バター

出典: Wikipedio


thumb|200px|バターとバターナイフ バターとは、を原料とした食用油脂乳製品のひとつである。バター(butter)という語はラテン語のbutyrumを元としており、ギリシャ語で牛のチーズを意味するboutyronを由来としている。 日本語では牛酪と表記される。

牛乳を原料とするのが一般的。乳中の脂肪分を凝固させて作り、常温ではわずかに黄色味をおびた白色の固体である。100gのバターを作るために原料乳は約4.8リットル必要とされる。ビタミンAをはじめ各種ビタミンや栄養素を豊富に含んでいる。

日本では近年、低脂肪乳が好まれるようになり、副産物の乳脂肪は生産過剰気味と言われていたが、2007年末から乳牛の生産調整などの悪条件が重なり、バター不足が発生している。詳細についてはバター不足を参照のこと。

目次

歴史

thumb|200px|かつてのヨーロッパでバター製造に使われた桶。中にクリームを入れ、中央の棒を上下させて攪拌する バターが日本に広まったのは明治維新の後、明治政府が外国人相手に乳製品を供給する為、酪農の普及を指示してからである。大般涅槃経にあるように乳製品自体は古来アジア諸国にあったのだが、その多くの国では乳製品は貴族階級が食べる貴重品であった為、日本では貴族勢力の衰退と仏教戒律の解釈から、明治になるまで乳製品自体が廃れていた。

世界では、『聖書』や『マハーバーラタ』(乳脂として)にも記述が存在するのでその時代には存在していたとされるが、容器に入れた生乳が偶然揺れただけでもバターは出来る為、起源は不明。少なくともメソポタミア文明の時代には存在していた。バターが作られだした当初は製のに生乳を入れてに吊るし、それを棒で打って揺すって作っていたと見られる。バターは古代ギリシア時代にスキタイから西洋に渡ったようだが、野蛮人の食べ物と見られた事、オリーブオイルが普及していた事、チーズと違い保存性が無い事などから、髪や体に塗る化粧品潤滑油として、ごく一部で使われていた。村上信夫によれば、化粧品だったバターを世界で初めて食したのはユリウス・カエサルであるという<ref>「おそうざいフランス料理」でのエッセイより</ref>。

その後、次第に食用としてのバターは普及し始めたが、やはり野蛮人の食べ物と言う見方は変わらず、貧しい者の食べ物とみなされていた。9世紀頃にフランスで本格的に食用として利用されだすと、ようやく貴族もバターを食べ始めたのだが、現在でもヨーロッパではオリーブオイルが主流の地域とバターが主流の地域がはっきりと分かれている。基本的に、バターを保存しやすい寒冷な土地でバターが普及していると見てもいい。それ故、スカンジナビアでは少なくとも12世紀頃にバターの輸出が始まった。16世紀四旬節の期間中にバターを食べてもいい事になり、これがきっかけで貴族がバターを食べる事が更に一般的になった。

また、バターはランプの油の代用ともされた。ルーアン大聖堂の『バターの塔』は16世紀の四旬節に実際にランプの油にバターを使っていた事からこう名付けられたとされる。

19世紀末、戦争の混乱でバターの価格が高騰し、ナポレオン3世の命令で、バターの安価な代用品として作られたのがマーガリンである。

種類

発酵無発酵
有塩 発酵・有塩バター無発酵・有塩バター
(日本で通常市販されるバター)
食塩不使用
(かつての無塩バター)
発酵・食塩不使用バター食塩不使用・無発酵バター

原料乳を乳酸発酵させてから作る発酵バターと、そのまま作る無発酵バターがあり、それらに食塩を添加した有塩バターと添加しない食塩不使用バターの4種類に分かれる。 食塩不使用バターは、かつて無塩バターと称していたが、無塩で製造しても生乳に由来する塩分が微量含まれることから、厚生労働省栄養表示基準により食品の正規表示が求められ、無塩バターの表示が出来なくなった。

日本で市販されているバターは「無発酵、有塩」がほとんどである。

性質

  • 冷蔵庫等で冷やすと、バターナイフで切るのに多少力が要るほど固くなる。
  • 室温(20程度)にすると、マヨネーズ程度の柔らかさになる。パンに塗ったり、洋菓子を作る際にはこの状態がよく使われる。
  • 30℃前後で融解する。液体になった状態を「溶かしバター」と言う。
  • 溶かしバターを凝固しない温度で放置すると、乳脂肪以外のタンパク質など(乳漿)が底に沈む。上澄みは透き通った黄色っぽい色をしており、これを「澄ましバター」と言う。通常のバターでは強すぎる繊細な風味が必要な場合に使われる。

