サイドカー

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プライバシー・ポリシー Wikipedioについて 免責事項 Template:Law サイドカーSidecar )とは、オートバイ自転車などの二輪車の横にもう一輪の車輪を取り付けた、変則的な三輪車、あるいはその横に取り付ける部分のことを言う。側車とも呼ぶ。本項では、サイドカータイプのトライクについても記述する。

- 本来サイドカーのオートバイ部分を「本車」というが、特定車種の代名詞も「本車」と表現するため、本項ではオートバイ部分を便宜的に「単車」「単車側」と表現する場合もある。 [[ファイル:NSUmaxBeiwagen.jpg|thumb|right|300px|オートバイは「NSU Max」、サイドカーは「バイワーゲン」製のもの。サイドカー&オートバイとしてはオーソドックスな組み合わせのうちのひとつ。]] thumb|right|300px|貨物運搬用の側車付き自転車

目次

歴史

四輪自動車がまだ高価で一般大衆に高嶺の花であった時、オートバイや自転車は実用的で手軽な足として使われていた。しかし、それらは大きな荷物を運ぶに適さず、また安全に多人数が搭乗することもできなかった。そこで、オートバイや自転車の横にもう一輪の車輪を取り付けたサイドカーが考案された。

日本語でサイドカーのことを「側車」、オートバイのことを「単車」と呼ぶが、それは黎明期にはサイドカーは現在よりももっと一般的であり、「サイドカーがついていないオートバイ」を区別して単車と呼んだ名残りである。

サイドカーの発祥は、19世紀初頭のヨーロッパ(イギリス・フランス)である。当初、サイドカーは「スリーホイラー(three wheeler)」とも呼ばれ、その名の通り、現在のトライク(trike)に相当する三輪オートバイのようなものが原型で、利便性と荷物の可搬性などをオートバイとして追求した結果、現在知られる形に落ち着いた(つまり、当時は「サイドカー」という別車種の認識ではなく、トライクの一種という認識であった)。

その後、メジャーな存在になるにつれて、サイドカーに豪華な馬車風の屋根付き側車を付けたものが登場したり、他、トラックの荷台のようなものや、コンテナを積んだもの。家族でドライブ(今で言うツーリング)やピクニックに行く光景や、商売でたくさんの荷物を運送する光景、側車が露天屋台になっている物などが日常の光景として見られるようになり、その利用形態を色々と試行されながら発展していった。当時のサイドカーは、“庶民の手軽な乗り物”、すなわち現在の軽自動車に相当する地位にあったといえる。

第一次世界大戦から第二次世界大戦初期にサイドカーの性能は頂点に達し、特にナチス・ドイツは、第一次大戦敗戦後、ヴェルサイユ条約ワイマール共和国体制の影響で、それまで軍事利用可能な車両生産に規制があったため、軍用四輪自動車が慢性的に不足していた。その四輪自動車の数量不足を補うために生産コストが安く、3名の兵員を輸送できるサイドカーを積極的に採用し、偵察や、兵員輸送に多用し、BMW-R71型やBMW-R75型、ツェンダップKS750型という後世に名を残すいくつかの名車を生んだ。ソビエト連邦でも、先の BMW のコピー、IMZ-M72を生産し、多用した。

このように、モータリゼーション黎明期、サイドカーは荷物や人の輸送に役立ち、戦場でも同様な役割を演じた。その後、ジープキューベルワーゲンシュビムワーゲンなどの大量生産できる軍用四輪自動車が登場した。第二次世界大戦後、それらの生産技術が民需に転用され、安価な近代四輪自動車が一般大衆市場に出回るようになった。特に1955年、小型乗用車「BMC ミニ」の登場で安価な小型乗用車が大ヒットし、その余波を受けてイギリスのサイドカー需要は大幅に縮小していった。

