直木三十五賞
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Template:文学 直木三十五賞(なおきさんじゅうごしょう)は、無名・新進及び中堅作家による大衆小説作品に与えられる文学賞である。通称は直木賞。
かつては芥川賞と同じく無名・新人作家に対する賞であったが、現在では中堅作家が主な対象とされている。ベテランに授賞されることも多々ある<ref>第97回の白石一郎はデビュー32年目、第142回の佐々木譲は30年目、第122回のなかにし礼は(小説に限定しても)29年目、第89回の胡桃沢耕史は28年目の受賞である。</ref>。
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沿革
文藝春秋社社長の菊池寛が友人の直木三十五を記念して1935年に芥川龍之介賞(芥川賞)とともに創設し、以降年2回発表される。
授賞する作品は選考委員の合議によって決定され、受賞作は『オール讀物』に掲載される。第6回から、財団法人日本文学振興会により運営されている。第二次世界大戦中の1945年から一時中断したが、1949年に復活した。
現在の選考委員は、浅田次郎、阿刀田高、北方謙三、林真理子、宮城谷昌光、宮部みゆき、渡辺淳一の7名(2010年上半期以降)。選考会は、料亭・新喜楽の2階で行われる(芥川賞選考会は1階)。受賞者の記者会見と、その一ヵ月後の授賞式はともに東京會舘で行われる。
受賞者には正賞として懐中時計・副賞として100万円が贈呈される。
傾向
対象は新人による大衆小説であり、芥川賞とは密接不可分の関係にあると言える。
創設時、選考の対象は「無名若しくは新進作家の大衆文芸」(直木賞規定)であったが回を重ねるごとに芥川賞と比べて若手新人が受賞しにくい傾向が生じてきた。これは一つには各回の選評にしばしばあるように大衆文学を対象とする賞の性質上、受賞後作家として一本立ちするだけの筆力があるかどうかを選考委員が重視したためであり背景には「大衆小説は作品を売ることで作家として生活を立ててゆく必要がある」という考え方があったものと推測される。また創設時、大衆文学分野における唯一の新人賞であった直木賞が、戦後多くの出版社によって新人発掘のための賞が創設されてゆくなかで、大衆文学分野におけるもっとも権威ある賞として位置づけられるようになったこととも関係があるだろう。
現在ではこのような状態が長く続いたため選考基準に中堅作家という一項が新たに加えられており、実質的に文学界の有望新人を発掘するという直木賞本来の機能は薄らいでいる。結果としてすでに著名作家として名を成してからのいわゆる「遅すぎる受賞」となる者が多く、さらに選考(受賞)を辞退する人気作家も出ており<ref>Template:Cite web</ref>この点で議論が巻き起こる事が多いのも事実である。Template:要出典範囲。
選考対象の大衆小説の問題点として推理小説を活動分野とする作家が受賞しにくい傾向にあり、SF、ファンタジーでは選考対象となった者は存在するが受賞した者はいない。空想性が極端に高い推理、SF、ファンタジー等を嫌うのが直木賞の特徴である(しかし反証は幾例か存在し、例えば木々高太郎の『人生の阿呆』は第四回本賞を受賞している。また、東野圭吾の受賞は『手紙』などの大衆文学ではなく推理長編『容疑者Xの献身』によるものだった)。その風潮によって受賞を逃した作家には例えば筒井康隆がおり(候補へのノミネートは三回にのぼる)、のちに自身への酷評や選考委員たちのスタンスを嘲笑した「大いなる助走」(『文藝春秋』連載)を私怨も交えて発表している。
また、特に文藝春秋刊行の小説が受賞する傾向がある。
受賞作一覧
第1~10回
- 第1回(1935年上半期) - 川口松太郎『鶴八鶴次郎』『風流深川唄』『明治一代女』
- 第2回(1935年下半期) - 鷲尾雨工『吉野朝太平記』他
- 第3回(1936年上半期) - 海音寺潮五郎『天正女合戦』『武道傳來記』
- 第4回(1936年下半期) - 木々高太郎『人生の阿呆』
- 第5回(1937年上半期) - 該当作品なし
