ギブソン・レスポール

出典: Wikipedio


Template:Redirect Template:出典の明記 Template:Infobox Guitar model レスポールレスポール・モデル(Les Paul Model)は、ギブソン1952年から製造・販売を行っているエレキギターフェンダーストラトキャスターと並び、最も有名なモデルとされる。

現在、公式に「レスポール」としてこのモデルを販売しているのはギブソンおよび子会社のエピフォンのみであるが、多数のメーカーでコピーモデルが販売されている。

レス・ポール」とも表記されるが、「レスポール」と表記するのが正しいとされる。

目次

概要

レスポールはギブソン社初のソリッドギターであり、ジャズ/ポップスギタリストレス・ポールとの共同開発とされる、彼のシグネイチャー・モデルである。レスポールとして最も知られているのはスタンダード、カスタムの2種類であるが、その他にもスペシャル、ジュニア、デラックス、スタジオ、クラシック等多くのモデルが存在する。

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ギタリストのレス・ポールと、本人愛用のレスポール・モデル

共同開発とは言え、実際の開発はギブソン社にて行われた。レス・ポールからの中間プロトタイプに対するアドバイスは、ゴールドカラーの採用(高級に見える)と、自身がパテントを持つトラピーズブリッジの採用という程度でしかなかった。にも関わらず共同開発と謳われた背景には、初のソリッドギターの先行きに対するギブソン社経営陣の懸念があり、販売不振だった場合の責任転嫁の逃げ道にするためであったと言われている。

基本的なデザインは高フレット部が弾きやすいようにボディが削られたシングル・カッタウェイのアーチドトップ・ボディにフロントとリアのふたつのピックアップを搭載、ネックは仕込み角をつけたセットネックで、それぞれのピックアップ専用のボリューム、トーンコントロールが備わっている。

ピックアップ

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スタンダード・モデルのフロントピックアップ周辺

当初、スタンダードには1952年から1956年までシングルコイルのソープバー、ドッグイヤーなどの異名をもつP-90タイプを、1954年から1956年製のカスタムにはフロントにP-90とは全く違う内部構造と長方形のポールピースを持つアルニコV、リアにソープバータイプのP-90という組み合わせで、ピックアップが搭載されていたが、レス・ポールが有名になったのはやはり1957年モデルから採用された「P-490」ピックアップが搭載された頃からである。

このピックアップはセス・ラヴァーの設計によるもので、シングルコイルを二つ並べたようなダブルコイル(いわゆるハムバッカー)となっており、コイルの巻く向きと磁極を逆にしてノイズをキャンセルする仕組みになっている。副作用としてシングルコイルよりは甘く、しかも大きな音が出ることになったが、これがレス・ポールタイプのギターの魅力となっている。ちなみにこのハムバッカー構造を持つこのピックアップは特許出願され、そのことを示す「特許出願中(Patent Applied For)」のシールが貼られていたことからP.A.Fと呼ばれた。このP.A.Fピックアップはスタンダード・モデルとカスタム・モデルに採用されたが、廉価モデルであるジュニアとスペシャルにはP-90が搭載され続けた。

P.A.Fピックアップ製造開始当時のコイル巻線機には自動停止機構が無かったため、巻線数は設計値(5000ターン)より多めで、しかも個体差が大きい。また、経年変化により発生するボビンの「樹脂痩せ」と呼ばれる現象の結果コイル巻き線が製造当時より緩み、張力低下から巻線断面積や線間距離の増加を招いている。これによる直流抵抗の低下や浮遊容量増加もサウンドに大きな影響を与えている。 すなわち、オリジナルのP.A.Fピックアップの現在のサウンドは、製造時のばらつきによる初期個体差に加え、その後の経年変化が偶然影響を与えてしまった結果によるものであり、一つひとつが異なった個性を持っている。したがって、それを人為的に復刻することは難しい。

また、後年のハードロック全盛期に、ピックアップ出力の増大や、音色変更(高音域アップ)を狙いピックアップ表面の金属カバーを取り外すことが流行し始めたが、その時になって樹脂ボビンが黒でなく白い個体が存在することが判明した。元々白い樹脂材料に黒着色剤を混ぜてボビン成型をしていたが、ボビン納入メーカーで1958年途中から1960年暮れにかけてこの着色剤が不足したためである。替わりの着色剤としては、他の樹脂パーツと同じクリーム色が用いられた。固定ポールピース側の黒ボビンが先に不足したため、まずそちらが白い個体が出始めた。そのうちアジャスタブル側ポールピースの黒ボビンも無くなり両方白い個体になった。

