模型

出典: Wikipedio


模型(もけい)とは、「何か」を模倣し、具象化したもの。一般的には三次元の造形物を指すが、コンピュータを用いて作成した三次元データを指す場合もある。

また、自然科学の分野では「原子模型」や「標準模型」等のように自然界の構造を模式化し、説明するための"model"の訳語として「模型」が使用される場合がある。これに関してはモデル (自然科学)を参照のこと。

目次

概説

模型を用いて具象化する(=形あるものにする)「何か」は具体的なものから抽象的なものまで非常に広範囲に渡る。その「何か」の表現力が非常に優れていて他人の感情に訴えかけるものが出来た場合は芸術品に分類されることもある。芸術品の多くは大量生産されないことが前提であるが、ポップアートと呼ばれる近代芸術の発展にともないその境界は曖昧になりつつある。彫刻彫塑が模型と呼ばれないのはその製作技法や製作過程の違いと伝統的な分類による面もあるが、最も大きい理由はこれらを作る目的がモデルとするものに似せることではなく、自らの芸術性の発露としてのオリジナルの作品を作ることにあるためである。

模型をつくる目的には大きく分けて3つある。第1は模型を作ることで模したものの存在や構造、あり方、概念などを理解しやすくするためである。この目的でつくられたものは内部構造や動作の再現も求められ、正確な複製が必要とされる。第2に模したものを所有することによって何かの代償とするためである。この目的でつくられたものには正確さと同時に外観の美しさや価格が重要となる。第3は現実にあるものを模してその代用としたり、これから作ろうとするものの形状や機能などを事前に確認するためである。

学術的な模型

主に理解のための模型であり、教育・研究の現場や、博物館の展示などで作成・使用される場合が多い。

  • 巨大なものを模することでその理解や把握を容易にするもの。「太陽系の模型」「地球儀」「ジオラマ(=町並みや地形の模型)」
  • 小さなものを模することでその理解や把握を容易にするもの。「DNA模型」「分子模型
  • 抽象的な概念を立体化してその理解や把握を容易にするもの。「色立体」「重力平面のモデル」
  • 現存していないものや目に見えないものを模することでその理解や研究等に活用するもの。「恐竜の復元模型」「医療用の人体模型」「過去の町並みや生活様式などの復元模型」
  • 同じものを同じ素材、同じ技法で作ることでそのものの理解や技術研究に活用するもの。「土器石器の復元模型」「ミニSL

研究に活用される場合は模することが目的であり完成した模型は本来は副産物と言える。コストも高く商業的な活用は難しいことが多い。しかし模した結果モデルそのものが商品価値を持った例もある。著名なものにはルービック・キューブが上げられる。また教材や研究用として近年3DCGを活用したものも多く見られる。

宗教的な模型

  • 現存するものを模して所有することで精神的な支えとなるもの。人の形をした模型は人形と別称する。「こけし」「雛人形」「スカラベのお守り」

所有することで精神的に安心をもたらす場合、これらは形代とも呼ばれる。多くはその持ち主の希望や罪の償いなどの抽象的な意志を具現化するものであり、穢れや災厄から身を守ると信じられる。また人形にはもともとの目的が人間の代用であったものも少なくない。例えば古代の墳墓に副葬されている人形には、殉死者の身代わりに権力者の死出の供をさせる目的のものがある。雛人形も本来は祓い神事の人形であったと言われる。

  • 視認できないなどを模して信仰の対象とするもの。「仏像」「ミニチュア神像」「リンガ

多くは信仰用として必要とされる。抽象的なイメージよりも具体的な何かがあった方が理解しやすいためである。しかしそれは想像力の固定化を招くと同時に神聖なものを卑近なものに貶める行為として忌避する宗教も多い。ユダヤ教キリスト教イスラム教では偶像崇拝を禁止している。厳格に戒律を守ってきたイスラム圏では玩具としての人形や模型文化そのものが未発達である。しかし生活の多様化にともないイメージの固定化が必要になってきた近年では、商品のデザインのために試作品をつくることが多い。イメージ検討用模型は作った途端に廃棄されるために模型そのものは残らないことがほとんどである。

工業的な模型

これらは製品と同サイズで作られることが基本であるが、製品のサイズや用途によっては縮小したものや、拡大したものが作られる場合もある。 工作の容易な木材やケミカルウッド等で作られる場合が多いが、粘土や金属が使用される場合もある。 近年では、デジタルモックアップと称して3次元CADデーターでモックアップの機能の多くを代行させたり、CADデーターを光硬化樹脂等で3次元出力したものを木型として使用する場合もある。

