石鹸
出典: Wikipedio
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工業的には、動植物の油脂からつくられる。 その製品には炭酸塩や香料などを加える場合もある。 特に純石鹸(じゅんせっけん)と呼ぶ場合は、脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムだけで、添加物を含まない石鹸を指す。
界面活性剤であるため、油などの汚れを洗浄できる。 また、細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープを破壊するため、一部の病原体から身を守るのに有効である。
一般に水を溶媒として溶かして使用するが、全く水を使わない場合でも洗浄効果がある宇宙飛行士用に開発されたものもある。<ref>http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009052000430</ref>
目次 |
歴史
動物の肉を焼いた際、滴り落ちた油脂を木の灰(アルカリ)が鹸化し、土にしみ込み、その土で手を洗ったら汚れがとれると気がついた、というのが発祥と言われる。
インド等では河川敷で火葬が行われる為、火葬場から人間脂肪由来の石鹸を得た洗濯を職業とする人達がいる。Template:要出典
最古の考古学的証拠としては、紀元前2800ごろのバビロンで発見されている。紀元前2200年ごろのバビロンの文献には、石鹸の製造法が記されている。
日本
日本には戦国時代末期か安土桃山時代にスペイン人かポルトガル人により伝えられたと推測されている。最古の確かな文献は、1596年(慶長元年8月)、石田三成が博多の豪商神屋宗湛に送ったシャボンの礼状である。
最初に石鹸を製造したのは、江戸時代の蘭学者宇田川棒斎・宇田川榕菴で、1824年(文政7年)のことである。ただしこれは医薬品としてであった。
最初に洗濯用石鹸を商業レベルで製造したのは、横浜磯子の堤磯右衛門である。堤磯右衛門石鹸製造所は1873年(明治6年)3月、横浜三吉町四丁目(現:南区万世町2丁目25番地付近)で日本最初の石鹸製造所を創業、同年7月洗濯石鹸、翌年には化粧石鹸の製造に成功した。1877年(明治10年)、第 1回内国勧業博覧会で花紋賞を受賞。その後、香港・上海へも輸出され、明治10年代の前半に石鹸製造事業は最盛期を迎えた。1890年(明治23年)、時事新報主催の優良国産石鹸の大衆投票で第 1位になったが、全国的な不況のなかで経営規模を縮小した。翌年創業者の磯右衛門が死去。その 2年後の1893年(明治26年)、廃業した。彼の門下が花王、資生堂などで製造を続けた。
製法
製法は油脂鹸化法と脂肪酸中和法、エステルけん化法の3種類がある。
- 油脂鹸化法
- 牛脂、ヤシ油、オリーブ油などの天然油脂を水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて鹸化して、多量の食塩を加えて塩析させて分離する。NaOHは海水や食塩水の電気分解でも精製可能である(塩素に注意)。原料油脂に前処理をしない古来からの製法で、釜炊きを称する石鹸はこちらによるもの。製品の質が安定しづらい代わりに、技術しだいでは個性的な成分の石鹸を作りやすくもある。
- 脂肪酸中和法
- 原料油脂のグリセリンと分離した脂肪酸をアルカリで中和させてつくるので、残留塩基がなくなり皮膚、粘膜にやさしい石鹸が簡単に得られる。安定した質の石鹸を大量に造りやすく、大規模メーカーの製造に使われる。なお必要ならば、除かれたグリセリンは後から添加する。
- エステル鹸化法
- 原料油脂にメチルアルコールを反応させ、エステル交換によって脂肪酸メチルエステル<ref>アルカリ鹸化前の「脂肪酸メチルエステル」はバイオディーゼルとして、ディーゼルエンジンで使用可能である。</ref>をつくり、これをアルカリで鹸化する。
成分
