トンネル効果

出典: Wikipedio


トンネル効果(トンネルこうか、Quantum tunneling)は、非常に微細な世界にある粒子が、古典的には乗り越えることができないポテンシャルエネルギー)障壁を、量子効果すなわち、時間とエネルギーとの不確定性原理により乗り越えてしまう(透過してしまう)現象。量子トンネル効果ともいう。

概要

高い壁の向こう側に、手に持っているボールを投げる場合を考える。普通であれば、その壁を越える高さまでボールを投げる事が必要になる。つまり、壁の高さに相当する位置エネルギーよりも大きな運動エネルギーを、ボールに与える必要がある。ボールをどんなに高く投げても、壁の高さには及ばない程であれば、その壁は「古典的には乗り越えることができないポテンシャル障壁」となる。

しかし量子力学の世界においては、ボールを壁の高さまで投げる事ができないのに、ボールを壁の向うに投げる事ができてしまう。さながら壁にトンネルが生じて、そのトンネルを通ってボールが壁をすり抜けるようだという事で、これをトンネル効果という。

1928年ジョージ・ガモフ原子核におけるアルファ崩壊をトンネル効果により説明した。

これは、粒子の波動関数ポテンシャル障壁の反対側まで染み出してしまう事による。量子力学では粒子は同時に波としても扱われる。波であれば、壁の向う側にも振動伝達によって届くのである。壁の向こう側にボールを投げる事はできなくても、壁の向こう側に声を届かせる事はできる。これは声は音波という波だからである。だから粒子を波と見なせる場合、粒子もまた壁を越える事ができる。

だが、現実としては、壁の高さ以上に投げる事ができないボールを、壁の向こうに投げる事は不可能である。これはトンネル効果が、「ポテンシャル障壁を越えるのは何%」という確率で表されるものだからである。ボールが壁を越えるには、ボールを構成する何億、何兆…という素粒子が、全てポテンシャル障壁を越える事が必要である。その確率はゼロでないにせよ、限りなくゼロに近い。(より正確に言えば、ボールは量子の波ではないから、ボールがボールのまま壁を通り抜ける可能性は完全なゼロである。一方、ボールがいったん量子に分解し、量子の波となって壁を越え、そのあと量子の波が壁の向こうでボールに再結成する確率は、限りなくゼロに近い。それはおおむね、真空中に突然ボールが発生する確率に等しい。)

よって、我々が日常見る事のできる物については、トンネル効果は無視できる(巨視的トンネル効果という話題もある。詳細は該当項目参照)。しかしながら半導体集積回路を流れる電流を扱う場合などにおいては、このトンネル効果が無視できない。よって、我々が日常使っている電化製品、電子機器もトンネル効果と深くかかわっており、そういった意味で我々の日常生活にも影響している。

トンネル効果の応用例としては、走査型トンネル顕微鏡(STM)や、電子デバイス(エサキダイオードフラッシュメモリSEDなど)など、多数存在する。

逆に集積回路の微細化によるリーク電流増加の原因ともなる。

関連項目

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