中性子爆弾

出典: Wikipedio


中性子爆弾(ちゅうせいしばくだん、Neutron bomb)は、核兵器の一種で、核爆発の際のエネルギー放出において、中性子線の割合を高めたもの。放射線強化型核爆弾(enhanced radiation bomb)とも呼ばれる。

概要

通常の核爆発の効果と比較して、爆風や熱線などへのエネルギー放出割合が低く、そのため、建造物などの被害は相対的に減少させることができる。その一方、中性子線の放射割合が高くなり、人間を初めとする生物には放射線障害による死傷を与えることができる。ただし、熱核爆発が全く起きないわけではなく、相対的に小さいのみであり、爆風などの被害半径よりも中性子線による被害半径のほうが大きくなっているものである。熱線や爆風に対しては、密閉された戦車や艦船の防御力が予想以上に高いことが証明されており(特に、1946年ビキニ環礁で行われた核実験「クロスロード作戦」で、約70隻の艦船のうち計13隻しか沈没しなかったなど)、中性子線による攻撃は、それらの装甲を貫いて兵員の殺傷を目的にする効果的な核兵器の運用方法でもあった。

中性子爆弾は、戦術核兵器として使用後の占領時に市街の建造物やインフラ設備を利用できるようにするために爆発力を縮小させており、主として自軍地上部隊の行動を視野に入れた運用が考えられていた。そのため、弾頭威力も核兵器としては小さく、残留放射能も少量になるように設計されている。中性子線は透過力が強く、鉛などの金属板も透過するが、コンクリートなど放射線を遮断できる遮蔽物に覆われた地下核シェルター等への攻撃能力は小さい。

通常の核兵器との違い

通常の核兵器との構造の違いは、中性子反射材にある。通常は、核反応を効率化させるために、弾頭の内殻をウラン238などの中性子反射材で覆う。しかし、中性子爆弾においては、それにクロムニッケルなど用いて、中性子の吸収・反射を抑えている。そのため、核反応によって発生した中性子線が、周囲に放射されるようになっている。

なお、中性子線の発生にあたっては、核分裂よりも核融合の方が効率が良いため、水素爆弾が用いられる。

多量のトリチウムを必要とするが、トリチウムは半減期が12.3年であり、性能の維持には定期的な交換を必要とする。そのためもあって、アメリカ軍では2003年に配備が終了した。

開発の経緯

放射線を強化した核兵器の概念は1958年にローレンス・リバモア国立研究所で考案され、最初の実験は1963年にネバダ核実験場で行われている。1970年代にはスプリント弾道弾迎撃ミサイル用のW66に中性子弾頭が使用された。これは当初、中性子線による電子機器への障害発生を用いて、弾道ミサイル迎撃に用いる手段として考えられたためである。その後、1ktの弾頭ならば、被害半径を1,000m程度に抑えられることもあって、戦術核兵器としての利用が考えられた。これによりMGM-52ランス短距離弾道ミサイルW70-3も1980年代に開発され、W79核砲弾にも使用された。ar:قنبلة_نيوترونية bg:Неутронна_бомба cs:Neutronová_bomba de:Kernwaffentechnik#Neutronenwaffe en:Neutron_bomb es:Bomba_de_neutrones fi:Neutronipommi fr:Bombe_à_neutrons he:פצצת_נייטרון hu:Neutronbomba it:Bomba_al_neutrone ko:중성자_폭탄 nl:Neutronenbom pt:Bomba_de_nêutrons ru:Нейтронное_оружие sv:Neutronbomb tr:Nötron_bombası uk:Нейтронна_бомба wuu:中子弹 zh:中子弹 zh-yue:中子彈

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