日本においては、1937年に始まる日中戦争時に中国戦線に投入された側車部隊が、未舗装道路が多いためにうまく運用できず、サイドカーに対して便利な印象をもたれていなかったが、第二次世界大戦終戦後、GHQによる四輪自動車生産規制により、1950年頃まで事実上の四輪自家用車の製造が規制されていた状態にあったため、比較的規制が緩やかであった三輪自動車やサイドカーが安価な国民の乗り物として一気に普及した時期があった。その時代、サイドカーは非常にポピュラーな乗り物で、日本中にサイドカーを製造するメーカーがあったが、GHQの規制撤廃後、四輪自家用車の製造、特に軽自動車製造の気運が一気に高まり、諸外国同様に、後の日本の国民車とまで喩えられたスバル360に代表される安価な軽自動車の登場によって、サイドカー市場は一気に縮小し現在に至っている。

日本などの先進国においては、サイドカーに日常生活的実用性を求める需要の方は大幅に縮小したが、独特の操縦性やオープンエア感覚などもあり、希少性が増すにつれて非常に高価な乗り物が主流となっているが、趣味性の強化と相まって今日においても根強いファンが存在する。ただし、必ずしも高価なものばかりではなく、安価で購入可能なサイドカーも日本でも存在し、ウラルサイドカーや長江サイドカーのようなマスプロダクションモデルで製造されているもの(これらのサイドカーは生産国でもまだ一般的な乗り物であり量産モデルとして安定供給でき、結果安価で供給できる状態となっている)や、中古であれば日本製の最新ソロバイクの新車程度かそれ以下の価格でも購入可能となっている。

形態

側車タイプ

一般に、オートバイの左右どちらかの横にもう一輪の車輪を置き、オートバイとその追加された車輪との間をフレームで結び、オートバイとその車輪との間に乗車用スペースあるいは荷物用スペースを設置する。

  • 乗車用スペースが置かれる場合、その乗車用設備の外装のことを、「舟」あるいは「カー」と呼び、対してオートバイを「本車」と呼ぶ。オートバイの右側に舟があるものを「右カー」と呼び、左側にあるものを「左カー」と呼ぶ。また、サイドカーが付いていない状態のオートバイを「ソロ」または「単車」と呼ぶこともある。
  • 舟を取り付ける側は、一般に右側通行の国ではバイクの右、左側通行の国ではバイクの左である(四輪車の運転席と同じ側にオートバイが来るようにする)。パレードなどに使われる儀仗用のものの場合、左カーと右カーを対照的(シンメトリー)に配置して並走することもある。
  • 側車にて複数輪存在するものも『道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(2005年6月1日)』<ref>Template:PDFlink</ref>において、「イ 直進状態において、同一直線上にある2個の車輪及びその側方に配置された1個(複輪を含む。)又は2個(二輪自動車の片側の側方に備えたものに限る。)の車輪(以下「側車輪」という。)を備えた自動車」となっていることで、側車付二輪自動車として認められている。道路交通法上は外見上「複数車輪の側車付き自動二輪」であっても、
    • “側車部分を外しても走行できる”構造(単車側一輪駆動)のものは、「自動二輪」とされ、運転するには該当する自動二輪免許が必要。
    • “側車部分を外しては走行出来ない”構造(単車側と側車による二輪駆動、および単車側一輪駆動でも駆動輪の単車側後輪がオフセット<ref name="bunrui">駆動輪での分類【サイドカ-】</ref>)のものは、「普通自動車」の扱いとなり、運転には普通自動車免許が必要。

一体型タイプ

「オートバイの車体+サイドカーのフレーム」という独立構成ではなく、全体をサイドカー専用設計としたものもある。オートバイとサイドカーという概念ではなく、レーシングニーラーのように一体でデザインされている。代表車種:クラウザー・ドマーニ等。

運転時、普通自動車免許が必要な車種(メガゼウス等)は、現在の日本の法律ではトライクになる。

二輪駆動タイプ

サイドカー側の車輪も駆動し、特に荒地での走行性能の向上を目指したものがある。一輪駆動車に比べて、挙動変化が穏やかになるが、逆にカーブは切り難いと言われている。現在の日本の法律では、二輪駆動車はトライクに属することになった。