  • 建築物等で、完成時のイメージの把握を容易にするため、事前に作成され、プレゼンテーション等に使用される縮小模型。「建築模型
  • 反転して製品製造用の雌型(鋳型金型等)を作るための、製品と同じ形状をした雄型。「原型

原型の素材はさまざまであり、作成には高度な知識・技術・経験が要求される。雌型の製作時および製品の成型時の収縮等により、原型と製品のサイズが微妙に異なることも多く、原型製作時にはその点も考慮する必要がある。原型の素材および反転の方法によっては、雌型成作時に原型が失われる場合も有る。

商業用の模型

実物の代用としての模型

  • 映画の撮影などに使用するもの。「セット」「小道具」「撮影用ミニチュア」
  • アミューズメントパーク内に再現された山や、水族館の水槽の中に再現された海底などの自然を模したもの。
  • 商品のサンプルとして使用するもの。内部構造まで再現したもの、商品の外装のみを使用し内部を省略したもの、食品サンプルのように外観のみを再現したものなど様々なタイプのものがある。
  • 軍隊で軍艦や航空機、車両などの識別訓練に使用したもの。これをプラスチックで作る技術からプラモデルが生まれたとされる。
  • ニュース番組に登場する政治家の人形や、事故機、事故現場などの模型。

所有のための模型

所有することが目的となる模型に関しては多くは収集を趣味とするコレクターの存在により商業として成立している。 また「玩具」には実物の存在しないものが多い。著作権オリジナリティーの概念が発達した近年では「誰も見たことがないもの」を生み出すことがより商売上の問題を解決しやすいためである。

趣味としての模型

Template:独自研究 趣味としての模型は大きく3つに分類できる。

これらの模型には、実在する物(飛行機自動車等)を模したものと、想像上の物を模したものがある。実在するもの(あるいは実在しなくとも、大きさや形状が厳密に設定されているもの)を忠実に縮小して作られたものは特に、スケールモデルという。反対に実物が存在しないものは「キャラクターモデル」と呼ばれることがある。

もともと模型は前述の通り模したものであり、本来はその過程において何らかの理解や共感、達成感を得ることも大きな楽しみ方の一つであった。しかし近年では商業的な側面から組み立て済み彩色済み模型の発売が急増している。特にガレージキットの主な対象の1つであったフィギュアや、プラモデルの主要なジャンルである飛行機や戦車でも、高品質で比較的安価な完成品が多数発売されており、自ら作る「モデラー」の減少する一因となっているとも考えられる。またプラモデル自体も変化し、ガンプラなどはスナップフィットと多色成形により、接着剤も塗料も使わず、素組みに付属のシールを貼るだけでイメージに近い完成品が得られるのが普通になりつつある。スケールモデルでも一部には精巧に塗装された塗装済みキットが発売されており、プラモデルの塗装済み完成品を自ら販売しているメーカーもある。これに対しては作る楽しみが失われるという声も一部にあるが、同様の事はブロック状の木材から設計図に合わせて削り出してソリッドモデルを作っていた時代に、接着剤で貼り合わせるだけのプラモデルに現れたときにも指摘されていた。プラモデルが決して誰が作っても同じものしか出来ないものではなく、ソリッドモデルとは出発点が違うだけで、個人の個性やスキルを十分に反映することの出来る素材であったように、現在の最も進歩したガンプラであっても十分に手を加える余地は有り、個性を表現する事は可能である。またフィギュアに関して言えば、高価である上に製作に高いスキルを要するレジンキャスト製ガレージキットと同程度以下の価格で高品位の完成品が入手可能な現状ではガレージキットの衰退は著しいが、飛行機や戦車に関してはどんなに高品位の完成品であっても万人を満足させることは難しく、完成品の存在がプラモデルの売り上げに大きく影響を与えるまでには至っていない。それどころか、世界的に見れば旧東欧圏やアジアのメーカーの積極的な商品開発により、プラモデルは1つの黄金期を迎えているともいえる。ただし、日本国内では確かにモデラーは減少傾向にあり、完成品・彩色済みの製品の増加にともない人々の認識も変化したため、雑誌の紹介記事などでは自分で組み立てる事を要するものはキット(英語のkit=組み立て用品一式)と明記され完成品ではない事が強調される事が多くなっている。

脚注

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関連項目


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