白倉由美

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Template:漫画 Template:Portal 白倉 由美(しらくら ゆみ、女性、1965年3月8日 - )は、日本漫画家ラジオ番組などのプロデューサー小説家千葉県出身。武蔵野女子大学文学部日本語・日本文学科卒業。夫は作家漫画原作者大塚英志(正式な婚姻内縁関係かは不明)。

思春期の少年少女の心情を繊細なタッチで描いた作品が中心で、漫画家デビュー以来少数ながら根強いファンが存在する。代表作は『セーラー服で一晩中』『贖いの聖者』『夢から、さめない』など。作品によっていくつかのペンネームが存在する。

漫画家としては筆を断ち、現在は小説家に転身している。

目次

漫画家としての経歴

漫画家時代

  • 1983年 - 漫画雑誌『プチアップル・パイ』(徳間書店)3号に掲載された『魚座生まれのロンリーキャット』でデビュー。
  • 以降、3年ほど『プチアップル・パイ』や『漫画ブリッコ』(発行:白夜書房、発売:日正堂)にて執筆活動を続ける。ちなみに大塚英志は当時『漫画ブリッコ』の編集者だった。
  • 1986年 雑誌『リュウ』(徳間書店)にて『恋するスパークリングフラッシュ』を、『週刊少年チャンピオン』にて『セーラー服で一晩中』を連載。
  • 1988年 - 1990年ヤングチャンピオン』にて『卒業、最後のセーラー服。』を連載。
  • 1989年 - 『サクリファイス』を単行本書下ろしで発表。
  • 1991年 - 『贖いの聖者』を単行本書下ろしで発表。
  • 1991年 - 『週刊少年チャンピオン』にて『東京星に、いこう』の連載を開始(-1992年)。
  • 1992年 - 尾崎豊の急死に伴い、『卒業、最後のセーラー服。』の後半部分のみを改訂して書き下ろした単行本『懐かしい年への手紙』を出版社を変えて刊行。
  • 1992年 - 同年より『季刊仏教』(法藏館)にて『グレーテルの記憶』の連載を始める。
  • 1996年 - 『グレーテルの記憶』連載を中断。事実上これが漫画家としての白倉由美の活動の終わりとなった。

その後は小説『夢から、さめない』に漫画を描き下ろしたり、2001年に復刊された『白倉由美コレクション1 セーラー服物語』にて単行本未収録だった『短距離走者』を新たに書き下ろしているが、本格的な漫画家としての活動再開は無い見込みである。

漫画家廃業の理由

小説『夢から、さめない』には、「なんだかこの仕事は、私のやりたいこととちがうかも…」と思って漫画を描くことをやめたという記述がある。『comic新現実 vol.4』にはより詳細な理由が記載されていて、自身の絵柄の印象と実際に作者が志向する主題との格差に苛まれたためであるという。『卒業、最後のセーラー服。』を例に挙げると、当初は2人の少年少女のラブコメディという形式で連載を始めたが、次第にこの要素が影を潜めて沈鬱な描写が増えてくるようになると、編集部との対立を生むようになった。さらには読者の支持も失い、最終的には物語が強引に幕引きされる形で打ち切られた。その後、画風をより写実的なものに変え、ラブコメディにありがちな御都合主義を排除するようになると、それに比例するかのように白倉の作品は売れなくなった。そのため、次第に漫画という媒体がどこまでいっても自分の求める表現を追求できないものと判断し、それが白倉の小説家への転向へと繋がった。

漫画作品の復刊

白倉由美は『グレーテルの記憶』の執筆を開始する前後に、自身の単行本を全て絶版にした。しかし、1996年にリーディングストーリィ『東京星に、いこう』のCD発売を契機に、少しずつ自身の作品を出版社は変えつつ復刊している。

  • 1996年 東京星に、いこう
  • 2001年 - 白倉由美コレクション(1巻が『セーラー服物語』、2・3巻が『セーラー服で一晩中』)
  • 2002年 - 贖いの聖者
  • 2003年 - グレーテルの記憶(前半の一部分のみ。これ以前は単行本未収録だった。)