片側が白いものは通称「ゼブラ」、両方白いものは通称「ダブルホワイト」と呼ばれる。前記のいきさつにより、殆どのゼブラは固定ポールピース側ボビンが白いが、きわめてごく稀に逆のゼブラが存在することも知られている。白いボビンが使用された時期はサンバーストカラーのレスポールの製造時期とほぼ重なり後期ほど白ボビンの混入確率が高いことになるが、レスポール以外のモデルにも使用された上、ピックアップ単体で交換可能なため、ダブルホワイトやゼブラが付いていることで知られる有名モデルでも最初から付いていたのか後年に移植されたのかを検証することは難しい。

ちなみにボビンの色とサウンドに因果関係は無い。

ブリッジ

画像:Tune-o-Matic LP1.jpg
チューン・O・マチック・ブリッジとストップ・テイルピースを組み合わせた現行のブリッジ周辺

レス・ポールのブリッジ部は、特殊な物をのぞき3種類の仕様が存在する。

トラピーズブリッジ
このギターの名にもなっているレス・ポールが開発しパテントを持っているもので、金属のバーをブリッジ部としボディエンドで三角形に固定したものである。弦をブリッジ下から通さなければならないため構造上ブリッジ・ミュートができない。
ストップ・テイルピースブリッジ
1954年から採用のスタンダード、ジュニア及びスペシャルに搭載された。これは弦を固定する能力のみで、オクターブチューニングが不可能であった。
チューン・O・マチック&ストップ・テイルピース・ブリッジ
ストップ・テイルピースにオクターブ調整用のブリッジ(ABR-1)を追加したもの。当初は上級機種のカスタムに搭載されていたが、1956年からスタンダードにも採用された。細かなオクターブ調整のほかに使用者の好みに合った弦のテンション微調整もできるようになり、現在も「定番」として使い続けられている。

チューン・O・マチック・ブリッジ本体には3種類のバリエーションがあり、1956年~1959年仕様の(弦が切れてもブリッジの駒が脱落しないリテナー・スプリングがない)前期型ABR-1と1960年仕様の(先述のリテナー・スプリングが装着され弦が切れてもブリッジの駒が脱落しないようになっている)後期型ABR-1と1970年代から採用されているナッシュビル・タイプの3種類が存在する。ちなみにナッシュビル・タイプは前期・後期ABR-1より可変範囲を稼ぐためにABR-1より幅が広くなっている他、前期・後期ABR-1ではブリッジの駒を逆向きに装着することができたがナッシュビル・タイプでは不可能となっている。

この他、特注モデルでは顧客の注文に応じてビグスビーの各種トレモロ・ユニットが最初から装着される場合もあった。後付け改造モデル特有の標準ブリッジ取り付け穴を埋めた痕跡が無いことで判別可能である。

スタンダード・モデルは、ボディ裏面にマホガニー、表面にハード・ロック・メイプル(別名イースタン・メイプル)と言う2種類の木材を貼り合わせた独特の構造を持つ。メイプル材1/2インチ(12.5mm)とマホガニー材1+3/4インチ(44.5mm)の厚みのバランスはサステイン持続量から決定された。開発途中では更なるサステインを求めたレス・ポールより厚さのバランスを逆にする意見も出たが、重すぎるという理由でギブソン社に却下された。一方、ネックはマホガニーワンピースを基本としながら、材料歩留まりを考慮してヘッド部両端は別ピースが接着されている(通称「耳貼り」)。1976年からの再発モデルにはメイプルネックも一時期存在した。カスタム・モデルやジュニアモデルはマホガニーボディである。初期のゴールドトップモデルでは、表面のメイプル材はランダムな幅の2〜3ピースであったが、1958年のサンバースト塗装の適用に当たりバイオリン属のボディ裏面に見られるようなブックマッチの2ピースとされた。これにより、木目を美しい左右対称とし、シースルー塗装化の付加価値を高めることを狙った。

ブックマッチを採用するためにはゴールドトップモデルの倍の厚さのメイプル素材が必要となる。しかし実際には切り開きの鋸挽き代を加味すると、ちょうど倍の厚さで入手性の良い4/4インチ(25.4mm)厚の板材では薄過ぎ、5/4インチ(32mm)厚が必要となった。この厚さは当時の木工規格外れであったため、ギブソン社は製材の引き受け業者が中々見つからず、材料入手の困難さに直面することとなった。このため、細々としか入荷しないメイプル材は廃材送りを極力抑制する必要があり、さまざまな工夫がなされた(但しメイプル材自体が貴重になった現在とは異なり、5/4インチ厚の板材が入手困難なだけであった点に留意されたい)。

