知的財産権

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Template:Law 知的財産権(ちてきざいさんけん、Intellectual Property Right)は、有体物に対して個別に認められる財産権とは異なり、無形のもの、特に思索による成果・業績を認め、その表現や技術などの功績と権益を保証するために与えられる財産権のことである。知的所有権(ちてきしょゆうけん)とも呼ばれる。

知的財産とは、知的財産権を含むより広い概念であり、その性質から、「知的創作物(産業上の創作・文化的な創作・生物資源における創作)」と「営業上の標識(商標・商号等の識別情報・イメージ等を含む商品形態)」および、「それ以外の営業上・技術上のノウハウなど、有用な情報」の三つに大別される。

目次

定義

「知的財産」及び「知的財産権(知的所有権)」は、各種の条約や法令において様々に定義されている。

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なお、知的財産基本法における知的財産権には、判例におけるパブリシティ権等も含まれると解されている。

知的財産の種類

日本や世界において法律で定められ認められている知的財産権には、以下のようなものがある。

産業財産権

  • 特許権: 特許権者に発明を実施する権利を与え、発明を保護する。(特許法パリ条約・TRIPS協定)
  • 実用新案権: 物品の形状等に係る考案を保護する。(実用新案法
  • 意匠権: 工業デザインを保護する。(意匠法・パリ条約・TRIPS協定)
  • 商標権・トレードマーク・サービスマーク: 商標に化体した業務上の信用力(ブランド)を保護する。(商標法・パリ条約・TRIPS協定)

この4つは代表的なものとして『知財四権』とも称され、エンジニアの間では必ず学習する内容である。

著作権

  • 著作権: 思想・感情の創作的表現を保護する(著作権法ベルヌ条約・TRIPS協定)。支分権として、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権、翻案権がある。
  • 著作隣接権: 実演・レコード・放送・有線放送を保護する。(著作権法・ローマ条約・TRIPS協定)
    • 実演 著作物を演ずる実演家の権利(録音権及び録画権、放送権及び有線放送権送信可能化権、譲渡権及び貸与権並びに商業用レコードの二次使用料及び貸与権)
    • レコード 物に音を固定したもの(レコード)の製作者の権利(複製権、送信可能化権、譲渡権及び貸与権等に規定する権利並びに商業用レコードの二次使用料及び貸与権に基づく報酬を受ける権利)
    • 放送 無線通信の放送事業者の権利(複製権、再放送権及び有線放送権、テレビジョン放送の伝達権)
    • 有線放送 有線電気通信の放送事業者の権利(複製権、放送権及び再有線放送権、有線テレビジョン放送の伝達権)

なお、著作者人格権(著作者の公表権、氏名表示権、同一性保持権)は人格権の一種であって財産権ではないが、便宜的に著作権などとともに扱われることが多い。

その他の権利

なお、国際条約や日本をはじめとする各国の国内法令で定められる広義の知的財産には、以下のようなものがある。

  • 原産地表示・地理的表示(原産地等誤認惹起行為の禁止):ある商品の地理的原産地を特定する表示(不正競争防止法第2条1項13号・TRIPS協定第22条)。
  • インターネット上のドメイン名(不正にドメインを使用する行為の禁止):インターネットにおける識別情報(不正競争防止法第2条1項12号・周知商標の保護規則に関する共同勧告「WIPO 勧告」)。
  • 商号権:商人が名称を商号として利用する表示(商法第14条・パリ条約)
  • 肖像権(人格権):肖像が持ちうる、人格権にかかわる権利(憲法第13条・民法第710条)。
  • 肖像権(財産権):肖像が持ちうる、財産権にかかわる権利(東京高裁平成3年9月26日判決(判例時報1400号3頁)「おニャン子クラブ事件」)。
  • 周知表示(周知表示混同惹起行為の禁止):需要者の間に広く認識されている商品等表示(不正競争防止法第2条1項1号)。
  • 著名標識(著名表示冒用行為の禁止):著名な商品等表示と同一若しくは類似の標識(不正競争防止法第2条1項2号)。
  • 商品形態(商品形態模倣行為の禁止):販売されてから3年以内の商品形態(不正競争防止法第2条1項3号)。
  • タイプフェース:デザインされた一連の文字の書体(タイプフェイスの保護及びその国際寄託に関するウィーン協定、ただし未発効)。日本では独創性と美的特性を備え美術鑑賞となり得る書体のみが著作物として著作権で保護される<ref>平成10(受)332 著作権侵害差止等請求本訴、同反訴事件</ref>。また、フォントデータについては、プログラムの著作物として保護されるとの主張があり、実際に立件された例がある<ref>デジタルフォントとデータベースの著作権侵害、法改正後初めて立件 - ASCII24、1997年12月9日</ref>。
  • 営業秘密(営業秘密の保持・不正入手の禁止):秘密として管理されている有用な技術・営業上の情報(不正競争防止法第2条1項4~9号・民法・刑法の不法行為)。

