オセロ (遊戯)

出典: Wikipedio


オセロ (Othello) とは、2人用のボードゲーム。交互に盤面へ石を打ち、相手の石を挟むと自分の石の色に変わる。最終的に石の多い側が勝者となる。単純なルールながらゲーム性は奥深いとされており、“A minute to learn, a life time to master”(覚えるのに1分、極めるのに一生)をキャッチフレーズとする。1945年秋頃に日本茨城県水戸市で考案された。ただし、それ以前にほぼ同種のゲームが存在している(「#オセロとリバーシ」を参照)。

目次

遊び方

画像:Othello.PNG
オセロの初期配置。図示したように右上が黒石になるよう置き、黒の第1打はf5に打つのが通例である。

基本的なルール

8×8=64の升目で構成された盤面を用いる。石は両面が白と黒になっており、黒のプレイヤーは黒い面で、白のプレイヤーは白い面で石を打つ

まず中央の4升に白と黒の石をそれぞれ2個ずつ互い違いに置き、黒が先手となる。石を打つとき、縦・横・斜め方向に相手色の石を自色で挟み、挟まれた石を自色に返す。相手の石を返すことができない升に石を打つことはできない。打てる升がない場合はパスとなり、パスの回数に制限はない。返せる石がある場合、パスをすることは認められない。石が盤面の64の升目を全て埋め尽くした時点、あるいは打つ場所が両者ともなくなった時点でゲーム終了となる。

オセロでは横の座標をa~hの小文字のアルファベットで、縦の座標を1~8の数字で表す。h1からa8までの対角線ブラックライン、a1からh8までの対角線をホワイトラインと呼ぶ。

白番・黒番の決定方法

オセロにおいても囲碁と同じ感覚で下手が黒を持とうとするが、囲碁や将棋と異なり、先手が確実に有利というわけではないことが経験的に分かっている。黒が打つ初手は一見すると4ヶ所あるので4通りあるように見えるが、どこを打ってもトポロジー的な見方では一通りの打ち方に収束される。つまり、既に決まっているところに石を打っているのと同じで、実質的に黒が後手になっている。公式ルールにおける先手後手の決定はコイントスに近い方式で行われる。引き分けを認めない場合は、上段者(同段級位の場合は年長者)が石を1個握り、上面又は下面の色を下段者(同段級位の場合は年少者)が当てる。的中であれば的中させた者が、不的中の場合は石を握った者が白番・黒番を選ぶ権利、あるいは石の数が同数の場合に勝者となる権利のどちらかを選択する。引き分けを認める場合は、同様に上段者が石を握り、下段者が上面又は下面を選択して選択した面の色の手番を持つことになる。

ハンデのつけ方

ハンデをつける方法としては、囲碁の置き碁に近いものが用いられ、対局前にに黒石を置く方法で行われる。実力差に応じて以下のようなハンデのつけ方がある。ハンデ戦の場合は下手が黒を、上手が白を持つが、上手先手で対局を開始する。

  • 引き分け勝ち―石の数が32個同数の場合は下手勝ちとする。
  • 1子局―左上の隅に黒石を置いて対局を開始する。
  • 2子局―左上と右下の隅に黒石を置いて対局を開始する。
  • 3子局―左上と右下、右上の隅に黒石を置いて対局を開始する。
  • 4子局―4ヶ所全ての隅に黒石を置いて対局を開始する。

形勢判断

オセロの形勢を判断するとき、石の数の多寡で考えられることも多いが、これは大きな誤解である。最終盤を別にすれば、むしろ石の数が少ない側が優勢であることが多い。形勢判断は石の数ではなく打てる場所の数でなされるものであり、打てる場所が多いほど優勢、少ないほど劣勢である。パスが続くような状況の場合は明らかな敗勢であることがほとんどである。

オセロとリバーシ

全世界的には「リバーシ (Reversi) 」として知られている。リバーシはオセロとほとんど同一のゲームで、その発祥は19世紀イギリスである。諸説あるが、ウォーターマン(Lewis Waterman)とモレット(W. Mollett)の2人が先人争いをしている(モレットは、「リバーシは自分の発明したゲーム『アネクセイション』の改良に過ぎない」と主張している)。ちなみにハナヤマから発売されている「本格リバーシ」や「マグネチック キングリバーシ」等のパッケージの裏面には「1888年頃にイギリス人によって考案された」と記載されている。

