原子炉

出典: Wikipedio


画像:Hamaoka npp 2 mlit1975.jpg
建設中の沸騰水型原子炉(浜岡原子力発電所)<ref>Template:国土航空写真</ref>

原子炉(げんしろ、Nuclear Reactor)とは、なるべく安全かつ継続的に原子核反応を持続させるための装置である。多くは原子力発電所や、航空母艦潜水艦・大型の軍用艦艇などに使われる。核種変換による核物質生産や研究などの中性子源などにも使用される。

目次

概要

原子炉は核反応の種類から、核分裂炉核融合炉とに分けられるが、核融合炉は研究段階のみで実在していないため、一般には核分裂炉を指す。核分裂炉は、発電や移動動力のエネルギを得るために作られた動力炉と、プルトニウム生産を目的とした軍事用のプルトニウム生産炉に分けられる。これ以外にも核物理学研究に使われる研究炉もある。

以下、この項では核分裂炉について述べる。核融合炉については最後に記述する。

日本に初めて導入された原子炉は英国製のガス冷却炉である。 原子炉で発生する事故として最も深刻なものは、冷却材喪失事故であり、蒸気爆発や炉心溶融を引き起こす。

原子炉の基本構成

画像:加圧水型原子炉.JPG
加圧水型原子炉
炉心
炉壁・容器

原子炉の分類

減速材による分類

軽水炉軽水
通常のである軽水は中性子減速能が大きいが中性子吸収能も大きい。通常は減速材が冷却材を兼ねる。軽水は安価で大量に入手することができ、火力発電で使用されているため性状が良くわかっている。反面、吸収能が大きいため軽水冷却炉では濃縮されたウラン燃料を用いて発生する中性子の数を増やす必要がある。
重水炉重水
水素同位体である重水素からなる水である重水は軽水に次ぐ減速能を持つが吸収能は小さい。従って重水炉では天然ウランを始めとして多様な物質を核燃料として用いることができる。ただし、重水は高価である。
黒鉛炉黒鉛
炭素からなる黒鉛は水に次ぐ減速能を持ち常温で固体である。黒鉛は減速能を持たない物質を冷却材として用いる設計の原子炉で使用されており構造が比較的簡単な為、原子力開発能力の低い国でも使用されている。しかし発電効率が悪い反面プルトニウム239の生成効率が高い事から核兵器用プルトニウム製造に良く使用された。現在では主にガス炉の減速材として使用されている。
高速中性子炉高速増殖炉:無し
高速炉とも呼ばれるこの型の原子炉は、減速材を利用せず、核分裂に伴なって発生する高速中性子をそのまま利用する。これは燃料増殖に有利である。

冷却材の種類による分類

軽水冷却炉:軽水
軽水が減速材と冷却材を兼ねる炉と、軽水は燃料の冷却のみに用いられて減速材には黒鉛等を用いる炉がある。
重水冷却炉:重水
重水が減速材を兼ねていることが多い。
ガス冷却炉:ガス(二酸化炭素ヘリウム
水蒸気と異なりガスは圧力を高めなくとも高温にすることができるため初期の原子炉では二酸化炭素が冷却材として用いられた。反面、密度が小さく熱運搬能力に乏しいためガス炉による商用発電は経済性に劣り商用発電炉の主流は軽水炉に替わった。ヘリウムは現在研究・開発が進められている1,000を越える高温を原子炉から得る高温ガス炉の冷却材として用いることが研究されている。また高速増殖炉の冷却材としてヘリウムガス冷却も検討されている。
溶融金属冷却炉:溶融金属(ナトリウムビスマス合金)
溶融金属は常圧で高温を得られる熱運搬能力に優れた流体であるため、配管を耐圧とする必要が無く原子炉全体を小型軽量化できる。このため艦船の動力として採用されていたが、金属を流体の状態に保つための高温の維持に苦労が多く採用はごく少数に留まった。ナトリウムは初期の原子力潜水艦の原子力炉冷却材として採用されていたが、水と激しく反応するために旧ソ連のアルファ級などではスプリンクラーなどに使用されている低融点の鉛・ビスマス合金を冷却材とする原子炉が採用された。ナトリウムが中性子減速能を持たないため高速増殖炉の冷却材として使用されている他、鉛・ビスマスも高速増殖炉冷却材として検討されている。
溶融塩原子炉
燃料にトリウム232の化合物を使用し、燃料自体が炉内を循環する。核反応によって自発的にウラン233が生成し、反応が持続する。

冷却材の状態による分類

加圧水型原子炉(PWR)
炉心内の液体冷却材が沸騰しておらず液体状態な原子炉。(ただし、加圧されているため液体のまま300℃以上の温度となっている)
沸騰水型原子炉(BWR)
炉心内の液体冷却材が沸騰していて蒸気と液体の混合状態な原子炉。

