クラスター爆弾

出典: Wikipedio


thumb|250px|クラスター爆弾 (CBU-87/B) クラスター爆弾(クラスターばくだん)とは、容器となる大型の弾体の中に複数の子弾を搭載した爆弾である。クラスター弾集束爆弾(しゅうそくばくだん)とも呼ばれ、昔は親子爆弾とも呼ばれた。

目次

定義

2008年5月28日ダブリンで行われた「クラスター弾に関する外交会議」(Diplomatic Conference for the Adoption of a Convention on Cluster Munitions)で採択された「クラスター弾に関する条約」(Conventions on Cluster Munitions)第2条で、クラスター弾の定義は次のように定められた。

概要

thumb|150px|古典的な収束爆弾の一種であるソ連軍の「モロトフのパン籠」と、内蔵する小型焼夷弾を手にしたフィンランド兵 主に航空機や地対地ロケット弾砲弾などに搭載される。通常の空対地爆弾とほぼ同サイズのケースの中に、小型爆弾や地雷で構成される数個から数百個の子弾を内蔵する。このケースが発射、投下の後に空中で破裂することで子弾を散布し、多数の小規模な爆発を引き起こすなどして広範囲の目標に損害を与える。多数の小型爆弾で、人的被害や、あまり強固ではない建造物、装甲の薄い兵器に対して広範囲の被害を狙うものと、少数の対戦車誘導爆弾を搭載して機甲部隊への打撃を狙うものがある。対人地雷を子弾とする場合、オタワ条約の規制対象となる。

フィンランドにおける冬戦争では、ソ連空軍が、空中で回転しながら遠心力で60発の小型焼夷弾を散布する収束爆弾コンテナを実戦で使用している。また第二次世界大戦中のドイツ空軍は対人馬用収束爆弾として、重量2kgの小型爆弾SD292発をコンテナに収容したものを運用。アメリカ陸軍航空軍ドイツ軍がロンドン爆撃で使用した焼夷弾を参考に開発した、38ないし48発の焼夷弾をコンテナに収容し高度 700 m で爆散させ、高密度に焼夷弾を降らせる集束焼夷弾E46を日本への空襲に使用している。

ベトナム戦争においては、爆弾本体に野球ボール大の子爆弾を300個ほど内蔵し、その子爆弾ひとつの炸裂で600個ほどの金属球を飛散させる『ボール爆弾』が使用された。この子爆弾は手榴弾や指向性の無い散弾地雷のように、弾炸裂周辺部にいる人員や通常の車両など、装甲を持たない標的に被害を与えるもので、加害面積は親弾の炸裂高度によって変化する。

[[ファイル:B1-B Lancer and cluster bombs.jpg|thumb|200px|クラスター爆弾を投下するB-1 ランサー戦略爆撃機。黒い棒状の物体が親弾。]]

クラスター爆弾には様々な種類の子弾が存在し、米軍では対人・対装甲車両用の子弾を202発収めた CBU-87/B、戦車などを目標とする対装甲用子弾を10発収めた CBU-97/B、対装甲用成型炸薬子弾を247発収めた CBU-59(ロックアイII)などがある。爆発性が無いためクラスター弾に関する条約の条件には合致しないが、炭素繊維のワイヤーを放出して送電施設をショートさせ、停電を引き起こすBLU-114/Bのような非致死性兵器も存在し、これは停電爆弾と呼ばれる。

子弾1つは通常は小型の爆弾であり、鉄筋コンクリートビルやトーチカのような強固な建造物に対する破壊力は低い。小型の爆発物を散布することで他の普通の航空爆弾より広い範囲に被害を与えるため、対人や対車両用の面制圧兵器として使われる。

対装甲目標用に成形炸薬弾頭を持つ子弾は、リボンや小型のパラシュートが取り付けられ、姿勢を垂直に向けて落下することで装甲厚の比較的薄い車両上面部に最適の角度で接触し起爆・穿孔するように設計されている。