現在では、リバーシという言葉に2つの意味がある。1つは「19世紀イギリス発祥の8×8のリバーシ」であり、もう1つは「駒(石)を挟んで裏返すゲームの総称」である。

19世紀イギリスのリバーシは、8×8の升目の盤と、表と裏のある円形の駒を使用するといった点でオセロと共通する部分がある。ルール上の違いとして、一方のプレイヤーが持っている駒がなくなったらその時点で終了だった(参考:世界遊戯法大全)。

駒(石)を挟んで裏返すゲームという意味でのリバーシについては、オセロが8×8=64個の升目で濃緑色の盤面に黒い罫線、石は白と黒に限定されているのに対し、リバーシの盤面や駒においてはそのような制限はない。また、最初の駒(石)の置き方も、オセロでは白黒を必ず互い違いに置くが、リバーシでは白黒を同じ列に置いたり、最初の4手を中央の4升に交互に自由に置いたりしてもよいし、先手が黒でなく白であってもよい。盤面も8×8の正方形に限らず、色々な大きさ・形がある。そして、リバーシでは「駒」、「(駒を)置く」と呼ぶところを、オセロではそのベースになったとされる囲碁と同じように「石」、「(石を)打つ(最初に4個の石を置くときを除く)」と呼んでいる。そういった意味では、リバーシの特別な形がオセロということになる。

なお、オセロの初期配置は「#遊び方」で示した図のように石を白黒互い違いに置くのが公式ルールであるが、リバーシでは下図のように駒を置いてもよい。

日本においては「リバーシ」という名称であってもオセロのルールで行われるのが普通である。ただし、知的財産権の関係かオセロの配色(濃緑色の盤面に黒い罫線)を意図的に避け、淡緑色の盤面に白い罫線などにしていることが多い。両面に白黒を配した駒(石)はそのまま用いられている。また、初期配置もオセロではd4とe5に白石が置かれることがルールで定められているが、リバーシでは逆にd4とe5に黒駒が置かれることもある(ハナヤマのリバーシの説明書ではd4とe5に黒駒が置かれている)。

オセロの歴史

リバーシは明治期に日本にも輸入され、「源平碁」(白と赤の駒を使う)および「レヴァルシー」「裏がへし」という名前で広まったが、長く楽しまれることはなく廃れた。<ref>読売新聞に「源平智慧競(げんぺいちえくらべ)が日本橋3丁目の丸善より発売された」という記載がある。</ref>

その後、1973年に日本の長谷川五郎が独自に現在のオセロのルール及びパッケージを発表した後は、オセロとリバーシは同一のゲームであると認識されている。最初に発売されたオセロの石のサイズ(約35mm)は、当時の牛乳瓶の紙蓋とほぼ同じ大きさである。これは長谷川が商品化に向けてオセロを試作した際、牛乳瓶の紙蓋を用いて石を製作したためである。現在も公式試合ではこのサイズを用いる。名称の由来はシェイクスピアの戯曲「オセロ」で、ストーリーが黒人の将軍「オセロ」(=黒石)と白人の妻「デスデモーナ」(=白石)の関係がめまぐるしく変わる展開であることから取ったという。このネーミングは長谷川の父親で英文学者長谷川四郎によるものである。また、オセロの盤面の濃緑色は、将軍オセロが緑の平原の上で勇敢に戦うというイメージを持たせたものとのことだ。

オセロは「#オセロとリバーシ」で述べたとおり、囲碁をベースにして生まれたゲームだが、長谷川が第二次世界大戦が終わって間もない頃、旧制水戸中学校(現水戸一高)時代に思いついた、囲碁の白石、あるいは黒石を挟んだらその度に挟んだ相手の石を自分の色の石に取り替えるというルールのゲーム、いわゆる「挟み碁」が発端だという。それに加えて、石を取り替える手間を省くために白と黒の面を持つボール紙製の石を使用し始めたのがオセロの歴史の始まりである。学校の10分間の休憩時間内に決着がつき、しかも囲碁よりも覚えやすいルールであることから、戦災で校舎が全焼して青空授業が行われていた同校の生徒の間に徐々に広がっていったという。その後間もなく、牛乳瓶の紙蓋4枚を貼り合わせたものの片面をフェルトペンで黒く塗りつぶした石が作られ、前述したように、オセロ商品化の際の試作にも用いられた。その他、牛乳瓶の紙蓋と同じ大きさで作られた木製のオセロ石が用いられたこともあったという。長谷川は茨城大学経済学部政経科を卒業し、大手製薬会社に入社した後もオセロを広めていたが、ある日長谷川自身が担当していたある病院の医局長から、「このゲームは社会復帰を目指す患者のリハビリに最適で華がある」と太鼓判を押されたほどだ。この医局長の一言が、長谷川にオセロ製品化を決断させたきっかけとされている。