中性子の性状による分類

熱中性子炉
熱中性子を利用する原子炉。熱中性子はウラン235を良く核分裂させることができる。
高速中性子炉
高速中性子を利用する原子炉。高速中性子はウラン238に吸収されやすく、中性子を吸収したウラン238はプルトニウム239となるため燃料の増殖が容易である。反面、高速中性子はウラン235とは反応しにくく、また、ウラン238に吸収されてしまう分だけ核分裂に利用できる中性子の数が少なくなるため、中性子を効率よく利用できる原子炉とする必要が生ずる。なお、高速中性子は核燃料から発生する超ウラン物質を核分裂させる能力にも優れ、このため、高速炉を高レベル放射性廃棄物の消滅処理に利用することが検討されている。

使用目的による分類

研究炉
原子炉の核特性の研究、教育目的、放射線や中性子線の照射実験などに用いられる原子炉。日本には以下の研究用原子炉がある<ref>原子力白書1961「研究用原子炉」</ref>。
発電炉(動力炉)
発電用原子炉。商業用発電炉を略して商用炉とも呼ばれる。原子力発電所を参照のこと。
原子力機関
艦船等の推進機関として利用される原子炉。加圧式重水炉が多い。
プルトニウム生産炉
天然ウランから核兵器用プルトニウムを生産するための原子炉。史上初めて臨界に達した原子炉シカゴ・パイル1号は、マンハッタン計画のためのプルトニウム生産炉であった。
地域熱供給炉
暖房用の蒸気を供給する原子炉。発電と共用の場合もある。原子炉は一旦燃料を装荷すれば長期間に渡って熱を発生するためボイラー燃料などを頻繁に供給することが難しい旧ソ連の内陸部で実用化された他、アメリカのアラスカ州などで設置が検討されている。
宇宙炉
原子力電池とほぼ同じ用途であるが、より大電力を必要とする場合に利用される。旧ソ連の偵察衛星が一時期これを搭載していたことがある。

開発段階による分類

実験炉
理論の基礎的研究段階の原子炉。研究炉とも呼ばれる。
原型炉
技術上の問題点洗い出し、経済性試算段階の原子炉。
実証炉
大型プラントの検証段階の原子炉。
実用炉
実用段階の原子炉。この段階でその設計が完成したと見なされて、多数のプラントが建設される。

開発世代による分類

 米国エネルギー省(DOE)は、2030年頃の実用化を目指して提唱する次世代の原子炉の一般的な概念を示すために、原子炉の開発世代を以下のように定義した<ref>原子力百科事典「第4世代原子炉(07-02-01-10)」</ref>。

第1世代(GEN-I)
1950年代から1960年代前半に運転を開始した初期の原型炉
第2世代(GEN-II)
1960年代後半から1990年代前半に建設された商業用原子炉群
第3世代(GEN-III)
1990年代後半から2010年代頃に運転開始する原子炉で、第2世代の改良型として開発された原子炉
第4世代(GEN-IV)
2030年頃の実用化を目指し、天然ガス火力発電とも競合できる高い経済性、高度な安全性、放射性廃棄物の負担の最小化、及び高度な核拡散抵抗性等の特徴を具備した革新的原子炉とされる<ref>原子力百科事典「第4世代原子炉の概念(07-02-01-11)」</ref>。

5重の壁

5重の壁は、以下の物からなる。

オクロの天然原子炉

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画像:Gabon Geology Oklo.svg
オクロ原子炉の状況の図解。1.核反応部 2.砂岩 3.鉱層 4.花崗岩

人工の原子炉に似た特定の条件下では天然の核分裂炉ができることがある。知られている唯一の天然原子炉はガボン共和国のオートオゴウェ州オクロ(現在でもウラン鉱床として稼動)に20億年前に形成された。 (外部リンク

天然原子炉は、ウランに富んだ鉱脈が、減速材の役割をする地下水に囲まれたときに形成され、強烈な連鎖反応が起こった。反応が増えると水の減速材は沸騰し、反応を抑制するので、メルトダウンを防いでいた。核分裂反応は数十万年間続いていた。

ただ、このような炉はもはや地球上には形成されることは無い。20億年前の地球上のウラン鉱石には、十分な量のウラン235を含有していたのだが、それは非常に長い時間の原子核崩壊により崩壊したため現在では含有割合は減少し、連鎖反応を維持するために必要な量を下回っているためである。

こうした天然原子炉は放射性廃棄物地層処分を研究する科学者によって徹底的に調査されている。地殻中で放射性同位体がどのように移行するかについてケーススタディーをもたらした。これは処分場から移行した同位体が給水系統に達するとか環境中に移行するのではないかという懸念をもつ地層処分反対論のような議論の的になっている。

核融合炉

核融合炉は実用規模のエネルギーを生産可能なものはいまだ存在しないが、現在計画中のITER(国際熱核融合実験炉)では最大で50~70万kWの出力(熱出力)が期待されている。 Template:Main

脚注

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関連項目

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外部リンク

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