細胞
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プライバシー・ポリシー Wikipedioについて 免責事項 細胞(さいぼう)とは、全ての生物が持つ、微小な部屋状の<ref>「cell」とはギリシャ語で「小さな部屋」の意。1665年にこの構造を発見したロバート・フックが自著においてcellと命名した </ref>、下部構造のこと。生物体の構造上・機能上の基本単位。
目次 |
概説
ウイルスを除き、全ての生物がこの小部屋状の下部構造「細胞」から成り立っている。
近年では一般に「生物の最も基本的な構成単位」と認められている(→細胞説)。 さらには、細胞を持つことが生物の定義とされることすらある(この場合、ウイルスは非生物に位置付けられる)。
構造としては、細胞膜に包まれており、細胞質から成る。(→#全ての細胞に共通する性質と構造)
細胞はその構造によって、原核細胞と真核細胞とに分類されている。(→#原核細胞と真核細胞) 真核細胞は原核細胞と比べると、細胞の内部に特に分化した形態や機能を持っているとされており、それは「細胞小器官」や「オルガネラ」と呼ばれている。(→#細胞小器官)
細胞の一般的な大きさは、 1~100 μm 程度である。(→#原核細胞と真核細胞の特徴のまとめ )
生物は多様であり、一つ一つの細胞が独立して生きていくような単細胞生物から、同じような細胞が集まってコロニーや群体を形成して一緒に生きていくようなもの、また一つ一つの細胞に分かれては生きていけないほどまでに特殊化した細胞からなる多細胞生物まで、様々な形態がある。ヒトの体は60兆個の細胞が集まって出来た約220種類の細胞組織で構成されている。また細胞は細胞分裂によって数を増やし、それ以外の方法によって細胞が作られることはない。
1665年、ロバート・フックがコルクガシのコルク層の小片を顕微鏡で観察している時にこの構造を発見し、「cell(=小さな部屋)」と名づけた。1839年にはテオドール・シュワンとマティアス・ヤコブ・シュライデンが、動物も植物も基本的に細胞から構成されているとし、細胞は生物共通の構造で発生の基本単位であるとする「細胞説」の基礎を築いた。(→#歴史)
全ての細胞に共通する性質と構造
何種類かの特殊な細胞を例外として、全ての細胞は細胞膜、染色体、リボソーム、細胞質(原形質)といった共通の構成要素を持っている。外界から内部を隔てる構造が細胞膜である。細胞膜は脂質二重層から構成されている。その内部には生体物質を含む水溶液があり代謝の場となっている。生体物質としては構造や代謝に機能するタンパク質を含み、遺伝情報を担う DNA を持つ。他に、エネルギー源や情報源として脂質や糖質がある。これらの生体物質は集合してより高次の構造をとっている。DNA は主に染色体として存在する。翻訳の場として rRNA とタンパク質からなるリボソームがある。
また、細胞には細胞分裂、遺伝子発現、代謝などの能力がある。細胞分裂は細胞が増殖を行なう手段であり、遺伝と進化の基本現象である。遺伝子発現は DNA が持つ遺伝情報がタンパク質などの機能物質へと変換される過程である。代謝は原材料となる物質を摂取し、それを細胞の構成要素の構築やエネルギー生産に利用したり、その副産物を放出したりする現象であり、生物の恒常性を維持する基本的な機構である。
このことを言い換えれば、細胞そのものが生きていると言える。そのため、細胞が生命の単位と言われる。
原核細胞と真核細胞
thumb|right|200px|いろいろな細胞 (A)マウス肝細胞、(B)大腸菌、(C)出芽酵母 細胞はその内部構造から原核細胞と真核細胞に分けられる。これらの最も大きな差異は細胞核の有無である(原核細胞には細胞核がない)。原核細胞には真正細菌と古細菌が含まれ、真核細胞は真核生物が含まれる。また、原核細胞から構成される生物をまとめて原核生物と呼ぶ。これら3種類の生物群はドメインと呼ばれる最も上位の分類群で、進化的には古細菌と真核生物が近く、真正細菌が離れている。
原核細胞は真核細胞に比べ、構造が単純である。原核細胞は単細胞生物や群体をなす生物に限定して見ることができる。真核細胞は、その細胞膜の内側に細胞小器官を有する。ミトコンドリアと葉緑体は細胞に取り込まれた真正細菌が共生したものに由来すると考えられている(細胞内共生説)。単細胞の真核生物は非常に多様な種類があるが、群体や多細胞生物の種類も多い(多細胞生物の中に含まれる界である動物界、植物界、真菌は全て真核細胞生物である)。なお、原核細胞を裸核細胞、真核細胞を被核細胞と呼ぶこともある。
原核細胞
