上遠野浩平
出典: Wikipedio
|
上遠野浩平(かどの こうへい、1968年12月12日 - )は、日本の小説家、SF作家、推理作家。代表作品に『ブギーポップは笑わない』、『ぼくらは虚空に夜を視る』、『殺竜事件-a case of dragonslayer』など。
目次 |
来歴
1968年千葉県生まれ、神奈川県育ち。法政大学第二経済学部商業学科卒。大学卒業後にビル整備会社へ勤めたものの、すぐに退社<ref name="sffan-interview">Template:Cite web</ref>。作家としてデビューする以前には、日本ファンタジーノベル大賞、コバルト・ノベル大賞などの公募新人賞へ投稿を続けると同時にモデラーとしての活動も行っていた<ref name="hajou-9a">Template:Cite web</ref>。
1997年に『ブギーポップは笑わない』で第4回電撃ゲーム小説大賞を受賞し、1998年に同作でデビューを果たす。同作は当時、電撃文庫で最高の発行部数を誇る作品となり、アニメ化・実写映画化などもされ、ライトノベル界に影響を与えた。ライトノベル作家である西尾維新や奈須きのこが「上遠野浩平の作品に影響された」と語っているほか、佐藤友哉も影響を受けた事が明かされている<ref name="AB">講談社刊 『ファウスト』 2005 SPRING Vol.5 スーパートークセッション</ref>。
デビュー後しばらくは電撃文庫でライトノベルを主に執筆し、90年代後半に始まったライトノベルブームの礎を築いた重要人物の一人<ref>講談社刊 『ファウスト』 2005 SPRING Vol.5 東浩紀 『波状言論』 序文</ref>。その後、講談社や徳間書店など多くの出版社やレーベルでも作品を発表するようになり、ライトノベルに限定されない活躍を見せている。
作風
作風としては『ブギーポップシリーズ』を中心に、SF作品としての傾向が強く、『事件シリーズ』や『ソウルドロップシリーズ』のように、SFとミステリの融合を試みたものも多く見られる。本格ミステリに近い推理小説としては『しずるさんシリーズ』等が上げられる。また人物の描写として、青春を感じさせる若者の心理的要因や、社会や組織に有って生きる人間など、場所も時系列も違う複数の登場人物を、それぞれの視点で進行する独特の描き方をする。
全作品に共通する登場人物の性格付けとして、国内メディア作品の青少年キャラクターには多い「若さ故の無鉄砲さ」や「若さの象徴としての、実態のない体制への理由無き反骨心や反逆心」(上遠野自身曰く「身の程知らず」な人間)を書く事がないのも特徴で、多くの登場人物は体制の仕組みの中に取り込まれている事を皆理解しながら、そのまま諦観しているか、それでも大切な何かを持っているかを描いている。
人物
本人は漫画家の荒木飛呂彦に影響を受け、インタビューでも荒木について受けた影響を語っている。荒木と同様に、作中に登場する固有名詞等が海外のミュージシャンや曲名を元にしているが、洋楽を聴き始めたのは『ジョジョの奇妙な冒険』の影響と述べている<ref name="hajou-10a">Template:Cite web</ref>。好むジャンルはパンクをはじめ、ファンク、ニュー・ウェイヴ、ヒップ・ホップなど。一方で荒木が好むヘヴィメタルやハードロックについて語る事は少ない。また鑑賞が主で、楽器に苦手意識があるため自身で演奏に興味を持つ事はなかったと述べている。
小説ではアーサー・C・クラークやロバート・A・ハインライン、アントン・チェーホフ、フィリップ・K・ディック、太宰治、筒井康隆、山田正紀、島田荘司などの有名作家の作品を始め、特にSF作品は勉強の為に数多く読み込んだ事を語っている<ref name="Faust">講談社刊 『ファウスト』 2005 SPRING Vol.5 東浩紀 『波状言論』</ref>。
出版社やレーベルを問わず、独特なあとがきを書く。これは上遠野がデビュー作において、あとがきを執筆する際に、当時の風潮としてライトノベルのデビュー作では、関係者に対する礼に終始したあとがき(私信)が多かった事に「小説家としては何か違うな」と疑念を抱いたため、と答えている。あとがきの内容としては、本編に関連したテーマ性に沿った自身の考えを述べ、最後に、そのテーマについて自問自答した後、(まあいいじゃん)と締めくくることが多い。
作品リスト
電撃文庫
- ブギーポップシリーズ
