る。こうして失われた10年を通じて、日本は世界の金融界で存在感・発言権を失い、BIS規制や時価会計などを押し付けられ、金融や会計の面での敗戦国ともいうべき屈辱的な地位に甘んずることになる。(出典:「時価会計不況」(田中弘:新潮)「不思議の国の会計学」(田中弘:税務経理協会)を参照)

この間、アメリカを中心にした金融工学デリバティブの発達により、世界の金融界は、「統計学的分析によるリスク管理が、飛躍的なリスク管理の進歩を可能にした」という、一種の幻想に陥り、1999年の金融制度改革法の制定など、リスク軽視による規制緩和の方向に走る。これは、戦後においてモノづくりで日本に負けたアメリカが、1990年代においてITと金融自由化を重点におき、「間接金融から直接金融への転換」(金融ビッグバン)、円キャリー取引により日本から多額の資金を引き出し、世界で投機を行うことで金融覇権をめざすという、いわゆるグローバル資本主義(カジノ資本主義)の国家戦略の一環でもあった。しかしながら、そうしたリスクの商品化の結果、ブラックマンデーアジア通貨危機LTCM事件を経て、ついに2007年にはサブプライム問題が露呈し、アメリカを中心とした先進的と言われてきた金融システムが、極めて脆弱で愚かしい基盤の上に成り立っていたことが明確になり、アメリカの大手投資銀行、保険会社、住宅公社、大手地方銀行が軒並み巨額の不良債権を抱えて破綻し、欧州の銀行も、連鎖的に危機に陥り、世界は金融恐慌に陥っている。こうした中で、日本の銀行は、バブルの反省もあり、比較的傷が小さいことから、いまや国際的な地位は大きく逆転しており、日本の銀行の発言力が相対的に高まっている。(出典:「カジノ資本主義――国際金融恐慌の政治経済学」(スーザン・ストレンジ:岩波書店)、「グローバル資本主義―危機か繁栄か」(ロバート・ギルビン:東洋経済新報社)、「グローバル資本主義の暴走と民主主義の終焉」(水野和夫:中央公論2008.2)、「2008年、連鎖する信用不安」(熊野英生:中央公論2008.2)、「下村理論で現在を読めば財政均衡が最優先課題だ」(飯倉穣:2008.2.12エコノミスト)、「アメリカニズムの終焉と世界不況」(佐伯啓思、堺屋太一2008.12中央公論)を参照)

いずれにせよ、銀行の基本は、一般企業のような「利益の拡大」ではなく「安定した預金通貨の発行」である。アメリカの金融システムは、リスク管理を過信すると同時に、株主資本主義の結果、自らの利益拡大を優先し、「安定した預金通貨の発行」のための「健全な資産の保有」という原則を軽視し、株式の保有やサブプライム商品、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)、またSIV(ストラテジック・インベストメント・ビークル)のような抜け道企業を通じたリスクの高い取引などを積極的に拡大した。これは「リスクなくしてリターン無し」という証券投資における現代ポートフォリオ理論にもとづく。しかし、これに経済学における完全競争市場モデルを加味すると、理論的には「リターン-リスク=ゼロ」になるまで競争は続くので「リスクをとって収益を得る」というビジネスモデルでは銀行は収益を得られず、経営は成り立たない。実際にも、過当競争の結果、理論値をさらに超えて、リターンを上回る過大なリスクをとってしまうという「リスクテイクバブル」を惹起し、これが相次ぐ欧米銀行破綻の原因となった。その意味で、今後は、取引先を適正に指導してリスクを軽減し、取引先の健全な発展のサポートをするという、「リスクの軽減」を基本とする本来の商業銀行のあり方に回帰することが必要である。今後銀行について考える際には、こうした銀行の本来業務は何かという議論が重要となるだろう。(出典:「すべての経済はバブルに通じる」(小幡績:光文社)、「なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物」(チャールズ・R・モリス:日本経済新聞社)、「強欲資本主義ウォール街の自爆」(神谷秀樹:文書新書)を参照)

脚注

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関連項目

外部リンク

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