ナザレのイエス

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ナザレのイエスTemplate:Llang, Template:Llang紀元前4年頃 - 紀元後30年頃)は、紀元1世紀初頭に、パレスチナで活動したと考えられる人物である。

目次

名称

ナザレのイエスとは、福音書においてイエスが「ナザレ人(ナザレ出身者)」と呼ばれていることによる。

ナザレ出身であったという確実な史料はないが、この呼び名で歴史的に実在したであろうと考えられている。近代に入って、イエスは存在しなかったとする説が脚光を浴びたことがあったが、現在では実在したということが定説となっている。

概要

典拠史料

イエス実在を直接示す歴史上の一次資料は存在しないため、これらのイエスの実在や事績に関しての史料は、すべて伝聞や伝承をあつめた二次的なものである。

史料上の問題

様々な古代の思想家と同様、イエスは自分の思想を文字に記すことはなかった。また、彼の直弟子たちの手によって、その生涯が書き残されることも無かった。 イエスの行動を記した資料である福音書は、彼の生涯を忠実に記すことを意図したものではなく、それぞれの著者が属していた初期キリスト教団の思想を表すための、宣教文書であると考えられ、厳密な資料としての信頼性は低い。

イエスは何をしたのか

イエスは1世紀パレスティナユダヤの地(とりわけ、ガリラヤ周辺)で活動したが、福音書に共通することは、イエスは、ユダヤ教の宗教的指導者であるラビであり、ユダヤを救う者として民衆から待望されていた、キリスト(メシア)だということである。

生涯

誕生

4つの福音書が一致して述べるところによれば、イエスは「神の子」として誕生したという。しかし、その過程はそれぞれの福音書で見解が異なっている。

  • マタイ、ルカ福音書に従えば、イエスは、ベツレヘムで誕生したことになっているが、イスラエルの救済者・メシアはベツレヘムで生まれるという伝承がユダヤ教にはあり、この伝承に従って、福音書記者はこのような記述を行ったと考えられる。
  • マルコはイエスの伝道から記述をはじめ、その生誕の詳細については述べていない。
  • ヨハネはもっとも後期に成立し、他の3つの福音書を参照して執筆されたと考えられる。そのうえで、ヨハネはイエスの生誕の地については全く記述していない。このことから、ヨハネは暗にイエスのベツレヘムでの誕生を否定したとする説がある。
  • マタイ、ルカ、ヨハネ福音書によれば、イエスの父(養父)はダビデの末裔のヨセフ、母はマリアとされるが、メシアはダビデの家系に生まれると云う伝承があり、伝承に合わせて福音書記者は記述したと考えられている。

福音書はまた、イエスの誕生をヘロデ大王の治世の末で、大王が未だ存命中であったと記し(ヘロデの幼児虐殺)ている。ローマ帝国の方針と一致しないが、ローマ皇帝が戸籍の確認を求めたため、ヨセフとマリアはベツレヘムを訪ねていたという記述もあり、ここから、紀元前7年頃から紀元前4年頃にイエスの誕生があったと解釈される。

公生活

福音書の記述の主な対象は、宗教的活動を始めた時期のイエスである。その中で彼は、様々な教えを説き、奇蹟を起こした結果、弟子の集団が構成されたことになっている。福音書にはイエスがさまざまな病人の治療を行い、癩病(らいびょう)患者を癒し、死者をよみがえらせたなど、多数の奇蹟が記されている。教えを述べる際に、民衆にわかりやすいよう、「たとえ話」を多く用いたという。

イエスは、洗礼教団の一派であるエッセネ派と何らかの関係を持っていたと推定される。そのことは、福音書が洗礼者ヨハネについて記し、イエスがヨハネから洗礼を受けたと記述していること、そして『死海文書』中に出てくる「義の教師」の生涯がイエスの生涯に類似していることから、このような解釈が出てくる<ref>『死海文書』はエッセネ派を含む、洗礼教団の共同体(クムラン教団)が所有していた文書と考えられている。</ref>。

弟子集団

画像:Wojciech Gerson-Jezus i Maria Magdalena.jpg
マグダラのマリアとイエス

イエスには多くの弟子ができ、福音書はペトロを筆頭とする「12使徒」をその代表としている。マグダラのマリアが筆頭の弟子であったという説もある<ref>福音書記者たちは、男性の十二使徒を主張しているが、福音書において、マグダラのマリアや帰依する女たちは、イエスの処刑に立ち会ったり、復活のイエスに出会ったりと、重要な役回りを演じている。</ref>。 更に、一部の人々の間では、マグダラのマリアがイエスの妻であったという推論もなされている。<ref>『フィリポ福音書』を初めとするグノーシス文書では、マグダラのマリアがイエスのもっとも愛した弟子で、イエスの伴侶であったという記述がある。</ref>。

