ドラキュラ
出典: Wikipedio
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Template:Otheruseslist Template:文学 ドラキュラ(Dracula)は、イギリス時代のアイルランド人の作家、ブラム・ストーカーの恐怖小説『ドラキュラ』(1897年)に登場する男性吸血鬼(バンパイア)。転じて、現在の日本では吸血鬼一般を表す言葉としてもしばしば使われる。ドラキュラはルーマニア語で「ドラゴンの子供」「悪魔の子」という意味を表す。小説執筆時の題名は「不完全な死」という題名だった。
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概要・特色
ドラキュラとはあくまでもブラム・ストーカーの同名小説の登場人物の名前であるが、この小説本が余りにも有名になったため、現在では「ドラキュラ」と言えば吸血鬼の意味として使われることが多い。
ドラキュラのモデルは15世紀のルーマニア、トランシルバニア地方出身のワラキア公ヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)とされているが、実際のところ使われているのはドラキュラというヴラドのニックネームと、出身地が現在のルーマニアという点だけである。
近年の研究では、「ドラキュラの人物像のモデルは、シェークスピア劇で知られた舞台俳優のヘンリー・アーヴィング卿であろう」といわれている。 これは、原作者のブラム・ストーカー自身がヘンリー・アーヴィングのマネージャーであり、アーヴィングの劇団の世話人と、劇場支配人も兼ねていた。
ヘンリー・アーヴィング卿(Henry Irving)は、その名声とは裏腹に、傲慢で我侭な性格であったことが伝えられている。このため、昼夜を問わずアーヴィングに呼びつけられ、用を言い付かっていたストーカーは、精神衰弱に陥っていたと言う。
「この性格がドラキュラ伯爵に受け継がれた」というのが今の研究者達の見方である。 実際、書きあがった原作をストーカーはいち早くアーヴィングに見せている。舞台化を前提とした小説であり、アーヴィングにその提案をしたにも関わらず、アーヴィングは「つまらない」と一蹴したとされる。
このことからも「ドラキュラ」はヘンリー・アーヴィングへの当て書きである、という説はかなり有力なものである。また、ストーカーはイングランド人貴族地主による搾取が常態化していたアイルランド平民階級の出身であり、「人の生き血を吸う、滅びゆく貴族」というのは政治的にもかなり意味深な暗喩である。
小説中にはアイルランドの吸血鬼伝説及び、ドラキュラ以前に書かれた同じアイルランド人作家でトリニティ・カレッジの先輩であるシェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』(1872年)の影響が強く見られる。実際、ドラキュラの初稿では舞台はトランシルヴァニアではなくカーミラと同じオーストリアだった。棺で眠るなどもカーミラと共通で以降の吸血鬼作品のモデルになった
1920年代に、原作者未亡人、フローレンス・ストーカーから正式に版権を取得した舞台劇が上演される。
原作の中でのドラキュラはおよそ人前に出られるような容姿ではなかった。当時の舞台劇の主流は「室内劇」であり、舞台台本も原作を大幅に改編せざるを得ず、原作における冒頭のドラキュラ城のシークエンスをはじめとして、原作の見せ場がことごとくカットされた。舞台はセワード博士の病院と、カーファックス修道院の納骨堂の2場で進行する。
このため、ドラキュラ伯爵は、人の家に招かれ、人間と対話をする礼儀作法を備えざるを得なくなり、黒の夜会服を着こなす「貴公子然としたイメージ」が確立された。
ちなみに、マントの着用もこの舞台が初めてである。演出上、一瞬にしてドラキュラが消滅するイリュージョンがあり、そのために、大きなマントと大きな襟が必要だった。ドラキュラのマントの襟が立っているのは、この時の名残である。ちなみにマントの正確な着方は、襟を寝かせるものである。
このスタイルを初めて映像化したのが「魔人ドラキュラ(1931)」である。 本来は、制作サイドで独自のメイクを考案していたが、ドラキュラ役のベラ・ルゴシが、重厚なメイクを固辞し、ハンガリー訛りの英語の台詞をもって、舞台のスタイルを映画に持ち込んだのである。これが現在のドラキュラのイメージとなった。
この小説がルーマニア語に初めて翻訳されたのは1989年に共産主義政権が終わった後の1990年であり、それまで、ルーマニアではドラキュラ伯爵は無名の存在だった。ヴラド家の居城があったトランシルバニアの地元でも、吸血鬼伝説はない。ヴラド・ツェペシュは統制のために見せしめとして裏切りを行った貴族階級の家臣を、本来は平民への刑罰であり貴族階級には行われない串刺し刑を行った事から、「串刺し公」と呼ばれた領主ではあった。しかし、当時の社会情勢を考えれば、ヴラド・ツェペシュが他の領主と比べて格別に残忍だったということでもない。ヴラド・ツェペシュに関して吸血鬼に類する記録や伝説、伝承は皆無である。ドラキュラのモデルがヴラドとされていることについては、地元では、観光に利用できると喜ぶ反面、郷土の英雄を怪物扱いしていると複雑な気持ちを抱いている。
