フェンダー・テレキャスター

出典: Wikipedio


Template:Infobox Guitar model テレキャスターTelecaster )は、フェンダーの創設者、レオ・フェンダーが開発したエレクトリックギター

目次

概要

ソリッド・ボディ、ボルトオン・ネックなどの当時としては大胆な構造を持ち、1949年ごろ「エスクワイア」の名前で発売が開始されたテレキャスター・シリーズは、伝統的なギターの概念からは大きく離れたものであったが、市場からは好評を博し、その後もフェンダーの主力機種、ひいてはエレクトリックギターの定番機種として、ストラトキャスターと共に生産が中断されることが一度も無く継続されている。

テレキャスターの成功により、伝統的な製品ラインナップを守っていたギブソンレス・ポール・モデルを発表し、大手メーカー各社がソリッド・ボディ市場へ参入した。

構造

工業製品としての電気ギター

テレキャスターはボディが削り出しの板で空洞部分がなく、ネックも一本の木材から削り出し、さらにネックとボディを別々の工程で製作し、最終的に両者を4本のボルトでつなぐ、という構造、製法である。発売当初のボディはアッシュ材などを継いで整形した一枚板(ソリッド・ボディ)で、ギブソンのギターのようにボディ表面をなめらかな曲面仕上げにする手間を省いた、真っ平な形状が特徴であった。ネックはメイプル材を削り出し、指板材を貼り合わせずにフレットを直接打ちこんだもの(ワンピース・ネック)であった。それまで主流だったフルアコースティックタイプのギターでは、ボディが空洞で、しかもネックとボディをニカワなどで接着していたため、非常に正確で緻密な作業が必要とされたが、フェンダーは工程を単純化する大胆な手法を採用した<ref>但しこれらはテレキャスター以前より存在した工法であり、これが初めてと言うわけではない</ref>。

さらにボリューム、トーン・コントロールなどのスイッチ類を、ボディ裏から木をくり抜いてセットするのではなく、一連のユニットとしてひとつの金属プレートにまとめてボディ表面にネジ止め<ref>さらに配線もこのプレートの導通を生かして配線されている</ref>。ピックアップはボディ表面から取り付けられ、ブリッジユニットはリアピックアップのマウント台を兼ねており、テールピースは省略され、弦はボディ裏から通されるなど、信頼性と音質とコストダウンを両立させ、流れ作業的な大量生産を可能にする構造になっていた。

ピックアップ

画像:Telecaster bridge.jpg
ヴィンテージ・モデルのブリッジ部分。リア・ピックアップはセイモア・ダンカン社の製品に換装されている。

ピックアップは、フロントとリアにそれぞれ異なるものが搭載されている。フロントピックアップは細いボビンに金属のカバーをかぶせたものであり、リアはカバーのない<ref>リヤピックアップ自体にカバーはないが、ブリッジ部にとりつけるブリッジカバーが存在する。当初はカバーを装着していたが、付けていない状態が現在スタンダードになっている。これはブリッジに手を置くときにミュートされては困るとレオ・フェンダーが思ったからだとされている。レオはギターが弾けないのでブリッジ・ミュートの奏法を知らなかったためと考えられる。</ref>幅広のボビンで、ブリッジ・ユニットから直接吊るされる。リアピックアップには、フェンダーがそれまで作っていたスティール・ギターの影響が残っているとも言われる<ref>ブリッジカバーはスティール・ギターの影響から装着されるものと考えられている</ref>。

フロントピックアップは、当時発売されていなかったエレクトリックベース代わりとしても使用できるように開発したとの説やTemplate:要出典、ジャズミュージシャンに人気のあったギブソンのような音を狙ったという説もあるTemplate:要出典。だが、このフロント・ピックアップを若干パワー不足と感じる者もおり、キース・リチャーズアンディ・サマーズアルバート・コリンズマイク・スターンなど、フロントをギブソン型のハムバッキング・ピックアップに交換してしまうギタリストも多い<ref>ただし、テレキャスターの回路は時期によって変遷があり、全てのテレキャスターのフロントピックアップがパワー不足傾向というわけではない。またアルバート・コリンズとキース・リチャーズはフロントピックアップを使用しないので、ハムバッカーに交換するのは外見的な理由と考えられる。</ref>。

