果実

出典: Wikipedio


果実(かじつ)

  1. 生物学上受粉した雌しべ子房が発達した部分と、その付属器官のことである。単に(み)とも言う。
  2. 実用上果物野菜として利用される。
  3. 法律上の果実:元物から生じる収益。果実 (法律用語)を参照のこと。

目次

生物学上の果実

生物学的には、果実とは被子植物の、その中に種子を含む構造のことである。被子植物の種子は子房の中で成熟するから、子房が果実になる部分であり、すべての被子植物の種子は果実に入っている。いわゆる果実という言葉が肉質で食せるものとの印象を与えるのは、そのような果実を形成する種が少なからずあり、それがヒトにとって重要な食料であったことによる。このような果実は、植物の繁殖戦略として、動物の食料になる部分を種子の周りに発達させ、食われることで動物の体内を通じて種子の散布をおこなう、という目的のために進化したものであると考えられる。

裸子植物は果実を形成しないが、食べられる部分を種子のそばに持つものもある。花床がやわらかく発達して食えるイヌマキなどの例がある。

動物の側から見ると、果実は往々にして糖類に富み、消化のよい食物である。そのため、葉や茎を食べる草食動物のような消化の難しさはなく、特殊な適応はさほど必要ない。したがって、果実食草食はかなり異なるものと考えた方がよい。

果実の分類

果実の皮(果皮)が乾燥した状態になるものを乾果(かんか)という。これに対して、果皮が柔らかく汁気の多いものを液果(えきか)あるいは多肉果という。

  • 乾果 - 乾果は、果皮が割れて種子が出るかどうかで閉果(へいか)と裂開果(れっかいか、裂果とも)に分かれる。
    • 閉果 - 閉果は、果皮が乾燥した状態で熟して、種子が果皮に閉じ込められたままのものである。往々にして、果実ではなく種子であると見誤られる。果実の分かれ方と果皮と種子の関係で以下のように分ける。
      • 分かれない
        • 痩果(そうか) - 果皮と種皮が密着して分かれないもの。ヒマワリタンポポなど。
        • 穎果(えいか) - イネ科にみられる果皮と種皮がより密着している痩果。
        • 胞果 - 果皮と種皮が分かれる。
        • 堅果 - 外側が非常に堅くなっているもの。ドングリヤシなど。また、ドングリの台のような部分を殻斗(かくと)という。
        • 翼果 - 果皮が翼のようになった果実。カエデなど。
      • 果実が分かれる
        • 分離果 - 子房に複数の部屋があって、熟すると部屋ごとに分かれるもの。
        • 節果 - マメの鞘(果皮にあたる)が、種子ごとに節を持っていて、種子一つ毎に折れて散布されるもの。ヌスビトハギなど。
    • 裂開果 - 果実が種子の袋のようになり、成熟するとどこかに口を開いて種子が出るようになるものである。
      • 袋果 - 雌蕊が分かれている(離生心皮)で、その内側に向いた面に割れ目ができるもの。
      • 豆果莢果) - いわゆる豆の莢の形のもの。雌蕊が左右から平らで、内部は一室、成熟時には左右に割れる。
      • 角果 - アブラナなどの果実。雌蕊の内部は中央に仕切りがあり、それを残して左右の殻がはがれるもの。細長い場合は長角果、長さが短い時には短角果という。
      • 蒴果(さくか) - 雌蕊の中が放射状に複数の仕切りで分けられ、果実が成熟した時は、それぞれの部屋ごとに縦に割れ目を生じる。つまり心皮の数だけの割れ目ができる。スミレなどがそうである。また、以下のようなものもこれの範疇に入る。
        • 孔開蒴果 - 成熟すると、果実の決まった場所に穴が開く。
        • 蓋果 - 果実の上の部分が蓋のように外れる。オオバコなど。
  • 液果漿果(しょうか)) - 成熟した時に肉厚で汁気の多い果肉に包まれるもの。普通は割れて種子を出すことはない。一般に言う果実はこのようなものを指す。種子の数や内部の構造からいくつかに分ける。
    • 核果石果) - 種子は中心に一個あり、種子の外側に堅い殻(核という)を持つ。これは内果皮が堅くなったものである(モモの食用部を食べた後の普通「タネ」と言われている部分など、種子は「タネ」の中)。
    • 真正液果 - 種子の外側が特に堅くならないもの。
  • 特殊な果実
    • ナシ状果ウリ状果(後述)
    • 集合果 - 一つの花から複数の果実が集まった形のものが生じる場合、これを集合果という。果実の集まりであるが果実そのものではない。以下のようなものがある。
      • キイチゴ状果 - 核果が集まった形。
      • イチゴ状果 - 花托(花床ともいう)が肉質に膨らみ、その外側に痩果が並ぶもの(オランダイチゴなど)。
      • バラ状果 - 花托が肥大し、その中に多数の痩果が入っているもの(ハマナスなど)。
      • ハス状果 - 花托がロート状に肥大し、その上に穴があり穴の中に堅果が入るもの(ハスなど)。
    • 複合果 - 密集した花序が一つの果実のようになるものを複合果という。マムシグサ肉穂花序が柔らかい果実の集まりとなるのがその例である。複合果は、花序が一つの果実のように見えるが、果実そのものではないので偽果である。
      • イチジク状果 - 隠頭花序の花托が肥大し、一つの果実にようにみえるもの(イチジクなど)。
      • パイナップルなども特に名称はないが複合果の一種である。

実用上の果実

実用的には、果実とは、が咲いた後にできる、食用になるもので、種子を食用にするもの以外のものをさす。種によっては主に発達するのが子房ではなく、花托果枝などを由来とする組織が果実を構成している。子房からなる果実を真果とよび、子房以外からなる果実を偽果とよぶ。また一般に、その果実の種類が真果か偽果かは、子房の位置から判断することができる。

真果の場合
・その果実の子房が萼(がく)や花弁より上部に付いている=子房上位であるとき
・その果実の子房がカップ状の花托の内側に付いており、その花托の縁(へり)に萼や花弁が付いている=子房中位であるとき
偽花の場合
・その果実の子房が萼や花弁より下部に付いており、子房が花托と合着している=子房下位であるとき

偽果の例

イチゴ
花托が肥大した部分を食用にする。表面の小さいブツブツが果実(痩果)。イチゴ状果という。
リンゴナシ
花托が肥大した部分を食用にする。いわゆる芯の部分が外果皮~内果皮にあたる。ナシ状果という。
イチジク
隠頭花序の肥大したものを食用にする。イチジク状果という。
バナナ
ビワ
花托が肥大した部分を食用にする。白い皮の部分が子房である。
スイカ
外果皮は硬く、その内側は水分が多い。花托も肥大し果実のようにみえるので偽果である。ウリ状果という。

関連項目

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