恒星

出典: Wikipedio


thumb|恒星 恒星(こうせい)とは、主に水素ヘリウム核融合エネルギーにより自ら輝く天体太陽も恒星の一つである。

恒星内では、核融合による光子などの放射と熱膨張によって拡張する外向きの力と、膨大な質量による重力の内向きの収縮力がバランスをとっている。このバランスが崩れると、恒星は不安定期を迎え、天体としての寿命を終える。晩年はその質量によって異なる運命をたどる。

恒星の見かけの明るさは、視等級や写真等級で表される。また、恒星本来の明るさは、絶対等級で表される。

目次

語源

「恒星(Template:Lang-la)」という言葉は、地球からその星を見たときの天球上の位置がほとんど変化せず、「恒に」その場所にあることに由来すると言われる。これに対し、天球上を移動していく星のことを「惑う星」という意味で「惑星」と言った。

恒星は天球上で完全に静止しているわけではないが、太陽以外の恒星は地球から数光年以上の離れた場所にあるため、地球の公転や太陽系との相対運動によって生じる見かけ上の位置変化(固有運動)は非常に僅かである。固有運動の大きいバーナード星(HIP87937)でも10.36/年に過ぎない。これは、の見かけの直径(視直径)分を動くのに約170年かかる速さである。

そのため、特に注意を払っていなければ数十年から数百年程度の時間では肉眼で変化を確認することは難しい。恒星たちは、地球の自転によって互いの位置関係を保ったまま天球上を回転しているように見える。

一方、太陽系内の惑星は地球との距離が短いため互いの公転による見かけ上の位置変化が大きい。地球から見ると、惑星は他の恒星たちとの位置関係を変え、つまり天球上を動いているように見える。

名称

比較的明るい恒星は固有名がつけられたが、地方によって名称はさまざまだった。星表が作られるようになると、代表的な星表につけられた名前が次第に使われるようになった。

現在は、プトレマイオスがまとめた星表の名称が多く使われる。ギリシャ神話に由来する名称が多いが、アラビア語のものもある。これはプトレマイオスの著書がアラビア語に訳され、そこから広まったと考えられている。

それほど明るくない恒星は、主にヨハン・バイエルのバイエル星表に記載された記号で呼ばれる。これはバイエル記号と呼ばれる。星座ごとに明るい順にα星、β星とギリシャ語の記号をつけるもので、足りなくなると小文字のローマ字のアルファベットが、それでも足りないとローマ字の大文字が使われた。バイエルの死後、星座の境界が変更されたため、たとえばα星がない星座などが存在する。また、必ずしも明るい順につけられているわけでもない。具体的には、ギリシャ語のアルファベットと星座名をあわせ、「こと座 α星」などと呼ぶ。国際的にはラテン語を使い、α Lyraeと書く。このとき星座名は属格に活用変化させる。3文字の略符を使い、α Lyr と書いてもよい。4文字の略符もあるが全く使われない。

バイエルは混乱を防ぐため、たとえばローマ文字のa星を作らなかった。また、最も星の多い星座でも、Q星までしかつけなかったため、R以降の文字は、変光星などの特殊な天体につけられる。

これよりさらに暗い星は、ジョン・フラムスティードの星表に記されたフラムスティード番号で呼ばれる。恒星を西から順に1番星、2番星と数字の符号をつけるものである。ただし、フラムスティード番号は、南天の星座にはつけられていないなどの弱点がある。フラムスティード番号で、上記のこと座α星を表すと、こと座3番星(3 Lyrae、または 3 Lyr)となる。この番号は、フラムスティードの望遠鏡で見たところ、こと座で西端から3番目にあった星ということになる。

よく、バイエルが命名しなかった暗い星に順番に番号が振られたと言われることがあるが、誤りである。たとえば、オリオン座α星(ベテルギウス)は、フラムスティード番号ではオリオン座58番星となる。多くの恒星が、両者によって命名がされている。ただし、現在はバイエル符号が主に使われ、フラムスティード番号は主にバイエル名のついていない星に使われる。

