原子力事故

出典: Wikipedio


原子力事故(げんしりょくじこ)とは、原子力関連施設の事故のこと。特に、核燃料計測医療のために使う放射性物質が漏れ出すと、大気土壌が汚染され、環境、人体ともに多大な被害をもたらす。原子力発電所で事故が発生した場合は、国際原子力事象評価尺度(INES)によりレベルがつけられることになっている。

目次

主な原子力事故(軍事以外)

海外

代表的な事故

  • 1957年9月29日 ウラル核惨事
    ソ連ウラル地方カスリ市の北100kmにあるクイツシム町にある「チェリヤビンスク65」という施設で起こった事故。プルトニウムを含む200万キュリーの放射性物質が飛散した。放射性物質の大量貯蔵に伴う事故の危険性を知らせた事故である。
    当初この事故は極秘とされていたが、西側に亡命した科学者であるジョレス・A・メドベージェフが1976年に英科学誌「ニュー・サイエンティスト」に論文を掲載したことで知られるようになった。
  • 1957年10月10日 ウィンズケール火災事故
    世界初の原子炉重大事故。イギリス北西部の軍事用プルトニウムを生産するウィンズケール原子力工場(現セラフィールド)の原子炉2基の炉心で黒鉛(炭素製)減速材の過熱により火災が発生、16時間燃え続け多量の放射性物質を外部に放出した。避難命令が出なかったため、地元住民は一生許容線量の10倍の放射線を受け、数十人がその後白血病で死亡した。現在の所白血病発生率は全国平均の3倍である。当時のマクミラン政権が極秘にしていたが、30年後に公開された。なお、現在でも危険な状態にある。2万キュリーのヨード131が工場周辺500平方キロを汚染し、ヨードの危険性を知らせたことで有名である。また水蒸気爆発のおそれから注水に手間取った。これはスリーマイル島でも繰り返される。
画像:US AEC SL-1.JPG
事故後、撤去されるSL-1の原子炉容器
  • 1961年1月3日 SL-1事故
    SL-1はアメリカアイダホフォールズ にあった軍事用の試験炉である。運転出力は軍事基地のための暖房としての熱エネルギーとして400KW、電気出力として200KWの合計600KWであり、設計出力は3MWであった。当事者が死亡してしまったため事故の原因ははっきりとは分かっていないが、制御棒を運転員が誤って引き抜き、原子炉の暴走が起きたと考えられている。この暴走により、13トンの原子炉容器が1メートル近く飛び上がった。事故で放出されたエネルギーは約50MW秒に相当し、炉内にあった約100万キュリーの核分裂生成物のうち約1パーセントが放出されたと考えられている。
    なお原子炉は暴走したものの、その後減速材である軽水が失われたため自然に停止したと考えられている。また、冷却材が失われても炉心が溶融しなかったのは、炉の出力が小さかったためとも考えられる。
    事故が起きたのは午後9時であり、当時夜勤で三人の運転員がいたが二人は即死であったと考えられる。事故発生後、救出隊が駆けつけたときには、一人がまだ生きていて救急車で搬送されたが、搬送中に死亡した。三人の遺体は、露出していた頭部や手などが余りにも汚染度が激しかったため、切断して高レベル放射性廃棄物として処理しなければならなくなった。また、搬送に使用した救急車も放射能に汚染されてしまったために、後に放射性廃棄物として処分しなければならなくなった。
    この事故は、チェルノブイリ原子力発電所事故が起きるまでは原子炉で死者が出た唯一の事故として知られていた。
  • 1963年10月フランスのサン・ローラン・デ・ゾー原子炉で燃料用溶融事故。
  • 1966年10月5日 エンリコ・フェルミ1号炉
    エンリコ・フェルミ炉はアメリカのデトロイト郊外にあった高速増殖炉試験炉である。1966年10月5日に炉心溶融を起こし閉鎖された。原子炉の炉心溶融事故が実際に発生した最初の例とされている。後にこの事故について書かれたドキュメンタリーのタイトルには、『我々はデトロイトを失うところであった』と書かれた。
  • 1979年3月28日 スリーマイル島原子力発電所事故
    アメリカ・スリーマイル島原子力発電所の炉心溶融事故。レベル5の事故であり、不完全な設備保全、人間工学を重視していない制御盤配置、そして中央制御室運転員の誤判断等が重なって発生した。当初は外部へ放射性物質が大量に放出されたとの報道もあった。この事故の影響により、アメリカ政府は新規原発建設中止に追い込まれた。アメリカではこの事故を契機にトラブルや運転等の情報を共有する組織としてINPOが結成され、その後の原子力発電所の安全性向上に寄与することとなった。
  • 1986年4月26日 チェルノブイリ原子力発電所事故
    ウクライナ共和国チェルノブイリ原発4号機が爆発・炎上し、多量の放射性物質が大気中に放出されたレベル7の深刻重大な事件。事実上人類史上最悪の原子力事故である。無許可での発電実験中、安全装置を切り制御棒をほとんど引き抜いたために出力が急上昇して起こった。放射性物質は気流に乗って世界規模で被曝をもたらした。直接の死亡者は作業員・救助隊員の数十名だけであるが、がんなどの疾病を含めると、数万から数十万にのぼるとされていた。しかし2005年に発表されたWHO等の複数組織による国際共同調査結果では、この事故による直接的な死者は最終的に9,000人との評価もある。だが、2000年4月26日に行われた14周年追悼式典では事故処理に従事した作業員85万人のうち、5万5千人が死亡したと発表されており、WHOの評価とは大きく食い違っている。この事故を契機に国際的な原子力情報交換の重要性が認識され、世界原子力発電事業者協会 (WANO) が結成された。

