荒木飛呂彦

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荒木 飛呂彦(あらき ひろひこ、1960年6月7日 - )は、日本漫画家。本名、荒木 利之(あらき としゆき)。宮城県仙台市出身。東北学院榴ヶ岡高等学校卒、宮城教育大学中退、仙台デザイン専門学校卒。身長169.5cm、体重(2007年現在)61kg、血液型はB型。既婚者で二女の父。

1980年『武装ポーカー』でデビュー。代表作は1987年『週刊少年ジャンプ』にて連載開始された『ジョジョの奇妙な冒険』。同作品は主人公、舞台を変えながら20年に渡って連載されており、2010年現在まで総計100巻、発行部数は7000万部に及ぶ<ref>吉田大助「特集 ジョジョの奇妙な冒険(冒頭部)」『QuickJapan』Vol.75(2007年)89頁</ref>。その作風は「王道を行きながら実験的」と評されている<ref name=EUI1>斎藤環「書き続ける勇気 荒木飛呂彦インタビュー」『ユリイカ』1997年4月号、135頁-143頁</ref><ref>『QuickJapan』Vol.75、巻頭ページ(文・吉田大助)</ref>。

東北学院榴ヶ岡高等学校の同期生に、映画監督田代廣孝、フリーライター永沢光雄がいる。

目次

略歴

小学生時代は少年野球をしており、中学時代は剣道部に所属<ref name=NON/>。幼少期から「ひとりの世界」に浸るのが好きで早くから漫画も描いていた。当時は梶原一騎の漫画作品『巨人の星』(川崎のぼる画)、『あしたのジョー』(ちばてつや画)などを愛読<ref name=NON/>、また白土三平忍者漫画『サスケ』、『カムイ伝』の理論的な作風に影響を受けた<ref name=QJI>吉田大助「荒木飛呂彦 12000字インタビュー」『QuickJapan』Vol.75、90頁-98頁</ref>。小説では江戸川乱歩や『シャーロック・ホームズ』シリーズをよく読んでいたという<ref name=NON>石井洋「人物研究 荒木飛呂彦」『Men's Non-no』2002年7月号、160頁-163頁</ref>。なお荒木には4つ下の双子の妹がおり、この2人の仲がよくて家族の中で疎外感を抱いていたため、ひとりで何かを楽しむことが余計に好きになったのだと思う、とインタビューで語っている<ref name=NON/><ref name=QJI/>。

高校時代はロードレース部に所属<ref name=NON/>。この頃に横山光輝のサスペンス作品を愛読する。特に学生服の主人公が古代遺跡を探検する『バビル2世』は『ジョジョの奇妙な冒険』Part3のモチーフに影響を与えており<ref name=NON/>、インタビューでは「自分の原点」とも述べている<ref name=MAT1-2>まんが天国 マンガのチカラ「荒木飛呂彦先生インタビュー その2」</ref>。

16歳の時に同い年のゆでたまごが『週刊少年ジャンプ』でデビューしたことに焦りを感じ、高校3年の時に初投稿、以後何度か投稿を重ね、専門学校在学中の1980年に『武装ポーカー』で手塚賞<ref>授賞式の際の映像が1981年5月25日NHK特集『わが青春のトキワ荘〜現代マンガ家立志伝〜』にて放送された。このなかで手塚治虫は荒木の作品について「大変興味がある」「早く上京して来て下さい。東北出身は少ないから」というコメントを残している。</ref>に準入選しデビュー。以後『週刊少年ジャンプ』で『魔少年ビーティー』『バオー来訪者』の短期連載を経て、1986年より『ジョジョの奇妙な冒険』の連載を開始。2003年までに6部の物語を執筆。同誌にてPart7にあたる『スティール・ボール・ラン』の連載を開始する。2005年より月刊誌『ウルトラジャンプ』に移籍。2010年、『ジョジョ』シリーズは通算100巻を達成した。

作風

荒木の作品は極端な構図やパース、登場人物の独特なファッションやポージング、特徴的な台詞回しや擬音などの強い個性を持っており、従来の日本的な漫画の作風とは大きくかけ離れた外見を持っている。また非常に動感のある作画、グロテスクな描写をカラッと表現する技法にも定評がある。インタビューではそれぞれの特徴の成り立ちや由来がおおむね明らかにされており、一見、特異に見える荒木の作風も、日本の少年漫画の伝統を踏まえて成立したことがわかる。評論家の加藤幹郎は、高度な技術で過去の作品の引用を行なうその作風から荒木をマニエリスムの作家と言い表している<ref>加藤幹郎「法外なもの、不均衡なもの、否定的なもの」『ユリイカ』2007年11月臨時増刊号、84頁-96頁</ref>。

