ミニ新幹線

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[[ファイル:JR East Shinkansen 400(renewal).jpg|thumb|山形新幹線「つばさ」(400系) 大宮駅(2008年7月撮影)]] [[ファイル:E3inShizukuishi.JPG|thumb|秋田新幹線「こまち」(E3系雫石駅(2008年3月撮影)]] ミニ新幹線(ミニしんかんせん)は、新幹線規格(フル規格)の線路を新規に建設することなく、既存の在来線改軌した上で新幹線路線と直通運転(新在直通運転という)できるようにした方式である。また、新在直通運転を行う路線やそこを走行する車両(列車)もミニ新幹線と呼ぶ。

目次

概要

この方式を採用した鉄道路線は、案内上「新幹線」と称しているが、全国新幹線鉄道整備法の定義では在来線であって、新幹線ではない。また、当然整備新幹線にも含まれない。あくまで在来線の改軌並びに高速化改良であり、在来線区間の最高速度もフル規格新幹線区間の200km/h以上に対して、関東圏の常磐線や関西圏の東海道本線山陽本線など、在来線のうち高規格な一部路線と同じ130km/h程度である(JR以外の路線での最高速度は北越急行ほくほく線京成成田空港線の160km/h)。とはいえ、通常の在来線区間としては比較的高速度の運転が実施されることになるため、地平の踏切には目視性を強化した警報機を設置したり、踏切を廃して立体化・地下化するなど、道路などの横断交通への安全対策が実施されている。

なお、上述の通りミニ新幹線採用区間は在来線扱いのため、始発が午前6時以降、終着が午前0時以前(事故・災害時等除く)という新幹線の営業時間に関する法律の適用を受けない。

利点

新在直通を行う路線は、標準軌に改軌するか、三線軌条化し軌道を強化するなど、高速運転に対応した改良工事を行う必要があるが、新規路線の建設用地確保が不要なため建設コストが格段に安く、また建設期間も短くて済む。並行在来線の経営分離問題も生じない。さらに、接続駅での乗り換えが不要となり、直通運転が実施されることで所要時間短縮や利用者の負担軽減を図ることができるという利点がある。他に、乗り入れ先の駅で行き先が繰り返しアナウンスされることにより宣伝効果を上げることができる。

欠点

フル規格新幹線のように劇的な時間短縮にはならない上、三線軌条ではなく改軌をすると、従来からあった在来線のネットワークを寸断して直通列車の運行が不可能になるため、列車の経路変更や途中駅での打ち切りが必要になり、これらの利用者にとってはサービスダウンとなる(秋田新幹線の場合フル規格で整備された青森のほうが東京からの所要時間が短い。)。また、複線区間であればともかく単線区間では、列車の長期運休が避けられず、工事中の代替輸送をどうするかも問題である。

車両面では直通特急用の車両ばかりでなく、ローカル列車用にも標準軌用の車両を新しく用意しなければならない。また、車体のサイズがフル規格新幹線に比べて小さい上にフル規格路線とミニ規格路線の両方で使用できる機材を搭載せねばならず、乗り入れるフル規格路線において性能面でボトルネックになる可能性がある。ミニ新幹線はフル規格新幹線と連結して走ることが多いため、連結・分割に5分ほど要し、所要時間延長の原因となっている。走行中も連結部の空気抵抗が増大するため、高速走行上不利となる。

路線

この方式では、新在直通を図った路線として2008年現在山形新幹線奥羽本線福島駅 - 新庄駅間)と秋田新幹線田沢湖線・奥羽本線盛岡駅 - 秋田駅間)の2路線がある。前述のように「新幹線」と称しているものの、法的には在来線である。

山形新幹線では改軌区間で運転される貨物列車のために一部区間で三線軌条を敷設(後に廃止)し、山形駅 - 新庄駅間の改軌にあたっては山形駅 - 羽前千歳駅間に乗り入れる仙山線左沢線列車のために狭軌線路を併設のままで残存させた。この区間のローカル列車については、案内上山形線の名称を使用している。

また、秋田新幹線では大曲駅 - 秋田駅間は奥羽本線の狭軌線路と単線並列の形とし、一部区間を三線軌条とするなどして運転の自由度を確保している。同区間では、営業列車としては新幹線直行特急のみ(非営業の回送列車として田沢湖線用のローカル列車用の車両が運転される)が標準軌の線路上を運行され、この区間のローカル列車は狭軌の線路を運行している。

これらの路線で運転される特急列車つばさ」や「こまち」は、新幹線直行特急と呼ばれる。

車両

ミニ新幹線に用いる車両は在来線の車両限界で設計され、フル規格の新幹線車両よりも小型であるため、この呼び名がある。車長はフル規格新幹線の25mに対して、ミニ新幹線では20 - 21mであり車幅も狭く、新幹線区間で乗降口とホームとの間隔が開いてしまうため、開閉式のステップを備える。また電気方式も新幹線区間が交流25,000Vに対して在来線区間は従来通り交流20,000Vとなっているため、両電圧に対応した複電圧仕様である。また、安全装置についても新幹線区間のATCと在来線区間のATS-Pの両方を積んである。

2007年現在、狭軌のままの在来線との新在直通運転を行うことを目的とした軌間可変電車(フリーゲージトレイン)の実用化試験も最終段階に入っており、それが実用化されると改軌工事が不要となり、地上設備の改良が最小限で済むため、運用の自由度も増すことなどについて期待されている。

営業用車両

  • 400系:2008年12月から2010年春までに順次E3系2000番台に置き換えられた。
  • E3系:全線で使用されており、400系の後継でもある。基本番台は2013年までにE6系に置き換え予定。

試験車両など

その他

上記の新幹線直通列車とは全く関係ないが、湖西線北越急行は開業当初「在来ミニ新幹線」と呼ばれていたことがある。これはほぼ直線にレールを建設したことと、全線のほとんどを高架とトンネルで整備され、踏切が全くないことから新幹線をイメージして呼ばれたものである。高規格路線であり、湖西線の優等列車は最高速度130km/hで運転している。信号設備を改良すればそれ以上の速度引き上げが可能であり、実際に北越急行内で優等列車「はくたか」は最高速度160km/hで運転されている。

なお、北陸新幹線敦賀以南のルート案(複数存在する)の一つとしてフリーゲージトレインの湖西線乗り入れ、または湖西線を正真正銘の「ミニ新幹線」化することも検討されているが、現時点では全く具体化していない。

また、九州新幹線長崎ルート新鳥栖駅 - 長崎駅間は一部在来線の長崎本線を挟む関係でスーパー特急方式で建設されるため、ミニ新幹線やフリーゲージトレイン導入の計画もある。

一方、山形新幹線が具体化した頃に、香川県瀬戸大橋線をミニ新幹線化(四線軌条)できればと考えたものの、交直流型車両は値段が高く採算レベルに乗らないという調査結果が出たため断念。群馬県では上越新幹線高崎駅から両毛線前橋駅への乗り入れ構想が浮上、1990年に県とJR東日本との間で調査検討委員会を設置したが進展しなかった。

関連項目

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