- 第6回(1937年下半期) - 井伏鱒二『ジョン萬次郎漂流記』他
- 第7回(1938年上半期) - 橘外男『ナリン殿下への回想』
- 第8回(1938年下半期) - 大池唯雄『兜首』『秋田口の兄弟』
- 第9回(1939年上半期) - 該当作品なし
- 第10回(1939年下半期) - 該当作品なし
第11~20回
- 第11回(1940年上半期) - 堤千代(最年少受賞)『小指』他、河内仙介『軍事郵便』
- 第12回(1940年下半期) - 村上元三『上総風土記』他
- 第13回(1941年上半期) - 木村荘十『雲南守備兵』
- 第14回(1941年下半期) - 該当作品なし
- 第15回(1942年上半期) - 該当作品なし
- 第16回(1942年下半期) - 田岡典夫『強情いちご』他、神崎武雄『寛容』他
- 第17回(1943年上半期) - 山本周五郎『日本婦道記』(受賞辞退)
- 第18回(1943年下半期) - 森荘已池『山畠』『蛾と笹舟』
- 第19回(1944年上半期) - 岡田誠三「ニューギニヤ山岳戦』
- 第20回(1944年下半期) - 該当作品なし
第21~30回
- 第21回(1949年上半期) - 富田常雄『面』『刺青』
- 第22回(1949年下半期) - 山田克郎『海の廃園』
- 第23回(1950年上半期) - 今日出海『天皇の帽子』、小山いと子『執行猶予』
- 第24回(1950年下半期) - 檀一雄『長恨歌』『真説石川五右衛門』
- 第25回(1951年上半期) - 源氏鶏太『英語屋さん』『颱風さん』『御苦労さん』
- 第26回(1951年下半期) - 久生十蘭『鈴木主水』、柴田錬三郎『イエスの裔』
- 第27回(1952年上半期) - 藤原審爾『罪な女』他
- 第28回(1952年下半期) - 立野信之『叛乱』
- 第29回(1953年上半期) - 該当作品なし
- 第30回(1953年下半期) - 該当作品なし
第31~40回
- 第31回(1954年上半期) - 有馬頼義『終身未決囚』
- 第32回(1954年下半期) - 梅崎春生『ボロ家の春秋』、戸川幸夫『高安犬物語』
- 第33回(1955年上半期) - 該当作品なし
- 第34回(1955年下半期) - 新田次郎『強力伝』、邱永漢『香港』
- 第35回(1956年上半期) - 南條範夫『燈台鬼』、今官一『壁の花』
- 第36回(1956年下半期) - 今東光『お吟さま』、穂積驚『勝烏』
- 第37回(1957年上半期) - 江崎誠致『ルソンの谷間』
- 第38回(1957年下半期) - 該当作品なし
- 第39回(1958年上半期) - 山崎豊子『花のれん』、榛葉英治『赤い雪』
- 第40回(1958年下半期) - 城山三郎『総会屋錦城』、多岐川恭『落ちる』
第41~50回
- 第41回(1959年上半期) - 渡辺喜恵子『馬淵川』、平岩弓枝『鏨師』
- 第42回(1959年下半期) - 司馬遼太郎『梟の城』、戸板康二『團十郎切腹事件』他
- 第43回(1960年上半期) - 池波正太郎『錯乱』
- 第44回(1960年下半期) - 寺内大吉『はぐれ念仏』、黒岩重吾『背徳のメス』
- 第45回(1961年上半期) - 水上勉『雁の寺』
- 第46回(1961年下半期) - 伊藤桂一『螢の河』
- 第47回(1962年上半期) - 杉森久英『天才と狂人の間』
- 第48回(1962年下半期) - 山口瞳『江分利満氏の優雅な生活』、杉本苑子『孤愁の岸』
- 第49回(1963年上半期) - 佐藤得二『女のいくさ』
- 第50回(1963年下半期) - 安藤鶴夫『巷談本牧亭』、和田芳恵『塵の中』
第51~60回
- 第51回(1964年上半期) - 該当作品なし
- 第52回(1964年下半期) - 永井路子『炎環』、安西篤子『張少子の話』
- 第53回(1965年上半期) - 藤井重夫『虹』
- 第54回(1965年下半期) - 新橋遊吉『八百長』、千葉治平『虜愁記』
- 第55回(1966年上半期) - 立原正秋「白い罌粟』