漫画原作者としての活動

また、白倉由美は漫画家の休業と同時に漫画原作者としての活動を始めている。

  • 1996年 - 1997年 - 『少年王』(光文社)で連載された『Dream Girl 声優物語』の原作を担当。
  • 1997年 - 1998年 - 『月刊ASUKAファンタジーDX』で連載された『イイナ 〜Feel for Love〜』の原作を「S-nery Angel」名義で担当。ただし、実際は『イイナ』の原作は大塚英志であることが後に明らかにされた。
  • 2001年 - 2002年 - 『月刊少年エース』にて掲載された『雨の音が聞こえる』の原作を「大塚麻巳子」名義で担当。

プロデューサーとしての経歴

ラジオ番組の内容

1995年10月、マダラプロジェクト(後の大塚英志事務所/物語環境開発)制作のラジオ番組「マダラプロジェクトアワー」がTBSラジオより放送を開始し、白倉由美はそのプロデューサーを務める。

  • この番組には3つの特徴があった。当時新人の声優だった桑島法子桂川千絵前田このみパーソナリティとして起用したこと、3人で「S-nery」(サナリィ)という名のグループを結成させてアイドルのように演出したこと、そして短編の物語を朗読する「リーディングストーリー」(「リーディングストーリィ」とも表記される)というコーナーがあったことである。リーディングストーリーとは、静かなピアノの曲などを背景に静かな口調で朗読するもので、派手な効果音が無い点でラジオドラマとは異なる。最初のリーディングストーリー『夢から、さめない』はS-neryによって演じられた。
  • 当初は半年で終了する予定だったが、1週間に1,000通以上の葉書が来ることもある人気番組となったこと、白倉由美も最初のリーディングストーリー『夢から、さめない』の続編を制作することを強く希望したため、番組の続行が決定した。その後は、キー・ステーションをAM KOBEに変更し、番組名やパーソナリティを頻繁に変更・交替しつつ、最終的には2000年3月まで番組は続いた。その間に、『夢から、さめない』の続編である『東京星に、いこう』など多数のリーディングストーリーが制作され、その内のいくつかはCDに収録されて発売された。また、白倉により作詞・プロデュースされた楽曲も多くがCD化された。番組からはパーソナリティを務めた多くの新人女性声優が巣立っていったが、中には卒業後声優として成功を収めたものも何人か現れた。なお、白倉は全てのリーディングストーリーの脚本を担当し、またパーソナリティの人選も全て彼女が決定した。
  • 白倉がプロデュースした番組は、パーソナリティが自由気ままに喋っているように放送されていたが、実際にはフリートークでさえも白倉が用意した台本を一字一句に至るまで読まされていた。放送時の番組台本的発行物でである光文社出版「夢さめ戦隊S-neryサナリー」P227にそれを陰喩する注釈があり、後日、太田出版『新現実 vol.4』13P・60Pで白倉がその旨を明言している。番組内でもパーソナリティはみんな仲良しのように演出されていたが、実際にはどこまで本物だったかは不明瞭である。事実、2001年5月25日に開始されたアスキー主催のコンテンツ配信サイト「enban.net」(2002年11月29日閉鎖)の中にあったインターネットラジオ番組「enbanセキララVoice」において、小島幸子千葉千恵巳が飲酒しながらトークをするコーナーがあったが、その中で『超時空学園SORANE』で共演した桂川千絵について「影が薄い」などと陰口を叩いていた。
  • 番組が終了することになった原因は、白倉がその年の4月より社会人枠で武蔵野女子大学に入学することが決まったためである。終了する頃には、AM KOBEでは青春ラジメニアに次ぐ人気番組となっていたと、番組の最終回で大塚英志は述べている。また、歴代のパーソナリティの中で一番好きなのは菊地由美、一番嫌いなのは桑島法子で「もう本当に嫌いなんで、あんな性格の悪い人とは二度と会いたくありません」と暴露した。詳細な理由は不明だが、桑島が『機動戦艦ナデシコ』のミスマル・ユリカ役で大ブレイクすると白倉の番組には出演しなくなり、公表している過去の経歴からも白倉の番組は抹消されている。