ごく一部の例外を除き、細胞が小さく構造も真核生物に比べれば単純である。細胞の大部分を液体が占めており、原核細胞の細胞質基質はそこに拡散した状態になっている。また、リボソームが細胞内に浮遊しているのでざらざらしている。ゲノムDNAは環状で、DNAは核様態という形で凝縮し細胞膜に付着している場合が多い。ゲノムサイズも一般的にかなり小型である。最も複雑な生活をおくる細菌の一つである粘液細菌でもゲノムサイズは1300万bp、遺伝子数約9500であり、出芽酵母よりもやや大きな程度でしかない。
細胞膜は主に脂質二重層であり、細胞内と外界とを隔てている。エンドサイトーシスやミトコンドリアを持たない原核生物にとって、ここは電子伝達系を始めとした代謝の主要な場であり、盛んに内外との物質のやり取り、エネルギー生産などを行っている。原核生物にとって細胞膜の機能は大変に重要であり、体積に対してある程度の表面積を確保する必要がある、これが原核生物が細胞サイズをあまり拡大できない理由の一つといえる。
この他目立つ構造に細胞壁と鞭毛がある。モリクテス綱とテルモプラズマ綱を除く殆どの原核生物には、何らかの細胞壁があり、細胞を外界の影響から守る強固な壁となっている。また細胞壁の存在は、低張液などの条件下での浸透圧による細胞の破裂を防止する。鞭毛は基部に回転モーターが付いており、これを振り回して能動的に移動することができる(ただし全ての原核生物が鞭毛をもつわけではない)。
細菌と古細菌を比較した場合、鞭毛や細胞壁は細菌や古細菌がそれぞれ独立に進化させたものであり、目的は同じでも両者の構造に共通点はない。また、古細菌の遺伝子発現やタンパク質合成系は細菌よりもむしろ真核生物に似ている(ただしDNAが細胞質中に存在するなど原核生物の基本的な性質は保存している)。古細菌のエーテル型脂質、特にその立体構造の違いは両者を決定的に区別するが、これは細菌と古細菌の違いというより、むしろ古細菌とその他の生物を区別する特徴である。
真核細胞
- 真核細胞の細胞質基質は原核細胞と違ってざらざらしていない。これはリボソームの主要な部分が小胞体に結合しているためである。
- 細胞膜は、原核細胞と構成は少々異なる部分もあるが、機能はほぼ同じである。真核細胞では、細胞壁があるものもあれば、無いものもある。
- 真核細胞のDNAは、一本、または複数本の分子から構成され、染色体と呼ばれる。染色体は、DNAがヒストンに絡みついてしっかりと凝縮した状態になっている。全ての染色体のDNAは核の中に閉じ込められており、核膜によって細胞質と隔てられている。何種類かの細胞内小器官は、それぞれが独自のDNAを持つものがある。それらは、元は別の生物であり、共生によって細胞小器官となったとする、細胞内共生説が現在ではほぼ認められている。
- 真核細胞生物の中には、繊毛や鞭毛で移動できるものがある。鞭毛は原核生物のものとは構造が異なり、まったく違った性格のものである。
原核細胞と真核細胞の特徴のまとめ
原核細胞 | 真核細胞 | ||
---|---|---|---|
典型的な生物 | 細菌(真正細菌) | 古細菌 | 真核生物(原生生物、真菌、植物、動物) |
一般的な大きさ | ~ 1-10 μm | ~ 5-100 μm | |
細胞核の形態 | 核様体; はっきりとした核の境界は無い。核膜の存在はごく稀 | 二重膜で区切られたはっきりした核がある | |
DNA | 環状。直線状は稀 | 環状、ヒストンと結合している | 直線状で、ヒストンと結合している 細胞分裂時には染色体を形成する |
RNA-/タンパク質-合成 | 細胞質中で行われる | RNAの合成は核の中で、タンパク質の合成は細胞質で行われる | |
リボソーム | 50S+30S | 60S+40S | |
細胞質 | 構造はほとんどない | 膜と細胞骨格によって高度に構造化されている | |
細胞の移動 | フラジェリンから構成される鞭毛。滑走 | 古細菌型鞭毛 | チューブリンから構成される鞭毛と繊毛 |
ミトコンドリア | なし | 1-数十個 | |
葉緑体 | なし | 藻類と植物にある | |
組織化 | 通常単細胞。稀に群体 | 単細胞。稀に群体、融合細胞 | 単細胞、群体から高度に分化した多細胞まで |
細胞分裂 | Zリング | Zリング(ユーリ古細菌) ESCRT複合体(クレン古細菌) | 収縮環 細胞板(植物) |
細胞小器官
[[ファイル:Biological cell.svg|thumb|400px|典型的な動物細胞の模式図: (1) 核小体(仁)、(2) 細胞核、(3) リボソーム、(4) 小胞、(5) 粗面小胞体、(6) ゴルジ体、(7) 微小管、(8) 滑面小胞体、(9) ミトコンドリア、(10) 液胞、(11) 細胞質基質、(12) リソソーム、(13) 中心体]] right|400px|thumb|典型的な植物細胞の模式図: 動物細胞との違いは、濃い緑色で描かれている細胞壁 (Cell wall)、紺色で示されている液胞 (vacuole)、筋の入った緑色の紡錘形に見える葉緑体 (Chloroplast) 、核の左横に描かれた小さな球体である白色体 (Leukoplast) のほか、細胞質分裂の後にも細胞壁の表面に残り、隣接する細胞と原形質を連絡する通路となる原形質連絡 (Plasmodesmata) などである。