一例として、切り開いた片側の板材のみがシミ、割れ等で不適であった場合でも残った片側の板を保管しておき、色合いが似た材(カラーマッチと呼ばれる)または、木目が似た材(パターンマッチと呼ばれる)を選別して組み合わせて使用された。クレームになりやすい(人間が認識しやすい)のは色の違いであるため、カラーマッチの方が優先された。またブックマッチの場合には、切り開いた材を組み合わせる関係上、片側が木表、片側が木裏となるが(木裏の方が若干くすんだ色味になる)、カラーマッチやパターンマッチの場合には、両方の材を木表で揃える(フリッチマッチ)ことも配慮されたため、ブックマッチ材ではない個体の材を総称してフリッチマッチと呼ぶことが多い。

メイプル材にはフィギア、もしくは目と呼ばれる様々な美しい文様が発生しているものがある。そのような材を持つオリジナルモデルは現在では非常に高価に取引されている。しかし、発売当時は特に注目もされておらず、ギブソン社自体、売りにもしていなかった点が興味深い。これは、フリッチマッチの個体の片側の材のみに杢目があるものが少なくないことでも裏付けられている(マッチングの要件として杢目は対象外であったことになる)。杢目の人気を決定づけたのは、70年代当時の雑誌において、まだ白黒が一般的であったミュージシャンのステージ写真に、半ば実物以上に強く写り込み、広く認知されたためであり、その後、80年代には異常な人気を博すまでに至る。特にフレイムを始めとした特別な杢目を持った個体は、希少価値のある個体として高価なオリジナルモデルの中でも更に高値で取引されるようになり、現在国内で取引されるオリジナルの価格は2000万円を超えるまでになってしまった。オリジナルのレスポールに現れている杢目としては、トラ目、もしくはフレイム(炎)、ピンストライプと呼ばれる縞模様が殆どであり、バーズアイキルトと呼ばれるものはごく稀でしかない(これは、当時使用されていたハード・ロック・メイプル材の杢目の傾向でもある)。

レスポール表面はバイオリン属のようなアーチドトップ形状に仕上げられているが、これはメイプル材を削り込んで成型されている。このため折角のブックマッチによる左右対称木目模様はボディセンター部を残して失われてしまう。対称模様の崩れを目立たなくするには柾目の材を選別使用すれば良いわけであるが、先に述べたような材料入手性の悪さからそのような贅沢は出来なかった。板目材のモデルではフリッチマッチとの判別が困難なほど左右の乱れが大きいものも珍しくない。もっとも、板目材も使用されていた別の理由として、マホガニーとのラミネート構造のおかげで板目材に起こりやすい反りの心配がなかったという点もある。

一方で杢目の観点から見れば、柾目材の杢目は比較的単純なピンストライプが多く、フレイムのような人気の高いものは板目と柾目の中間の板取をされた追柾目材であることが殆どである。また、板目材では杢目は現れないのが普通であるが、ごく稀に存在する板目の杢目は非常に不規則かつ大胆であり、コレクターに珍重されている。このような杢目の個体が存在することになったのも、メイプル材の「倹約励行」がもたらした偶然によるものである。現存するオリジナルレスポールにおけるメイプル材の柾目、追柾目、板目それぞれの存在割合は、一本の丸太を端からスライスして板取していったときに出来る割合とほぼ等しいと言われている。

ちなみに現在では、ヒストリック・コレクションなどの高級モデルには、美しい杢目材の入手性が比較的容易なソフト・メイプル(別名ウエスタン・メイプル)が使われている。これはハード・メイプルよりも軽く、軟らかい材なので音色にも影響を与える。

塗装

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ゴールドトップのレスポールを弾くスティーヴ・ハケット

1952年の発売開始から1957年の中盤までゴールド・トップと呼ばれる金色のメタリック塗装を施されていたが、1958年後期から1960年にかけてはそれまでのソリッドカラーとは一線を画すサンバースト塗装と呼ばれるシースルーフィニッシュが施され、ボディ表面に使用されているハード・ロック・メイプルの木目が見えるようになった。

サンバースト塗装を略してバースト塗装、もしくは単にバーストと呼ぶ場合もあるが、1958~1960年のオリジナルレスポールスタンダードを指す愛称もバーストと呼ばれる。