在来型航空爆弾との比較

  • 重量に対する制圧面積が広く、少ない航空機数で従来型の航空爆弾と同様の爆撃面積を得られるため、爆撃機数の削減が可能になる<ref>同じ250kg爆弾×1発でもクラスター爆弾であれば在来爆弾の数倍の面積を制圧できる。逆に言えば同じ面積を制圧するのに投下せねばならない250kg爆弾の個数は従来の数分の1で済み、爆撃作戦に必要な航空機の数も、在来型航空爆弾を使った場合の数分の1で済む。戦闘爆撃機であるF-15Eの場合、 CBU-59 なら最大26発を搭載でき、1回の出撃で最大6,422発の子弾を投下することができる。</ref><ref>第二次大戦後、戦闘用航空機の単価は高騰を続け機数が削減傾向にあったほか、弾道ミサイルの登場で戦略爆撃機とそれに対する迎撃機が削減された。</ref>。
  • 在来型の航空爆弾は大型であるほど重量あたりの殺傷面積効率が低下し、2,000kg爆弾であれば体積にして250kg爆弾の8倍に及ぶ高圧ガス球を発生させるが、その殺傷半径は2倍にしか拡大しない。子爆弾を広く散布するクラスター爆弾はサイズと内蔵子弾数が比例するため殺傷面積効率が低下しない。
  • 地上部隊に対して短時間で面的制圧を行えるため、国境線が入り組んでいたり、障壁となる地形が乏しいなどの事情を持つ地域では、対人地雷と同様に戦術上有効とされる。

不発弾問題

対戦車用の成型炸薬弾型など、爆発に指向性があるものは、弾頭部が下を向くようパラシュートリボンなどで落下姿勢を調整するが、これが対地落下速度を弱め、落下場所によっては信管に十分な衝撃が加わらなかったり、リボンやパラシュートが木や建物に引っ掛かって不発となる場合がある。

種類や小弾の性質・運用状況にもよるが、過去の運用実績上の不発率は約5%から40%とされている。通常爆弾と同程度まで不発率を下げても、大量の小弾を散布するクラスター爆弾の性質上、爆弾の総数が多いことで不発弾となる数が増える。戦闘終結後に不発弾に接触した非戦闘員が被害を受けることが、非人道的とされることもある。

戦闘後の被害

国際連合レバノン南部地雷活動調整センターは、2006年8月までにレバノンで使用された旧式のクラスター爆弾で、子爆弾の4割が不発のまま残ったとしている。この戦闘ではイスラエル軍によりヒズボラに対して子爆弾644発を積載したクラスター爆弾が最低でも1800発使用されたが、これの不発分が市街地などに散乱しており、全ての撤去には1年以上かかるとされている。

残留した不発弾が戦後復興に影響する場合もあり、レバノンでは、戦闘中に避難していた市民が乗用車で戻ってきたところ、その車列で爆発が発生、驚いた市民らが車から降りて更に爆発が発生し、30分で市民15人が死傷したケースもあると2006年09月20日の朝日新聞が報じている。中には木に引っ掛かった状態の子爆弾もあり、2006年10月23日の朝日新聞報道では、果樹園で取り入れを手伝っていた子供の死亡事例が多いと報じている。同記事は同年8月14日から10月22日までの間に、20名が死亡、120名が負傷したとしている。

2003年には、ヨルダンアンマン国際空港において毎日新聞社のカメラマン、五味宏基が「取材活動の記念に」とイラクから持ち出した不発弾が爆発し、空港職員が1人死亡、空港職員と一般人の計2名が負傷する事件が発生した。爆発したのは、形状などから地上発射兵器MLRSロケット弾で散布される成型炸薬弾M77と見られている。

2008年8月に起きた南オセチア紛争において、グルジア政府はロシア軍がクラスター爆弾を使用したとして非難し、欧米マスコミもこれを大々的に報じた。ところが後に、関係者の証言からグルジア軍自身もクラスター爆弾を使用していたことが発覚する。双方の使用による犠牲者は数十名ほどでは無いかと見られている。

フランスのリヨンとベルギーのブリュッセルに本拠のあるNGO団体Handicap International(ハンディキャップ・インターナショナル)は「この爆弾で被害を受けるのは、過去98%が一般市民だ(残りが本来の目標である軍人)<ref>Handicap Internationalのレポート</ref>」と主張し、クラスター爆弾の使用を非難している。