- ブギーポップは笑わない(1998年2月、ISBN 4-8402-0804-2)(初版本は一部章のタイトルに誤字がある)
- ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part 1(1998年8月、ISBN 4-8402-0943-X)
- ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part 2(1998年8月、ISBN 4-8402-0944-8)
- ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ(1998年12月、ISBN 4-8402-1035-7)
- ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王(1999年2月、ISBN 4-8402-1088-8)
- 夜明けのブギーポップ(1999年5月、ISBN 4-8402-1197-3)
- ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師(1999年8月、ISBN 4-8402-1250-3)
- ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕(1999年12月、ISBN 4-8402-1358-5)
- ブギーポップ・ウィキッド エンブリオ炎生(2000年2月、ISBN 4-8402-1414-X)
- ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド(2001年2月、ISBN 4-8402-1736-X)
- ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト(2001年9月、ISBN 4-8402-1896-X)
- ブギーポップ・スタッカート ジンクス・ショップへようこそ(2003年3月、ISBN 4-8402-2293-2)
- ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス(2005年4月、ISBN 4-8402-3018-8)
- ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟(2006年4月、ISBN 4-8402-3384-5)
- ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド(2008年1月、ISBN 4-8402-4141-0)
- ブギーポップ・ダークリー 化け猫とめまいのスキャット(2009年12月、ISBN 978-4-04-868197-1)
- ビートのディシプリンシリーズ(『電撃hp』連載/2000年~2005年)
- ビートのディシプリン SIDE 1 [Exile](2002年3月、ISBN 4-8402-2056-5)
- ビートのディシプリン SIDE 2 [Fracture](2003年8月、ISBN 4-8402-2430-7)
- ビートのディシプリン SIDE 3 [Providence](2004年9月、ISBN 4-8402-2778-0)
- ビートのディシプリン SIDE 4 [Indiscipline](2005年8月、ISBN 4-8402-3120-6)
- 冥王と獣のダンス(2000年8月、ISBN 4-8402-1597-9)
- 機械仕掛けの蛇奇使い(2004年4月、ISBN 4-8402-2639-3)
- ヴァルプルギスの後悔シリーズ
- ヴァルプルギスの後悔 Fire 1 [Warning Witch] (2008年8月、ISBN 978-4-04-867171-2)
- ヴァルプルギスの後悔 Fire 2 [Spitting Witch] (2009年8月、ISBN 978-4-04-867938-1)
徳間デュアル文庫
- ナイトウォッチ三部作
- ぼくらは虚空に夜を視る(2000年8月、ISBN 4-19-905002-7)
- わたしは虚夢を月に聴く(2001年8月、ISBN 4-19-905067-1)
- あなたは虚人と星に舞う(2002年9月、ISBN 4-19-905119-8)
- 鉄仮面をめぐる論議(『ノベル21 少年の時間』に収録、ISBN 4-19-905034-5)