フェンダーオリジナルのハムバッカーを搭載したカスタムシンラインデラックスといった派生機種も、ギブソンのそれとは異なる独特な音色が支持されている。

デザイン

ヘッドは6個の糸巻きを直列に並べたデザイン、ボディはマーティンドレッドノートモデルに影響を受けたシェイプに、高音域の演奏性を考えてカッタウェイを設けたスタイルである。樹脂製の大型のピックガードが装着され、色は木目の透けたクリーム色(ブロンド)がメインカラーで、追ってサンバースト、ブラック、レッドなど各色のバリエーションが増えていった。

音色

フェンダーのギターの特徴はシングルコイルを活かした、澄んだ高音域である。ギブソンのハムバッカーに比べるとノイズを拾いやすいという欠点はあるが、硬質ではっきりとした音を出すことが容易である。

トレモロユニットを装着した後年のフェンダー(ストラトキャスター、ジャズマスターなど)のギターに較べ、テレキャスターはよりタイトで独特のアタック音を持つ。また、リアピックアップの周囲にある金属プレートもテレキャスターならではの音の要因と考えられている<ref>ただし音質は構造、組み込みの精度、塗装、パーツや木材の質、そして設計思想などが複雑に絡み合って作り出されるものであり、同じスペックでも出音は大きく異なる。特に初期にボディ材に使用されたアッシュ材は、固体により重さや音性特質は大きく異なる。例として、60年代以降は音が硬質な傾向があり、50年代のオールドは太い音がするという見解がある</ref>。

画像:Fender 72 Telecaster Thinline.png
1972年製テレキャスター・シンライン
画像:Fender Telecaster Head.jpg
ローラー式ストリングガイド、ロトマチック・タイプの糸巻きなどを装備した現行スタンダード・モデルのヘッドストック。
画像:Guitarra2.jpg
ペイズリー柄

歴史

創生期

当初はエスクワイヤーEsquire)<ref>エスクワイヤーの名称は、テレキャスターのシングルピックアップ・モデル名として残る</ref>の名称で1949年に発表、ブロードキャスター(Broadcaster)という名前で1950年に発売された。<ref>但し発表年や発売年、プロトタイプの内容など開発当初の事項については関係者の発言等に違いがみられる以前には、レオの発言から1948年に発売されたことになっていた。</ref>。だがグレッチが既に類似の名称(Broadkaster)をスネアドラムで商標登録していたため、フェンダーは発売直後の1951年に「テレキャスター」への名称変更を余儀なくされた。「ブロードキャスター」、「テレキャスター」は、どちらも当時開始されたばかりだった新技術、テレビジョン放送にあやかったネーミングである。<ref>一時、製造済みのデカールが無くなるまで「Broadcaster」の名称の部分を削った古いデカールを使用したため、この時期の物を一般にノーキャスター(Nocaster)と呼ぶ</ref>。

バリエーション展開の開始

50年代後半にはローズウッド指板のモデルも追加され、バリエーションとしてカスタムデラックスエリートといった派生機種も多数存在し、ボディに中空部分を設けてfタイプのサウンドホールを開けたテレキャスター・シンラインというモデルもある。

1968年と69年にはサイケ・ブームもあってピンク・ペイズリーとブルー・フラワーの柄を貼り付けたモデルを発売した。壁紙を貼り付けて、シースルー塗装し、クリアを吹くという方法で製造された。

現在のテレキャスター

フェンダー社はヴィンテージ・シリーズやカスタムショップのタイムマシン・シリーズなどで過去のモデルの再生産を行う一方、アメリカン・テレキャスターなどでは6分割のサドル<ref>伝統的なテレキャスターのブリッジは3分割のサドルである。これはストラトキャスターやレスポール・モデルに比べるとオクターブ・ピッチが合いづらいので、改造用の6連サドルのブリッジも広く普及している</ref>や新開発のピックアップを搭載するなど、使い勝手と汎用性を備えたラインナップを展開している。