これよりもさらに暗い星は、さらにそののちに決定された星表(HDなど)でつけられた番号や記号で呼ばれる。

性質

thumb|太陽 恒星は水素ヘリウムを主な成分としたガスの塊である。恒星の中心部では原子核融合によりエネルギーが生み出されており、中心から表層へかけて密度温度が次第に減少する構造になっている。これによって恒星の内部には圧力差が発生し、多くの場合は自己の重力による圧縮との釣り合いが保たれている。また、熱エネルギーは高温部から低温部へ移動するため、中心部で発生した熱は放射対流によって表層へ向けて運ばれ、最終的には光エネルギーとして宇宙空間に放出されている<ref>斉尾 p.13-16</ref>。

恒星は惑星と比べて質量が大きく表面温度も高い。人類にとって最も身近な恒星である太陽は、地球の33万倍の質量と109倍の半径、5780K(5510℃)の表面温度を持つ<ref>Template:Cite web</ref>。太陽系最大の惑星である木星と太陽を比べても、質量は1000倍、半径は10倍の差がある。

恒星の性質には様々なものがあるが、太陽のように安定した段階にある恒星(主系列星)では、質量が大きいほど半径が大きく高温になるという単純な関係が見られる。例えば太陽と同じ質量の主系列星はいずれも太陽と似た半径や温度を持つことになり、太陽の7倍の質量を持つスペクトル型B5の主系列星では、半径は太陽の4倍、温度は1万5500K前後になる<ref>斉尾 p.43 表1</ref>。ただし恒星が主系列星から脱して巨星化すると温度の低下と半径の膨張が起き、この法則から逸脱する。

質量が太陽の8%程度<ref name="Ledrew" />より小さい天体は、中心部が軽水素の核融合反応が起きるほど高温にならないので、恒星ではなく褐色矮星に分類される。この値は恒星質量の下限値といえる。また、質量が太陽の100倍を超えるような恒星も強烈な恒星風によって自らを吹き飛ばしてしまうため、形成されうる恒星の質量には上限が課せられる。

褐色矮星と恒星の境界付近の質量を持った恒星では、半径は太陽の10分の1程度になる。主系列星段階を終えた恒星は非常に巨大化し、例えばおおいぬ座VY星という赤色超巨星は太陽の1000倍を超える半径を持つと考えられている。太陽自体も数十億年後に巨星の段階を迎えると現在の百倍以上にまで膨れ上がると予想されている。

恒星が誕生する際には、質量の小さい恒星ほど形成される可能性が高い。銀河系に存在する恒星の大部分は、太陽より質量の小さいK型M型の主系列星だと考えられている。しかし低質量の星は暗いために地球に近いものしか観測できない。夜空に見える明るい星の多くは、遠くにある大質量の主系列星や赤色巨星などの数量的には稀だが極端に明るい天体の姿である<ref name="Ledrew">Template:Cite journal</ref>。

形成と進化

恒星は、周囲より僅かに物質の密度が高い(それでも地球上の実験室で作ることができる真空よりはずっと希薄な)領域である分子雲から生まれる。分子雲の近くで超新星が爆発したり恒星が近くを通過したりするなどして分子雲に擾乱が起こると、その衝撃波や密度揺らぎによって分子雲の中に圧縮される部分が生じ、重力的に不安定になり収縮していく。(大質量星が作られると、その周囲の分子雲が星からの紫外光で電離されて散光星雲輝線星雲)を作ったり、強烈に照らし出されて反射星雲として観測されたりするようになる。このような星雲の例として、有名なオリオン大星雲プレアデス星団の周囲の青い星雲などが知られている。)

