原子論

出典: Wikipedio


原子論(げんしろん、atomism)とは、"すべての物質は非常に小さな、分割不可能な粒子(Atom、原子)で構成されている"、とする仮説概念固定観念などの総称。

目次

古代ギリシャのアトム論

古代ギリシアでは、(師弟関係にある)レウキッポスデモクリトスエピクロスらが、不可分の粒子である「アトム」が物質を構成する最小単位であるというアトム論を唱えた。<ref group="注釈">ただし、彼らは同じ考え方だったというわけではなく、Template:要出典範囲、という。</ref>

古代ギリシャのアトム論は、広く人々に受け入れられたとは言い難く、その後2000年ほどの間、大半の人々からは忘れ去られた考え方となっていた。

イスラームの原子論

イスラーム神学では、一部の例外を除き、存在論の基礎を原子論においている、とされる。Jawhar fardというのが、Juz' la yatajazza'u(=もはやそれ以上分割できない部分)とされ、原子に相当する。 ただし、存在のもうひとつの単位として「偶有(arad)」があり、原子はつねに偶有と結びついており、偶有と原子は神によって創られた次の瞬間には消滅する、とする。Jawhar fardが結合して、いわゆる物体を構成しており、物体(原子)の変化はすべて神が作る偶有によって説明され、物体相互の関係は否定されている。 イスラームの原子論では(西洋の原子論のように世界を機械論的に説明しようとはしておらず)、世界に生成性(muhdath)があり、世界を生成させているのは神であり、が世界を直接支配している、と説明している。

ただし、その説明のしかたには様々なタイプがあり、アシュリー派は、偶有性の持続を一切認めず、全ての原子の結合や分離、生成、変化は神の創造行為と結び付けられている、と説明するのに対し、ムータジラ派は例外的にいくらか偶有性が持続するとすることで、人間の行為の選択可能性や、自然界の秩序を認めた。<ref>『岩波 哲学・思想事典』p.467</ref>

西欧近代の原子論

デカルトなどは、"原子"などという概念を採用した場合、それがなぜ不可分なのかという問いに答えることは不可能と判断し、粒子はすべて分割可能だとした(原子論の否定)。

16世紀以降、化学が進歩し、ラボアジェドルトンなどにより物質の構成要素として元素概念が提唱された。かれらの論が近代原子論の源流とされている。

だが、20世紀初頭になっても、科学者の主流派・多数派は、物質に(中間単位としてであれ)構成単位が存在するという説は疑わしいものだと見なしており、一般の人々も含めて、Atomという単位が存在するとは思っていなかった。

例えば、エルンスト・マッハオストヴァルトなども、実証主義の立場から、"原子"なるものは観測不能であることなどを理由に"原子"なるものが実在するという原子論には反対し、エネルギー論を主張していた。そして、原子論の考え方に基づいて熱現象を試みに計算してみたものなどを論文類で発表しはじめた若者ボルツマンと激しい論争を繰り広げた。この論争に関しては、アインシュタインの1905年の論文によるブラウン運動に関する理論(仮説)の提出、および1909年のペランによる実験的検証(左記アインシュタインの理論の検証を含む研究)により、ただの理屈や理論ではなく何らかの粒子が存在すると認知されることによって一旦決着がついた。<ref group="注釈">よって原子の実在証明は電子発見の後である</ref>。

それまで反対派のほうが多かった「何らかの粒子的な単位」の存在が自然科学者一般に認められるようになったことで、それは自然科学分野で理論を構築するために使える便利な概念的道具となった。現代においても、理論上の粒子は実証必要という考えがあり、例としてヒッグス粒子を検出する試みが行われている。

現代の自然科学における原子論の後退、他の説明体系

何らかの粒子的な単位の存在が認められ道具として用いられるようになるのと平行して、「分割不可能」という概念のほうは後退してゆくことになった。また、古代原子論以来の物質基本単位は「有限の大きさを持つ粒子」という考えを修正し、「大きさを持たない点状粒子」と考えられるようになった。また、空間自体に最小単位があるとみなし、最小単位の長さの候補であるプランク長を最小単位の大きさとみなして点状粒子による困難を回避する考えもある。例として下記超ひも理論がある。

原子の存在自体がまだ広くは認められていなかった20世紀初頭においても、既に原子が「負の電荷を持った電子」と「正の電荷を持った何か」でできているという議論が行われており(つまり下部構造についての議論が始まっており)、Atom「原子」という言葉の指すものは原義の「分割不可能な最小単位」どおりのものではなくなっていた。

20世紀初頭にAtomの存在がほぼ確定した時には、それは電子と原子核からなる中間単位であることもほぼ確定しており、その後さらに原子核の内部構造として「陽子」「中性子」の存在が明かになった。 さらに、その後のさまざまな研究の成果により、その陽子や中性子も内部構造を持つことが明らかになり、その内部構造は「クォーク」と呼ばれるようになった。 現在では、"原子"の内部構造のことは、世界的は、「subatomic particles」などと呼ばれている。つまり、"分割できない"という、根拠が不確かな概念は用いることを慎重に避けている。<ref group="注釈">日本人は"素粒子"や"素粒子論"という訳語を当ててしまうが、これではせっかくsubatomic particlesと表現している真意を理解せず、「原子」という概念を安易に復活させてしまっているわけで、一種の誤訳とも言える。</ref>

subatomic particlesには、いくつかのタイプがあるとされ、陽子や中性子はハドロンとしてひとくくりにされている。今のところ(2009年現在)、レプトンとクォークが、発見されている中では最小の構成要素であるともされている、だがもはや世界の自然科学者は、科学的に正式な言明としては、これが最小単位だなどと根拠も無しに断言するようなことは行わない。レプトンクォークは、さらに内部構造が発見される可能性がある。

また、超ひも理論においてはすでに、全てのsubatomic particlesは有限な大きさを持つ「ひもの振動状態」であるとされている。もっとも、ひもが物質の根源であるとしても「ひもの組成は何か。ひもの内部構造はあるのか?」という疑問は残るが、超ひも理論によって物理現象を万能に説明できれば物理学の議論対象にはならず、ひもの細部組成については哲学上の問題になる。

文献

  • 『ボルツマンの原子』

脚注・出典

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脚注

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出典

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外部リンク

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