絶版

出典: Wikipedio


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絶版(ぜっぱん)とは、重版などで新しく印刷することを断念され、版権が放棄された書籍のこと。絶版になると書籍の現物が流通しなくなるため、当該書籍を書店で注文しても入手できなくなる。

転じて、生産が中止、または終了となり一般流通からの入手が困難になっている物品に対しても用いる。

目次

絶版になる理由

通常は、売上が伸びない、もしくはこれ以上売上が伸びる可能性がないと判断された場合、出版社は著者との契約に基づき著作権放棄の手続きを取り、絶版となる。

絵本『ちびくろサンボ』の例のように、見る人によって内容が差別的であると判断された場合などは、売上がある本でも出版社の判断によって絶版にされる場合がある。なお、登場人物の描写に差別的表現があるとして批判を受けた栗本薫著の『グイン・サーガ』1巻の例では、問題を指摘された初版を絶版とし、内容を修正した改訂版が発売された。

著者の意向で絶版になることもある。髙村薫は、一度世に出した作品でもそれを執筆当時の成果物として絶対視せずにその後も育て続けるという考えの持ち主で、文庫化などの際には全編大幅に改稿した〈改訂版〉とし、同時に既発表版は絶版としている。

安部公房の『飛ぶ男』は当初、安部の遺稿として出版されたが、出版後に安部の夫人である安部真知が故人に無断で手を加えていたことが問題となり絶版となっている。

出版社が倒産して無くなってしまった場合、著作権はすべて償却されるため、その出版社から出ていた本は当然すべて絶版になる。もちろん、著作権を引き継いで印刷・発行を続けてくれる出版社が見つかった本についてはこの限りではない。

しかし、期間限定発売等の理由での絶版は、著作放棄の対象にはならない。

絶版と著作権

絶版と似た状態で品切重版未定というものがある。版元在庫もなく重版の予定もない点では絶版と同じだが、著作権が放棄されずに維持され続けている点が絶版と異なる。このため印刷版などは廃棄されずに保管されている(少なくとも建前上は)。例えば岩波文庫は原則として絶版がないため、版元在庫のない本はすべて「品切重版未定」である。

作品が映画化されるなど再び話題になった場合や、要望が多く出版社も興味を示した場合などには、絶版となっていた書籍が他の出版社から復刊されることがある。

しかし出版社と著者の間の契約が曖昧であったり、出版社が将来の人気再燃を睨んで著作権を保持しておきたがる場合もあるため、両者の区別が外部から見て判然としないことも少なくない。このため一般には、品切重版未定であっても事実上の絶版として捉えられることも多い。

出版以外の業界では

製造業の世界でも出版界に倣って、ある品目の生産が永久的または半永久的に中止されることを「絶版」と呼ぶ言い回しが広く用いられている。特に自動車業界では車種が生産終了となり、後継モデルが登場せず、系譜が途絶えて廃止となった車種のことを「絶版車(ぜっぱんしゃ)」と呼ぶ。

また、部品の在庫・生産終了のことを、部品番号が抹消されることから「廃番(はいばん)」とも呼ばれるが、しばしば「廃盤」と誤記されることがある。

プラモデル業界では、商品の金型が廃棄されることは少なく、同一メーカーにおける再稼働や、他メーカーへの移動などによって、一旦生産終了になった商品がのちに復活されることが少なくない。ただし、玩具業界は別で一旦生産終了した商品が復活する例は少ない。ゆえにまんだらけのような中古業者の間で生産終了した玩具が高額で取引されることがある。

音楽・映像ソフト業界(いわゆるレコード業界)では、「廃盤」という用語が使われる。廃盤は在庫の廃棄処分のみならず著作権の放棄をも伴うもので、書籍における絶版とまったく同義である。

関連項目

en:Out of print zh:絕版

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