イエスの教え

イエスは貧しい者・虐げられた者に向けて説教をおこなった。このことは、やはり民衆の間で活動したファリサイ派と共通している。

山上の垂訓」<ref>「山上の垂訓」は『Q福音書』に遡る、イエスの真の言葉であるとの研究がある。バートン・L・マック 『失われた福音書』。</ref>で始まるイエスの教えの言葉では、人間の平等や、互いのあいだの愛を語っている。

マタイ福音書』にある山上の垂訓は次のような印象的な言葉で始まる: Template:Cquote 「心の貧しい者」と通常訳される言葉は、ギリシア語原文では、「霊(プネウマ)において貧しい者たち」である。「諸々の天」とは、天空はいくつもの層に分かれているという当時のユダヤ人の世界観に基づいた表現であると共に、「神」という言葉を軽がるしく口にすることを嫌った、ユダヤ的な言い回しで、婉曲的に自身を指す。ゆえに、「天の国」と「神の国」はまったく同じ言葉である。

なお、このことばは、ルカによる福音書では、 Template:Cquote となっている。

イエスは律法主義を否定し、ファリサイ派を批判したが、律法をも否定した訳ではない<ref>マタイ5章17-19</ref>。

イエスは、取税人、遊女、貧者、罪人などと親しく交わり、食卓を共にしたと『福音書』は伝える。

Template:Cquote

ファリサイ派はイエスを「大喰らい・大酒飲み」などと非難した<ref>『ルカ福音書』7章34</ref>。

終末論と神の国

当時のユダヤにおいては、終末論が中心であった。『マタイ福音書』は、洗礼者ヨハネヨルダン川近くの荒野において、「悔い改めよ、天の国は近づいた」と宣教していたと記している(3章2)。また『マルコ福音書』は、イエスがヨハネより洗礼を受けた後、「ときは満ちた。神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」と述べたと記している(1章15)。これは世の終末が近づいており、神の審判に備えて人は悔い改めねばならないという教えである<ref>『福音書』は複数の箇所で、世界の終末について言及しており、イエスの十字架刑においても、イエスが息を引き取ったとき、地震が起こり、墓が開いて古代の聖者達がよみがえったなどと記し、世界の終末と復活の様を先取りして描写している。</ref>。

終末論の世界観のもとに生きたイエスは、人々に「悔い改めよ」と宣べた。その目的は「神の国(天の国)」に入るためであるが、「神の国(バシレイア・テウー)」とは、ここにある、あそこにあるというようなものではなく、「あなたたちの間にある」<ref>"gar hee basileia tou theou entos hyuumoon estin."『ルカ福音書』17章21。Kurt Aland et al. The Greek New Testament 3rd edition, United Bible Society, Kata Loukan 17-21</ref>と述べている。

イエスの死

イエスは伝統的なユダヤ教のあり方を痛烈に批判し、神殿において、暴動を起こすなど、<ref>ヨハネ 2:13-22, マルコ 11:15-17</ref>様々な宗教批判を行った。このことは、神殿貴族であるサドカイ派に対する大きな脅威であったため、かれは政治犯として<ref>ルカ23章1-5</ref>、おもにサドカイ派の人間によって、ローマ帝国に訴えられ、十字架刑によって処刑された。

遺骸の消失

マルコ福音書』は十字架上で刑死したイエスの遺骸を、岩窟式の墓に葬ったと伝え、三日後に訪ねると、イエスの遺骸が消えていたと記している。文献学的な研究では、マルコによる福音書はこの記述で終わっており、後に記された復活の記述は後世の加筆であるとされている。(しかし、「イエスが死後、復活した」ということを明確に主張しているのは、他の福音書と変わらない。)

イエスの復活

福音書によれば、イエスは死後、三日でよみがえり、多くの弟子たちの前に姿を現したあと、天にむかって昇って行ったという。

イエスの死後

イエスの死後、弟子たちはユダヤ教の一派として教団を維持した。

Template:要出典範囲とされる<ref>Template:要出典範囲</ref>。前者は、ユダヤ戦争の結果として紀元70年エルサレム神殿が破壊されると共に姿をほぼ消し、パウロによる異邦人への伝道がキリスト教として成功して行く。地中海世界全域にイエスの教えはキリスト教として広がり、ナザレのイエスは、救世主イエス・キリストとして知られるようになる。

脚注

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参考書籍

  • 前島誠『ナザレ派のイエス』春秋社、ISBN 978-4393332894
  • 佐藤研『聖書時代史 新約篇』岩波書店 <岩波現代文庫>、ISBN 978-4006000998
  • 荒井献『イエスとその時代』岩波書店〈岩波新書〉
  • 加藤隆『「新約聖書」の誕生』講談社、ISBN 978-4062581639
  • 『口語訳聖書』日本聖書協会、1961年
  • Kurt Aland et al. The Greek New Testament 3rd edition, United Bible Society, Kata Maththaion 5-3
    • 『聖書』からの引用は、Aland のギリシア語版新約聖書による。

関連項目

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