現在は長谷川のオセロは、ゲーム製品として「オセロ(Othello)」という商品名で各国にライセンスされ発売されている。日本では玩具メーカーのツクダが商標登録を行い1973年4月に発売した。もともとは当時におけるパンダブームに合わせ、「ランラン・カンカン」と名づけて売られる予定だったが、父親の長谷川四郎がシェイクスピアの学者だったこともあるため、「オセロ」と名称が変更され発売に至った。これが今までに一度もモデルチェンジをせず、公式試合にも用いられている「オフィシャルオセロ」である。発売とともに囲碁の入門用に使われる9路盤をイメージさせるほどの盤面で、囲碁や将棋チェスなどよりもシンプルで遊びやすいことから、玩具業界としては空前の大ヒット商品となった。石がマグネット式で石ズレ防止になり、かつ盤が折り畳み可能なもの(「マグネットオセロ」)や、盤に石ケースが内蔵されたもの(「ベストオセロ」、「ナイスオセロ」等)をはじめ、オセロの製品バリエーションはその後徐々に充実していった。後にオセロに関する権利は子会社のツクダオリジナルに移された。ツクダオリジナルは2003年3月にワクイコーポレーションに事業譲渡(同時期にツクダは倒産)しパルボックスとなり、2005年4月にパルボックスはメガハウスに一部事業譲渡し、翌5月に同社の第4事業部となっている。商品名や商標に厳しいNHKニュースでは、「白と黒の石を取り合うゲーム」と表現されることもある。またゲームソフトなどで商標の使用を避けるために敢えて「リバーシ」などと称するケースも見られる。

2004年7月に「オセロ極(オセロきわめ)」が発売されている。これはオセロ盤の各升の内部に石が打たれていない状態・黒石が打たれた状態・白石が打たれた状態の3つの状態を持った回転体が内蔵されており、石を紛失することがなく、石の反転もスムーズにできるといった利点がある。また、視覚障害者でも遊べるように、黒石には波紋状の模様が彫られており、目が見えなくても手で石の色を区別できる工夫がされている。翌2005年2月にこれを小型化し、持ち運びに便利にした「オセロ極Jr(ジュニア)」も発売された。

競技人口

21世紀初頭の日本におけるオセロの競技人口は、長谷川五郎が著した文献『オセロの勝ち方』 [改訂新版](河出書房新社刊。「#関連文献・資料」の節中の「中級~上級者向け」の項を参照)によると「(約)6000万人」と書かれている。 この競技人口にはルールを知っている人全てが含まれていると考えられ、将棋(〔約〕1500万人=同書より。以下同じ)やチェス(〔約〕500万人)、囲碁(〔約〕1000万人)、囲連星(不明。同書にも記載なし)などに比べるとはるかに多いとされる。理由としては、手軽さと覚えやすさ、連続する逆転スリルの楽しさなどが挙げられる。

近年の高齢化社会の進行により、オセロ盤を設置する老人ホームデイサービスセンター等も増加傾向にあり、競技人口に占める高齢者の割合も高くなっているようだ。そのため、オセロは年齢や性別を問わず楽しめるボードゲームで、かつ脳を鍛えるのにも適していることがより一層明確になっているのではないかと思われる。

オセロを使った別のゲーム

挟みオセロ

まず、一番手前に一列に石を並べる。その際、黒が先手で、白が後手である。石は前後左右に自在に進め、将棋の飛車の駒のような動きになる。ただし、石を取れるのは、オセロのように、自分の石で相手の石を挟んだときだけである。一度に複数取れる場合と、一度に複数を挟んでも取れない場合の2つのルールがある。取った石は将棋の駒のように再び使える場合と、チェスの駒のように再び使えない場合の、ここでも2つのルールがある。また、挟んだときに、その場で自色になるというルールの場合もある。

類似のゲーム

画像:Nipp.svg
ニップの盤面。円形の盤を使用する。オセロやリバーシと違って、升目ではなく線の交点に駒を置く。

オセロやリバーシと類似したゲームに「ニップ(Nip)」がある。リバーシを含む 12 種類のゲームのセット「ゲームスタジアム12(トエルブ)」、同じく 10 種類のゲームで持ち運び可能なセット「ゲームスタジアム 10(テン)」等の中のひとつとしてハナヤマから発売されている。円形の盤とオセロやリバーシと同様の両面が白と黒の駒を使用する。基本的なルールはオセロやリバーシと変わらないが、隅が存在しないので全ての方向(縦、横、斜めに加えて円周も)の駒を返すことができる。そのため終盤でも展開が非常に読みにくい。

