万有引力

出典: Wikipedio


Template:古典力学 万有引力(ばんゆういんりょく、Template:En)は、重力の一種で、質量を持つ物質エネルギーなどが互いに引き合う引力である。

自然界に存在する基本的な力であり、アイザック・ニュートンがその普遍的法則を解明した。俗にニュートンが重力を発見したというのは間違い。万有引力の発生原理は長年研究されているが未だに解明されていない。

電磁気力では引力と斥力があるのに対し、重力(万有引力)では引力しか存在しない。

重力と呼ぶ場合には、質量に加速度を与える力全般を意味する。重力には、地球自転の遠心力のような慣性の力や、一般相対論で予言される慣性系の引きずりによりる力も含まれるが、それらは万有引力ではない。

重力(または重力相互作用)の正体は、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論によって、質量を持つ物体が引き起こす時空の歪みであると説明された。これに対して、'万有引力'という用語は、ニュートンの定式化した重力の意味で用いられる傾向にある。ニュートンの万有引力の法則は、自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)においてニュートンが説明している。

目次

ニュートン力学と重力

ニュートンは、太陽を公転する地球の運動や木星の衛星の運動を統一して説明することを試み、ケプラーの法則に、運動方程式を適用することで、万有引力の法則(逆2乗の法則)を発見した。これは、『2つの物体の間には、物体の質量に比例し、2物体間の距離の2乗に反比例する引力が作用する』という法則で、力そのものは、瞬時すなわち無限大の速度で伝わると考えた。式で表すと、万有引力の大きさ<math>F</math>は、物体の質量を<math> M,m </math>、物体間の距離を<math> r </math>として、

<math> F= G \frac{M m}{r^2} </math>

となる。<math>G</math>は万有引力定数と呼ばれる比例定数で、

<math>G = 6.67259 \times 10^{-11} \mbox{m}^3 \cdot \mbox{s}^{-2} \cdot \mbox{kg}^{-1}</math>

である。この式は、すべての物体の間で成立すると考えられるので、木から落ちるリンゴにも適用できる。

地球の質量を<math> M </math>、リンゴの質量を<math> m </math>、地球の半径を<math> R </math>とすれば、万有引力の大きさは、<math> F= G \frac{M m}{R^2} </math>であり、リンゴの運動方程式は、加速度を<math> g </math>として、<math> mg= G \frac{M m}{R^2} </math>となる。すなわち、地球重力による加速度(重力加速度)は

<math> g=\frac{G M}{R^2} </math>

となり、すべての物質について同じ値になる。

地球表面では重力加速度は約9.8m/s2であり、地球の半径は約6400kmであるので、上記の式から地球の質量を

<math> M=\frac{g R^2}{G} \simeq 6 \times 10^{24} </math>kg

のように求めることができる。同様に、他の惑星上での重力加速度も求めることができる。

ちなみにニュートンによる「万有引力の法則の発見」は「重力の発見」と解釈される例が多いが、これは間違った解釈である。「リンゴが木から落ちるのを見て、ニュートンは万有引力を発見した」という巷間に流布している逸話が、この誤解を広める原因になっていると思われる。地球上にある物体を地球が引っ張る力としての「重力」は、ニュートンの時代には既知の事実であった。ニュートンの業績は、太陽系の惑星の運動と、地球上の物が落下する現象が、同じ法則によって支配されている事を提示したことである。つまり重力というのは単に地球が地球上の物体を引く力に限ったものではなく、惑星・恒星を含めた全ての質量を有する物体間に存在する法則に基づくというのがニュートンの業績であり、「万有引力」とはそれを意味する言葉である。またニュートン以前の科学ではこのような重力や他の自然現象がどのような目的や原因で存在するのかという問題に重点がおかれていたがニュートンは主著プリンキピアで"Hypotheses non fingo"(仮説を立てず)と宣言し、あくまで観測できる物事の因果関係を示すという新しい科学方法論を提唱。これが力学、物理学ひいては近代科学の基礎となる。ちなみに万有引力の原因は2008年においていまだに解明(ニュートンの設立した科学方法論に基づけば「観測」)されていない。

一般相対性理論と重力

アインシュタインは、光速度に近い場合の力学として、1905年に特殊相対性理論を発表した後、加速度運動を含めた相対性理論の構築に取り掛かかった。そして重力場を時空の幾何学として取り扱う方法を模索し、1916年に一般相対性理論を発表した。

アインシュタインの重力場の方程式アインシュタイン方程式)では、万有引力はもはやニュートン力学的なではなく、重力場という時空の歪みであると説明される。また、重力の作用は、瞬時ではなく、光速度で伝えられる。

重力が時空の歪みであるという事は、光の軌道もまた重力によって曲がる事を意味する。ニュートンの万有引力の法則では、質量を持った物体間の力であるとされるので、質量を持たない物質には万有引力は存在しない事となる。これはアーサー・エディントン による観測で実証される。

一般相対性理論は、非常に強い重力が働く場を記述する。太陽系であれば、ニュートン力学に若干の補正項が加わる程度なので、ニュートン力学はその意味で近似的に正しいと考えて差し障りない。例えば前述の光の軌道の歪みについても、太陽の近傍においてようやく観測され得るものである。

アインシュタイン方程式は、通常の物理の方程式と同様、時間反転に対して対称なので、宇宙全体に適用すると、重力の影響で収縮宇宙の解と共に、膨張宇宙の解が得られる。

一般相対性理論の発表当時は、ハッブルによる膨張宇宙の発見前で、アインシュタインは「宇宙は静的で安定している」と考えていた。自身の方程式が、動的な宇宙を予言したため、アインシュタインは万有引力に拮抗する万有斥力があると想定し、重力場の方程式に宇宙項を加えることで、静的な解が存在できるように重力場の方程式を修正した。後に彼は宇宙項を「生涯最大の過ち」と悔いるが、宇宙項のアイデアは現在の宇宙論では、宇宙のインフレーション宇宙の加速膨張を説明するものとして復活していると言える。

詳しくは、一般相対性理論の項を参照されたい。

素粒子物理学と重力

素粒子物理学では、自然界に存在する四つの基本的な相互作用のひとつとして、素粒子間に働く重力相互作用とみなされ、重力子(グラヴィトン)という素粒子により媒介するとみなされるが、素粒子としての重力子は現在のところ未発見である。素粒子間の重力相互作用は無視できるほど小さいが、素粒子と地球との間の重力を考慮する必要があることもある。

量子重力

近年では、量子力学と一般相対性理論の結合、重力の量子化が試みられ、量子重力と呼ばれている。格子重力などさまざまな試みがあるが、実現は困難である。量子重力を宇宙論に適用する試みは、量子宇宙論と呼ばれる。

関連項目

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