豚肉

出典: Wikipedio


豚肉(ぶたにく)とは、ポーク英語 pork )とも呼ばれる。食肉にされる。日本においては、地域によらず平均的に食べられている。<ref>全国消費実態調査 生精肉の各地域一世帯あたり支出額 2004年</ref>

目次

日本での歴史

Template:Main 日本では弥生時代の遺跡から出土し当初イノシシと思われていた骨が豚の骨と判明した。古墳時代の遺跡からも豚の骨は出土している。『日本書紀』、『万葉集(萬葉集)』、『古事記』に猪飼、猪甘、猪養などという言葉があり(「猪」は中国ではブタのことを指す)、その当時は日本でも豚の飼育が行われていたことが窺える。

その後、天武天皇5年675年に最初の肉食禁止令が出され、4月1日から9月30日までの間、稚魚の保護と五畜(ウシウマニホンザルニワトリイヌ)の肉を食べてはいけないとされたがこれに豚は含まれていなかった。戦国時代キリスト教イエズス会宣教師たちが、キリシタン大名たちを介して肉食の慣習を日本に持ち込んだため、一時的に豚肉が食べられるようになった。

やがて日本の大部分の地域では豚肉を食べる習慣は廃れ、わずかに薩摩藩南西諸島では日常的に養豚が為されていた。琉球では17世紀以前は牛肉がその座を占めていたが、羽地朝秀の改革によりウシの食用が禁止され、その後冊封使節団を接待するため王府によりブタの大量生産が奨励された事なども相まって、牛肉に代わる存在となっていった。そして、現在の沖縄料理では最も重要な食材となっている。沖縄で飼育されている豚は、1385年に渡来したという琉球王国時代より続く血統の黒豚「アーグ」が有名。「アグー」または「シマウヮー(“島豚”の意)」とも。

一方薩摩でも、豚肉を用いた薩摩料理が発達した。西郷隆盛も脂身のたっぷりついた豚肉が大好物だったという。Template:和暦佐藤信淵著『経済要録』には、薩摩藩の江戸邸では豚を飼育し、それによって取れた豚肉を町で売っていたという記録が為されている。また、江戸ではももんじ屋などで食べられた。Template:和暦5月2日の書簡によれば、江戸幕府最後の征夷大将軍徳川慶喜は、島津斉彬から父・徳川斉昭宛てに豚肉が送られていたという。そのせいか、彼は豚肉を好んで食べており、下々の者たちから「豚一様」と呼ばれていた。「豚一様」とは、「豚肉がお好きな一橋様」の略称である。新選組西本願寺駐屯時に、松本良順の勧めで神戸から子豚を持ち込んで養豚し、食べていた。豚の解体は京都木屋町の医者・南部精一の弟子に依頼していた。福澤諭吉著『西洋衣食住』には、大坂にあった緒方洪庵適塾にて学ぶ塾生たちも豚を食べていたとの記録がなされている。

明治維新以後は日本全土で豚肉が一般に食べられるようになり、夏目漱石の小説『吾輩は猫である』にもそのことに関する記述が見られる。特に関東大震災後の関東地方ではにわかに養豚ブームが起き、豚肉の供給量が増え安価になったため、庶民たちにも比較的手の届くものとなった。関東を中心とする多くの地方で「肉」と言えば豚肉のことを指すようにもなった。なお、近畿地方で「肉」と言えば牛肉のことを指し、豚肉は「豚」と呼ばれる事が多い。従って近畿では、豚肉などを使った中華まんのことを「肉まん」とは呼ばず「豚まん」と呼ぶ。

食用部位

豚肉の部位は、農林水産省が定めた「食肉小売品質基準<ref>熊本県畜産協会 食肉の基礎知識 食肉小売品質基準の内容 外部リンク</ref>」によって以下の7部位で表示するよう統一されている。

法律上は定まっていないが、以下の部位も広く知られている。

  • 豚トロ - 頬下部から首の脂身の肉
  • ガツ - 胃
  • シンタン - 心臓と舌
  • 豚足 - 足首から先の足部

牛肉と比べて、安価なイメージのある食肉だが、高価な銘柄肉も存在する。

生食の危険性

豚自体が保有している豚ヘルペスウィルストキソプラズマ、E型肝炎などの感染症にかかる恐れがある。更に、と畜流通段階に於いては、カンピロバクターリステリアほかの食中毒原因菌汚染の可能性がある、後述のSPF豚肉といえども加熱調理は必須。

E型肝炎

一部の料理店では豚のレアステーキや豚のたたきなど生食に近い調理法の料理も供されるようになったが、生レバーなどを介してE型肝炎ウイルスが人体に寄生し、E型肝炎ウイルス性肝炎)に感染する危険性が高い。豚肉は生食を回避し、十分に熱を通して調理した方が安全である(下記“外部リンク”の項目を参照)。