フルタイム型・パートタイム型が存在し、両方とも単車単独での走行が不可能な構造であるため、免許区分は普通自動車免許以上の四輪自動車免許でなければ運転できない。二輪免許では不可である。

主なモデル
  • 陸王九七式側車付自動二輪車」。日本製。
  • ウラル」スポーツマン750(パートタイム)は、二輪駆動モデルが現在も日本代理店で新車販売されている。スポーツマン650(フルタイム2WD)は生産終了となった。ロシア製

thumb|right|200px|現在、一般的に現存する二輪駆動サイドカー車種の一種「ウラル(フルタイム2WD型)」

  • ドニエプル」ウクライナ製
  • 「サイドバイク・メガゼウス」(フルタイム2WD)
  • BMW・R75」旧ドイツ製 生産終了
  • 「AWO-700」旧東ドイツ製 生産終了
  • 「ツュンダップ・KS750」ZÜNDAPP 生産終了

パートタイム型のサイドカーの場合、二輪駆動と一輪駆動を切り替えるようになっている。ディファレンシャルギアは装備されていないため、サイドカーの中ではかなり高い不正地踏破性を持っているが、逆に舗装路で2WD走行をすると大変曲がりにくく、タイヤを磨耗させたり、駆動機関部を破損させる恐れがある。したがって舗装路では一輪駆動にしなければならず、一輪駆動車と同等の運転技術が必要になる。「デフなし」と呼ばれることもある。

フルタイム型の場合、ディファレンシャルギアが装備されているので、パートタイム型のような二輪駆動走行特性が劇的に改善される。これにより、運動特性は一輪駆動サイドカーと三輪バイク(トライク)の中間的なもの、もしくは一輪駆動サイドカーとデフなし二輪駆動サイドカーの中間的なものになる。

二輪操舵タイプ

サイドカー側の車輪もしくは本車側後輪を操舵し、走行性能の向上を目指したものが、ごくまれにある。一輪操舵車に比べて、カーブが切り易い。また、側車輪が複数ある場合には、前側輪が操舵されるのが普通である。

現在の日本の法律では、サイドカー側の車輪を操舵するものを特別に区別してはいない。サイドバイク製コメット、メガコメット、コマンチ、キルノス、ルネッサンスは、二輪免許にて運転可能。本車の後輪を操舵するタイプは四輪免許にて運転可能。

特徴的な構成部品や機構

アールズフォーク

単車標準のテレスコピックフォークに比べて、危険な前転につながる制動時のノーズダイブを抑える方向にブレーキの力が作用すること、ハンドルの重さが解消されやすいこと、ホッピング現象を解消できること、特に重量車・高速車・オフロード車では好んで用いられる。もともとテレスコピックフォークは横方向の大きな力を受けることを想定して作られていない、という事情もある。

  • 注)テレスコピックフォークでサイドカー構造を製造すると、サイドカー自体がハングオン走行が出来ないがゆえに、横の加重がかかることで、フォークが瞬間的に歪曲してしまう現象が起こる。この現象が起こった際に、タイヤに障害物が当たった場合、フォークのサスペンションが歪曲してしまうがゆえにサスペンションが瞬間的に伸縮しなくなり、衝撃をサスペンションが吸収できなくなる。そうすると車体はタイヤに充填された空気によって衝撃の反発が起こるため、タイヤがボールのようにボンボンと跳ねてしまう現象が起こる。これが非常に危険な「ホッピング現象」と呼ばれるものである。サイドカーでこのホッピング現象が、カーブで起こると、回復不能な横転や、前転といった予測不能な操縦障害を起こす場合がある。アールズフォークは、この横加重にもフレキシブルに反応できる構造になっているので、ホッピング現象は起こらない。