沸騰水型原子炉の臨界事故

  • 1973年11月、バーモントヤンキー原発(米バーモント州)
    検査のため抜いた状態だった制御棒の隣の制御棒を誤って抜き、炉心の一部が臨界。圧力容器と格納容器のふたは開けたままだった。
  • 1976年11月、ミルストン原発1号機(米コネティカット州)
    臨界状態。スクラムで、臨界は止まった。
  • 1987年7月オスカーシャム原発3号機(スウェーデン)
    制御棒の効果を調べる試験中に制御棒を抜いていたところ想定外の臨界状態になったが、運転員が気付くのが遅れ、臨界状態が続いた。

日本

INESレベル2相当以上の事故

  • 1978年11月2日 東京電力福島第一原子力発電所3号機事故
    日本初の臨界事故とされる。
    戻り弁の操作ミスで制御棒5本が抜け、午前3時から、出勤してきた副長が気付きゆっくり修正し終わる10時半までの7時間半臨界が続いたとされる。
    沸騰水型の原子炉で、弁操作の誤りで炉内圧力が高まり、制御棒が抜けるという本質的な弱点の事故。この情報は発電所内でも共有されず、同発電所でもその後繰り返され、他の原発でも(合計少なくとも6件)繰り返される。1999年志賀原発事故も防げたかも知れず、本質的な弱点なので、世界中の原子炉で起こっている可能性がある。
    特に重要なのが、1991年5月31日の中部電力浜岡3号機の制御棒が同様に3本抜けた事故である。中部電力は1992年にマニュアルを改訂した。「国への報告はしなかったが、他電力へ報告した。」と主張する。
    事故発生から29年後の2007年3月22日に発覚、公表された。東京電力は「当時は報告義務がなかった」と主張している。
  • 1989年1月1日 東京電力福島第二原子力発電所3号機事故
    原子炉再循環ポンプ内部が壊れ、炉心に多量の金属粉が流出した事故。レベル2。
  • 1990年9月9日 東京電力福島第一原子力発電所3号機事故
    主蒸気隔離弁を止めるピンが壊れた結果、原子炉圧力が上昇して「中性子束高」の信号により自動停止した。レベル2。
  • 1991年2月9日 関西電力美浜発電所2号機事故
    蒸気発生器の伝熱管の1本が破断し、非常用炉心冷却装置(ECCS)が作動した。レベル2。
    いわゆる「ギロチン裁断」問題。加圧水型原子炉(PWR)特有の弱点である。
    しかしながら、この問題はマスコミによって連日繰り返しオーバーに伝えられ、あたかもPWRがBWRに比べて危険な存在であるかのように印象付けた。その後も、制御棒の挿入方法や、日本特有の条件などを無視して、前述のスリーマイル島原子力発電所事故(日本のPWRはウェスティングハウス系なので本来TMI事故の原因とは無関係)とあわせ、「PWRはBWRより反応余裕度が少なく、ギロチン裁断の問題もあって危険」と断じる評論家が多い。
  • 1991年4月4日 中部電力浜岡原子力発電所3号機事故
    誤信号により原子炉給水量が減少し、原子炉が自動停止した。レベル2。
  • 1997年3月11日 動力炉・核燃料開発事業団東海再処理施設アスファルト固化施設火災爆発事故
    低レベル放射性物質をアスファルト固化する施設で火災発生、爆発。レベル3。
  • 1999年6月18日 北陸電力志賀原子力発電所1号機事故
    定期点検中に沸騰水型原子炉(BWR)の弁操作の誤りで炉内の圧力が上昇し3本の制御棒が抜け、想定外で無制御臨界になり、スクラム信号が出たが、制御棒を挿入できず、手動で弁を操作するまで臨界が15分間続いた。点検前にスクラム用の窒素を全ての弁で抜いてあったというミスと、マニュアルで弁操作が開閉逆だったと言うのが、臨界になる主な原因であった。
    所長も参加する所内幹部会議で隠蔽が決定され、運転日誌への記載も、本社への報告も無かったとされる。(当時の所長代理は、発覚時点で常務・原子力推進本部副本部長=安全担当、志賀原発担当。総点検の聞き取りに対しては事故を報告しなかった)
    原発関連の不祥事続発に伴う2006年11月の保安院指示による社内総点検中、報告が出た結果、2007年3月公表に至った。レベル1-3
    日本で2番目の臨界事故とされる。
    日本原子力技術協会が、最悪の事態を想定して欠落データを補完した研究によると、定格出力の15%まで出力が瞬間的に急上昇した即発臨界であった可能性がある。ただし、燃料中のウラン238が中性子を吸収し、それ以上の事態になる可能性はなかったという。
    なお、この事故に関して、一部マスコミ等で「制御棒が落下した」「沸騰水型原子炉の制御棒は下から挿入されるので、水圧が抜けると落下する危険がある」との誤解があったが、実際は水圧装置の誤作動により、引き抜き動作が行われたであり、重力の影響で落下したのでないことに注意が必要である。
  • 1999年9月30日 東海村JCO核燃料加工施設臨界事故
    日本で3番目の臨界事故で、作業員2名が死亡。レベル4。