以上は現在日本における制定法としての知的財産および知的財産権の適用であるが、以下のようにとらえることもできる。

知的財産のうち、一定の明確な法律的権利が認められているのが知的財産権であって部分集合である。知的財産として有益な発明発見であっても、特許権取得せず公知となった場合は知的財産権を与えられない。知的財産権にならない知的財産とは、公知となりまたは知的財産権が終了した知的財産、不正競争防止法の適用による不正表示・誤認表示による侵害が認められるもの、ノウハウ・ライセンス等または意図的に特許等に出願していない営業秘密と再定義できよう。上記では肖像権も知的財産に含める考えである。

また、現在日本ではコンピュータソフトウエアを著作権の対象として保護するのが基本であり、場合によっては特許権でも保護するケースがある。半導体回路配置権は、知的財産基本法で明記されていないが、知的財産権として保護の対象となる。ただし、半導体回路配置権と同一の保護を、米国法では著作権法の一部の章で保護されているのに対して、日本では別途特別法で保護するなど、保護の根拠法が異なるケースがある。日本などほとんどの国の特許法では先願主義により、同一の内容の出願では先に出願した者に権利が発生するのに対し、米国では先発明主義により、実際に発明した日が先の者に権利が発生するという違いもある。

知的財産権の始まり

知的財産の戦略とは、ごく最近の考え方なのではなく、本質的には遙か昔から形成されていた考え方である。つまり、製造方法の秘密と言えば分かりやすい。(これは、現在の日本で言うところの不正競争防止法で規定される「営業秘密」に相当する。)

例えば、紀元前2000~1200年頃に存在した、ヒッタイト帝国という古代帝国は、当時全く知られていなかったの製法を知る唯一の国であった。ヒッタイトの鉄は極めて高価(金以上の価値)で交換されたと言われており、これらの取引が、ヒッタイト帝国に大きな富をもたらした。

同様な例として、古代から中国では、磁器や絹の製法が知られていた唯一の地域であった。これらの製法は、長い間秘密とされていたため、これらの産品を他の地域で産出することができなかった。当時の貿易においては、磁器や絹が、極めて高価で取り引きされ、この地域に大きな富をもたらした。

これは、古代ヒッタイト帝国の鉄の製造方法も、古代中国の磁器や絹の製法も、原始的な形ではあるが、国家戦略上、きわめて重要な知的財産であったことを意味している。このように、知的財産とは、本質的に「合理的な独占形態」を実現するための一手法である。

近代的な知的財産権の制度としては、ルネッサンス期のヴェネツィア共和国で誕生した特許制度が世界で最初の知的財産権制度と言われている。ガリレオがヴェネツィア公に懇願をし、その結果としてヴェネツィア共和国で、世界で最初の特許制度が公布されたと言われている<ref>特定非営利活動法人NPO新産業創造研究会 『ベンチャー企業と知的財産権と新産業創造』(PDFファイル)</ref>。

近年の知的財産権についての動き

知的財産政策(ヤングレポート)

1980年代の世界貿易は、先進国、アジア地域の高い経済成長につれて順調に推移した。日本は特に1980年代前半の円安期に輸出を伸ばし、1986年には世界シェアが10.5%になり、米国と並ぶまでになった。

しかし、日本による米国への集中豪雨的な輸出のため、米国の輸出は伸び悩み、世界輸出市場に占める米国のシェアは11%台で低迷。1980年代を通して見ると、米国では輸入が急増し、1984年には貿易赤字が1,000億ドルを超え、米国の産業競争力は著しく低下した。

そこで、レーガン大統領は、1983年6月、ヒューレットパッカード社のジョン・ヤング社長を委員長に迎え、学界、業界の代表者からなる「産業競争力についての大統領委員会」を組織した。

ヤング委員長は、米国の競争力の低下を一年半にわたり広範に検討し、その結果を「地球規模の競争-新たな現実」と題する報告書として1985年1月25日に大統領に提出した。これが“ヤングレポート”として有名な報告書である。

報告の骨子は、「米国の技術力は依然として世界の最高水準にある」とした上で、それが製品貿易に反映されないのは、「各国の知的財産の保護が不十分なためである」と分析し、その回復のために、プロパテント政策を推進することを提言した。この提言と同様な政策は、その後の大統領通商政策アクションプラン(1985年9月)や、米国通商代表(USTR) の知的財産政策(1986年4月)などにも見いだすことができる。