ステアリングダンパー

サイドカーの代表的なトラブルとして、ハンドルの振れ(自励振動)がある。これはオートバイ単体の立とうとする力とサイドカーが遅れたり早まったりする力がうまく均衡しないために起こる。この不均衡から生じる振れをなくすには各種のコツがあるといわれ、ステアリングダンパーはそのうちのごく初期の振れをおさえる装置。大きな振れは手やダンパーでは抑えられない。この場合、強いダンパーの取り付けは疲労破壊につながるため、側車セッティングの見直しが必要となる。

サブフレーム

本車のフレームを補強するフレーム。旧来の過剰な強度のフレームを持つオートバイは、側車を付けてもフレーム強化が必要なかった。近代の車種では、メーカーの設計・加工技術が進んだことで、フレームは必要最低限の強度しかない。そのため、側車を付けるためにはほぼ全ての車種でサブフレームが必要になっている。

バック装置

サイドカーはオートバイ単体よりも重量があり、乗車したまま人力(片足)での後退が困難である。そのため、本車のトランスミッションにバックギアキットを取り付けたものも珍しくない。大型のバッテリーが積載できるために、側輪にバック専用のモーターを取り付けたものもある。重量級の高額な単車の中には、新車からバック装置が組み込まれているものもある。一体型のサイドカーでは、バック装置は標準的な装備になっている。 しかし、降車して前方から押すことで、わずかな勾配なら意外に楽にバックができる。また車検で、装備の有無は関係がない。

サイドカー用タイヤ

オートバイ用タイヤを用いたサイドカーで長距離を走行すると、必ずタイヤの中央のみがすり減る。このため旧来からサイドカー専用に、フラットなトレッドを持つタイヤが海外メーカーから発売されている。しかし入手が難しく価格も高い。メーカー、サイズラインナップともに少なく、日本で入手可能なものは3.50-19が1社、4.00-18が1社、3.50-16が1社、125R15が1社のみ。いずれもチューブタイプであり、サイズ的にも近代の本車には対応できていない。

そのため、おもにオートバイ用、自動車用のタイヤが用いられる例がしばしばある。オートバイ用のメリットは、接地部分が少ないため舵とりやカーブ走行が軽い、燃費がよいこと、価格が安いこと、などがある。自動車用のメリットは、タイヤ中央部のみの減りがなくなりタイヤの寿命が延びること、価格が安いこと、などがある。

また、設計段階でタイヤ(ホイール)直径を本車オリジナルよりも小さくして、低重心化とトルクアップを図ることがある。これをインチダウンと通称している。低重心化はコーナリング性能に貢献し、トルクアップは駆動系・機関系への負担を軽減し、アクセルレスポンスがよくなることで走行が軽快になる傾向がある。

走行特性

一般的な左右対称形状の乗り物は左右のどちらにコーナリングしても似たような挙動となるが、サイドカーは左右が完全に非対称形状の乗り物であるため、操縦性も左右カーブでも加速減速でも挙動が異なるという、他の乗り物にない非常に特殊な特性になっている。

それにより、サイドカーの運転は通常の二輪車で養った運転感覚がまったく通用しないため注意が必要であり、片側に大きな質量を抱えているため、まっすぐ加速・まっすぐ減速するには理屈を理解した上での技術が必要である。単純にバイク感覚で乗ったり、幅があり足を着かなくて良いからと四輪自動車感覚で乗ったりすると、大変な目に遭う。基本的にサイドカーは単車でも四輪車でもなく、常に転倒の可能性がある三輪車という別の乗り物だと認識して乗る必要がある。これらの違和感に慣れるには、そう長い時間はかからない。

特性を踏まえた運転方法

加速と減速の特性

  • 加速する時:側車輪が駆動輪より必ず回転が遅れるため、側車側にハンドルを取られる。登りではこの傾向が強くなる。
  • 減速する時:ブレーキをかけた後輪よりも、慣性の影響で、側車側の車輪が必ず遅れて減速するため、側車のない側にハンドルを取られる。下りではこの傾向が強くなる。充分減速するまでは後輪ブレーキのみを使う。これは前輪も惰性回転させることで、側車側の運動エネルギーを同期相殺することと、前転防止のためである。とっさに右手でブレーキをかけてしまわないように、よく練習する必要がある。側車輪にブレーキがあると、減速時の挙動変化は穏やかになる傾向がある。

