マルタ語

出典: Wikipedio


Template:言語 マルタ語(マルタ語:Malti, Lingwa Maltija)は、マルタ共和国公用語として話される言語欧州連合(EU)の公式言語の一つ。言語はアラビア語の口語(アーンミーヤ)の変種の一つであるが、ロマンス系語彙借用語が多いことから(ただし、これはマグリブの口語全体にいえることである)別言語とする学者もいる。

ヨーロッパ圏唯一のアフロ・アジア語族 - セム語派の言語である。アラビア語の口語(アーンミーヤ)の中では、マグリブ方言に最も近い。

シチリア語イタリア語など、ロマンス系の語彙を多く含み、セム系言語で唯一のラテン文字による正書法を持つ。

それまで公用語であったイタリア語に変わり、1936年英語と並んでマルタ共和国の公用語に採用された。今日では、約60万人の話者がいる。オーストラリアアメリカ合衆国カナダへ移民した人々の間でも使われている。

現存する最も古い使用例は、15世紀にPietro Caxaroによりかかれた、「en:Il Cantilena」である。何世紀もの間、マルタ語は話言葉であり、記述する時には、アラビア語、のちにイタリア語が使用された。

目次

文字と発音

文字 ABĊDEFĠGHĦIIEJK
音価 Template:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:Ipa*1*2Template:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:Ipa
文字 LMNOPQRSTUVWXŻZ
音価 Template:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:IpaTemplate:Ipa

文法

ロマンス語の影響を受けてはいるが、マルタ語の文法は依然としてアラビア語そのものである。形容詞名詞を後ろから修飾し、本来副詞は少なく、語順はかなり自由である。アラビア語ヘブライ語と同様、名詞が定冠詞をとる場合、それを修飾するセム語起源の形容詞も定冠詞をとる。例:L-Art l-Imqaddsa(=<定冠詞>-土地 <定冠詞>-聖なる)。ちなみに、アラビア語では'al-'arḍ 'al-muqaddasa、ヘブライ語ではha'arets hakkedoša。但し、形容詞が定冠詞をとらないこともある。ロマンス語起源の形容詞は定冠詞をとらない。

名詞の数には部分的に双数が残存している。

動詞はアラビア語の三語根のパターンを保持している。つまり、子音三つからなる語根に接頭辞接中辞接尾辞を付け加えることで動詞に文法的な意味を付与するのである。例えば、「書く」を表す三つの子音KTBに接中辞-i-, 接尾辞-naを加えてktibna(私たちは書いた)を作る(ちなみにアラビア語ではkatabna, ヘブライ語ではkatavnu)。時制非過去過去の二つである。

ロマンス語起源の動詞にはアラビア語的な動詞派生法は適用されないが、動詞活用は、アラビア語の活用法をそのまま使い、接頭辞と接尾辞がつく。例えば、iddeċidejna(私たちは決めた)はロマンス語の動詞(i)ddeċidaにアラビア語の語尾-ejna(一人称複数完了)がついたものである。チュニジア方言などいくつかの方言でこのような動詞活用が見られるとはいえ、アラビア語ではこのような動詞活用は行わないのが基本である。

マルタ語の文法にはアラビア語的なものとロマンス語的なものが共存しており、語彙の起源と慣習に従って使い分けられる。英語からの借用語に見られるアングロサクソン語的な要素は最近の現象である。

ロマンス的な文法は概して周辺的である。ロマンス語起源の名詞は-iか-ijietを付け加えることで複数になる。例えば、lingwa(言語)はlingwiと複数化される。アラビア語語彙の複数はもう少し複雑である。語尾複数は-at/-iet/-ijiet(アラビア語の-at, ヘブライ語の-ot)、-(i)n(アラビア語の-iin, ヘブライ語の-im)、-an/-ien(アラビア語の-aan)をつけることで行われ、語内複数はktieb(本)/kotba; raġel(男)/(i)rġielのように母音の変化によって表される。これらはアラビア語のほか、セム語系では一般的な屈折である(ヘブライ語ではsefer(本)/ sfarim)

語彙

マルタ語の語彙はアラビア語語彙を基礎とし、(イタリア語トスカーナ方言よりむしろ)シチリア語から膨大な借用語をとりいれたハイブリッドである。この点においてフランス語の影響を強く受けたゲルマン語である英語、アラビア語の影響を強く受けたインド・イラン語派ペルシア語と似ている。 猶、ロマンス語を基調としつつアラビア語語彙を受け入れたスペイン語とは鏡像的な関係であるとも言える。

語彙の60%はアラビア語語彙であり、残りはロマンス語であると概算される。Zammit (2000)によるとコーラン・アラビア語からサンプルをとった1820語の語根のうち40%がマルタ語に見出すことができるとのことである。これはアラビア語のモロッコ方言(58%)やシリア方言(72%)に比べて少ない。一般に基本的な概念を表す語彙はアラビア語であり、新しい概念、物、政府、法律、教育、芸術、文学に関する「高尚」な語彙はシチリア語から借用されている。よって、raġel(男)、mara(女)、tifel(子供)、dar(家)、xemx(太陽)、sajf(夏)といった語彙は全てアラビア語起源であり、skola(学校)、gvern(政府)、repubblika(共和国)、re(王)、natura(自然)、pulizija(警察)、ċentru(中心)、 teatru(劇場、映画館)、differenza(差異)などはシチリア語からの借用語である。よって、ロマンス語の話者はマルタ語版ウィキペディアのメインページや新聞記事の見出しを理解することはできるが、「その男は家にいる」のような基本的な文でさえ理解できない。これは、外国語のできない英語話者がフォーマルな、あるいは学術的なフランス語の意味を推測することができるのに、簡単な文章はむしろ理解できないというのに似ている。

例として人権宣言の最初の部分を挙げる。

Il-bnedmin kollha jitwieldu ħielsa u ugwali fid-dinjità u d-drittijiet. Huma mogħnija bir-raġuni u bil-kuxjenza u għandhom iġibu ruħhom ma' xulxin bi spirtu ta' aħwa.

ロマンス系の語彙はイタリア語トスカーナ方言ではなくシチリア語の発音を反映している。よって、イタリア語の語末のoはuに、語末のeはiとなっている。例えばイタリア語のCristo(キリスト),arte(芸術)は、マルタ語ではKristu(シチリア語ではCristu), arti(シチリア語でもarti)である。

その他

関連項目

参考文献

  • Aquilina, Joseph (1995). “Maltese: A Complete Course for Beginners (Teach Yourself) ”, NTC Publishing Group, ISBN 0844236977.
  • Aquilina, Joseph (1987). “Maltese-English Dictionary: A-L Vol 1”, Midsea Books Ltd, ISBN 999099336X.
  • Aquilina, Joseph (1989). “Maltese-English Dictionary: M-Z Vol 2”, Midsea Books Ltd, ISBN 9990993319.
  • Zammit, Martin (2000). “Arabic and Maltese Cognate Roots”, Manwel Mifsud Proceedings of the Third International Conference of Aida, 241-245. ISBN 9993200441.

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