一方で連載開始時から「人間賛歌」をメインテーマとして掲げる『ジョジョの奇妙な冒険』は「ある意味で少年漫画の王道」と評されており<ref name=EUI1/>、荒木自身「昔からある少年漫画の伝統を受け継いでいるつもり」と話している<ref name=EUI1/>。

絵柄

荒木は自身の絵柄についてルネッサンス美術、特にミケランジェロに影響を受けたと公言しており<ref name=EU1>暮沢剛巳「Stand and Distortion」『ユリイカ』2007年11月臨時増刊号、97頁-103頁</ref>、後述するように「ジョジョ立ち」と呼ばれる独特のポージングもイタリア美術が発想の元となっている。また「ヴォーグ」などのファッション雑誌が好きで<ref name=MAT2-1>まんが天国 マンガのチカラ「荒木飛呂彦先生インタビュー その3」 </ref>、80年代のベルサーチモスキーノen:Franco Moschino)などが『ジョジョ』のファッションのルーツだと語っている<ref name=NON/>。色は紫を好み<ref name=QJI/>、カラーイラストでも多用される。絵柄についてはファッション・イラストレーターのアントニオ・ロペス()やSF・ファンタジー画家のフランク・フラゼッタ、ヨーロッパの漫画家エンキ・ビラルユーゴ・プラットen:Hugo Pratt)などからの影響も指摘されている<ref name=EU1/>。

コマ割り

荒木の作品では非対称な変形コマを多用し、ページ全体が歪んで見えるようなコマ割りがしばしば行なわれる。「斜めになったコマ」はそれほど珍しいものではないが、「1ページのコマ割り全体が斜めになっている」のは他にあまり例がない<ref name=EU2>イズミノウユキ「ヘヴン・ノウズ・ハウ・ザット・ビジョン・イズ」『ユリイカ』2007年11月臨時増刊号、146頁-172頁。ただし、「斜めになったコマ」の分析自体は「メビウス・ラビリンス」を元にしたもの。</ref>。この変形ゴマは『ジョジョ』Part3後半より使われるようになり次第に頻度が増え、それに従いコマ外の余白が増えていったが、Part7『スティール・ボール・ラン』では全ページがタチキリ(ページの端いっぱいまで絵を入れること)で描かれるようになったため余白が激減した。このタチキリの使用については、Part7の舞台である西部アメリカの広大さを意識して取られた方法ではないかと指摘されている<ref name=EU2/>。

台詞回し・擬音

台詞回しはしばしば翻訳調と言われており、荒木自身も「本を読んだ影響が残っているんじゃあないか」と話している<ref name=EUI1/>(この"じゃあないか"というのも"じゃないか"に「あ」を加えた荒木独特の口調であり、"じゃあない"、"じゃあないぜ"、"じゃあないのォ?"といったパターンも確認されている)。作中の人物の特徴的な言い回しはネット上で改変されて使われることも多い<ref name=EUI2>斎藤環ほか「徹底討議 男たちの奇妙な愛情!?」『ユリイカ』2007年11月臨時増刊号、8頁-34頁</ref>。また緊迫したシーンなどで「ドドドドドド・・・・」や「バ―――ン」といった(物理的ではなく)心理的な状態を表現する独特の擬音が使われており、これらはサスペンス映画で使われるような効果音を漫画にも欲しいと思ったことが発想の元になったと述べている<ref name=EUI1/>。なお登場人物が必殺技の名前を叫ぶのは車田正美の影響である<ref name=EUI1/>。

ジョジョ立ち

『ジョジョの奇妙な冒険』には登場人物に腰の極端なひねりや回転、奇矯な手足の動きなどを加えた独特のポージングが頻出する。「ジョジョ立ち」と呼ばれるこれらのポーズは、荒木が20代のときに『北斗の拳』『リングにかけろ』『キャプテン翼』などの強い個性を持つ当時の『ジャンプ』連載陣の中で自分の独創性を模索していた頃、イタリアの彫刻芸術からヒントを得て作り上げられたものだという<ref name=MAT1-2/><ref name=EUI2/>。

