狭軌

出典: Wikipedio


Template:軌間 狭軌(きょうき、Narrow gauge)は、鉄道線路のレール間隔をあらわす軌間標準軌の1,435mm(4フィート8.5インチ)未満のものをさす。

目次

概要

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標準軌(青)と狭軌(赤)の幅の比較

日本の書物において「狭軌」の記述がある場合、日本で多く用いられている1,067mmの軌間のみを指すことがある。一方、日本の旧国鉄の中で国有化買収路線のなかに存在した762mm軌間の路線については特殊狭軌線と呼ばれた(三岐鉄道近畿日本鉄道の一部でも現存する該当路線に対してこの呼称がある)。また特に、約3フィート(あるいは1m)未満のものは軽便鉄道として敷設されたものが多く、趣味的にナローゲージと云われる場合にこれを指す場合がある。

性質

実際、経済的なナローゲージを実現しようとすると約3フィート以下の軌間が必要となる。メーターゲージあるいは米国3フィートゲージと呼ばれる軌間が一般的であるが、他にも各種の軌間がみられる。例えばインドの鉄道では610mm(24インチ)軌間と762mm(30インチ)軌間の路線が3794kmにもわたって存在する。

これらナローゲージは、より小型の車両や機関車、橋梁やトンネル、小半径の曲線を採用することにより線路施設の構造をより軽量化できるため、路線コストを低廉化することが可能である。同様に、軽量構造は林業に適する。このため、森林鉄道ではしばしば採用される。木材の伐採が終わったら線路は移動しなくてはならないからである。いくつかのナローゲージの森林鉄道は、実質的には森のなかを路盤無しで支脚だけの上に敷設された。鉱山鉄道でも同様の理由からナローゲージが用いられる。

第一次世界大戦時には、同盟国、連合国の双方とも前線での輸送用に狭軌の鉄道を盛んに建設した。戦後のヨーロッパでは、その資材を流用した狭軌鉄道が一時流行した。

主な狭軌

  • 381mm(15インチ)
  • 508mm(20インチ)
  • 597mm
  • 600mm
  • 610mm(24インチ=2フィート)
  • 750mm
  • 762mm(30インチ=2フィート6インチ)「ニブロク」、「特殊狭軌」
  • 800mm
  • 914mm(3フィート)
  • 1000mm「メーターゲージ」
  • 1067mm(3フィート6インチ)「三六軌間」
  • 1372mm(4フィート6インチ)「馬車軌間」

このうち幹線鉄道に用いられるのは914mm以上のもので、英語ではmedium gaugeとも呼ばれる。日本などイギリスから鉄道技術を導入した国では1067mmが主に用いられ、フランスなどのヨーロッパ大陸諸国の影響下の国では1000mmが、アメリカ合衆国の影響下にあった国では914mmが用いられる傾向にある。

なお、営業用として運行される鉄道で最も狭いゲージは381mm(15インチ)で、イギリスのロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道が有名である。(英語版Wikipedia:Romney, Hythe and Dymchurch Railway)日本の静岡県伊豆市修善寺にある虹の郷には、この鉄道と同規格の車両による園内路線が敷設・運行されている。

三六軌間

後述するように、日本で多く用いられている軌間は1,067mmであり、一般に「三六軌間」と呼ばれている。3フィート6インチから来たものである。

ドイツでは、この軌間を最初に用いたノルウェー人Carl Abraham Pihlのイニシャルにちなんで、Kapspur(ドイツ語:CがKに書き換えられている)と呼ばれている。

また、英語ではcape gaugeと呼ばれる。英国の植民地であったケープタウン周辺(南アフリカ)で用いられていたことに由来している。

日本の三六軌間

日本の大多数の路線は1,067mm(3フィート6インチ)軌間で敷設されている。これは、国力の弱かった当時の日本の経済実情と山や河川の多い地理事情に合わせただけという見方が一般的である。 イギリス本国においても、狭軌は炭鉱のあったウェールズ地方などの山間部で、地形に適した鉄路として採用されているため、山が海岸に迫っていて平地が少なく海岸線も入り組んでいることから、トンネルや鉄橋を多用しなければならなかった日本で狭軌を採用することには、合理性がある。 鉄道導入にあたって技術指導を求めたイギリスが植民地において採用した軌間であるため、文明の遅れた植民地並みと見なされたというとらえ方もあるが、日本はイギリス以外にアメリカやドイツから鉄道車両や技術を輸入している為、この見解は疑問である。日本の鉄道開業も参照のこと。

その後、鉄道院時代に総裁後藤新平の指示で、島安次郎らによって標準軌への改軌の技術的な検討もされたりしたが(改主建従)、地方への鉄道敷設推進による政権支持の確保という、政治的な理由から、一ランク低い規格のまま、全国的な鉄道網の建設が続行された(建主改従)。日本の改軌論争も参照のこと。

地方鉄道法により、使用できる最大のゲージが狭軌に制限されていたため、私鉄を含めて狭軌が広まった。この制限は、後で政府が私鉄を買い上げて国有鉄道に一体化することを前提としていたからである。また、国有鉄道が狭軌であることから、貨物輸送を行う場合は貨車の直通が不可能になってしまうことを避ける目的もある。

