西部劇

出典: Wikipedio


西部劇(せいぶげき)とは Western(ウェスタン)の訳語であり、主にアメリカ西部開拓時代19世紀後半から20世紀にかけて)を舞台にした小説映画であるが、特に断らない場合は映画(テレビ映画を含む)を指す。日本で言えば、時代劇に相当する。

目次

アメリカ製西部劇

サイレント映画の登場とともに、アクションを売り物に盛んに製作された。その後、トーキーが普及するとジョン・フォード監督の『駅馬車』など、傑作が次々と発表された。

実在した保安官(代表例として、ワイアット・アープがあげられる)やガンマンを題材にして、(白人の側から見た)アメリカの大自然と開拓魂を背景に詩情豊かに描かれる西部劇は多くの人々を魅了し、アメリカ人は西部開拓時代へのノスタルジーを掻き立てられた。

戦後はテレビ映画にも進出し、1960年代初頭まで隆盛を誇り、同時期に日本にも『ローハイド』『ララミー牧場』など多くの作品が輸入され、当時のテレビ番組の主力として高い人気を博していたが、1960年代に入ると、人権意識の高揚とともにインディアン黒人の描き方が糾弾されるようになって制作が控えられるようになった。「ソルジャーブルー」はコロラド州で多数のシャイアン族が犠牲になった、サンドクリークの虐殺(1864年)を基に、インディアンの立場から描かれた数少ない作品の一つである。

現在においても西部劇は制作されているが、過去の傑作と肩を並べるような作品を世に送り出していない。黒人やインディアンの描写は、腫れ物にでも触るような扱いとなっている。その一方、時代考証や衣装設定、ガン・アクションは過去の作品とは比較できないほどの正確さで表現されており、娯楽性に富んだ作品(トゥームストーン等)に仕上がったものも多い。

インディアンとハリウッド西部劇

西部劇は、インディアンのイメージを決定付けた。劇中に登場するインディアン達は、決まって馬にまたがって派手な羽飾りをつけ、手斧を振り回し、「アワワワワ」と鬨の声を挙げて襲ってくる。このうち、馬にまたがり、羽飾りをつけること以外は出鱈目なものである。彼らの衣装も、撮影所のデザイナーが考えたものであり、またそのほとんどが、非インディアンである白人たちが演じており、資料的価値は皆無である。平原の部族の風俗である羽飾りをつけ、片言の英語を喋るこのステレオタイプは、その後世界中の人々が「インディアン」と聞いて真っ先に頭に思い浮かぶイメージとなった。TVシリーズ『ローン・レンジャー』に出てくる、主人公の相棒であるインディアンの「トント」は、インディアンの間では「白人に諂うインディアン」の代名詞となっている。

こういったハリウッドにおけるステレオタイプな西部劇の息の根をほぼ止めた、とされるのは俳優のマーロン・ブランドである。彼は、インディアン権利団体「AIM(アメリカ・インディアン・ムーブメント)」に賛同し、同団体設立当初から助言と運動をともにしていたが、1973年に映画『ゴッド・ファーザー』でアカデミー賞を受賞した際、授賞式に「インディアン女性」を代理出席させ、ハリウッド西部劇において、いかにインディアンが理不尽な扱いを受けているかメッセージを代読させた。しかも、この「インディアン女性」は実は非インディアンのフィリピン系女性だった。つまり、これ自体が上記のようなデタラメな白人が演じるインディアンのパロディーであり、ハリウッドに対するブランド一流のからかいであった。ハリウッド映画界は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなり、これに呼応して黒人団体も抗議の声を上げ、西部劇は本来あるべき政治的にデリケートなジャンルとなったのである。

ラッセル・ミーンズは、インディアン権利団体「アメリカ・インディアン運動(AIM)」の運動家、スポークスマンであり、映画俳優でもある。彼はハリウッド映画についてのインタビューに答え、こう述べている。

