理想気体

出典: Wikipedio


画像:Translational motion.gif
理想気体分子が分子同士または容器壁と完全弾性衝突を繰り返す様子

理想気体(りそうきたい、または完全気体(かんぜんきたい)、Template:Lang-en-short)は、気体分子原子)自身の体積分子間力などの相互作用をともに0と考えた場合の仮想的な気体。実際にはどんな気体分子にも体積があり、分子間力も働いているので理想気体とは若干異なる性質を持つ。そのような理想気体でない気体を実在気体という。実在気体も、低圧で高温の状態では理想気体に近い振る舞いをする。理想気体に成立する法則として代表的なものには次のものがあげられる。

また理想気体は分子同士や容器内壁と衝突してもその衝突前と衝突後で運動エネルギーの和は変わらない(完全弾性衝突)。

目次

理想気体の状態方程式

これら理想気体のふるまいは、以下の理想気体の状態方程式で表される。

<math>P V = n R T = N k T</math>

ここでPは圧力、Vは体積、nは物質量モル、Rは気体定数、Tは熱力学温度、Nは分子数、kはボルツマン定数である。 理想気体の内部エネルギーは以下の式で表される。

<math>U = \hat{c}_V nRT</math>

<math>\hat{c}_V</math>は定数であり、自由度の1/2に相当する。単原子分子なら<math>\hat{c}_V = \frac{3}{2}</math> であり、二原子分子なら<math>\hat{c}_V = \frac{5}{2}</math> である。

比熱容量

定積モル比熱cVは以下の式で表される。

<math>c_V = \frac{1}{n} \left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V = \hat{c}_V R</math>

定圧モル比熱cPは以下の式で表される。

<math>c_P = \frac{1}{n} \left(\frac{\partial H}{\partial T}\right)_p = (\hat{c}_V+1) R</math>

Hはエンタルピーで、H=U+PV である。cVとcPの関係は

<math>c_P - c_V = R</math>

となり、これをマイヤーの法則という。

理想気体の非現実性

理想気体はあくまで想像上の存在であって、現実には存在しない気体である。事実、実在気体では、高圧で低温の状態では理想気体とは異なった性質を持つ。これは理想気体が、仮想上以下の性質を持つためである。

理想気体には気体分子の概念が存在しない。
理想気体は、温度が下がれば下がるほど体積は小さくなっていき、絶対零度セ氏では-273.15℃)では体積は0になるとされる。だが、これでは気体の体積が完全になくなった状態となり、気体が消滅したことにもなってしまう。理想気体に気体分子の概念が存在しないためで、理想気体の体積中では気体分子の占める体積は存在しない、と定義付けられているためである。
無論、これは実在気体では起こりえない現象である。実在気体は気体分子が存在するため、体積は小さくなっても決して0にはなりえない(もっともその前に液体や固体になってしまうが)。また、イオン化共有結合などによって電子の授受が行われない限り分子の体積は変化しない。加圧や冷却によって分子自体の大きさが小さくなることはないのである。
理想気体には気体分子間の引力が作用しない。
気体は分子運動熱膨脹をするが、同時に分子振動もしている。加熱や減圧では気体分子の運動エネルギーは大きくなるので、分子振動は無視できる。だが、逆に加圧や冷却では気体分子の運動エネルギーは小さくなり、分子振動も無視できなくなってくる。その前に分子運動が低速になった状態で分子が接近すると分子間に引力が作用するので、ファンデルワールス力などの分子間力が作用するようになる。結果、分子運動のエネルギーが分子間力のエネルギーよりも小さくなり液体になる。液体は分子運動と分子振動で膨張するが、さらに加圧・冷却が進むと分子運動のエネルギーが分子振動のエネルギーよりも小さくなり、ついには分子は自由運動ができなくなってしまう。この状態が固体である。
実在気体で起こる凝固凝結、ならびに昇華と言う現象は、理想気体では発生しえない。理想気体では分子間力がいっさい作用しないため(それ以前に分子自体が存在しない)、どんなに加圧・冷却をおこなっても液体や固体にはならない。また、理想気体の運動エネルギーは∞(無限大)とみなされる。このため、分子運動のエネルギーが分子振動のエネルギーより小さくなることはなく、気体のままでいられる。
理想気体は分子同士や容器内壁と衝突してもその衝突前と衝突後で運動エネルギーの和は変わらない。いわゆる完全弾性衝突で、これは熱力学第一法則に従う。また、理想気体の状態方程式とボイル=シャルルの法則を両立させた結果でも、理想気体は熱力学第一法則に反していない。冷却によって体積が縮小されると、体積の縮小と言う形で理想気体が仕事をしたことになる。一見すると理想気体は熱力学第一法則に反しているように見えるが、外部からのエネルギーの供給なくひとりでにエネルギーを作り出すこともせず、逆に発生したエネルギーを仕事をさせずに消滅させてもいないので、熱力学第一法則とは矛盾しない。

関連項目


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