スタンダードモデルの当初のサンバーストカラーは、下地として黄色塗装したボディに、アメリカンチェリーのような赤紫が、外縁から中央にかけて薄くなっていくグラデーションを掛けたものであった。チェリーレッド塗装範囲は広く、ブックマッチの左右対称木目模様が崩れる部分を殆ど塗りつぶし目立たなくするよう工夫されていた。

下地の黄色は顔料系でありながら、木目を隠さない透過性を持つものが選ばれた。その上に塗られたチェリーレッドは、染料系の赤色と微量の濃紺色のブレンド塗料であったが、一般的な染料系塗料の例に漏れず、経年変化により褪色した。特に目立つわけでも無く注目もされていなかった杢目が、褪色により美しく浮き出して見えるようになったのは、偶然の自然現象の積み重ねの結果によるものであった。

チェリーレッド塗膜の中では、特に赤色成分の褪色が早く、遅れて褪色する紺色成分や褪色しない下地の黄色層とのカラーバランスが変化して、表面ラッカー塗装の色焼けも加わり、紅茶のような茶色に見える変色をする場合が多かった(通称ティーバースト)。さらに褪色が進むと紺色成分も褪せていき、バースト塗装が辛うじて残っている状態(通称ハニーバースト)を経由して、最終的にはバースト塗装は完全に褪色する。この場合、顔料系であるため全く褪色しない下地の黄色層とアメ色に色焼けしたラッカー層の色のみが残ったオレンジ色(通称レモンドロップ)の状態に落ち着く。褪色のコンディションによっては、ティーバースト段階の後に、ごく稀に、赤色成分のみが先に完全に褪色することで外縁部が緑に見える通称グリーンバーストと呼ばれる状態になることもある。一方、メイプル材をブックマッチに切り開いた際、面の端の方にシミ等があった場合、それがボデー外縁部になるようにブックマッチした上で、シミが目立たなくなるように通常のチェリーレッドよりも紺色成分を多くした暗い色を濃く塗装して誤魔化したモデルもあった(材の項目にある通り、メイプル材の廃材化を極力減らす必要があったからである)。これは、その後の褪色で外縁部が通称ダークバーストやタバコバーストと呼ばれる焦げ茶色となり、中には隠そうとしたシミが褪色で再び透けて見えるモデルも存在する。

このチェリーレッドの褪色は販売後1年程度という早い段階から発生し始め顧客からのクレームにもなったため、1960年のモデル末期にはチェリー塗装も褪色しない顔料系に変更された。顔料系では塗料を混ぜるほど色が濁ってしまうため、単色の赤が選ばれた。顔料系ながら下地層の黄色同様に透過性があるため、若干オレンジがかって見える。これは今では通称60年チェリー、もしくはタンジェリンレッドと呼ばれ、現在でも殆ど褪色していない。1960年モデルはネックが薄くなったことでサウンド的にも59年までのモデルと異なるため、カラー、サウンドとも人気は低めであり、レプリカ対象とされることは少ない。(それでもオリジナルの1960年モデルであれば超高額であることに変わりはない。)

表面ラッカー層は登場から現在まで一貫してニトロセルロースが使われている。経年変化については、一般的な「色焼け」と呼ばれる現象の他に、使用環境や保管環境が過酷であった場合、ニトロセルロースラッカー特有の現象である塗膜の細かなひび割れ(ウエザーチェック)が発生しているものがある。

この他、当時からカスタム・モデルとして、白や黒のソリッドカラー、もしくはチェリーレッド単色のモデルが製作された。また近年のシグネイチャー・モデルでは、演奏家の趣味に合わせた様々な塗装が採用されている。

一方、ボディ裏面やネックといったマホガニー材部分は、赤系の目止めを施した後に、表面と同じ染料系チェリーレッド塗装が施されている。こちらも経年変化により褪色し、茶色みを帯びた後に完全に消え、マホガニー材の材色に戻ってしまう。但しマホガニー材自体が赤いため表面ほど褪色度合は目立たない。オリジナルモデルの裏面で興味の対象とされるのは、褪色ではなくベルトバックル傷と呼ばれる塗装の剥がれ位置である。ギターを高い位置に構えるジャズ系ミュージシャンのステージが主な活躍舞台であった場合、バックル傷は高音弦側になり、ハードロック系のそれはギターを低い位置に構えた結果、低音弦側の、それもボディ端になるといった具合に、そのギターが辿ってきた歴史が文字通り「刻まれて」いることが多い。

