福音書

出典: Wikipedio


Template:出典の明記 Template:キリスト教 福音書(ふくいんしょ、Template:Lang-el-short, ラテン語: Evangelium)とはイエス・キリストの言行録のこと。通常は新約聖書におさめられた福音書記者による四つの福音書(マタイによる福音書マルコによる福音書ルカによる福音書ヨハネによる福音書)を意味する。その他にトマスによる福音書などがあるが、正典として認められなかった外典文書である。

日本正教会では福音経(ふくいんけい)とも呼ばれる。これは福音書を、奉神礼において詠まれる祈祷書(経典)の一つでもあると捉える考えに基づいている。

目次

概説

福音(エウアンゲリオン)とはギリシャ語で「良い(エウ)知らせ(アンゲリオン)」という意味で、マラトンの戦いの勝利の伝令のような戦争の勝利や出産など、喜ばしいことを伝える手紙などを指した。イエス・キリストの十字架刑と復活(紀元後30年頃)の後、イエスの弟子(使徒)たちは「神の国(支配)が到来した」というイエスのメッセージを世界に広げるために布教を始めたが、これを弟子たちは「良い知らせ」と呼んだのである。四福音書中最初に書かれたマルコ福音書はその冒頭を「イエス・キリストの良い知らせの初め」で書き出している。

イエスの言行録という意味でなく、「良い知らせ」という意味での福音という言葉の用例はパウロの『コリントの信徒への手紙一』15:1にみられる。そこでパウロはイエスの死と復活こそが福音であるといっている。このことからもわかるように福音書は単にイエスという人物の伝記や言行録ではなく、その死と復活を語ることが最大の目的となっている。

正典の福音書において見られるイエスの生涯における主な出来事としては以下のようなものがある。誕生、イエスの少年時代、洗礼者ヨハネによる受洗、荒野の誘惑、山上の説教、ユダヤ各地での布教、変容、エルサレムでの演説、最後の晩餐、逮捕、裁判、十字架刑、復活。

福音書(福音)という言葉が現代のような特定の文学ジャンルを指すようになったのは2世紀のことであった。155年ごろのユスティノスの著作の中ではすでにこの用法が現れ、117年ごろのアンティオキアのイグナティオスもそのような意図で「福音」という言葉を用いていると見てもいいかもしれない。

イエスの十字架刑からの復活以降、いくつかの「福音書」が執筆されたが、その中で新約聖書に正典として受け入れられたのは四つであった。最初期のキリスト教神学者の一人、エイレナイオスは四つの福音書が特別な地位にあることを力説した。彼は著作『異端反駁』(Adversus Haereses)の中で、一つの福音書しか受け入れないキリスト者グループや新しい黙示文書を受容したヴァレンティアヌス派のようなグループを非難している。エイレナイオスは新約聖書の四福音書こそが教会の四つの柱であるという。「四つ以上でも以下でもない」と四が東西南北の四方位などをあらわす重要な数字であるという。エイレナイオスはさらに『エゼキエル書』1章にあらわれる四つの生き物(人の顔をしたもの、獅子、鷲、牡牛)を四福音書の予型であると見ている。ここから四福音書の福音記者のシンボルが生まれた。

外典福音書

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解説

新約聖書におさめられた福音書以外にも「福音書」と冠される著作が存在するが、これらは外典福音書と呼ばれる。外典福音書のほとんどは正典のものより後の時代に成立し、一部の信徒によってのみ用いられていたと考えられる。これらの外典福音書の記述の一部は正統派キリスト教徒によって異端的な思想であるとみなされることになった。

外典福音書の中でもっとも古いものは『トマスによる福音書』と『ペトロによる福音書』である。『ヤコブによるイエスの幼時福音』や『トマスによるイエスの幼時福音』など「幼時福音書」と呼ばれる一群の書物は二世紀になって成立したものだが、無原罪懐胎を含むマリアの生涯やイエスの幼年時代におきた多くの奇跡について語っている。これらは正典としては受け入れられなかったがキリスト教徒の間に伝承として伝わっていった。

ほかにも古代から根強く編まれてきたものに「合併福音書(調和福音書)」がある。これは四福音をまとめてその差異をならし一冊にしたものである。断片だけであるが、現存する最古の合併福音書は175年ごろ、タティアヌスが編んだ「ディアテッサロン」というものである。ディアテッサロンはシリア地方で二世紀にわたって流通し、よく用いられたがやがて廃れた。

シノペのマルキオン150年ごろ、ルカ福音書を自説にもとづいて書き換え、自らに従うグループの礼拝で用いた。グノーシス派の二元論から強く影響を受けたマルキオンは、旧約聖書の神がこの世界の創造主だということは認めるが、怒りと裁きの神であって愛がないとして退けた。一方、自らが創造したのでもないこの世界の人々を救うためにイエスを地上に派遣した異邦の神こそが愛の神であると考えた。マルキオンはルカ福音書の中から「ユダヤ的」不純物だと彼が考えた部分を取り除き、ルカ以外の福音書を排斥した。誤解のないように付言すれば、マルキオンが彼の『主の福音書』を編纂した時点ではまだ新約聖書は成立していなかったので、マルキオンが今日我々が目にするような形での新約聖書を切り貼りして彼の聖書を捏造したわけではない。

著名な外典福音書

正典におさめられなかった福音書であってもスタイルや内容において正典の福音書と共通点のあるものもある。他にもQ資料のような「語録」と呼ばれるイエスのことばを集めた資料があったことも推定されている。

著名な外典福音書には以下のようなものがある。

以上のリストのほとんどはナグ・ハマディ写本から発見されたグノーシス主義的資料と呼ばれるものであり。正典資料とは異なる視点からイエスをとらえている。

福音書としてはやや逸脱するが、イエスの母マリアを中心にイエス誕生までの物語を描いた『ヤコブ原福音書』、『トマスによるイエスの幼児物語』なども2世紀ごろには成立し、広く読まれて宗教画などにも影響を与えている。

他にも厳密には外典には含まれないが、古代でなく中世以降に福音書の形式を借りて書かれたものもある。たとえば『バルナバによる福音書』は中世にはいって書かれたものである。また近代以降に書かれた『宝瓶宮福音書』(リバイ・ドーリング)、『イッサの生涯』(発見者と称するニコラス・ノトヴィッチが書いたと考えられている)などもある。

日本語訳

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16世紀のキリスト教伝道以来、福音書も含めて聖書は様々に翻訳されてきた。キリシタン時代はイエズス会などのカトリック宣教会が日本で、19世紀にはプロテスタントの宣教師達が中国などの国外で日本語への翻訳事業を試みている。開国後はヘボンらが組織的な翻訳事業を起こし、その結果が明治元訳となった。その後、聖書協会の主導で大正改訳口語訳新共同訳などの改訳が作られ、これらが日本語の中で広く知られる翻訳となったが、聖書ことに福音書は多くの個人や組織によって日本語に翻訳されている。

金装福音経

[[ファイル:Evangel.JPG|thumb|right|150px|正教会の金装福音経]] 正教会においては、福音経を金色などに装飾し、イコンも加えられる事が多い。これは視覚的な象徴表現を多用する正教会にあっては、福音経も視覚的な象徴表現の対象となり、教会にとって最も重要な経典でありかつイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の言葉・イイスス・ハリストスそのものを表す福音経は、奉神礼にあたって美しく示されて当然であると考えられてきた伝統に基づく。

関連項目

外部リンク

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