- 第56回(1966年下半期) - 五木寛之『蒼ざめた馬を見よ』
- 第57回(1967年上半期) - 生島治郎『追いつめる』
- 第58回(1967年下半期) - 野坂昭如『アメリカひじき』『火垂るの墓』、三好徹『聖少女』
- 第59回(1968年上半期) - 該当作品なし
- 第60回(1968年下半期) - 陳舜臣『青玉獅子香炉』、早乙女貢『僑人の檻』
第61~70回
- 第61回(1969年上半期) - 佐藤愛子『戦いすんで日が暮れて』
- 第62回(1969年下半期) - 該当作品なし
- 第63回(1970年上半期) - 結城昌治『軍旗はためく下に』、渡辺淳一『光と影』
- 第64回(1970年下半期) - 豊田穣『長良川』
- 第65回(1971年上半期) - 該当作品なし
- 第66回(1971年下半期) - 該当作品なし
- 第67回(1972年上半期) - 綱淵謙錠『斬』、井上ひさし『手鎖心中』
- 第68回(1972年下半期) - 該当作品なし
- 第69回(1973年上半期) - 長部日出雄『津軽世去れ節』『津軽じょんから節』、藤沢周平『暗殺の年輪』
- 第70回(1973年下半期) - 該当作品なし
第71~80回
- 第71回(1974年上半期) - 藤本義一『鬼の詩』
- 第72回(1974年下半期) - 半村良『雨やどり』、井出孫六『アトラス伝説』
- 第73回(1975年上半期) - 該当作品なし
- 第74回(1975年下半期) - 佐木隆三『復讐するは我にあり』
- 第75回(1976年上半期) - 該当作品なし
- 第76回(1976年下半期) - 三好京三『子育てごっこ』
- 第77回(1977年上半期) - 該当作品なし
- 第78回(1977年下半期) - 該当作品なし
- 第79回(1978年上半期) - 津本陽『深重の海』、色川武大『離婚』
- 第80回(1978年下半期) - 宮尾登美子『一絃の琴』、有明夏夫『大浪花諸人往来』
第81~90回
- 第81回(1979年上半期) - 田中小実昌『浪曲師朝日丸の話』『ミミのこと』、阿刀田高『ナポレオン狂』
- 第82回(1979年下半期) - 該当作品なし
- 第83回(1980年上半期) - 向田邦子『花の名前』『かわうそ』『犬小屋』、志茂田景樹『黄色い牙』
- 第84回(1980年下半期) - 中村正軌『元首の謀叛』
- 第85回(1981年上半期) - 青島幸男『人間万事塞翁が丙午』
- 第86回(1981年下半期) - つかこうへい『蒲田行進曲』、光岡明『機雷』
- 第87回(1982年上半期) - 深田祐介『炎熱商人』、村松友視『時代屋の女房』
- 第88回(1982年下半期) - 該当作品なし
- 第89回(1983年上半期) - 胡桃沢耕史『黒パン俘虜記』
- 第90回(1983年下半期) - 神吉拓郎『私生活』、高橋治『秘伝』
第91~100回
- 第91回(1984年上半期) - 連城三紀彦『恋文』、難波利三『てんのじ村』
- 第92回(1984年下半期) - 該当作品なし
- 第93回(1985年上半期) - 山口洋子『演歌の虫』『老梅』
- 第94回(1985年下半期) - 森田誠吾『魚河岸ものがたり』、林真理子『最終便に間に合えば』『京都まで』
- 第95回(1986年上半期) - 皆川博子『恋紅』
- 第96回(1986年下半期) - 逢坂剛『カディスの赤い星』、常盤新平『遠いアメリカ』
- 第97回(1987年上半期) - 白石一郎『海狼伝』、山田詠美『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』
- 第98回(1987年下半期) - 阿部牧郎『それぞれの終楽章』
- 第99回(1988年上半期) - 西木正明『凍れる瞳』『端島の女』、景山民夫『遠い海から来たCOO』
- 第100回(1988年下半期) - 杉本章子『東京新大橋雨中図』、藤堂志津子「熟れてゆく夏』
第101~110回
- 第101回(1989年上半期) - ねじめ正一『高円寺純情商店街』、笹倉明『遠い国からの殺人者』