レスポール・モデルの受容史

オリジナル・レスポールの登場から生産中止

前述のようにレスポール・モデルは1952年に登場し、ブリッジおよびピックアップ、塗装の仕様変更を経て、1958年にその仕様が完成されている。この1958 - 1960年製のサンバースト・モデルは現在ではエレクトリック・ギターの中でも最も高額で取引されている個体群であるが、まだロックンロールが誕生して間もなかった発売当時の音楽シーンにおいては、サウンドにパワーがありすぎコントロールしづらく、重量も重いということで、一般的な人気を得るには至らなかった。安価に提供するために様々な工夫がなされたフェンダー製品に対し、手の込んだ造りの高級路線で差別化を図ったため価格も高かった。結局、このオリジナルのサンバースト仕様は約1,400本製作された程度で製造中止となっている。<ref>但し、これに対しては別な意見も存在する。バーストの生産時期はモデル末期にあたり既に目新しさは無く売れ行きは減少して当然であり、ゴールド・トップからサンバーストへの変更もこのてこ入れの為になされた。また、フェンダーに対抗し既存ユーザーの抵抗を減らす意図でも採用されたシングルカッタウェイのシェイプが古臭く感じられていた(ギブソンのデザインは古いという批判に対抗して58年にコリーナシリーズがデザインされたのは有名)。メイプル・トップ、マホガニー・バックという二つの木材をあわせて製作されるため工程が複雑化しコストと手間がかかったので、これらの解決の為マホガニー1ピースのSGに切り替えた。などとも言われている。オールドの重量は4Kg前後と必ずしも重くないこと、PAFはレス・ポール以前、以後も多くのモデルで使われていることからここで書かれている生産中止の理由は後付と考えられる。</ref>

SGシェイプへのモデルチェンジ

売上不振により、ギブソンは 1960年にはレス・ポール・シェイプのギターの生産をすべて中止した。翌1961年、軽快な音色を追求したオールマホガニータイプのSGシェイプにフルモデルチェンジし、これを「レスポール・モデル」として販売したのだが、レス・ポール本人はこれに納得せず、彼との契約は打ち切られた。この結果、「レスポール・モデル」と呼ばれる製品は販売終了となった。

エリック・クラプトンによる再評価

レスポール・モデルを一躍有名にしたのはエリック・クラプトンである。ブルースブレイカーズのアルバム「ブルースブレイカーズ・フィーチャリング・エリック・クラプトン」にゲスト参加した曲で聞けるレス・ポール+マーシャルアンプの組み合わせによるディストーション・サウンドは「極上のサウンド」と絶賛された。そしてレス・ポール+マーシャルアンプの組み合わせはそれ以後のブルース・ロックハードロックサウンドに不可欠なものとなった<ref>クラプトンが使用していたレス・ポールは、ボディ上面の杢が虎の背中の模様のように美しいオールド・レス・ポールであった。その後クラプトンはレスポール・カスタムを使用するが、クリーム時代にはSGを愛用し、それ以後はメインで使用するギターをフェンダーストラトキャスターへと切りかえ、レス・ポールをステージで使用することは無くなった。</ref>。この時期、ピーター・グリーン、マイク・ブルームフィールド、ミック・テイラー、キース・リチャーズなどが相次いでレスポール・モデルの使用を開始している。

ロック・ギタリストたちによる再評価を受けて、レスポール・モデルの需要が再び高まると、ギブソンはレス・ポールと再契約の上、1968年にスタンダード、カスタムの両モデルを再発した。<ref>現在はこれらもコレクターズ・アイテムとして評価されている。</ref>しかし1969年以降、デラックス、プロフェッショナル、レコーディングなどの新しいシリーズを発売したものの、SGモデルが定着した以外は商業的には不成功に終わっている。

ジミー・ペイジ登場によるレスポール・モデル人気

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レッド・ツェッペリンでレスポールを弾くジミー・ペイジ

1970年代に入るとレッド・ツェッペリンジミー・ペイジが登場し、レスポール・モデルの人気を更に高めた。長いストラップで腰よりも低い位置で、58年製のオールド・レス・ポールを弾く姿は、当時のギターキッズたちに「レス・ポールは低い位置で弾くもの」という流行を生んだ。<ref>もっとも、ジミー・ペイジ自身は、以前メインに使用していたテレキャスターの代わりになるギターという認識で使用していたらしく、彼の58年製レス・ポールのネックはテレキャスターに近いシェイプに削られているという。</ref>他にもポール・コゾフピーター・グリーンミック・ロンソンミック・テイラーディッキー・ベッツなどの名だたるギタリストたちがレス・ポールを愛用した。