これらの挙動は、調整などによって多少は軽減できるが、全くなくすことはできない。一輪駆動車は強く、二輪駆動車は薄れる傾向がある。

カーブの特性

サイドカーは通常の二輪車のようにコーナリング時に体重移動で車体を斜めにして重力で遠心力を打ち消して曲がることが出来ない。サイドカーのコーナリングは、自動車のように、ハンドル操作で生じた遠心力で外側に傾く。自動車では車輪が浮きもしないが、サイドカーでは側車輪か後輪が浮いてしまう。特に後輪が浮けば操縦不能になり、浮きが強ければ一番危険な前転事故になる。

基本的にはバイクのハングオフ(俗称:ハングオン)のような体重移動をしたうえに、それだけではステアリングが切れてくれないため、自分で外側ハンドルを強く押してステアリングさせる。この基本操作だけでとりあえずカーブ走行はできる。

  • 本車側に旋回する場合は、平地ではここまでの操作は必要としないが、下りでは必ず上記の基本操作を行うべきである。重心を内側にしておけば、不測の事態になんとか対応できる。上級テクニックとして、これに後輪で減速操作を加え、よりクイックにカーブする方法がある。
  • 側車側に旋回する場合は、カーブに入るまでに後輪ブレーキで充分スピードを落とし、内側に腰を落としてからハンドルを切る。スピードを出し過ぎていると簡単に側車が地面から浮き上がり、回復不能な片輪走行となり最悪転覆事故となる。アクセルを開けて加速し、側車に乗りかかるように体重移動を行えば、側車側にハンドルが振られるのを利用して円滑にカーブできる。
    • 側車が旋回時に浮いてしまう片輪走行現象は、サイドカーの構造的宿命で、側車側の重量は意外に軽く本車側に重量が偏っているために起こる。従って、ベテランドライバーでもこの現象は頻繁に体験し、側車を浮かせながら曲芸的テクニックでカーブを曲がっていくことも珍しくはない。
      • サイドカー初心者中級者が乗る場合、側車のトランクや側車座席後部に、30kg~40kg程度の重りを積む方法もある。手軽に入手できる物として、ホームセンターで売っている園芸用砂袋や、床用コンクリートブロック等がある。これはベテランドライバーでも、一人で長距離ツーリングする際は事故防止のために普通に行っている。オーナーによっては、側車の底部フレームに重い鉄管や鉄板を溶接固定している。しかし逆に加減速の挙動は大きくなってしまうので、積みすぎには注意が必要。
      • かつての大戦中のサイドカーは、側車側にやたらと荷物装備(軍用BMW-R75型などの側車へ金属製サイドボックス2個・大型燃料ジェリ缶・飲料水タンク・軽機関銃+兵員)を積んでいる。
      • 中国の宝鳮消防機材CBM510には、側車後方に消防ポンプを積載している。
      • 極端な例として、メガゼウスは安定性の確保のために、最重量物であるエンジンを側車後部に積むことで良好な重量バランスを得ており、無茶をしなければ側車輪は浮かない(ディファレンシャル付二輪駆動で二輪操舵の影響も大きい)。

初心者が身につけるとよいこと

  • 急加速をしない - 思わぬ方向に曲がって走り出すため。
  • 急減速をしない - ブレーキをかけた瞬間に思わぬ方向に突然曲がって行くため。
  • 前輪ブレーキを使わない - 前転や転覆の危険が増すため。
  • カーブで体重移動をする - 重心を内側の低いところへ移動して前転や転覆を避けるため。
  • カーブに入るまでに十分減速しておく - カーブでの速度過大は転覆につながる。