使用禁止に向けた動き

2006年2月16日には、世界に先駆けてベルギーがクラスター爆弾を法的に禁止した。<ref>Bulletin of Cluster Munition Coalition for February 2006 (英文)</ref>
2007年2月22日から23日には、ノルウェーが呼びかけたクラスター爆弾禁止に関する国際会議が、ノルウェー首都オスロで開催された<ref>Pledge to seek cluster bomb ban, the BBC, 23 February 2007 (英文)</ref>。49ヶ国が参加したこの会議では、参加国中の46ヶ国によって、2008年中にクラスター爆弾の使用・製造・移動・備蓄の禁止条約を実現させることを目指すという内容の「オスロ宣言」<ref>「オスロ宣言」、地雷廃絶日本キャンペーンのサイト内、PDF文書</ref>が採択された。この宣言は「受け入れがたい民間人被害をもたらすクラスター爆弾を禁止する条約を08年中に作る」とも述べ、クラスター爆弾の廃棄、使用された爆弾の撤去や被害者のケアへの枠組づくりも含んでいる。ノルウェー等の提唱有志国が禁止条約作りを目指す運動を『オスロ・プロセス』と呼ぶ。

同会議に参加していた日本ポーランドルーマニアの3ヶ国はこの宣言に加わらなかった。アメリカイスラエルロシア中国等、主要なクラスター爆弾の配備運用国は会議そのものに参加していない。 イギリスは土壇場で参加を決め<ref>46 Nations commit to ban cluster bombs, The Diana, Princess of Wales Memorial Fund, 23 February 2007 (英文)</ref>、会議の翌月に、英軍使用のクラスター爆弾を自爆機能のついたものへ切り替え、不発弾による被害を生じやすいものは即時使用を停止し、廃棄することを決定した<ref>Britain bans 'dumb' cluster bombs, the BBC, 20 March 2007 (英文)</ref>。オスロ会議の前後にはノルウェーオーストリアスイスなどがクラスター爆弾の使用を凍結している。2006年2月に使用を禁止したベルギーは、会議後の2007年3月にはクラスター爆弾を製造している企業への投資を違法とした<ref>World Briefing | Europe: Belgium: Cluster Bomb Investments Barred, the New York Times, March 3, 2007 (英文)</ref>。

日本が当初宣言に加わらなかった理由は、国際的に見て特殊な防衛事情を持つ日本の安全保障上の判断とされている。詳細は『保有国の対応』の節を参照。

2007年5月23日から25日には、ペルーの首都リマで68ヶ国が参加して「クラスター爆弾禁止リマ会議」が開催されたが、禁止条約の草案の合意には至らなかった<ref>クラスター爆弾禁止リマ会議:草案合意に至らず, the Inter Press Service Japan, 2007年6月12日</ref>。

2008年5月28日ダブリンでの国際会議で、無力化機能を有する一部の型を除いて禁止する条約案が合意された。条約文第2条は、「禁止対象とならないクラスター弾」の要件を以下のようなものとしている。<ref>Diplomatic Conference for the Adoption of a Convention on Cluster Munitions "Convention on Cluster Munitions" - 英語正文(2008年5月20日)</ref>。

  • (第2条2項c) - 周囲に対する無差別的な影響ならびに不発弾による危険性を回避するために次の特性を備える弾薬。
  1. 10個未満の爆発性子弾しか含まない。
  2. それぞれの爆発性子弾の重量が4キロ以上である。
  3. 単一の目標を察知して攻撃できるよう設計されている。
  4. 電気式の自己破壊装置を備えている。
  5. 電気式の自己不活性機能を備えている。

不発弾の性質

クラスター爆弾の不発弾を「意図的に不発になるよう仕組まれており、復旧作業の妨害を狙っている」、「民間人(子供)の興味を引く玩具のような形状と色にして、拾うように仕向けている」、「地雷禁止条約の抜け道として、不発弾を地雷代わりにしている」とする批判がある。

しかし滑走路などの軍事目標に対して復旧を遅らせる目的で、爆撃終了後に爆発するよう時限信管を設定したり、あるいはクラスター爆弾でも子弾として地雷を混在させて使用する(かつてイギリス空軍のトーネードに搭載されたJP233ディスペンサー)例もあるが、不発弾は発生が偶発的で分布などをコントロール出来ないので「意図的な不発」や「子供を狙って」いるわけではない。玩具のようとされる形状は空気抵抗で落下姿勢などを調整するためのもので、明るい黄色などの鮮明な色に塗装されているのは、目に付く色で不発弾の存在を強調して触らないよう注意を促し、戦闘終了後の発見回収を容易とするためのものである。