頭脳戦

『ジョジョの奇妙な冒険』は、『週刊少年ジャンプ』における伝統的な「バトル漫画」に、心理的な駆け引きやトリックによる「頭脳戦」を導入し、それまで主流であった「力比べ」だけで行き詰まりかけていたバトル漫画に新たな展開をもたらした評価されている<ref name=VOI>「[少年ジャンプ]というジャンル」『STUDIO VOICE』2008年2月号、INFASパブリケーションズ、20頁-73頁</ref><ref>元長柾木「『ジョジョ』だってインフレする!」『ユリイカ』2007年11月臨時増刊号、106頁-109頁</ref>。特にPart3以降に登場する「スタンド」(様々な超能力をヴィジュアル化したキャラクター)の概念は、人物ごとに異なった能力で勝負する「能力バトル」という新形式を『ジャンプ』に限らずバトル漫画全体に普及させた。これらのことから「現在のバトルマンガは全て『ジョジョ』の影響下にあると言っても過言ではない」とも評されている<ref>更科修一郎ほか「JUMP CHRONICLE」前掲『STUDIO VOICE』2008年2月号、36頁-39頁</ref>。

作中の「波紋」(呼吸を中心とする特殊な身体技法)や「スタンド」の能力表現は、同郷の先輩である大友克洋の作品に登場する「歪む背景」などの超能力が、不可視であることに不満をもったことが発想の元となったという<ref name=EUI1/><ref name=QJI/>(また「スタンド」に関してはつのだじろううしろの百太郎』にも言及している<ref name=EUI2/>)。なお大友の作品に関しては、空間表現や緻密な描写などが大いに作画の勉強になったとも語っている<ref name=EUI1/>。

執筆スタイル

基本的に徹夜をせず、毎朝10時に起床する生活をしており、日曜日はネーム、火、水、木で作画、金、土は休養(取材)というサイクルの執筆を10年以上続けている<ref name=EUI1/><ref name=MAT1-1>まんが天国 マンガのチカラ「荒木飛呂彦先生インタビュー その1」</ref>。このような規則正しい生活は『週刊少年ジャンプ』で『こちら葛飾区亀有公園前派出所』を長寿連載している秋本治を見習ってのことで、締め切りも今まで破ったことがないという<ref name=MAT1-1/>。単行本の著者近影は10数年間ほとんど変わらず若々しさを保っており(むしろネット等の評判では「若返っている」とまで言われる始末)、『ユリイカ』で10年越しにインタビューを行なった斎藤環は「当時と比べてまったくお変わりないですね。むしろ若返ったくらいで驚くばかりです。さすが波紋の使い手というか……」と作品にちなんで驚きを表した<ref name=EUI2/>。

年譜

作品リスト

漫画

太字は連載作品。●:『ゴージャス☆アイリン』収録、○:『死刑執行中脱獄進行中』収録、◎:単行本未収録。

単行本

発行は注記のない限り全て集英社

画集

  • JoJo6251 荒木飛呂彦の世界(1993年)
  • JOJO A-GO!GO!(2000年)

その他

TV出演歴

関連人物

こせきこうじ
荒木が生まれて初めて肉眼で目撃した漫画家はこせきこうじで、手塚賞赤塚賞授賞式の場であった。荒木はこせきの『県立海空高校野球部員山下たろーくん』第5巻に文章を寄稿しており、同作品について「ジョジョを書く上でどの作品よりも影響を受け、最も尊敬している作品である」「漫画のヒーローは心の底に誰よりも熱い気持ちを持ち、目的を持って成長すればいい、という事を教えられた」と書いている。
高橋和希
漫画『遊戯王』の原作者で荒木のファン。『ジョジョ』を見たことが漫画家を目指すきっかけになっており、『遊戯王』の劇中カードゲーム『デュエルモンスターズ』の原型は実在するカードゲームと『ジョジョ』の世界観である「スタンド」に由来し、カード自身が魂を持ち対話し持ち主を守るといった自我まであるなど、世界観は『ジョジョ』のPart3以降を元に製作している(コマ割り、擬音もアレンジもあるが共通)。高橋曰くPart3から『ジョジョ』に嵌ったとコメントしている。

アシスタント

過去歴代アシスタント(業界現役、及び引退込み)

  • 蒔野靖弘(魔少年ビーティー時のアシスタント。仙台で執筆中の荒木氏の第1号アシスタントとされる。)[1]

参考文献

出典・脚注

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外部リンク

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