また、フェンダー社以外にも多くのメーカーがテレキャスターを模した、もしくは影響を強く受けたモデルを開発・製造している。

略年表

  • 1950 - ブロードキャスターとして発売開始
  • 1951 - 一時期ヘッドの商品ロゴが剥がされる(通称ノーキャスター)〜テレキャスターと名称を変更
  • 1952 - ピックアップセレクターが<フロントベーストーン/フロント/リア+フロント(ブレンドで調整)>から<フロントベーストーン/フロント/リア>に変更、同時に下側のポッドがブレンドからトーンに変更
  • 1953 - このころからマイナスからプラスのビスに変更される
  • 1955 - ピックガードがブラック1プライからホワイト1プライに変更、塗装を変え白っぽい色に変更。ブリッジ駒がブラスからスチールに変更
  • 1957 - ヘッドのストリングガイドが、ボタン型からカモメ型に変更
  • 1958-59 - 一時的に弦がボディの裏通しから、ブリッジプレートの後ろ留めに変更
  • 1959 - メイプルワンピースネックから指板材をローズウッド(スラブボード)に変更。バインディングを施し、ボディをアッシュからアルダーに変更したテレキャスターカスタム(カスタムテレキャスター)を発売開始。一色のみの発売からカラーバリエーションの追加。追加カラーには、3プライのピックガードを採用。ピックガードが5点留めから8点留めに変更
  • 1963 - 指板がスラブボードからラウンド貼りに変更
  • 1965 - フェンダー社がCBSに売却
  • 1966 - 社名ロゴがスパゲッティロゴから、トラディションロゴに変更。ローズウッドの代わりメイプル指板を選択できるようになる(貼りメイプル)。
  • 1967 - 社名ロゴがモダンロゴに変更、"Telecaster"のロゴも大きくなる。ピックアップセレクターが<フロント/フロント+リア/リア>に変更
  • 1968 - シンラインテレキャスター発売(シングルコイルピックアップ)。フィニッシュが、ラッカーからポリウレタンに変更
  • 1969 - ローズウッドテレキャスター発売
  • 1972 - ハムバッキング搭載のシンラインテレキャスター発売
  • 1973 - テレキャスターデラックス発売
  • 1982 - 過去のテレキャスターのリイシューが始まる

マール・トラヴィスとテレキャスター

マール・トラヴィスがレオ・フェンダーに彼のビグスビー製のギターを貸し出し、それをもとにレオがテレキャスターを作ったという説もある。これはトラヴィス自身が語ることによって有名になった話で、エスクワイアとビグスビーギターの共通点として、ソリッド・ボディのシングルカッタウェイ、片側6連のペグ<ref>エスクワイアのプロトタイプは両側3連のペグだった。またストラトキャスターのラージヘッドはビグスビーのヘッドに酷似している</ref>、弦の裏通しなどがある。

この時期当事者達にはそれぞれ面識があり、レオがビグスビーのギターを全く知らないと言うことは考えづらいが、レオはこの話を完全に否定している。ただ、ビグスビーは死ぬまで自分のアイディアを横取りされたと思い、レオを恨んでいたと言われる。

なお、問題のマール・トラヴィスのギターは1947年にポール・ビグスビーが製作したもので、ボディとネックはバーズアイ・メイプル、指板はローズウッドで19フレットまで。ポジション・マークは3フレットがハート、5フレットがクローバー、7フレットがダイア、9フレッドがスペードである。ネック構造はスルーネック。ボディ・シェイプはむしろレスポール・モデルに似ているがボディトップはフラットである。ピックアップはブレード型ポールピースのシングルコイルがリアに1つ。ブリッジは木製で、バイオリンのテイルピースを模した装飾部材の前端に、ボディ裏から通された弦の出口が6つ並んでいる。コントロールはボリュームノブ3つとテレキャスターに似た3ポジション・スイッチが1つ。木製のピックガードに「MERLE TRAVIS」のインレイが入っている。特筆すべきはヘッドストックの形状で、バイオリンのヘッドストックを横から見た所をイメージしたとされる<ref>『ギター・マガジン』1991年2月号18-19ページ</ref>それは、ストラトキャスターのヘッドストックに酷似している<ref>Genealogía de la Guitarra</ref>。