条虫感染症

豚の筋肉(赤身の部分)は、人を固有宿主としている有鉤条虫の幼虫(有鉤嚢虫)の寄生部位であり、生食すると感染する恐れがある。有鉤条虫に感染した場合、成虫が産卵した虫卵が人の小腸内で孵化し、身体各所に有鉤嚢虫が寄生する人体有鉤嚢虫と言う状態となることがある。有鉤嚢虫は、眼球・脳などにも寄生することがあり、時に重篤な症状を呈することがある。
日本では、沖縄を除いて有鉤条虫は分布していないとされ発症例は1935年以降確認されていないとしているが、近年は感染例が増加傾向にあり、海外での感染や、輸入された豚が有鉤嚢虫に感染している事が原因と考えられている。このような理由から、豚肉は十分に火を通してから食べた方が良い。

SPF豚(健康豚・健全豚)

SPF (Specific Pathogen Free)とは、指定された病原体をもっていないという意味で、「特定疾患不在豚」と訳される。親となる原々種豚生産農場に於いて、無菌室内で帝王切開で取り出した子豚を、保育器で育て加熱滅菌した餌だけを与える方法を用いて繁殖と飼育を行いSPF豚の親とし、自然分娩で出産した子豚を食肉用のSPF豚として、厳重な防疫体制を取った一般的な普通の豚舎で飼育する。つまり、全ての子豚を帝王切開で取り出しているのではなく、親となる原々種豚農場は帝王切開で取り出し育てているが、食肉用になる一般の子豚は自然分娩で出産し160日程度飼育される<ref name="j-spf0">SPF豚に関するQ&A日本SPF豚協会</ref>。
疾病罹患のストレスのない快適な環境で育てるため、肉質も軟らかく、豚のしゃぶしゃぶや前述した豚のたたきなど加熱処理時間の短い料理用の肉として供される。肉の締まり具合が不足し水っぽい感じがあるとの意見もある<ref>SPF豚肉は生食できるか? 日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室</ref>。生食をしても問題ないと誤解されているが、E型肝炎感染のおそれは残るため、SPF豚肉といえども加熱調理は必須。日本SPF豚協会が規制している健康を害する菌がいないだけで、特殊な環境で育てられた無菌豚(Germ Free)とは違いがあることに注意
「日本SPF豚協会」が規制対象にしている5つの病気 <ref name="j-spf1">SPF豚とは?日本SPF豚協会</ref> 。

豚肉のタブー

世界には豚肉の食用を禁じる宗教がある。

イスラム教では豚は不浄なものであるとされ、食のタブーとして食用が禁じられている。そのため、中東のイスラム諸国はもとより、中国シンガポールマレーシアインドネシアなどムスリムの人口が多い国や都市では、ムスリム向けに豚肉を一切料理に使用していないこと、ラード豚骨スープ等豚に由来する成分なども使用していないこと、そして豚以外の肉でも所定の手続きを踏んで屠殺したものであることの3箇条を示す「ハラール (Halal) 」という証明書の取得と表示が料理店に対し義務付けられている。マクドナルドケンタッキーフライドチキンなどの外資系ファーストフード店にも表示が義務付けられており、さらには現地で販売されているスナック菓子などにも、表示が付けられているのを見ることができる。豚を巡っては、イスラムの影響の強いインドネシアで味の素の一部生産工程(豚から作られた酵素を使用する)を巡る騒ぎがあったこともある。

また、ユダヤ教でもカシュルートにより豚肉の食用が禁じられている。

このような宗教的な事情から、多国籍(多宗教)の乗客の利用が想定される国際線の機内食では、基本的に豚肉は使っておらず、さらに特別な儀式で加工・調理されたイスラム食やユダヤ食もリクエストにより提供されている。

ただ、宗教上による豚肉の食のタブーは誤って認識されていることも事実である。イスラームに関して言えば、豚肉を食することを禁じる以前に、イスラームの方法で屠殺されていない哺乳類や鳥類の肉の食用は全て禁じられているのである。厳密に言えば豚肉を食べてはいけないと言う以前に、イスラームの方法で屠殺された豚肉は存在しないので、食べることは無いのである。厳格なムスリムは豚肉に限らず出所の不明な哺乳類や鳥類の肉は一切口にしない。 個人によっては豚肉以外の、牛肉や鶏肉ならイスラームの方法で屠殺されていないものでも食べるというムスリムは少なくない。しかしそれはイスラーム法の観点から言えば豚肉を食べるのと同様、禁じられている行為である。クルアーンなどにおいて特に豚肉と、それ以外に禁じられているものの間に優先順位などは述べられていない。そのため、豚肉の食を忌避するのは宗教上の理由よりも(日本人がネズミやトカゲを食べない、食べたいとも思わないのと同様)文化的嗜好の問題ともいえる。 なおイスラームに関して言えば、飲酒などとは異なり、豚肉などの禁じられた食物を食べることには特に罰則は設けられていない。言うまでも無く、何らかの事情で、禁じられた食物を食べる以外に術の無い状況での食利用は許されている。イスラム教徒が多数派を占めるインドネシアでも、慢性的に食糧事情に恵まれない、非イスラム教徒の山岳少数民族に対し、むしろ豚を飼育してそれを食料にあてる事を奨励している。

関連項目

脚注

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外部リンク

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