ブラウン運動

出典: Wikipedio


[[ファイル:BrownianMotion.png|thumb|right|256px|2次元でのブラウン運動の1000ステップ分のシミュレーションの例。運動の起点は (0, 0) である。各ステップの x成分とy成分は独立で、分散は2で平均は0の正規分布に従う。数学的なモデルでは、ステップは不連続ではないと仮定している。]] ブラウン運動 - うんどう、Brownian motion)とは、1827年(1828年という記述もあり)、ロバート・ブラウンが、花粉が水の浸透圧で破裂し水中に流失し浮遊した微粒子を顕微鏡下で観察中に発見した現象。液体中のような溶媒中(媒質としては気体固体もあり得る)に浮遊する微粒子(例:コロイド)が、不規則(ランダム)に運動する現象である。

長い間原因が不明のままであったが、1905年アインシュタインにより、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であるとして説明する理論が発表された。

ブラウン運動はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。

目次

アボガドロ定数との関係

ブラウン運動について以下の式が成り立っている。 Template:Indent

ここで、上式左辺は、ブラウン運動する物体の平衡位置x0からのずれの2乗の平均である(系は1次元とする)。R気体定数T絶対温度f易動度(媒質の粘性に関係し、ブラウン運動する物体の速度をvとすると、fvはその速度に比例する抵抗力となる)、tは十分経過した時間(極限としては、t → ∞)である。そして、NAアボガドロ定数である。アボガドロ定数以外は、観測によって求められる量であり、フランスの物理化学者ジャン・ペラン(J. B. Perrin、1870 - 1942)が、NA = 6.5 × 1023(資料により値が異なる)という値を得ている。

花粉にまつわる誤解

Template:Main 水中で浸透圧により破裂した花粉から流出した微粒子ではなく、花粉そのものがブラウン運動すると間違われることがある。一般書などに限らず、高名な学者や学術書や教科書にも見られた。最近でもマスコミの記事や、インターネット上の検索サイトで検索すると大学のウェブ上のアインシュタインの業績説明は誤ったままの説明になっていることが多い。

数理モデル

Template:Main ブラウン運動の数学的に厳密なモデルとして、ノーバート・ウィーナーの名を冠してウィーナー過程と呼ばれる連続型確率過程がある。ウィーナー過程は離散型である乱歩の極限となる確率過程として確率論確率解析において非常に重要な概念である。ウィーナー過程のランダムさは、ブラウン運動のモデルに相応しく至る所通常の意味では微分不可能なほどであるが、その軌跡(サンプルパス)は連続性を持ち、ある種の測度としてウィーナー過程の存在を肯定する。そしてこれが微分(殊に二次の微分)によってある種の無限小余剰項を生むという規約を設けた(伊藤清による伊藤型ルスラン・ストラトノビッチenによるストラトノヴィッチ型などの規約がよく知られる)特別の微分(確率微分)を考えることにより、確率積分などの概念が定式化され、確率解析と呼ばれる一分野が展開される。非常に多くの粒子の影響がブラウン運動の不規則さを生むという考え方は、やはり多数の原因によって複雑な変動を示す株取引などの経済活動などにも応用することができるため、ウィーナー過程や確率微分を応用した確率解析は、金融工学などの分野でも盛んに用いられている。

簡単のため1次元ウィーナー過程について述べる。

定義
確率空間<math>(\Omega,\mathcal{F},P)</math>上で定義された連続な確率過程<math>W(t)</math>で次の性質を満たすものをウィーナー過程という。
  1. 任意の<math>t_1<t_2<\dots<t_n</math>に対し、<math>W(t_1)-W(0),\ W(t_2)-W(t_1),\ \dots, W(t_n)-W(t_{n-1})</math> は独立。
  2. 任意の<math>t\geq s</math>に対し、<math>W(t)-W(s)</math>は正規分布<math>N(0,t-s)</math>に従う。
(注意)数学的にはこのような確率過程が存在することは決して自明ではなく、証明が必要である。
性質
  • サンプルパスは確率 1 で微分不可能である。すなわち、ブラウン運動は非常にギザギザな曲線となるのである。
  • <math>W(t)^2-t</math>はマルチンゲールとなる。これはブラウン運動に関する確率積分を考える際の非常に重要な性質である。

関連項目

bg:Брауново движение ca:Moviment brownià cs:Brownův pohyb da:Brownske bevægelser de:Brownsche Bewegung el:Κίνηση Μπράουν en:Brownian motion es:Movimiento browniano et:Browni liikumine eu:Mugimendu Browndarra fi:Brownin liike fr:Mouvement brownien he:תנועה בראונית hr:Brownovo gibanje ht:Mouvman bwonyen hu:Brown-mozgás id:Gerak Brown it:Moto browniano ko:브라운 운동 lt:Brauno judėjimas lv:Brauna kustība ms:Pergerakan Brown mt:Moviment Brownjan nl:Brownse beweging nn:Brownsk rørsle no:Brownsk bevegelse pl:Ruchy Browna pt:Movimento browniano ro:Agitație termică ru:Броуновское движение sh:Braunovo kretanje sk:Brownov pohyb sl:Brownovo gibanje sr:Брауново кретање su:Gerak Brown sv:Brownsk rörelse ta:பிரௌனியன் இயக்கம் tr:Brown hareketi uk:Броунівський рух vi:Chuyển động Brown zh:布朗运动

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