スラッシュの登場により人気再燃

240px|thumbnail|レスポール人気復活の立役者となったスラッシュ 1970年代後半のフュージョン・ブーム、さらに1980年代LAメタルシーンなどではトレモロ・ユニットを搭載したストラトキャスター・タイプのギターが席巻し、レスポール・モデルはほとんどみられなかったが<ref>メイプルネックを採用するなどそれ以前のレス・ポールと仕様が異なる1970年代のレス・ポール自体あまり評価が高くなかった事も、この時期レスポール・モデルの人気が落ち込んだ原因の1つではないかとの指摘もある。因みに近年1970年代のレス・ポールはザック・ワイルド等多くのギタリストが使用し再評価されてきている。</ref>、1980年代後半に入って、ガンズ・アンド・ローゼズが登場し、同バンドのギタリストスラッシュがレスポールらしい艶やかな音色とワイルドなプレイによってレス・ポール人気は再熱する。

ギブソン・カスタムショップの設置

1950年代末のオリジナルのサンバースト仕様とはかなり異なる仕様で生産されていた1970年代のレスポール・モデルであるが、1980年にはオリジナルのサンバースト仕様に相当程度近づけた「80」「エリート80」などの高級モデルが登場。

1980年代中期になると、スタンダード・モデルがやはりオリジナルのサンバースト仕様に近い仕様となった。また1990年代に入ると、ギブソン社内に設置された高級品専門工房「カスタムショップ」製作による、よりオリジナルのサンバースト仕様に近いシリーズ「ヒストリック・コレクション」の生産が始まった。

またもともとシグネイチャー・モデルであるレスポール・モデルであるが、更にレスポール・モデルのバリエーションとして、レス・ポール以外の人物のシグネイチャー・モデルが販売されるようになった。