逆にこれらの行為を、安全な場所で熟練者の指導のもとで試して限界を知っておけば、割合早く安全な走行ができるようになる。

二輪駆動車の特性

側車側の車輪も駆動するフルタイム2WD、パートタイム2WDタイプでは、上記のような左右の挙動変化が穏やかになる傾向がある。

  • フルタイム二輪駆動の場合、側車側の車輪にも、駆動輪と同様の駆動力を伝えることができ、ディファレンシャルギアが装備されているので、一輪駆動車のような特性が劇的に改善される。これにより運動特性がより四輪車に近いものになる。
  • パートタイム型のサイドカーの場合、二輪駆動と一輪駆動を切り替えるようになっている。ディファレンシャルギアは装備されていないため、不正地走行はデフつき2WD以上の踏破性を持つが、ディファレンシャルギアのない二輪駆動で舗装道路で2WD走行をすると、曲がりにくくなり、タイヤを磨耗させたり、駆動機関部を破損させる恐れがある。このため舗装路面では、一輪駆動で走行しなければならず、通常の一輪駆動車と同等の運転技術が必要になる。
  • この二輪駆動型も基本構造は単車単独での走行が不可能な構造であるため、免許区分は普通自動車免許以上の四輪自動車免許でなければ運転できない。二輪免許では不可である。

実用性

こういった特殊な操縦特性があるため、先進国では、現代の進んだ車両と比較して、日常生活での実用性の点で今日ではいまひとつであり、趣味性がクローズアップされる乗り物となっている。

  • 四輪自動車を買うことが高価な一部の国では、市民の重要な足としてサイドカーが現在でも実用されている。
  • 軍隊や警察組織などではその小回りの利く高い機動性と二輪車では不可能な運搬性能が重宝され、斥候用や、要人車両警護用など、そのような組織でも頻繁に使用されている。
  • 二輪車独特のオープンエアー感覚から離れたくない身障者にも、サイドカーは愛用されている。これは二輪と違って足を着く必要がないこと、車椅子のまま乗車するもしくは車椅子を折りたたんで積載する面積が確保しやすいこと、サイドカー自体がオーダーメイドの性格が強いためにサイドカーショップ自身がユーザーの志向を実現させることに慣れているためである。また、四輪自動車をベースにするよりも維持費や改造費が安いといったメリットがある。
    • 身障者の運転免許の取得は近年先例も増え、単車側に乗り込み操作する場合は二輪免許で、側車側に乗り込んでそちらから運転操作をする構造にした場合はトライク扱いで四輪免許になる。いずれも試験場に車両を持ち込んでの受験になる。
    • 50cc以下のサイドカーも、後述のように条件によって必要な免許が異なる。原付扱いの条件を満たした車両で本車側で操作する構造の場合、改造車両とセットで適性検査に通れば筆記試験だけで原付免許が取得・運転可能となっているが、側車側で操作する構造の場合はトライクに相当するミニカーとなり、運転には普通自動車免許が必要になる。

大きさ

「オートバイ+α」と受け止められて小さなものというイメージがあるが、実際には一般的な5ナンバー乗用車(車幅は1700mm以下)などより幅が広い物も多い、かなり大柄な乗り物である。

スポーツ

サイドカーは、モータースポーツにも使われる。

一般にオートバイの操縦者は「ライダー」と呼ばれるが、モータースポーツ用サイドカーは必ず2名乗車で競技が行われるため、操縦者を「ドライバー」、同乗者を「パッセンジャー」と区別して呼び、「ライダー」の呼称は用いられない。サイドカーを用いるモータースポーツはコーナリングの際にパッセンジャーの体重移動が通過速度に大きく影響するなど、「ドライバーひとりで操縦するものではない」といえる。ドライバーとパッセンジャーそれぞれが高い技術を持っていることのみならず、2名の呼吸がうまく合っていることが競技の好成績に直結する。これは、ラリーパワーボートレースなどとも共通する要素であり、1名乗車で競われるモータースポーツが多い中で特徴的である。

thumb|right|レース用ニーラーサイドカー ロードレースに相当するものとしては、ニーラーと呼ばれる非常に車高が低い特殊なサイドカーを使ったものがある。ニーラーは、オートバイとサイドカーが、フレームやカウリング(風除け)なども含めて一体でデザインされたものとなっている。通常のオートバイとは異なり、ドライバーおよびパッセンジャーのいずれもがひざで体重を支えるような乗車姿勢をとる。ニーラーの由来は、ニー(ひざ)である。

thumb|right|モトクロス用サイドカー モトクロスに相当するものとしてサイドカーモトクロス、トライアルに相当するものとしてサイドカートライアルがある。車体はニーラーに比べオートバイの原型を残している。