交点の数はオセロやリバーシの升目より少ない 52 個である。初期配置はリバーシと同じく d4 と e5 に黒駒を置く。外周を円形にしているため、図の a3 ~ b3 や c1 ~ c2 などの交点が接近している場所は駒が置きにくいという欠点がある。

このニップは登場時期は不詳だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していた(1933年実用新案登録 187845 号、考案者は松本彌助) 。当初は白黒ではなく白赤の駒で遊ばれており、また盤も円形ではなく、通常のオセロやリバーシの盤面の a1, b1. a2. g1, h1, h2, a7, a8, b8, g8, h7, h8 の升目を除いた八角形状の形のものが用いられていた。また、外周全体を一直線のように扱うルールはなく、8つの隅を持つ後述の「88オセロ」に近いものであったと考えられる。

かつてはハナヤマがニップ単品で販売していたが、「ゲームスタジアム10」の前身のひとつである1996年発売の「ゲーム11(イレブン)」から順次、前述したように他のゲームとのセット商品となり、単品販売がなくなった。ちなみにニップとは、英語で「挟む」を意味する。

また、近年登場したゲームの中には、オセロの盤面を 8x8 から 10x10 に拡大した「グランドオセロ」、そこから隅を切り落とし、八角形状にして8つの隅を持つ「88オセロ(エイティエイトオセロ)」などがある。グランドオセロはメガハウスからボードゲームとして発売されたが、現在は製造中止になっている。盤の上に別の盤をかぶせることによって、1つの盤でオセロ・グランドオセロ・88オセロの3種類が楽しめるようになっていた。2005年から毎年秋に埼玉県川越市でグランドオセロの大会が開催されている。また、88オセロの大会も、1996年から3年に1回東京などで開催されている。

他のバリエーションについての詳細は、「#関連文献・資料」の節中の「派生ゲーム」の項を参照。

研究対象としてのオセロ

オセロはルール上偶然の要素はない。ゲーム理論では、オセロは将棋チェス囲碁囲連星などと同じく二人零和有限確定完全情報ゲームに分類される。

将棋やチェス、囲碁、囲連星などと違い、オセロはコンピュータが簡単に人間を打ち負かすことのできるボードゲームのひとつである。オセロはルールが単純であるため、古くからプログラミングの教材として、あるいは実際の製品としてコンピュータ上で開発されてきた。1980年には、家庭用ゲーム機である Atari 2600用のオセロが発売されている。また、プログラマー有志によるオセロプログラムを対局させる企画を掲載する雑誌もあった。当初はコンピュータの性能が低かったため人間でもコンピュータに勝つことができたが、現在の最高性能のオセロプログラムには人間はまず勝つことができず、世界チャンピオンさえも敗れている。世界チャンピオンを破った例はチェスが知られるが、チェッカーも同じ目的で研究がなされ、こちらは絶対に負けないプログラムが完成し、解析が終了している。

数学的にみると、オセロはまだ完全には計算されていないゲームのひとつである。オセロの盤を n×n に一般化した場合、ある与えられた盤の状態においてプレイヤーが必ず勝つことができるかを判定する問題はPSPACE完全であることが分かっている。盤の大きさが 4×4 あるいは 6×6 のケースは全て計算されており、例えば 6×6 のケースについて双方が最善の手順を取った場合、16対20で後手が必勝となることがその手順とともに解明されている<ref>Template:Cite web</ref>。しかし 8×8 の場合は局面が膨大な数になるため、現時点ではスーパーコンピュータを駆使してなお双方最善手順は発見されていない。

大会

全日本オセロ選手権大会(1973年~)や世界オセロ選手権大会(1977年~)など、幅広く大会が行われている。ちなみに2006年に行われた第30回世界オセロ選手権大会は、三十(みと)と、オセロの発祥地である水戸をかけて、同市で行われた。<ref>歴代世界チャンピオン</ref>

関連文献・資料

入門書

中級~上級者向け

歴史

  • 長谷川五郎 『オセロ百人物語 オセロ史を飾った名選手たち』 (河出書房新社、2005/12) ISBN 4309906559

派生ゲーム

プログラミングなどとの関係

学習用ソフトウェア

関連項目

脚注

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外部リンク

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