近畿地方の私鉄に標準軌が多いのは、地方鉄道法によらず軌道法の拡大解釈に基づいて専用軌道を敷設したことによる。しかし(他地区も含めた)標準軌路線であっても、車両限界は国鉄と同じか、それ以下であることも多い。この場合、トンネル断面積や駅の設備など、結局建設コストに大差はなく、「イギリスの植民地扱いで日本は狭軌になった」説の1つの根拠になっている(実際、これらの私鉄は初期にはヨーロッパではなくアメリカから車両を輸入しているケースが多い)。

その後、新幹線計画においては高速化を実現するために、狭軌ではなく標準軌で建設された。

1,067mm軌間を採用する主な路線は次の通り。

日本以外の三六軌間

1,067mmの軌間を採用する国・地域の例は次の通り。

アメリカ合衆国では、サンフランシスコのケーブルカーがこの軌間で現存している他、1963年まで存在したロサンゼルスの市街電車や、1950年まで運行されていたデンバーの市街電車の軌間が1,067mmであった。

ノルウェースウェーデンでは19世紀に1,067mm軌間の鉄道網が作られたが、後に改軌された。カナダニューファンドランド島には1988年まで1067mm軌間の鉄道が存在した。

馬車軌間

この他の日本の狭軌線には1372mm(4フィート6インチ)軌間がある。その出自から馬車軌間とも呼ばれ、標準軌・旧国鉄採用軌間とも違うことや使用線区の特殊性から偏軌変則軌道とも言われる。また、東京とその周辺では一時広く採用されたのに対し、日本国内のみならず世界的に見ても、それ以外での使用例がきわめて少ないことから、東京ゲージの呼称を提唱している鉄道史家もいる。かつてスコットランドの一部で使われたので英語ではScotch Gauge(en:Scotch gauge)と呼ばれる。 これは東京馬車鉄道(この時代の軌間は767mmあるいは737mmとされる)の路線網を引き継いだ東京電気鉄道が東京初の電車を走らせ始めたときに用いられた規格で、その路線は後に東京市電気局を経て都電などに引き継がれた。

2008年現在、これを採用している鉄道会社・路線には次のようなものがある。

高速鉄道としては京王、都営のみ採用している。これらは都電とのつながり(直通、車両の流用)から採用された。特に京王電鉄については、その創業期に東京市電への乗り入れを計画したことや、軌道法により敷設を始めたことなどから1,372mmを採用し、地方鉄道として開通させた旧玉南電気鉄道区間(府中駅東八王子駅間)では京王電軌に合併後1,067mmから1,372mmへの改軌もしたが、都電乗り入れは実現しなかった。1945年、京王線が軌道法から地方鉄道法による鉄道に変更してからも馬車軌をあたため続けた。後に都営新宿線を建設する際、都が相互乗り入れを予定している京王帝都に対して1,435mmへの改軌を迫ったが、営業運転を継続しながら改軌に成功した1950年代の京成に比べ、1970年代の京王線のダイヤと車両数では営業を続けながらの改軌工事が不可能であったことなどから京王帝都の言い分が関係各所に受け入れられ、都営新宿線の方が京王に合わせて1,372mm軌間を採用したという経緯がある。日本の改軌論争も参照のこと。

過去の例としては以下の鉄道会社・路線がある。

  • 京浜急行電鉄は、その前身である京浜電気鉄道時代の一時期(1904年1933年)に、1372mm軌間へと改軌し東京市電に乗り入れていた。
  • 京成電鉄では都営地下鉄1号線(現浅草線)乗り入れ前の1959年に標準軌に改修するまで採用していた。王子電気軌道(現在の都電荒川線)への乗り入れを構想していたためである。
  • 京成の子会社の新京成電鉄は、1947年に1,067mmで開業した後、1953年、京成に合わせて1372mmに改軌し、さらに京成と同じく1959年には標準軌に改軌している。
  • 現在の東急世田谷線の本線に当たり、1969年に廃止された東急玉川線も同じ軌間であった。
  • 横浜市交通局横浜市電)、1972年廃止。
  • 西武鉄道(旧)大宮線。東京市電の払い下げ車を使用していた。並行して省線川越線が開通したため1941年廃止。

その他の馬車軌間

  • 1581mm(5フィート2¼インチ)
  • 1588mm(5フィート2½インチ)
  • 914mm(3フィート)

特殊狭軌

日本で1,067mm未満の軌間を採用している路線で、現存するものには次のものがある。

かつて存在した路線は非常に多く、第二次世界大戦中に不要不急路線として廃止されたもの、1960年代前後に道路交通の整備により役目を終えて廃止されたものがあった。なお、国有鉄道に存在した特殊狭軌線に関しては国鉄の特殊狭軌線を参照のこと。

日本国内の鉱山では610mm軌間の物が多い。坑内では508mmを採用していた所もあるようである。 工事現場で使用された手押しトロッコの軌間には主に610mmと508mmであり、機関車を用いた 工事用軌道は610mmと762mmが多い。

日本における狭軌の保存鉄道

関連項目

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外部リンク

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