使用ミュージシャン

画像:Keith Richards Hannover 2006.jpg
テレキャスターを弾くキース・リチャーズ
画像:JOE STRUMMER 20011219.jpg
ジョー・ストラマーのテレキャスター

エレクトリックギター界において非常にポピュラーな存在で、多少の流行り廃りはあるが、1950年代から現在に至るまで、使用者はジャンルを問わず多い。

ジェームズ・バートン
1953年製のテレキャスターを愛用。言わずと知れた「ミスター・テレキャスター」。彼は本来ワウンド弦であった3弦をプレーン弦に張り替え、チョーキングを簡単にした(当時一般的に売られていたエレキギター用の弦のうち5弦(Low A)〜1弦(E)を6弦(Low E)〜2弦(B)の位置に張り、空いた1弦の位置にはバンジョーの1弦(D)を張る)。これが現在のライト・ゲージである。つまり、ジェームズ・バートンがライト・ゲージを開発したと言ってもよい。ニュー・ギャロッピング奏法を開発し、バンジョー用のフィンガー・ピックで演奏するチキン・ピッキングを得意とする。
1970年からのエルヴィスのステージではピンク・ペイズリー模様の69年テレキャスターを使用した。「エルヴィス・イン・コンサート」では3ピックアップのテレキャスターを使っている。色々なギターに持ち替えているものの、ジェームズは「自分の愛用ギターは常に53年テレキャスターなんだ。持ち替えたのは面白そうだからだ。すべてのレコーディングに53年テレキャスターを使った。」と発言しているTemplate:要出典
ジミー・ペイジ
ヤードバーズ在籍時代やレッド・ツェッペリンの初期においては、ジェフ・ベックから譲り受けた1958年製のテレキャスター<ref>サイケデリック風に描かれたドラゴンのペイントが施されていた</ref>がトレードマークであった。またペイジが使用するレスポールは、ネックを薄く削り落し電気回路の変更等を行い、テレキャスターを意識したサウンドに調整されていると言われている。レコーディングでもテレキャスターは多用されたが、ステージにおいてもレッド・ツェッペリン後期のツアーにおいて使用された。ザ・ファームではテレキャスターがメインの使用ギターとして返り咲いたこともあった。有名な「天国への階段」のスタジオ音源のギターソロはテレキャスターによるものである。
ジョー・ストラマー
シンガーが持つギターとしてのテレキャスターを広めた人物とされるTemplate:要出典。元はサンバーストだった1966年製テレキャスターを黒に塗りなおして使用。この個体はクラッシュ解散後も最晩年まで使われ続けた。こうしてボロボロになったテレキャスターを元に、クラッシュのデビュー30周年となる2007年、フェンダーから「ジョー・ストラマー・テレキャスター」が限定発売された<ref>Template:Cite web</ref>。
キース・リチャーズ
テレキャスターのイメージが強い彼だが、初期のころはレス・ポールやセミアコといったギターを使用していた。1971年の「メイン・ストリートのならず者」セッション時にギターが大量に盗まれる事件がおきた。この事件後に集められたギターでテレキャスターを手にする。これが後に世界一有名なテレキャスターとなる「ミカウバー」である。この後も、「テレキャスター・カスタム」、「ミカウバー」と並ぶ有名なテレキャスター「マルコム」等のテレキャスターを手にし、現在に至るまで使用している。なお、キースのギターの特徴として、6弦をはずす「5弦オープンGチューニング」があるが、もちろん、これらのテレキャスターで使用されている。

その他に、プリンスはフェンダーの物ではないが、ホーナー製のテレキャスタータイプ通称「MAD CAT」をデビュー当初から現在に至るまでメインのギターの1つとしてトレードマークにもなっている。 またジミ・ヘンドリクスは公演の直前にストラトキャスターのネックが折れてしまい、代替としてテレキャスターのネックをストラトキャスターにつけるという変則的な使い方をした。

<references />

関連項目

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外部リンク

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