番組終了後

白倉がプロデュースしたCDは発売後ほとんどが廃盤となっていたが、2003年12月より『白倉由美ベストセレクションシリーズ』として復刻し始めている。2005年8月現在までに復活したのは、リーディングストーリー『東京星に、いこう』、音楽CD(白倉のラジオ番組のパーソナリティ、または一般の声優によるヴォーカル)である。また、併せて新作『グレーテルの記憶』も発売されている。今後もリーディングストーリーが復活する可能性はあるが、今のところは未定である。

白倉は2004年に武蔵野大学を卒業し、2005年7月3日より始まったラジオ関西の「改め!ラジオ新現実」にて、再びリーディングストーリーを始めた。番組は同年12月25日に終了した。

番組に出演した主な人々

注記が無いものは全て新人声優である

小説家としての経歴

小説家としての仕事が、現在の白倉由美の本業である。白倉は元々大の文学好きで、文学者への憧れが昔からあったらしい。既に漫画家時代から大江健三郎などの小説家の影響が随所に見受けられた。1989年には既に『卒業、最後のセーラー服。』の3巻で『今はもう、いない』という、夕やけニャンニャンを題材にした短編小説を掲載していた。

  • 1997年 - ラジオで放送されたリーディングストーリィ『夢から、さめない』の内容を一部改訂した小説『夢から、さめない』を刊行。
  • 1998年 - 1999年 - 『ザ・スニーカー』にて『ミルナの禁忌』を連載。
  • 2000年 - 『月刊ニュータイプ』において『多重人格探偵サイコ -雨宮一彦の帰還- ロリータの温度』を連載。
  • 2000年 - 単行本『ロリータの温度』を書き下ろす。『月刊ニュータイプ』に連載されていたものとは別物である。
  • 2001年 - 『小説現代増刊号メフィスト』(講談社)にて、私小説『おおきくなりません』の掲載を開始。続編の『やっぱりおおきくなりません』を含めれば2003年まで続く。
  • 2003年 - 初めて児童文学に挑戦した『きみを守るためにぼくは夢をみる』(講談社)を刊行。

2002年に創刊された、大塚英志が編集を務める思想誌『新現実』(角川書店)より『しっぽでごめんね』の連載を始めた。また2004年に『新現実』の姉妹誌として漫画専門誌『Comic 新現実』が創刊されると、同時に『しっぽでごめんね』の連載も移行した。同誌では新作『海の境界』も執筆している。

