イオン

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プラズマはイオン化した気体である

イオン(ion, 発音記号 áiən)は、原子あるいは分子が、電子を授受することによって電荷を持ったものをいう。電離層などのプラズマ電解質水溶液イオン結晶などのイオン結合性を持つ物質内などに存在する。

目次

イオンの種類

電荷による種類

陽イオン

電子を放出して正の電荷を帯びた原子、または原子団を陽イオン(ようイオン、positive ion)、あるいはカチオン (cation) と呼ぶ。金属イオンはすべて陽イオンである。

陰イオン

電子を受け取って負の電荷を帯びた原子、または原子団を陰イオン(いんイオン、negative ion)あるいはアニオン (anion) と呼ぶ。ハロゲンはすべて陰イオンとなる。

気相のイオン

物理学化学物理学の分野では、気相のイオンに対して、陽イオンの代わりに正イオン(せいイオン、positive ion、カチオン)、陰イオンの代わりに負イオン(ふイオン、negative ion、アニオン)が多く用いられる。大気電気学では、気相のイオンを大気イオン(たいきイオン、atmospheric ion)と呼ぶ。

「マイナスイオン」に関する注意

マイナスイオンという用語は、1922年に空気中の陰イオンの訳語として紹介された和製英語である<ref>西川義方、西川一郎『内科診療の実際』南山堂、1922年(絶版)。(書籍情報)</ref>。一部では負イオン(負の大気イオン)の意味でマイナスイオンが使われる場合があり、2002年前後を中心に国内の学会で日本の多くの研究者が使用した実態があった。流行語にもなったが、この文脈では定まった科学的定義がないために科学用語として認められないとする批判がある。

構成による種類

単原子イオン

一つの原子からなるイオン

多原子イオン

複数の原子団からなるイオン

錯イオン

電子を放出したり、受け取ったりして正または負の電荷を帯びた錯体錯イオン(さくイオン、complex ion)と呼ぶ。

クラスターイオン

電荷を帯びたクラスタークラスターイオン(cluster ion)と呼ぶ。

イオンの表し方

化学式の右肩に価数を記す。ただし、1価の場合は符号のみ記す。

  • 水素イオン(1価の陽イオン) - H+
  • 硫酸イオン(2価の陰イオン) - SO42−

イオンの名称は、陽イオンについては「元素名+イオン」(例:水素イオン)、陰イオンについては「元素名 − 「素」 + 化物イオン」(例:硫化物イオン)と表す。ただし、どちらも例外が多い。原子1個のイオンを単原子イオン、複数の原子で構成されるイオンを多原子イオンと呼ぶ。

また、主なイオンの名称とイオン式を覚えておけば、物質名から化学式がある程度推測できる。

イオン化

電荷的に中性な物質が、正または負の電荷をもつ原子あるいは原子団に変化する物理現象をイオン化 (ionization)、または電離と呼ぶ。正と負のイオンから構成される電解質)の結晶が溶液中で溶解したり、融解したりして正または負のイオンとして個々に振舞うことも電離という。

中性原子がイオン化する場合、原子に属していた1個あるいは数個の電子が他の原子または原子団に移る。このとき、イオンの持つ電荷量は電気素量(すなわち電子の持つ電荷量)の整数倍に等しい。電子を受け取った原子または原子団は負電荷に帯電して陰イオンとなり、電子を放出した方は正電荷に帯電して陽イオンとなる。電子を放出する際には原子核からのクーロン力の束縛から解放される為に、電子は光子を吸収したり、原子同士の衝突によりエネルギーを受け取って励起される必要がある。逆に電子を受け取る場合は、励起エネルギーの分を放出して安定化する。

一方、原子の方は電子構造により安定化の度合いが異なるので、励起に必要なイオン化エネルギーの値や、電子を受けとる際の安定化エネルギーである電子親和力の値は、元素の種類やイオン化の進行状況の違いによってそれぞれ異なるエネルギー値をとる。一般的には、電子構造が閉殻やオクテットの構造をとるとき原子は安定化されるので、典型元素においては価電子が閉殻やオクテットの構造をとることで電子配置的に安定なイオンとなる。例えば、アルカリ金属はイオン化エネルギーが小さいため陽イオンになりやすく、反対にハロゲンカルコゲンは陰イオンになりやすい。

また、個々のイオンは物質の高次構造においては正負の電荷が対(電気的に中性)を形成することで安定化する機構を有する。例えばイオン結晶の中では、イオンはクーロン力によってイオン結合し規則正しい結晶構造を形成することで、巨視的な電荷の偏りが中和され安定化している。代表例である塩化ナトリウムでは、ナトリウム塩素が両者ともイオン化し、それらが静電的相互作用によってイオン結合している。