また、図には示されていないが、
- マイクロフィラメント(アクチンフィラメント)
- 中間径フィラメント(中間フィラメントあるいは10nmフィラメント)
- デスモソーム(接着斑)
- ギャップ結合(間隙結合あるいはネクサス)
- タイト結合(タイトジャンクションあるいは密着結合、閉鎖帯)
- エンドソーム
- ペルオキシソーム
- 分泌顆粒(分泌小胞)
なども存在する。
微小管、中間系フィラメントおよびアクチンフィラメントをまとめて、細胞骨格と呼ぶ。
そのあり方
実際には、すべての生物で細胞がこのように見られるわけではない。たとえば、多くの原生生物ではその体は細胞に分かれていない。そのため、これを非細胞生物と呼んだこともある。しかし、多くのものでは実際には多細胞生物の細胞と同じような内容を含むので、これを一つの細胞でその体が出来ていると見なし、単細胞生物と呼ぶ。さらに変形菌の変形体やミズカビ・ケカビなどでは大きな体が細胞に分かれておらず、しかも多数の核を含む。これは細胞の成長と核分裂が起きても細胞質分裂が起きないためで、多数の細胞に当たる内容が単一の細胞容器に含まれる。このようなものは多核体と呼ばれる。同じように多数の細胞に当たる内容が単一の細胞の輪郭に含まれるものは多細胞生物にもあり、例えば横紋筋などがそうであるが、これはむしろ多数の細胞が融合したものと見なし、これを合胞体という。
多細胞生物では、逆に細胞として不可欠なはずの内容を欠く例もある。例えば我々ほ乳類の赤血球には核がない。これはむしろ多細胞生物に見られる細胞の役割分担の中で、なくてもその機能が果たせる場合にはそれが退化することもある、ということであろう。
歴史
- 1665年: "Cell" の名前の由来は、ロバート・フック (Robert Hooke) が1665年に刊行した顕微鏡図譜「Micrographia」で、コルクガシのコルク層小片を観察し、多数の中空の構造として見られた死細胞を、小部屋を意味する "Cell" と命名したのが始まりとされる。
- 1839年: テオドール・シュワンとマティアス・ヤコブ・シュライデンは動植物は基本的に細胞から構成されていることを解明した。 すなわち細胞は生物共通の構造と発生の基本単位であるとする細胞説の基礎となった。
- 19世紀: ルイ・パスツールは生物の自然発生説を否定した。
- ルドルフ・ウィルヒョウは、新しい細胞は常に細胞分裂から生じるとした。
ミカン細胞の誤解
1970年代とそれ以前の日本では、中学校の理科の参考書(「中学Aクラスの理科 第2分野」木谷要治、米山勝太郎、若林慎治共著、昇龍堂出版)でミカン細胞に関して誤った説明がなされていた。『ミカンのふくろを破ってみると、5.2図のようなしきりがみえる。この1つのしきりが細胞である。中には細胞液が多量にはいっている。この液がミカンの汁である。』と図入りで説明されていたが、図と文の両方が誤りであったため、1980年代には修正された。正しくは、1つの仕切りで区切られたものは多数の細胞から成り立っている。恐らく著者であった3名が誤ってこの事を理解していたと思われるが、この時代に理科を習った大人は、その後、理系の学者となった者も含めていまだにミカンの細胞はそれだけ大きなものだと考えている人がいる。
これは「ブラウン運動にまつわる誤解」の事例に良く似た構造となっている。共に原典となった書物では正しく説明されていたが、原典を読んだ者が誤解したまま一般向け解説書を書いたために起きている。「花粉の中の小粒」とすべきところを短く「花粉」としたり、「ミカンの小さい粒粒の中に何百もの細胞がある」と言う原典での説明を「1つのしきりが細胞である」とやはり短くしている点で似ている。もっとも、ミカン細胞の誤解は日本でしか確認されていない<ref>宮地祐司著 『生物と細胞』 仮説社 1999年11月1日発行 ISBN 4-7735-0145-6</ref>。
出典
<references/>
参考文献
- Cell Biology and DNA - Graphics
- 『細胞の分子生物学』第3版
- 『岩波生物学辞典』第4版
外部リンク
- 生きものスコープ - 細胞~原子までのFLASHアニメ 著者:UGOKY
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