様々なバリエーション

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1959年製ダブルカッタウェイのレスポール・ジュニア。この色(TVイエロー)のモデルは"TVモデル"の別名を持つ。
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エピフォン製レスポール・スペシャルIIのボディ。
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レスポール・スタジオ
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ザック・ワイルド・シグネイチャー・モデル
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エピフォン製レスポールのヘッドストック
レスポール・スタンダード
2008年に仕様が大きく変更された。例としてまずはゴトーのクルーソン・コピーだったチューナーがグローバー製に変更され、チューニングの狂いが減少された。裏のパネルがシースルー化され、内部構造が見えるようになった。ボディはマホガニーの一部がくり抜かれたチェンバード構造となり、従来のモデルよりも軽量化された。また、ブリッジとテールピースはロッキング・トーン・プロに変更され、弦交換の際に落ちるのを防げるようになった。ストラップ・ピンはダンロップ製のロックピンに変更され、ジャックはノイトリックを採用した事によりシールド抜けを防止。更にネックは新開発のロングテノン・ネックを採用し、ボディのフロントピックアップ中央付近まで差し込まれたディープ・ジョイントによりサステイン向上を図っている。ネックシェイプは微妙に左右非対称になっており、1弦側を薄く、6弦側を薄くする事で握りやすさが向上されている。サウンド面に関しては、従来のスタンダードモデルより明るめとなっている。
レスポール・トラディショナル
2008年にスタンダードモデルが仕様変更されたため、これまでのスタンダードの仕様で発売された。名称の通りスタンダードモデルの伝統的な仕様で、80年代から90年代にかけて製造されたスタンダードの作りが継承されている。ボディのマホガニー部にウェイト・リリーヴ・ホールと呼ばれる9つの穴が空けられており、これまでのスタンダードより僅かに軽量化されている。
レスポール・カスタム
1954年に発売され、オリジナルは1960年まで生産された。グロスブラック一色のボディ、多層バインディング、ゴールドハードウェアなど、豪華な外観(これらの特徴から“ブラックビューティー”の愛称で呼ばれる)であった。ボディはマホガニーのみで構成され、指板材はエボニーとなっている。
リア・ピックアップはP-90であるが、フロントには長方形のポールピースが特徴の通称「アルニコV」というモデルが使われた。また、発売時からチューン・O・マチック&ストップ・テイルピースのブリッジが採用され、細かな調整が可能だった。ヘッドに施された5分割の菱形の装飾は「スプリット・ダイヤモンド・インレイ」と呼ばれている。
1957年にピックアップはP.A.Fに(この時ピックアップが3基になり、オプションで2基も選べた)、そして1968年の再生産時にはメイプルトップボディに変更され、スタンダード寄りの音質になった。
1980年代には、マホガニーを薄く加工した「レスポール・カスタム・ライト」が数年間生産されていた。
現在ではギブソン社からマホガニーボディの1957年型モデルと、メイプル+マホガニーボディの再生産型モデルが生産されている。
レスポール・パーソナル/プロフェッショナル
69年に発表。ピックアップがロー・インピーダンスピックアップが搭載されている。様々な音を出せるような特殊なサーキット構造を持っている。レスポール・プロフェッショナルと同仕様である。
レスポール・アーティスト
79年に発表。ギブソン・RDアーティストに搭載されていた多彩なサウンド・バリエーションを誇るサーキットをレスポールに移植し、マッチングさせたもの。好評価を得られずに1982年に生産中止となる。
ザ・ポール
1978年から1982年までラインナップされていた製品。バインティングが入っていないのだがネックとボディは高級なウォルナット材で作られており、指板はエボニー材を使用している。
ザ・レスポール
トラスロッド・カバー、ボリューム/トーン・ノブやエスカッション類などプラスチックで作られる部品を全てローズ・ウッド材で成型されている高級モデル。指板はローズ・ウッド材を左右エボニー材から挟んだサンドイッチ構造となっている。
レスポール・クラシック
1991年に生産が開始されたレスポール・スタンダード1960年モデルのリイシュー。ピックガードに1960と刻印が入っている。1960年製オリジナルとはかなり異なっている。
レスポール・スペシャルとレスポール・ジュニア
ジュニアは1954年、スペシャルは1955年頃レス・ポールの廉価モデルとして発売される。両機種共に1958年頃にシングルカッタウェイからダブルカッタウェイに変更される。1960年にはレスポール・モデルが生産中止となった為、ジュニアとスペシャルも製造が中止された。1970年代以降には再生産が行われている。近年はカスタムショップでも製作している。
メイプルトップ、マホガニーバックのスタンダード・モデルとは異なりボディはマホガニーのみであり、P-90を搭載した事により得られる独特な音が評価されている。
ジュニアはピックアップは1つで、コントロールはトーンとボリュームのみ。スペシャルはピックアップが2つで操作機能はスタンダードやカスタムと同じである。
ジュニアとスペシャルは、スタンダードやカスタムと比較すると軽めで扱いやすく、弾き歌いをする者に好まれる。
ジュニア、スペシャルの代表的なカラーであるライムド・マホガニー(通称・TVイエロー)は、発売当時白黒だったテレビ画面でも映えるため付けられた呼称である。
モデル名に"レスポール"があり、ボディシェイプも他のレスポールと同様ながら、スペシャルとジュニアの開発にレス・ポールは関与していない。
スタンダード・モデルやカスタム・モデルはボディ表面がなだらかに盛り上がったアーチ・トップだが、スペシャルやジュニアでは平らなフラット・トップとなっている。
レスポール・スタジオ
スタンダードモデルからバインディングを省略し、コストパフォーマンスに優れたモデル。
材・電装はスタンダードモデルに準ずるが、オールメイプル仕様の"Raw Power"モデル、オールマホガニー仕様の"Japan Limited Run"モデルなどもある。
レスポール・デラックス
1968年の生産再開時に登場。P-90ピックアップ用のザグリに無改造で装着出来る小型のハムバッカー・ピックアップ(エピフォン製)を搭載。1969年には「パンケーキ・ボディ」と呼ばれる特殊なボディ<ref>メイプル材を上下からホンジュラス・マホガニー材で挟む構造</ref>を持つモデルも発売された。1980年に生産中止。
オービル製レスポール・モデル
ギブソン社のライセンス供与を受けて日本国内で製造販売されたモデル。デザインは「スタンダード」「カスタム」「ジュニア」などギブソン社のものに準じており、フジゲンマツモク工業などが生産を担当していた。
エピフォン製レスポール・モデル
オービルの製造販売が終了した後、レスポール・モデルの廉価版として、資本関係があるエピフォン社により製造販売されているもの。2008年まで、フジゲン・寺田楽器製作所が生産を担当していたモデルも存在したが、現在は中国韓国での製造モデルのみを販売。日本製造モデルを除いてヘッドがオリジナルよりも角の部分が膨らんだ形状をしており、容易に見分けられる。
ロボット・ギター
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2007年12月から生産されている仕様。ドイツのTronical社開発の自動チューニングシステム「Powertune」を、レスポール・スタジオに搭載したモデル。ブリッジに各弦の音高を測定するセンサーが入っており、またペグにはモーターが付加されている。センサーで拾われた各弦の音高はギター内部のCPUに転送され、更にCPUが電動ペグをコントロールしてチューニングを調節する。CPUからペグへの信号と電源の供給は弦を利用している。チューニングには6種類のプリセットが設定されている(基本的なチューニングの他、自分の好みのチューニングを設定できる)。カラーは幾つかあるが、どれもシルバーバースト・カラーである。ギブソン社初採用のカラーで、今後も他の機種に使用されることはない。
シグネイチャー・モデル