講談社ノベルス
- 事件シリーズ
- 殺竜事件-a case of dragonslayer(2000年6月、ISBN 4-06-182135-0)
- 紫骸城事件-inside the apocalypse castle(2001年6月、ISBN 4-06-182184-9)
- 海賊島事件-the man in pirate’s island(2002年12月、ISBN 4-06-182282-9)
- 禁涙境事件-some tragedies of no-tear land(2005年1月、ISBN 4-06-182404-X)
- 残酷号事件-the cruel tale of ZANKOKU-GO (2009年3月、ISBN 4-06-182636-6)
富士見ミステリー文庫
- しずるさんシリーズ
- しずるさんと偏屈な死者たち(2003年6月、ISBN 4-8291-6214-7)
- しずるさんと底無し密室たち(2004年12月、ISBN 4-8291-6284-8)
- しずるさんと無言の姫君たち(2006年12月、ISBN 4-8291-6284-8)
富士見書房
- 騎士は恋情の血を流す(2009年8月、ISBN 4-8291-7681-8)
ノン・ノベル
- ソウルドロップシリーズ
- ソウルドロップの幽体研究(2004年8月、ISBN 4-396-20785-9)
- ソウルドロップ奇音録 メモリアノイズの流転現象(2005年10月、ISBN 4-396-20805-7)
- ソウルドロップ虜囚録 メイズプリズンの迷宮回帰(2006年11月、ISBN 4-396-20823-5)
- ソウルドロップ彷徨録 トポロシャドゥの喪失証明(2008年2月、ISBN 4-396-20841-3)
- ソウルドロップ巡礼録 クリプトマスクの擬死工作(2010年2月、ISBN 4-396-20872-3 )
講談社ミステリーランド
- 酸素は鏡に映らない(2007年3月、ISBN 978-4-06-270582-0)
単行本未収録
- ブギーポップシリーズの外伝短編
- メタル・グゥルー(『電撃hp』掲載)
- ロンドン・コーリング(『電撃hp』掲載)
- 死神を待ちながら(『電撃hp』掲載)
- チャリオット・チューグル(『電撃hp』掲載)
- 機械仕掛けの蛇奇使い のアナザーストーリー
- 虚無を心に蛇と唱えよ(『電撃hp』掲載)
- 冥王と獣のダンス の外伝短編
- 枢機王狙撃(『電撃hp』掲載)
- ブギーポップシリーズと事件シリーズのクロスオーバー作品
- ドラゴンフライの空(『メフィスト』掲載)
- ギニョールアイの城(『メフィスト』掲載)
- ジャックポットの匙(『メフィスト』掲載)
- アウトランドスの戀(『ファウスト』Vol.5掲載)
- ヴェールドマンの貌 (『メフィスト』掲載)
- ポルシェ式ヤークト・ティーガー(『ファウスト』Vol.5掲載)
- すずめばちがサヨナラというとき(『ファウスト』Vol.6 Side-A掲載)
- オルガンのバランス(『ファウスト』Vol.7掲載)
- ノベライズ作品
作品間リンク
上遠野作品の各シリーズは『ブギーポップシリーズ』を中心にそれぞれ何らかの繋がりを持っており、シリーズ間ないし世界間に重複して登場する(もしくは作中で直接的・間接的に言及される)人物・事象等が複数存在している。東浩紀はこの世界観を「上遠野サーガ」と評した<ref name="Faust"/>。
- 『ビートのディシプリンシリーズ』、『ヴァルプルギスの後悔シリーズ』はそれぞれ『ブギーポップシリーズ』に登場する合成人間ピート・ビート(本編では名前のみ)や炎の魔女、霧間凪に焦点を当てたスピン・オフ的作品 。『ブギーポップシリーズ』に登場する数々の謎、核心に迫る物語。
- 『ナイトウォッチ三部作』は『ブギーポップシリーズ』の遥か未来の世界の物語。
- 『しずるさんシリーズ』、『ソウルドロップシリーズ』、『酸素は鏡に映らない』は、『ブギーポップシリーズ』と同世界・同時代の物語。
- 『騎士は恋情の血を流す』は『しずるさんシリーズ』と『ブギーポップシリーズ』のクロスオーバー作品。
- 『冥王と獣のダンス』、『機械仕掛けの蛇奇使い』は『ナイトウォッチ三部作』と同時代、あるいはその後の時代の地球の物語。
- 『事件シリーズ』は『ブギーポップシリーズ』の世界とは平行世界の関係にあり、互いに影響を及ぼしている。