その他の有名な事故

  • 1973年3月 美浜原子力発電所燃料棒破損
    美浜一号炉において核燃料棒が折損する事故が発生したが、関西電力はこの事故を公表せず秘匿していた。この事故が明らかになったのは内部告発によるものである。
  • 1974年9月1日 原子力船むつ 放射線もれ事故
  • 1995年12月8日 動力炉・核燃料開発事業団高速増殖炉もんじゅナトリウム漏洩事故
    2次主冷却系の温度計のさやが折れ、ナトリウムが漏洩、燃焼。レベル1。この事故により、もんじゅは15年近く経った2010年4月まで停止を余儀なくされた。
  • 1998年2月22日福島第一原子力発電所
    第4号機の定期検査中、137本の制御棒のうちの34本が50分間、全体の25分の1(1ノッチ約15cm)抜けた。
  • 2004年8月9日 関西電力美浜発電所3号機2次系配管破損事故
    2次冷却系のタービン発電機付近の配管破損により高温高圧の水蒸気が多量に噴出。逃げ遅れた作業員5名が熱傷で死亡。レベル0+。
  • 2007年7月16日 新潟県中越沖地震に伴う東京電力柏崎刈羽原子力発電所での一連の事故
    同日発生した新潟県中越沖地震により、外部電源用の油冷式変圧器が火災を起し、微量の放射性物質の漏洩が検出された。なお、この地震により発生した火災は柏崎刈羽原子力発電所一カ所のみであるとされる。
    また、震災後の高波によって敷地内が冠水、このため使用済み燃料棒プールの冷却水が一部流失している。
    全ての被害の詳細は2007年10月現在もなお調査中である。この事故により柏崎刈羽原子力発電所は全面停止を余儀なくされた。
    2007年11月13日、経済産業省原子力安全・保安院はこの事故をレベル0-と評価した。

主な原子力事故(軍事)

旧ソ連

原子力潜水艦

なお、級の名前はNATOが命名。本当の名前は当時最高機密事項だったので、旧ソ連海軍もNATO名を使用。深さは沈没した潜水艦のいる場所の深さである<ref>情報源により異なるので、注意されたい</ref>。

なお、旧ソ連原潜は、ミハイル・ゴルバチョフペレストロイカグラスノスチでそれらの情報の公開を軍組織に迫ったことや、潜水艦自体ほとんどが退役か、書類上は現役であってもほとんど稼動できない状態にあるため、こうした情報が外部に出ている。
またソ連は旧式化した原子炉を少なくとも日本海に4基、北極海に17基投棄している。また放射性廃棄物も多数海洋投棄している事実が発覚している。

その他

  • 1965年2月 原子力砕氷艦「レーニン」の原子炉の冷却水が失われ暴走。多数の死傷者を出した。事故を起こした原子炉は2年後に北極海へ投棄した。
  • 1978年1月24日 原子炉を搭載した海洋偵察衛星コスモス954号」がカナダ北西部に墜落。広範囲に放射能を帯びた破片が飛散。カナダに対し損害賠償として300万ドルを支払い。

西側諸国

原子力潜水艦

アメリカ合衆国をはじめとする他の国家での原潜事故は、各国がその動き自体を第一級の軍事機密としているために、ほとんど明るみにでていない。

関連項目

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注釈

<references />

外部リンク

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