尚、ヴラドがドラキュラと呼ばれていた、及び自称していたのは事実であるが、これは単にヴラドの父が竜公(ドラクル)と呼ばれた事に起因する。竜公の息子の小竜公という意味である。(名前に「a」がつくことで、息子という意味である、よってドラクルの息子「ドラキュラ」となる)
ストーカーは恐らく、そういったバックグラウンドは知らずにこの名前の響きを気に入って吸血鬼の名前に採用したものと思われる。
キャラクター
- ドラキュラのイメージは舞台や映画、「魔人ドラキュラ」のベラ・ルゴシのイメージから、オールバックの髪型に燕尾服、赤い勲章を下げたネクタイに襟を立てたマントのイメージが最も定着している。水木しげるの漫画作品に登場するドラキュラはこのルゴシのドラキュラをモデルにしている。
- 原作小説では登場時は姿勢がよく、髭が長い老人で、中盤から若返るという設定。痩せこけた歯の鋭い不気味な姿で描かれている。1922年のドイツ映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』の伯爵は、この原作のイメージで描かれている。
プロット
新たな獲物を求めて密かにイギリスに侵入したドラキュラ伯爵に対して、その存在に気づき、これを退治しようとするヴァン・ヘルシング教授とその仲間たちの戦いを描く。物語は通常の小説とは異なり、全て日記や手紙、電報、新聞記事、蝋管式蓄音機などによる記述で構成されている。各々の記述者や叙述者の発言によって、徐々にドラキュラの企みが浮上していく構成となっている。
登場人物
- ドラキュラ伯爵
- トランシルヴァニアはカルパチア山脈に居を構える貴族。
- 彼がロンドンのカーファックス屋敷を買いたい、とホーキンズに依頼した事から物語が始まる。
- ジョナサン・ハーカー
- ホーキンズの代理としてカーファックス屋敷の買い入れを依頼された新人弁理士。
- ドラキュラ城に囚われるも脱出。しかしその恐怖体験から寝込んでしまう。
- ミナ・ハーカー
- ジョナサン・ハーカーの婚約者。旧姓マリー。
- 物語後半で伯爵に襲われるも、それを逆手にとり逆に伯爵を追い詰める。
- ルーシー・ウェステンラ
- ホイットビーで心臓の弱い母親と住んでいる女性。ミナの友人。
- 夢遊病であり、それが元で伯爵に吸血されてしまう。
- エイブラハム・(ヴァン・)ヘルシング教授
- ジャック・セワードの恩師。ルーシーの治療を頼まれたアムステルダム大学名誉教授。
- ルーシーの衰弱が吸血鬼の仕業だといち早く気づき、対策を練る。
- アーサー・ホルムウッド(ゴダルミング卿)
- ルーシーの婚約者の男爵。セワード、モリスとは親友。
- ジャック・セワード
- カーファックス屋敷の近所の精神病院の院長。ルーシーの求婚者の一人。
- ルーシーの病変に恩師ヴァン・ヘルシング教授の助けを求める。
- キンシー・モリス
- 北米テキサス州の大地主。ルーシーの求婚者の一人。
- レンフィールド
- セワードが院長を務める精神病院の患者。蝿、蜘蛛、鳥などを食べ、その命を奪うという独自の観点を持つ。
映画
- 魔人ドラキュラ(Dracula、1931年)ベラ・ルゴシ
- 吸血鬼ドラキュラ(DRACULA、1958年)クリストファー・リー
- ドラキュラ(Bram Stoker's Dracula、1992年)ゲイリー・オールドマン
- ヴァン・ヘルシング(VAN HELSING、2004年)リチャード・ロクスバーグ
人名は、ドラキュラを演じた役者名
関連作品
- シャーロック・ホームズ対ドラキュラ(L・D・エルスマン)ISBN 978-4-309-46098-7
- ドラキュラ紀元(キム・ニューマン)
- ドラキュラ戦記(キム・ニューマン)
- ドラキュラ崩御(キム・ニューマン)
- 髑髏検校 - 横溝正史の小説。舞台を江戸時代に置き換えた翻案。
- 悪魔城ドラキュラ - テレビゲーム。作中に登場する魔王の名前が「ドラキュラ」。直接出演しているわけではないが、キンシー・モリスの名が人物設定に取り込まれている。
- 吸血鬼ハンターD - 菊地秀行の小説。作中で「神祖」と呼ばれる最上級の吸血鬼の名前が「ドラキュラ」。
- HELLSING - 平野耕太の漫画。ヴァン・ヘルシングの子孫が登場する。主人公のアーカードはドラキュラの後身という設定である。
- 怪物くん - 藤子不二雄Aの漫画。口癖が「ざます」で、血液の代わりにトマトジュースを愛飲する怪物ランドから派遣された怪物くんの世話係でドラキュラ似の召使が登場。
- お化けのサンバ - ドラキュラ役-佐渡稔
- ドン・ドラキュラ
- バレエ「ドラキュラ」(フィリップ・フィーニー)
- ドラえもん - 105話 ドラミュラ
ドラキュラの登場する作品
「吸血鬼を題材にした作品の一覧」も参照。
関連項目
外部リンク
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