ガス塊の質量が十分大きいと、ガス塊は自己重力が圧力に打ち勝って収縮を続け、次第に内部の温度が上昇し、やがて熱放射で輝くようになる。これが原始星である。

原始星の中心温度が数百万度から約1000万度に達すると、中心で核融合反応が始まる。すなわち、4個の水素原子を1個のヘリウム原子に変え、エネルギーを発生させることができるようになる。するとこれが熱源となって圧力を発生し、重力による収縮が止まる。この段階の恒星を主系列星という。恒星は一生のうち約90%の時間を主系列星として過ごす。

質量が太陽の約8%よりも小さく、核融合反応を持続することができない星(褐色矮星と呼ばれる)は、自らの重力により、数千億年(宇宙が誕生してから現在までの時間よりも長い)という極めて長い時間をかけて、位置エネルギー熱エネルギーに変換しながらゆっくりと収縮していく。最後にはそのままゆっくりと暗くなっていき、黒色矮星へと移っていく。

褐色矮星よりも重いが質量が太陽の46%よりは小さい恒星(赤色矮星と呼ばれる)は、核反応が遅く数千億年から数兆年かけて燃料である水素を使い果たした後、ヘリウム型の白色矮星になるとされている。

thumb|right|赤色巨星の断面図大部分の恒星は、燃料となる中心部の水素をほぼ使い果たすと、外層が膨張し巨大な赤い恒星に変化していく。これは赤色巨星と呼ばれる。(約50億年後、太陽が赤色巨星になった時には、金星を呑み込むほどに膨張すると言われる。)やがて核の温度と圧力は上昇し、ヘリウムが炭素に変わる核融合が始まる。恒星が十分な質量を持っている場合は、外層はさらに膨張して温度が下がる一方、中心核はどんどん核融合が進み、窒素酸素ネオンマグネシウムケイ素というように、重い元素が形成されていく。

太陽程度の、平均的な質量を持った恒星では、中心核での核融合反応は窒素や酸素の段階で止まり、外層のガスを放出して惑星状星雲を形成する。中心核は外層部の重力を支えきれず収縮する、収縮するとエネルギーを生じ再び膨張する。こうして膨張収縮を繰り返す脈動変光星となる。高密度になったものの、もはや核融合を起こすことができなくなると縮退物質が残る。これは白色矮星と呼ばれる。白色矮星はゆっくりと熱を放出していき、極めて長い時間をかけて、黒色矮星になっていく。

太陽の8倍よりも質量が大きい恒星では、密度が比較的小さいために中心核が縮退することなく核融合反応が進んで次々と重い元素が作られて行く。最終的に鉄が生成されたところで、鉄原子は安定であるためそれ以降は核融合反応が進まなくなり、重力収縮しながら温度が上がっていく。中心温度が約100億度に達すると鉄の光分解という吸熱反応が起き、中心核の圧力が急激に下がって重力崩壊を起こす。その反動で恒星は超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こす。これは宇宙で起こる現象の中で、人間的なタイムスケールで起こる数少ないものである。恒星の質量の大部分は爆発で吹き飛ばされ、かに星雲のような超新星残骸を作る。この時恒星は急激に明るくなり、明るさでおよそ1億倍、等級で約20等も増光し、数週間の間、超新星一つが銀河全体と同じ明るさで輝くことも多い。

歴史上、超新星は、今まで星が何も無かったところに突如出現した「新しい星」として「発見」されてきた。超新星爆発が起こったあとの中心核の運命は恒星の元の質量により異なる。太陽の20倍程度以下の質量を持った恒星の場合、中心核は中性子星パルサーX線バースター)と呼ばれる天体となる。さらに重い恒星の場合には中心核が完全に重力崩壊を起こしてブラックホールとなる。

重元素を多く含む、吹き飛ばされた恒星の外層は、やがて再び分子雲を作り、新しい恒星や惑星を作る材料となる。このように、超新星から放出された物質や巨星からの恒星風は、恒星間の環境を形成するのに重要な役割を果たしている。

恒星の形成と死について、より詳しい説明は恒星進化論を参照のこと。

主な恒星

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参考文献

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関連項目

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