石鹸とは、脂肪酸とアルカリの塩であり、脂肪酸は親油性の炭化水素に親水性のカルボキシル基が結合した構造をしている。アルカリにはナトリウム(Na)やカリウム(K)が使われる。
- 脂肪酸の組成と石鹸の性質
- 脂肪酸の炭素数が少ないほうが、冷水にもよく溶ける洗剤になるが、洗浄力は下がる。
- 脂肪酸の炭素数が多いほうが、洗浄力は強くなるが、水に溶けなくなってしまう。
- 洗浄剤としては、脂肪酸の炭素数が12~18程度のものが良く使用されている。
脂肪酸名 | 炭素数 | 油脂の例 | 冷水での溶け易さ | 洗浄力 | 泡 | 皮膚刺激性 |
---|---|---|---|---|---|---|
10以下 | 弱い | 要確認 | ||||
ラウリン酸 | 12 | ヤシ、パーム核 | 溶け易い | やや大 | 持続性小 | 中 |
ミリスチン酸 | 14 | ヤシ、パーム核 | 溶ける | 大 | やや粗大 | 弱 |
パルミチン酸 | 16 | パーム、牛脂 | 溶けにくい | 大 | 持続性大 | 弱 |
ステアリン酸 | 18 | 牛脂 | 溶けない | 特大 | 泡立ち中 | 弱 |
オレイン酸 | 18不飽和 | パーム、牛脂 | 溶け易い | 大 | 細かい | 微弱 |
20以上 | 溶けない |
【出典】日本石鹸洗剤工業会「石けん洗剤知識」<ref>日本石鹸洗剤工業会「石けん洗剤知識」</ref>を一部改変
- アルカリの種類と石鹸の性質
- 固形石鹸や粉石鹸は、ナトリウム石鹸である。
- カリウム石鹸は溶解性が高く液体石鹸を作ることができる。しかし日本の風呂場では溶けてしまうので浴用せっけんとしてはナトリウム石鹸が適する。
- 金属石鹸は、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)が結びついた石鹸で、水溶性も洗浄力もない。石鹸洗浄後の廃液に含まれる石鹸分は、環境中のミネラル分によって、俗に石鹸かすと呼ばれる金属石鹸になる。工業的には、塗料や印刷インキの乾燥促進剤(ドライヤー)として利用される。
環境への影響
石鹸も合成洗剤も、いずれも界面活性剤であり、水と油が分離することを妨げるので細胞膜を損傷する。そのため、合成洗剤が環境に放出されると水生生物の生態に悪影響を及ぼす。しかし石鹸は、環境に放出されると環境中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して石鹸カスになって界面活性力を失い毒性もなくなる。また、石鹸カスは水生生物の餌として摂食されるために生分解性が極めて良好であり、環境にやさしい。
石鹸の弱点として、水の硬度により使用量が多くなることや有機物を多く含むためBODが高いことが指摘されている。環境水ではなく蒸留水に石鹸を溶解して水生生物への毒性実験を行うと、合成洗剤と同様の毒性値が報告される。
環境教育や表示指定成分(添加物)が人体や環境に与える悪影響を伝える情報が広まり、オリーブオイルなどの原料によって、石鹸を手作りする人々が増加している。目的は、環境保全の一環であったり、アレルギーの回避やスキンケアなどである。ただ、原料に使われる水酸化ナトリウム・水酸化カリウムは劇物であり、安全な防護策を施した上で製造することを推奨する意見もある。また、処方通り作らないと原料が残留し、肌に悪影響を及ぼしたり、残留した油脂による汚染も懸念される。
種類
目的別
- 化粧石鹸
- 洗顔用や浴用などに使われる。固形・粉石鹸はナトリウム石鹸で、液体石鹸・シャンプー・ボディーソープは溶解度の大きいカリウム石鹸である。また、ナトリウム石鹸・カリウム石鹸を併用したものもある。日本の薬事法では化粧品として扱われている。
- 薬用石鹸
- 殺菌消毒の効果があり、手洗いなどに使われる。通常の石鹸に、トリクロサンやトリクロカルバンなどの殺菌成分を配合したものが、一般に普及している。また、逆性石鹸や両性石鹸などの消毒薬として、利用される成分からなるものも含めることがある。日本の薬事法では医薬部外品として扱われている。
- 洗濯用石鹸