この警戒色は、人道援助として空中散布される救援用非常食レーション)を目立たせるための塗装と同じ色だったことで、アフガニスタンでは混乱の原因となった。アメリカ国防省は2001年11月1日にこの問題を認め、クラスター爆弾の危険性に対して市民に注意を促すチラシを配布すると共に、非常用食料はオレンジ色のパッケージに変更すると発表している<ref>ヒューマン・ライツ・ウォッチ「Cluster Bomblets Litter Afghanistan」</ref>。

保有国の対応

アメリカ

オスロ・プロセスとは異なる独自の規定を定め、クラスター弾不発率の低下を目指した。MLRSについては単弾頭のGPS誘導ロケット弾XM31の開発を進め、M31として制式化した。2006年1月には、更新が遅れれば不発率低下の目標を達成できないと発表してM31の取得を進め、イラク戦争でもこれを活用した。<ref>[1] - アーマード・インターナショナル。英文。</ref>

日本

航空自衛隊はクラスター爆弾を、陸上自衛隊は砲弾、ヘリコプターから発射するロケット弾、多連装ロケットシステム用のクラスター弾頭型ロケット弾を保有しており、いずれも不活化機能や自爆機能は有していない。2007年2月にオスロで開かれたクラスター爆弾禁止会議のオスロ宣言には署名しなかったが、2007年6月19日にジュネーブで開催された特定通常兵器使用禁止制限条約 (CCW) 政府専門家会合では条約交渉の開始に賛成を表明した。

2008年5月28日のダブリンでの国際会議では一部を除いて禁止するとの条約案に同意し、2008年11月28日の安全保障会議で自衛隊が保有するすべてのクラスター弾の廃棄を決定、12月3日にオスロで開催された禁止条約署名式には中曽根弘文外相が出席して署名した。日本の外務省は「クラスター弾に関する条約」を仮和訳したものをウェブサイト上で公開している。<ref>クラスター弾に関する条約 - 日本外務省</ref>

多連装ロケットシステムにはM31単弾頭型GPS誘導ロケット弾を、航空爆弾にはレーザー誘導対応型JDAM爆弾を導入すると発表し、この二種の精密誘導兵器取得を代替措置とした。<ref>防衛大臣記者会見の概要(2008/11/28)</ref> <ref>[2] - 代替案を報じる毎日新聞電子版</ref> <ref>[3] - 時事通信電子版</ref>

中国、ロシア、北朝鮮韓国台湾といった東アジア周辺国は、クラスター弾禁止条約に参加していない。 日本の長い海岸線を人海戦術に頼らず守るのに有効とされていた対人地雷は、すでにオタワ条約の批准によって廃棄されている。対人地雷で敵の侵攻を遅らせる遅滞戦闘については、有人遠隔操作の指向性散弾とクラスター爆弾によって補われていたが、クラスター爆弾が処分されれば効果的な代替兵器は存在しないとされ、安全保障上の懸念も表明された。<ref>佐藤正久参議院議員公式 2008年6月5日分記事</ref>。

産経新聞などでは、クラスター爆弾は必要最小限の防衛力と定義している。

イギリス ドイツ

全ての子弾に自爆機能、もしくは不活性化機能を持たせた改良型を配備する。

Template:節スタブ

参考

<references />

関連項目

外部リンク

Template:Weapon-stubaf:Trosbom ar:قنبلة عنقودية bg:Касетъчни боеприпаси ca:Bomba de dispersió da:Klyngebombe de:Streumunition en:Cluster bomb eo:Grapolbombo es:Bomba de racimo fa:بمب خوشه‌ای fi:Rypälepommi fr:Arme à sous-munitions he:פצצת מצרר hr:Kazetne bombe hu:Kazettás lőszerek id:Bom tandan it:Bomba a grappolo ko:집속탄 lv:Kasešu bumba nl:Clusterbom no:Klaseammunisjon pl:Bomba kasetowa pt:Bomba de fragmentação ro:Bombă cu dispersie ru:Бомбовая кассета sr:Касетна бомба sv:Klusterbomb ta:கொத்துக் குண்டு th:ระเบิดลูกปราย tr:Misket bombası uk:Касетна бомба vi:Đạn dược thứ cấp wa:Bombe-troke zh:集束炸彈

個人用ツール