日本における知的財産政策

1995年10月、国会は連立与党の共同提案に基づいて、科学技術基本法案を採択。日本が「キャッチアップの時代は終焉を迎え、フロントランナーの一員として、自ら未開の科学技術分野に挑戦し、創造性を最大限に発揮し、未来を切り開いて行かなければならない時機に差し掛かっている」として、「真に豊かな生活の実現のためには、科学技術創造立国を目指す」ことが必要であるとした。 また、1996年12月に、「21世紀の知的財産権を考える懇談会」(座長:有馬朗人)が、特許庁で開催された。これは、米国の国家戦略としてのプロパテント政策の推進等、近年の急激な環境変化に対して、21世紀に向けた日本の知的財産権のあり方を明らかにする目的で開かれたもの。1997年4月に、「21世紀の知的財産権の目指す方向」が発表された。

2001年10月から、経済産業省において、「産業競争力と知的財産を考える研究会」が開催され、2002年6月に報告書がまとめられた。

これらを受けて、2002年3月に内閣は、小泉総理主催の「知的財産戦略会議」を設置。同年7月に「知的財産戦略大綱」を発表し、政府では、知的財産立国をめざし、知的財産政策を推進することが明確化された。 同年12月に「知的財産基本法」が成立。この「知的財産基本法」の施行に伴い、知的財産戦略本部、およびその事務局である知的財産戦略推進事務局が設置された。

  • 1995年10月 - 連立与党の共同提案、科学技術基本法案採択
  • 1996年12月 - 「21世紀の知的財産権を考える懇談会(特許庁)」(座長:有馬朗人)
  • 1999年10月 - 産業活力再生特別措置法が成立(日本版バイドール法:TLO法)
  • 2000年 5月 - 知的財産制度に関する議員連盟等合同会議・中間報告書発表
  • 2001年12月 - 知的財産権の保護強化で自民党が国家戦略ビジョン-
  • 2002年 2月 - 第154回国会・小泉内閣総理大臣施政方針演説「必要な知的財産政策を推進」
  • 2002年 2月 - 首相直属「知的財産戦略会議」設立
  • 2002年 5月 - 「産業競争力と知的財産を考える研究会」最終報告書(経済産業省)
  • 2002年 7月 - 「知的財産戦略大綱」を正式決定・知的財産基本法準備室設置
  • 2002年10月 - 知的財産基本法案・閣議決定・経済産業委員会で審議決定(政府与党)
  • 2002年11月 - 知的財産基本法成立
  • 2003年 3月 - 知的財産基本法施行・知的財産戦略本部発足
  • 2003年 4月 - 関税定率法改正・知的財産権侵害品の取締強化
  • 2004年 6月 - 知的財産高等裁判所設置法裁判所法等の一部を改正する法律成立
  • 2005年 4月 - 知的財産高等裁判所設立

専門職

知的財産を業務分野とする専門職には弁理士弁護士行政書士等があり、それぞれの業務範囲は次の通りである。弁護士は、特に試験を受けることなく弁理士及び行政書士の資格登録が可能である他、登録するまでもなく当該分野に関する業務を行うことができる。また、弁理士は行政書士となる資格を有している<ref>工業所有権審議会法制部会知的財産専門サービス小委員会報告書</ref>。

  • 弁理士(弁護士も可)
特許権、実用新案権、意匠権、商標権に関する登録及び異議申立て手続きを独占業務として行うほか、移転や専用実施権の申請手続きについても行う。また、上記に加え著作権に関する契約代理・媒介業務等を行うことができる。
  • 行政書士(弁護士も可・弁理士は行政書士となる資格あり)
著作権、育成者権に関する登録・その他の手続に関する書面の作成を独占業務として行うほか、特許権、実用新案権、意匠権、商標権に関する移転や専用実施権の申請手続き等を行う。また、特に分野を限定されず契約代理業務を行うことができる。

※上記は簡潔にする為、若干不正確な説明となっています。正確には各資格の項目をご覧下さい。

知的財産権と独占禁止法の関係

日本において、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(通称:独占禁止法)第21条では、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使として認められる行為は、独禁法の適用除外と定められている。

しかしながら、著作権法等による権利の行使とみられるような行為であっても、競争秩序に与える影響を勘案して、知的財産保護制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められるような場合まで、同条でいう「権利の行使と認められる行為」とは評価されない場合がある(SCE事件審決、2001年8月1日公正取引委員会審決、審決集48巻3頁)<ref>公正取引委員会 審決等データベース、平成10年(判)第1号、2001年8月1日</ref>。

脚注

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関連項目

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知的財産権に関わる条約

外部リンク

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