アメリカ国家安全保障局

出典: Wikipedio


thumb|NSAの紋章 right|thumb|CSSの紋章 右上から時計回りに陸軍情報保安コマンド、合衆国海兵隊、海軍保安部、合衆国沿岸警備隊、空軍情報部のそれぞれの紋章が並び、中央にNSAの紋章がある 国家安全保障局(こっかあんぜんほしょうきょく National Security Agency、NSA)とCSS(後述)はアメリカ国防総省諜報機関である。

目次

概要

1952年11月4日に設立された、国家情報長官によって統括されるインテリジェンス・コミュニティーの中核組織のひとつであり、海外情報通信の収集と分析を主な任務としている。合衆国政府が自国民をスパイするのは違法行為だが、他国へ諜報活動するのは違法ではない。海外信号諜報情報の収集活動に関して、計画し指示し自ら活動を行い、膨大な量の暗号解読を行なっている。また、合衆国政府の情報通信システムを他国の情報機関の手から守ることも重要な任務であり、ここでも暗号解読技術が鍵となる。

アメリカ中央情報局(CIA)がおもにヒューミント(Humint、human intelligence)と呼ばれるスパイなどの人間を使った諜報活動を担当するのに対し、NSAはシギント(Sigint、signal intelligence)と呼ばれる電子機器を使った情報収集活動とその分析、集積、報告を担当する。シギント活動を中心にCSSの協力により、合衆国の各情報部と連携して活動を行っている。法律によって「NSAは中将によって指揮される」と規定されている。

なお、CSS(Central Security Service、中央保安部)は1972年の大統領命令によって設立された、NSAと一緒になってアメリカ国防総省のもとで国家情報活動の統合を行なう国家機関である。陸軍情報保安コマンド、海軍保安部、空軍情報部海兵隊沿岸警備隊とNSAが一体となって共同作戦を展開し、その長はNSA長官が兼務している。また、NSAは陸軍情報保安コマンド、海軍保安部、空軍情報部に監督権を持つ。

英国GCHQ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド政府通信保安局と共にエシュロン(Echelon)を運用していると考えられている。 NSAは占有する通信基地や航空機、艦艇、人工衛星は保有しないが、それらの情報収集現場に出向いてNSAの情報ネットワークに吸い上げてゆく活動を世界中で行なっている。プエブロ号事件のような時にはじめてその活動の一端が明らかとなる。

内部のNCSC(National Computer Security Center、国立コンピューター保安センター)では、コンピュータセキュリティ問題に関する調査と研究や、1983年、1985年の過去2回発行されたオレンジブックと呼ばれるTrusted Computer System Evaluation Criteriaというレポートの発行も行っていた。

その性質上、組織や活動内容、予算については明らかにされていない部分も多く、設立当初は組織の存在そのものが秘匿されていた。NSAはあまりに全貌が不明瞭なので「Never Say Anything(何も喋るな)」「No Such Agency(そんな部署はない)」の略だと揶揄される事も有る。

規模・予算ではCIAを3倍以上上回ると評される。Template:要出典 NSAウェブページ<ref>Frequently Asked Questions - About NSA</ref>によると、雇用者数は約3万人。予算、床面積、人員などを考慮すると、フォーチュン500の上位10%内にランクされる企業(すなわち全米50位にランクされる企業)の規模に相当するとしている。

施設等

thumb|300px|right|NSA本部

  • 本部 - メリーランド州フォート・ジョージ・G・ミード陸軍基地内(AFN本部もここにある)
  • 職員数 - 約30,000人(はっきりした数字は定まらない。)