- 洗濯用固形石鹸は、衣類の手洗いに使われる。洗濯用粉石鹸は洗濯機に投入して使用する。価格が安い合成洗剤の代わりに、水質汚染に対する意識が高い人や、合成洗剤で皮膚炎を起こす人、合成洗剤の強すぎる洗浄力や蛍光剤などの添加物によって衣類の退色が進むことを嫌う人などが使用している。以下のような工夫が知られている。
合成洗剤の賛否については、合成洗剤を参照のこと。
- 台所用石鹸
- 雑貨石鹸
- 上記の洗濯石鹸・台所石鹼類を雑貨石鹸と言う場合がある。これは身体の洗浄には使えない石鹼であり、管轄が都道府県の薬務課ではなく、市町村の保健所となる。化粧石鹸の場合、薬事法に基づき、化粧品製造許可工場で作られるが、個人が手作りした石鹼の場合、そのほとんどは雑貨石鹸である。
- 製作者が化粧品原材料を使用していないため、肌トラブルが起こっても、雑貨石鹸と言う理由で、自己責任で使用してくれと突き放す場合も多く、トラブルが多い。
形状別
- 固形石鹸
- 粉末石鹸
- 液体石鹸
- 液体状の石鹸。一般に固体石鹸と比べて単位重量当の単価は高いが、薬剤が直ぐに皮膚表面を覆うため洗浄効果が高く、また固体石鹸ののように水道の蛇口を捻って水で手のひらを濡らし、擦って泡立てるまでに洗浄水を出し続けることがなくて済むので節水が可能である。容器から出した状態で、液体のものの他、ゲル状のものと泡状のもの<ref>泡状のものの詰め替えを購入するとき、容器は泡状のものでないと泡が出ないので注意する必要がある。</ref>が市販されている。
- 紙石鹸
広く「石鹸」と称されるもの
- 合成洗剤
- 日本では、家庭用品品質表示法により合成洗剤と石けんを明確に区別して表示することが定められている。洗浄成分のすべてが純石けん分の洗浄剤しか石けんと表示できない。たとえ55%の純石けん分を含有していても、品名表示には合成洗剤と表示しなければならない。しかし、日常的な会話では、洗濯用合成洗剤を「粉石けん」や「液体石けん」と誤用している場合がある。
- ここで、純石けんとは、脂肪酸ナトリウムもしくは脂肪酸カリウムといった本来の石鹸成分のことである。
- 合成洗剤の賛否については、合成洗剤を参照のこと。
品名表示 | 表示の対象 | 界面活性剤中の 純石けん分の割合 |
---|---|---|
合成洗剤 | 主な洗浄作用が純石けん分以外の界面活性剤の働きによるもの。 | 0%~ 洗濯用70%未満 台所用60%未満 |
複合石けん | 主な洗浄作用が純石けん分の界面活性作用によるもので、 純石けん分以外の界面活性剤を含むもの。 | 洗濯用70%以上 台所用60%以上 ~100%未満 |
石けん | 主な洗浄作用が純石けん分の界面活性作用によるもので、 純石けん分以外の界面活性剤を含まないもの。 | 100% |
- 逆性石鹸(陽性石鹸)
- 高級アミンの塩からなる界面活性剤で、陽イオン界面活性剤に分類される殺菌剤。
- 水に溶けると陽イオンである第四級アンモニウムイオンに乖離する。普通石鹸の純石けん分は水に溶けると陰イオンである脂肪酸イオンに乖離するのとは逆性であることから、逆性石鹸と呼ばれる。
- 純石けん分(普通石鹸)は含まない。普通石鹸より洗浄力は低いが殺菌力が強く、消毒薬に利用される。普通石鹸と混合すると両者の作用が減弱する。
包装
固形石鹸の包み紙としてはパラフィン紙(グラシン紙)が多く使われる。Template:要出典
製造業者
花王をはじめマレーシアでの生産が増加している。
- アース製薬
- ヱスケー石鹸
- 花王
- カネヨ石鹸
- 牛乳石鹸
- サラヤ
- シャボン玉石けん
- 太陽油脂
- 玉の肌石鹸
- 地の塩社
- ニッサン石鹸
- フタバ化学
- ペリカン石鹸
- 松山油脂
- まるは油脂化学
- ミツワ石鹸
- ミヨシ石鹸
- ユニリーバ・ジャパン
- ライオン
- レモン石鹸
- ロケット石鹸
- 日本ミネラル
脚注
関連項目
注釈・出典
外部リンク
サイト
- 日本石鹸洗剤工業会 JSDA
- 家庭用品品質表示法(経済産業省)
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