日本における法律的要件

thumb|right|200px|輪距・車幅の広い(460mm以上)トライク・サイドカー等の免許区分図説 自動二輪車にサイドカーを付けた場合には、道路交通法上は自動二輪車に準ずるものとして扱われ、運転免許には排気量相当の自動二輪車免許が必要となる。高速道路も含めて種々の二人乗り規制は一定の条件下で全て適用除外となる。

オートバイ・自動二輪車のサイドカー

道路運送車両法上では、側車付二輪自動車(側車付の二輪の自動車)として扱われ、排気量250ccを超える車両は小型二輪自動車の扱いとなる。車検証の車体の形状欄は、「側車付オートバイ」となる。

「側車付オートバイ」のトライクについて

一輪しか駆動させないサイドカーでも、通常の自動二輪扱いでないものもある。サイドカーと車体を分離したとき、駆動輪がオフセットしている<ref name="bunrui"/>など、オートバイとして単独で運転できない車両については、別名サイドトライク・サイドトライカーなどとも呼ばれ、トライク同様の扱いとなり二輪免許では運転できず普通自動車免許以上の四輪自動車免許が必要となる。以前は車検証の車体の形状欄で「三輪幌型」とされて乗用扱いで7ナンバーが付けられていたが、現在は「側車付オートバイ」の一種になった。トライク扱いになったいきさつはOTO(市場開放問題苦情処理体制)サイト「二輪自動車の基本構造を有する三輪自動車の分類の法令による明確化」<ref>二輪自動車の基本構造を有する三輪自動車の分類の法令による明確化</ref>を参照。

  • 二輪駆動(2WD)の場合:二輪を駆動させるサイドカーは「フルタイム型」「パートタイム型」共にトライク扱い。ウラル型2WDサイドカーはこれに該当。
  • 二輪操舵の場合:本車の後輪を操舵できる場合はトライク扱い。
  • 一体型の場合:設計時点から一体構造で、二輪のオートバイ構造ではないためトライク扱い。
    • 例外:この基準があてはまらない車種も存在する。「クラウザー・ドマニ」はフレーム構造があきらかに単車単独で走行不可能なオート三輪自動車構造でありながら、自動二輪免許が必要になる。これはメーカーや日本の代理店が自動二輪免許で運転させるように官庁へロビー活動をした結果で、その主張は、「ドマニは他のサイドカーほどハンドルの稼動半径が広くなく、旋回半径も大きい小回りのきかないサイドカーで、レーシングニーラーのサイドカーに性質が近いため、バイクの操縦感覚のない四輪自動車免許しか所持していないドライバーが乗ると危険であるため」という。元は官庁の主張ではないが、これを受けた形で正式な二輪車認定車種になっている(未だ議論はある)。
      • なお、トライク構造の「側車付オートバイ」が明確に規定されたのは、ドマニの二輪車認定よりもかなり後の1999年で、その以前は長い間「二輪ナンバー=二輪免許」の分かりやすい時代だった。しかし、「ジュネーブ協定による国際道路交通条約」や、その他国際免許の運用の関係上、北米などの多くの国や州で、特定の条件の三輪自動車、特にサイドカー(1WD・2WD問わず)が、日本の普通自動車免許以上の四輪車免許に相当する免許で運転できる国が多いため、日本の場合、道路交通法においてその整合性をとるため、トライク型サイドカーの運転免許に限り、このような法規形態になっているという事情がある。
      • トライク扱いの一部車種にて免許区分の見直しが進められており、車輪接地点幅が460mm未満の可倒式3輪車(おもにピアジオMP3)において、2009年9月1日より必要免許が普通→二輪へ区分変更される(詳細はトライク#トライクタイプの二輪車についてを参照)。