ハリウッドが映画の中でインディアンの人々に求める姿として、私たちは、2種類の姿でいさえすればよいのです。私たちは夏の間、革服で盛装します。あるいは、我々は『スキンズ』だとか、『スモーク・シグナルズ』のような映画のように、酔っぱらいの社会不適格者でないといけないのです<ref>ラッセル・ミーンズの公式サイト『Russell Means Freedom』でのインタビュー記事“Russell Means Interview with Dan Skye of High Times”(2009年5月20日)より </ref>。

1940年代のある土曜日の午後に、私は弟のデイスと二人でカリフォルニアのバレーホにあるエスクァイア映画劇場へ映画を観に行ったことがあります。その映画にはカウボーイとインディアンが出てきて、満場の観客たちが大喝采する中、進軍ラッパが鳴り響き、騎兵隊が撃ちまくり、否も応もなしにインディアンがぶち殺されるんです。デイスは、とても見ていられない様子でした。 彼は、顔を手で覆っていました。あなたが8歳か9歳だった頃、私たちはそんなふうだったんです。あなたは多分、今度の映画(『ラスト・オブ・モヒカン』)はそれと違ってインディアンが勝つかもしれないなと思うでしょうね。まあそれからその後で、私たちは映画館を出るわけです。

それから、これはホントの話なんですが、私たち兄弟は、メキシコ人とかフィリピン人、中国人や黒人に対して、ちょうど白人と戦うのと同じようにして、背中合わせに戦わなければなりませんでした。こういう近所の子供たち全員が、私たちに言うわけです。「おいインディアン、思いっきりケツひっぱたいてやるぞ!」とね<ref>『Entertainment Weekly』誌でのインタビュー記事“Acting Against Racism”(1995年10月23日)より</ref>。

マカロニ・ウェスタン(諸外国の西部劇)

西部劇はドイツイタリアなどでも制作された。特にイタリア製西部劇映画(「スパゲティ・ウェスタン」が正称だが、日本では語感と呼びやすさを重視して「マカロニ・ウェスタン」と改められた)は、1965年の『荒野の用心棒』が大ヒットすると、アメリカでの仕事が減少していた中堅の西部劇スターが大挙して出演し、盛んにマカロニ・ウェスタンが制作され、一時的に大ブームを引き起こした。しかし、ブームに便乗しただけの駄作も多く、客の支持を失い衰退に向かった。

マカロニ・ウェスタンはアクションと残酷シーンを売り物に、史実を無視した自由な発想で制作されており、ロケ先もメキシコスペインの荒涼とした砂漠地帯を選んだ。

日本で西部劇を模して制作された小林旭主演の『渡り鳥』シリーズなどの無国籍映画は、マカロニ・ウェスタンに対して鍋焼きウェスタンと呼ばれた。

ピースメーカー(SAA)

ガンマンが題材となることの多い西部劇には、正確な考証に基づくものから近現代の銃器を手直ししてそれらしく見せかけたものまで、様々の銃器が小道具として登場した。中でも象徴的なのが「ピースメーカー」(Colt Single Action Army.45 以下SAAと記述)である。 腰のガンベルトにSAAを収めたカウボーイスタイルは、映画に登場する西部ガンマンの定番であった。日本においても、西部劇人気の高まりと共にSAAの知名度は上昇し、多くのメーカーからトイガン製品が販売された。

SAAには様々のバリエーションが存在するが、特にマカロニ・ウェスタンにおいて、主役は5.5インチ、悪役のボスは7.5インチ、その他大勢は4.75インチという具合に、持ち主の役どころにより銃身長が決められている場合が多かった。

目にも止まらぬ抜き撃ち連射、華麗なスピンといったガンプレイに習熟することが出演俳優には要求された。引き金を引いたままでSAAを抜き、撃鉄をもう一方の手で連打することで高速に連射する「ファニング」と呼ばれるテクニックは、このようなガンプレイに熟達した俳優により生み出されたものである。

なお、代表的な西部劇のスターであるジョン・ウェインはSAAによるガンプレイが苦手で、ウィンチェスター銃(ライフル)を愛用したと伝えられる。

監督

俳優

映画

ハリウッド製西部劇の代表的なものには次のようなものがある。

テレビ西部劇(日本での放送)

脚注

<references/>

関連事項

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