カスタムショップ製シグネイチャー・モデル
近年はカスタムショップ製作によるニール・ショーンジャーニー)モデル、ピーター・フランプトンモデル等も存在する。
また、厳密なシグネイチャーモデルではないものの、奥田民生が使用しているレスポール・スペシャル(P-90ピックアップ、ビグスビー、TVホワイト・フィニッシュ)を忠実に再現したカスタムショップ製作の「Gibson Custom Shop The INSPIRED BY Series Okuda Tamio Les Paul OT Special」が100本限定で製造・販売される事が発表されている(2008年8月1日現在。奥田民生公式ホームページにて)。

コピー・モデル

レスポール・モデルはグレコトーカイESPヘリテージギターズ<ref>ヘリテージギターズは1984年に閉鎖されたギブソン社のカラマズー工場に勤務していた職人たちが設立した会社であり、その製品の品質は高い評価を受けている。またゲイリー・ムーアなど著名なレスポール・モデルのユーザーのシグネイチャー・モデルを生産している。</ref>、フェルナンデス(バーニー・ブランド)など、様々な会社によりコピー・モデルが製造されている。これらのうちグレコ、トーカイなどが1970年代に製造したコピー・モデルは、現在日本では関連書籍が発行された影響で「ジャパン・ヴィンテージ」(和製英語)と呼ばれ、比較的高額で取引されている。但し、米国ではこれらコピーモデルはギブソンによる訴訟に発展したため、「Lawsuit guitar(訴訟ギター)」という通称があるTemplate:要出典。訴訟の中でギブソン社のオリジナリティとして認められたのは、ネックとボディのディープジョイント(ロングテノン)構造や、ヘッドの意匠であるTemplate:要出典。日本国内の訴訟では、ギブソン社が長い間コピーモデルの生産を黙認してきたとされ、ギブソン社の敗訴となった。(東京高裁 平成10年(ネ)第2942号。平成12年2月24日判決言渡)

コピーモデルでは如何にオールドモデルの褪色具合を再現するかに大きな努力が払われてきたと言える。以前は似たような色に調合するしか手がなかったが、現在ではオールドモデルの新品当時の調合で塗装した後、温度、湿度や光をコントロール出来る塗装劣化促進設備で様々な褪色やウェザーチェックまでもを再現出来るようになった。 しかし、木材そのものの経時固化による音の「枯れ具合」までは再現出来ていないため、「外見は古いが鳴りは若い」という楽器としては歪(いびつ)な状態と言えなくもない。近年、木材を高温高圧で固化させることで数百年相当までものエイジングを再現出来る技術もヤマハから出てきてはいるが、パテントの関係や設備が非常に高価なため、オールドレスポールレプリカへの採用はまだ無い。

取り扱い上の注意点

レスポール・モデルは、ジュニアやスペシャル等を除き概して重く、角度のついたヘッドからスタンドから倒しただけでもナットの少し上あたりからネックが壊れやすい(伝統的なマホガニーネックの場合に強度的なデメリットとなる、一部の他社のコピーモデルや廉価なレスポールタイプはネックがスカーフジョイントになっているため、この問題をある程度解決している場合もある)。経年でヘッドが下へ曲がり落ちやすいのも弱点で定期的な調整も必要。リペアを必要とする事故はこの機種が一番多い。

脚注

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関連項目

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  • ブラック・ビューティー - 黒い塗装が施された1958年から1960年製のビンテージのギブソン・レス・ポール・カスタムのこと。
  • ギブソン - 元祖レス・ポールの製造メーカー。
  • レス・ポール - ギタリストであり、レス・ポールの生みの親。
  • ギブソン・SG - レス・ポールの派生機種。発売当初はレス・ポールSGという名であった。
  • エピフォン - レス・ポールの廉価モデルのギブソン直系ブランド。
  • P-90 - ジュニア等のレス・ポールに搭載されているピックアップ。
  • ハムバッカー - 本来はハムキャンセル機能を持つマグネティック・ピックアップ一般の名称だが、一般的なレス・ポールに搭載されているダブルコイル・ピックアップの名称としても使われている。

外部リンク

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