特殊な構造のサイドカーを購入・発注する際は、所持免許を明らかにした上で販売店やメーカーなどに相談することを推奨する。

軽二輪のサイドカー

道路運送車両の保安基準の要件を満たした車両について、排気量50ccを超え250cc以下の場合は道路運送車両法上において「側車付軽二輪」として扱われ二輪の軽自動車の扱いとなる(排気量50cc超~125cc以下において、三輪の車両では原付二種に該当しない)。高速道路の通行が一定の条件下で3人乗りも含めて可能となる。

50cc以下のサイドカー

50cc以下・一軸駆動で二輪の原動機付自転車にサイドカーを付け、道路運送車両の保安基準要件を満たした場合には、登録も原付、免許も原付で一人乗り、法定速度は30km/hのままである<ref name="kana040518">『車いすで風感じて』 神奈川新聞 2004年5月18日、サイドカーで車椅子利用の原付・二輪免許受験が可能に</ref><ref>昨今、誤った解釈が広く周知されており、その間違いの原因は法律でいう三輪の「輪距」(車体中心線に対称な同軸・同径の車輪の中心間の距離)が0.5mを超えれば「ミニカー」登録というものであるが、サイドカーは法的に三輪ではなく二輪車という大前提があり、車体中心線に非対称な同軸・同径の車輪となってしまうため「輪距」は存在しないことにより、原付でもサイドカーは成立する。</ref>。乗車定員が1人と定められているため、運転者以外の乗車出来ない。貨物積載は、積載物重量制限の範囲内で30Kgまで可能。ただし、側車で操作可能な車両において側車側に乗って運転する場合は「側車を外して二輪車走行できない構造」に該当するため、普通自動車運転免許が必要となる<ref name="kana040518"/>。

自転車のサイドカー

自転車にサイドカーを付けた場合も、法令の規制により軽車両は乗車定員が1人と定められている。但し、昨今の「子供乗車用3人乗り自転車の対応」のため、専用に作られた側車付自転車の場合は、この限りではない事もある。[1]

サイドカー・メーカー

新車で入手可能なメーカー

  • MZ(ドイツ)<ref>MZ</ref>
  • ハーレーダビッドソン(米国)
  • Watsonian-Squire(英国) 創業1912年 <ref>Watsonian-Squire</ref>
  • ウラルモト(旧IMZ)(ロシア) BMWレプリカ
  • Izhmash(ロシア・カラシニコフ小銃のメーカーとしても有名) BMWレプリカ
  • KMZ(ウクライナ) BMWレプリカ
  • 長江 (サイドカー)(Chang Jiang Motorworks)(中国) BMWレプリカ
  • サイドバイク(フランス) - ブランドは メガゼウス。メガゼウスサイドカーは、側車側にエンジンが搭載されており、単車側は、単に「単車の形をしたコクピット」のような乗り物なので、見た目の形態はサイドカーではあるが、厳密な意味でのサイドカーに分類するかどうかは議論がある。
  • クラウザー(ドイツ) - 恒久的な生産ラインは可動しておらず、完全受注で生産を行う可能性が無いとは言えないが、主要パーツの絶版によって既に入手はほぼ不可能。

歴史的なメーカー

脚注

Template:脚注ヘルプTemplate:Reflist

参考文献

  • Janusz Piekaliewicz(第二次世界大戦のBMW R12とR75) : Die BMW Kräder R12/R75 im Zweiten Weltkrieg, Motorbuch Verlag, 1977, ISBN 3-87943-446-8

関連項目

Template:オートバイの形態br:Side car ca:Sidecar cs:Postranní vozík de:Motorradgespann en:Sidecar es:Sidecar fr:Side-car it:Motocarrozzetta nl:Zijspan pl:Motocykl z bocznym wózkiem pt:Side car sv:Sidvagn

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