備考

  • 自身の今までの作品について、白倉由美自身は「大きなイニシエーションみたいなのがなくなって、いつまでもコドモのままでオトナになれない主人公たちを、どうやって大人にならせてあげようか」というのがテーマであると語っている(『comic新現実 vol.4』10P - 11P)。ただし白倉にとっての「大人」と「子供」の違いは明確に定義されていない。
  • 連載当時の社会現象や衝撃的な事件に受けた影響を自身の多くの作品に投影させている。特に1980年代の出来事が顕著である。芸能界を舞台や背景にした作品がいくつもあるが、それらは白倉がおニャン子クラブのファンだったことに由来する(単行本『セーラー服で一晩中』でのコメントなど)。また、岡田有希子の投身自殺は白倉に大きな衝撃を与えたようで、『サクリファイス』や『イイナ 〜Feel for Love〜』の題材に取り上げ、またその他の作品でも断片的にこの事件に言及している。また、『卒業、最後のセーラー服。』の主人公の少年は尾崎豊を原型にしており、連載終了後の尾崎の死に合わせて内容を大幅に改訂した『懐かしい年への手紙』を書き下ろしている。加えて、『卒業、最後のセーラー服』の連載中に起きた連続幼女誘拐殺人事件に触発されて、登場人物の一人をその事件の犯人になぞらえている。『贖いの聖者』では、1980年に起きたイエスの方舟事件を題材に白倉流の世界観を展開している。『イイナ 〜Feel for Love〜』や『ミルナの禁忌』は、当時爆発的に流行したアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』から数々の設定を流用している。『飛ぶ教室』では戸塚ヨットスクール事件の背景をほぼそのまま作品に引用している。最近の作品では、読者に重大事件を容易に連想させるような内容の描写は減る傾向にある。
  • 小説版『夢から、さめない』は、村上春樹の影響を深く受けている。ある人物の自殺が物語の原点となっていることや、そのために2人の男女が互いに好意を持ちつつ溝が埋まらないことなど、作品の背景が『ノルウェイの森』と共通するところが多い。また、『夢から、さめない』に出てくる「動物園襲撃計画』は、村上の『ねじ巻き島クロニクル』の第3部『鳥刺し男編』の第10章サブタイトル『動物園襲撃(あるいは要領の悪い虐殺)』から発想を得たと推測される。ただしその章の内容とは共通点はない。『夢から、さめない』の第3話『水の影を踏む』の後半部分は、『ノルウェイの森』の第一章後半の記述をほぼそのまま転載している。
  • 白倉由美がプロデューサーを担当したラジオ番組からは20人近くの声優の卵が活躍した。番組を卒業後声優として大きく成長した者も何人かいる。代表例を挙げれば、前述の桑島法子、千葉千恵巳、豊嶋真千子、浅川悠、真田アサミなどがいる。またラジオ番組担当ではないが、平野綾もデビュー間もない頃にCD・書籍の「ロリータの温度」に出演している。また作家・佐藤友哉もこの番組に影響を受けた一人である(『S-neryベスト盤 夢からさめない』の解説より)。
  • 『贖いの聖者』は、原作は大塚英志というクレジットがつけられているが、これは版元の要求によりつけられたものであり、実際には白倉由美のオリジナル作品である(『comic新現実 vol.4』33P)。ただし本書の後書を見る限り、ある程度は大塚も協力しているようである。逆に、『イイナ 〜Feel for Love〜』は白倉が原作者であるようにクレジットがつけられているが、実際には大塚が原作を担当していた(『S-neryベスト盤 夢からさめない』の解説より)。ただしCDドラマの方は白倉が原作担当のようである。このように、白倉由美原作あるいは大塚英志原作とされている作品が必ずしもクレジット通りとは限らない。

作品リスト

漫画・画集

(絶版となった後で復刊された作品は、復刊された方のみ記述)

  • スゥエード・キルシュ(白夜書房) 絶版
  • ソロモンの指環(徳間書店) 絶版
  • 恋するスパーリングフラッシュ(徳間書店) 絶版
  • 学園少女 / 砂緒(白夜書房) 絶版
  • セーラー服物語2巻(バナナムーンで会いましょう 収録)絶版 
  • セーラー服物語3巻(彼女の海岸線 収録) 絶版 
  • 卒業、最後のセーラー服。(秋田書店) 絶版
  • サクリファイス(発行:スケール、発売:弓立社) 絶版
  • 懐かしい年への手紙(秋田書店) 絶版
  • 東京星に、いこう(発行:オプトコミュニケーションズ、発売:主婦の友社) 絶版
  • 白倉由美コレクション(セーラー服物語・セーラー服で一晩中) (角川書店)
  • 贖いの聖者(角川書店)
  • グレーテルの記憶(講談社)

漫画原作

  • Dream Girl 声優物語(作画:内村かなめ) (光文社)
  • イイナ 〜Feel for Love〜(原作:S-nery Angel、作画:成瀬かおり) (角川書店)
  • 雨の音が聞こえる(原作:大塚麻巳子 作画:やまさきもへじ) (角川書店)

CD

小説

  • 夢から、さめない(角川書店)
  • ミルナの禁忌(角川書店)
  • 〜セーラー服で一晩中〜 終わらない夏休み(角川書店)
  • おおきくなりません(講談社)
  • きみを守るためにぼくは夢をみる(講談社)
  • ラジオ・キス(講談社)
  • やっぱりおおきくなりません(講談社)
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