製造方法

  1. 牛乳からクリームを分離
  2. 攪拌機にいれて攪拌し、脂肪のかたまりをつくる。
  3. 冷水で洗浄し、脂肪分以外を除去する。
  • 手作りの場合

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  • 乳脂肪分を細かくしてコロイド状に分離を防ぐための均質化Homogenization)の工程を経ている牛乳についてはクリームを分離することができない。日本で市販されている牛乳については「ノンホモ(ジナイズド)」等の表示がない限り均質化を受けており、牛乳から作ることは困難である。
  • ミキサー (調理器具)で撹拌すると瓶に入れて振るよりも手早くできる。また、ホイップクリーム(Chantilly cream)をミキサーで製造中に、過度の撹拌のために脂肪分が固まることがある。

なお家庭でも上記の方法で市販の生クリームから作ることは可能だが、市販品に比べて割高となる。

用途

調味料のほか、パンなどのスプレッドソースの材料、ソテーの焼き油や炒め油など、幅広く使われる。食塩不使用バターは洋菓子によく使われる。トーストホットケーキなどに使うのも有塩のものが多いが、塩分を控えている人などや、海外の例では食塩不使用のものを使う場合もある。

そのほか、バターの中にレーズンを入れたレーズンバターもある。クラッカーの上などにそのかたまりを乗せて食べる場合などに利用される。パセリバター、レモンバター、にんにくバターなどもあり、オードブルのほかにステーキカレーライスなどに添えられる。

ラーメンに使われることもある。これはラードの代わりにバターを使ったことがきっかけ。香港台湾の「ラードごはん」のように、米飯にバターと醤油をまぶして食べる人もいる(バターライス)。

類似品

マーガリン」は 植物油など他の材料から作られ、バターの安価な代替品として使われる場合がある。マーガリンは冷蔵庫内などの低温下において固くならない性質があり、使用し易い面がある。しかし風味の点でマーガリンはバターに及ばない。マーガリンの風味は香料であることが多いので熱を加えると飛んでしまうが、バターは熱を加えることによってかえって風味が増す。尚、近年マーガリン等に含まれるトランス脂肪酸が健康被害を与える可能性が指摘されており、その使用が制限されている地域もある。 「ショートニング」は、パンや洋菓子に加えるための専用のものである

口語ではマーガリンを指してバターと呼ぶこともあるが誤用である。また、バターを含まないが、ピーナッツバターのように用途が似ていたり、バターピーナッツなど実際にはパーム油などが使われるが、バターに似た風味を持たせた食品に名前が使われることもある。マーガリン等と区別する為、本来のバターを「本バター」と呼称することもある。

その他の類似のものとして、ジアセチルという食品用香料もあり、バター風味のポップコーンなどに多く用いられている。

バター不足

2007年末から、日本ではバターの原材料である生乳(酪農家が牛から搾る乳)生産量の減少によりバター不足が業界各メーカーで発生している。これは以前の牛乳余剰を原因とする2006年度からの生産調整で乳牛が削減されているのに加え、猛暑で生産が減少したためである。各メーカーでは出荷数量の制限や価格の改定を実施している。

小売店においても特売の減少や一人当たりの購入数量の制限、在庫切れによる販売中止など、一般消費者にも影響が生じている。またバターを使用したケーキ類の値上げなどの影響も出た。

これらのバター不足に対して当時の農林水産大臣若林正俊は、乳業メーカーに対し、バターの増産を要請した。また、農畜産業振興機構は業務用の冷凍バターの輸入を前倒しして実施し、追加輸入を行う等の対策を行った。これらの対策の結果、現在ではバター不足は収まってきている。

生産地

  • 日本
    • 北海道など
  • 海外
    • インド270億トン 32.9%、アメリカ61億トン 7.4%、パキスタン57億トン 7.0%、ドイツ44億トン 5.4%

インドではヒンドゥー教によって牛の食用が禁じられているため、菜食主義者が多い。彼らは足りない栄養を主に、バターで補う。

関連項目

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脚注

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