あるいは、極性溶媒ではイオンの電荷は溶媒分子を配向させるので(溶媒和)、気相や非極性溶媒よりも安定化される。あるいは溶媒分子を配位する場合はより安定化する。

おもなイオン

おもな陽イオン
価数 イオン名 イオン式
1 単原子イオン
水素イオン H+
リチウムイオン Li+
ナトリウムイオン Na+
カリウムイオン K+
銀イオン Ag+
銅(I) イオン Cu+
水銀(I) イオン Hg+
多原子イオン
オキソニウムイオン H3O+
アンモニウムイオン NH4+
錯イオン
ジアンミン銀イオン [Ag(NH3)2]+
ビオレオ [CoCl2(NH3)4]+
2 単原子イオン
マグネシウムイオン Mg2+
カルシウムイオン Ca2+
ストロンチウムイオン Sr2+
バリウムイオン Ba2+
カドミウムイオン Cd2+
ニッケル(II) イオン Ni2+
亜鉛イオン Zn2+
銅(II) イオン Cu2+
水銀(II) イオン Hg2+
鉄(II) イオン Fe2+
コバルト(II) イオン Co2+
スズ(II) イオン Sn2+
鉛(II) イオン Pb2+
マンガン(II) イオン Mn2+
錯イオン
テトラアンミン亜鉛(II) イオン [Zn(NH3)4]2+
テトラアンミン銅(II) イオン [Cu(NH3)4]2+
テトラアクア銅(II) イオン [Cu(H2O)4]2+
チオシアノ鉄(III) イオン [Fe(SCN)]2+
ヘキサアンミンニッケル(II) イオン [Ni(NH3)6]2+
プルプレオ [CoCl(NH3)5]2+
3 単原子イオン
アルミニウムイオン Al3+
鉄(III) イオン Fe3+
クロム(III) イオン Cr3+
錯イオン
ヘキサアンミンコバルト(III) イオン [Co(NH3)6]3+
ヘキサアクアコバルト(III) イオン [Co(H2O)6]3+
ヘキサアンミンクロム(III) イオン [Cr(NH3)6]3+
ローゼオ [Co(NH3)4(H2O)2]3+
4 単原子イオン
スズ(IV) イオン Sn4+
おもな陰イオン
価数 イオン名 イオン式
1 単原子イオン
水素化物イオン H
フッ化物イオン F
塩化物イオン Cl
臭化物イオン Br
ヨウ化物イオン I
多原子イオン
水酸化物イオン OH
シアン化物イオン CN
硝酸イオン NO3
亜硝酸イオン NO2
次亜塩素酸イオン ClO
亜塩素酸イオン ClO2
塩素酸イオン ClO3
過塩素酸イオン ClO4
過マンガン酸イオン MnO4
酢酸イオン CH3COO
炭酸水素イオン HCO3
リン酸二水素イオン H2PO4
硫酸水素イオン HSO4
硫化水素イオン HS
チオシアン酸イオン SCN
錯イオン
テトラヒドロキソアルミン酸イオン [Al(OH)4]
[Al(OH)4(H2O)2]
ジシアノ銀(I) 酸イオン [Ag(CN)2]
テトラヒドロキソクロム(III) 酸イオン [Cr(OH)4]
テトラクロロ金(III) 酸イオン [AuCl4]
2 単原子イオン
酸化物イオン O2-
硫化物イオン S2-
多原子イオン
過酸化物イオン O22-
硫酸イオン SO42-
亜硫酸イオン SO32-
チオ硫酸イオン S2O32-
炭酸イオン CO32-
クロム酸イオン CrO42-
二クロム酸イオン Cr2O72-
リン酸一水素イオン HPO42-
錯イオン
テトラヒドロキソ亜鉛(II) 酸イオン [Zn(OH)4]2-
テトラシアノ亜鉛(II) 酸イオン [Zn(CN)4]2-
テトラクロロ銅(II) 酸イオン [CuCl4]2-
3 多原子イオン
リン酸イオン PO43-
錯イオン
ヘキサシアノ鉄(III) 酸イオン [Fe(CN)6]3-
ビス(チオスルファト)銀(I) 酸イオン [Ag(S2O3)2]3-
4 錯イオン
ヘキサシアノ鉄(II) 酸イオン [Fe(CN)6]4-

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脚注

<references />

関連項目

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