- 第102回(1989年下半期) - 星川清司『小伝抄』、原尞『私が殺した少女』
- 第103回(1990年上半期) - 泡坂妻夫『蔭桔梗』
- 第104回(1990年下半期) - 古川薫『漂泊者のアリア』
- 第105回(1991年上半期) - 宮城谷昌光『夏姫春秋』、芦原すなお『青春デンデケデケデケ』
- 第106回(1991年下半期) - 高橋義夫『狼奉行』、高橋克彦『緋い記憶』
- 第107回(1992年上半期) - 伊集院静『受け月』
- 第108回(1992年下半期) - 出久根達郎『佃島ふたり書房』
- 第109回(1993年上半期) - 高村薫『マークスの山』、北原亞以子『恋忘れ草』
- 第110回(1993年下半期) - 佐藤雅美『恵比寿屋喜兵衛手控え』、大沢在昌『新宿鮫 無間人形』
第111~120回
- 第111回(1994年上半期) - 中村彰彦『二つの山河』、海老沢泰久『帰郷』
- 第112回(1994年下半期) - 該当作品なし
- 第113回(1995年上半期) - 赤瀬川隼『白球残映』
- 第114回(1995年下半期) - 小池真理子『恋』、藤原伊織『テロリストのパラソル』
- 第115回(1996年上半期) - 乃南アサ『凍える牙』
- 第116回(1996年下半期) - 坂東眞砂子『山妣』
- 第117回(1997年上半期) - 篠田節子『女たちのジハード』、浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』
- 第118回(1997年下半期) - 該当作品なし
- 第119回(1998年上半期) - 車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』
- 第120回(1998年下半期) - 宮部みゆき『理由』
第121~130回
- 第121回(1999年上半期) - 佐藤賢一『王妃の離婚』、桐野夏生『柔らかな頬』
- 第122回(1999年下半期) - なかにし礼『長崎ぶらぶら節』
- 第123回(2000年上半期) - 船戸与一『虹の谷の五月』、金城一紀『GO』
- 第124回(2000年下半期) - 山本文緒『プラナリア』、重松清『ビタミンF』
- 第125回(2001年上半期) - 藤田宜永『愛の領分』
- 第126回(2001年下半期) - 山本一力『あかね空』、唯川恵『肩ごしの恋人』
- 第127回(2002年上半期) - 乙川優三郎『生きる』
- 第128回(2002年下半期) - 該当作品なし
- 第129回(2003年上半期) - 石田衣良『4TEEN フォーティーン』、村山由佳『星々の舟』
- 第130回(2003年下半期) - 江國香織『号泣する準備はできていた』、京極夏彦『後巷説百物語』
第131~140回
- 第131回(2004年上半期) - 奥田英朗『空中ブランコ』、熊谷達也『邂逅の森』
- 第132回(2004年下半期) - 角田光代『対岸の彼女』
- 第133回(2005年上半期) - 朱川湊人『花まんま』
- 第134回(2005年下半期) - 東野圭吾『容疑者Xの献身』
- 第135回(2006年上半期) - 三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』、森絵都『風に舞いあがるビニールシート』
- 第136回(2006年下半期) - 該当作品なし
- 第137回(2007年上半期) - 松井今朝子『吉原手引草』
- 第138回(2007年下半期) - 桜庭一樹『私の男』
- 第139回(2008年上半期) - 井上荒野『切羽へ』
- 第140回(2008年下半期) - 天童荒太『悼む人』、山本兼一『利休にたずねよ』
第141回~
テレビ
- 『ルポルタージュにっぽん』 直木賞の決まる日(NHK 1980年1月26日)
脚注
<references />
外部リンク
en:Naoki Prize fr:Prix Naoki ko:나오키 산주고 상 nl:Naokiprijs ru:Премия имени Сандзюго Наоки zh:直木三十五獎