任務

  • 通信情報(音声会話、コンピュータデータ)
    • 受信・収集(地上アンテナ、米海軍艦艇、米空軍航空機、人工衛星、Internet、その他)
    • 分類・集積・配信(巨大データベース:エシュロン)
      • エシュロンの開発、運用、管理
    • 通信情報収集の資産の管理等(アンテナ、情報ネットワーク)
  • 外国暗号
    • 解読・解析(解読不能であっても、通信量を計測する「トラフィック解析」は重要)
  • 暗号技術
    • 開発
    • 規制と管理
  • 盗聴
  • 米国政府の秘密通信
    • 暗号化機器とシステムの開発と維持
    • 暗号認証提供
    • 基準作成
  • その他

thumb|right|250px|米国家暗号博物館に展示されている STU-III 暗号化電話

歴史

NSAの前身は、AFSA(the Armed Forces Security Agency、軍保安局)であり、1949年5月20日に統合参謀本部指揮下の国防総省の部局として設置されたものである。AFSAは軍情報部隊(the Army Security Agency, Naval Security Group and the Air Force Security Service、陸軍保安局、海軍保安群、空軍保安部)の通信諜報および電子諜報活動を指揮監督することになっていた。しかし、AFSAは能力不足であり、調整機能が不足していた。そこで1951年12月より国家安全保障会議の指示により検討が行われ、1952年6月の国家安全保障情報活動指示によって、同年11月4日に設立された後、1999年までその存在は秘密にされていた。

しかし、冷戦終結で機密指定の解除が進んだ事と、NSAが米国政府による暗号化ソフトウェアの輸出規制などの問題に関わっている事から、一般の注目を集める機会が多くなって来ている。


セキュリティ技術

暗号やセキュリティ技術に関して、NSAは世界最高の水準にあるが、その研究内容は秘密にされることが多い。しかし、NSAの技術のいくつかは広く一般に使われている。NSAが関わったクローズドな一般向け暗号・セキュリティ技術については、バックドアの存在が疑われている。

NSAは暗号方式DESの策定に大きく関わっている。NIST (アメリカ国立標準技術研究所)の前身、NBSが公募した標準暗号アルゴリズムに対し、IBMLuciferという暗号方式を提出するが、ここでNSAは、の長さを128ビットから56ビットに短縮し、S-BOXの内容を変更した。説明なしに行われたこの改造に対して、疑念の声が上がることになった。(実際は当時公知でなかった暗号解読法に対する耐性を持たせた)

次期標準暗号方式として公開で選定されたAESでは、技術コンサルタントとして関わっている。

NSAが中心となって、1990年代に個人のPC用のPGP暗号ソフトウェアとネットスケープ社SSL暗号ルーチンに対して暗号鍵に128ビットを使用したフル規格製品を海外輸出することを許さず、米国内向け製品として128ビット製品と海外輸出向け製品として40ビット製品を作らせた。これは、NSAが解読すべき暗号で長い鍵を使われた場合、NSAが保有するコンピュータの処理量があまりに膨大となるために行なわれた制限である。1996年には西側各国に対する制限が解かれたが、米国が危険視する特定国には引き続き輸出制限が残された。

現在でも高度な暗号化技術に対しては、ワッセナーアレンジメントによって、輸出制限が掛かっている国がある。

米政府が米国市民のすべての暗号鍵を管理するという、「キーエスクロウ」と「クリッパー・チップ」構想では米国内で大きな議論を呼んだが、結局中止となった。クリッパー・チップで使われていた暗号化アルゴリズム「スキップジャック」(Skip jack)の開発元もNSAである。

また、ハッシュアルゴリズムSHAもNSAが開発している。 SELinuxという、Linuxに対するセキュリティーモジュールも、NSAが中心となって開発された。

Microsoftは、Windows Vistaのセキュリティ機能の開発・検査に関して、NSAの関与を認めている。

盗聴

ニクソン大統領の辞任後、CIAとNSAによって行なわれた電話盗聴に関する不適切な使用が疑われた。 ケネディ大統領はカストロ殺害の為に盗聴を指示しNSAが実行した。これがきっかけで、1978年には安易な盗聴を禁止する法律が作られた。

2005年12月、ニューヨークタイムズ紙は、ホワイトハウスの圧力とブッシュ大統領の指示のもとで、国内から海外への電話による通話を裁判所の同意なしで幾人かを対象に盗聴したと報じた。

2008年7月9日海外秘密情報監視法(FISA)改正案が上院で可決、7月10日ブッシュ大統領の署名により成立した。同改正案は裁判所の令状無しで海外の電話・電子メールなどの盗聴を合法化するもので、さらに情報提供に協力する通信会社の免責事項を、法成立前に遡って有効にする条文も盛り込んだ。議会は野党・民主党が多数を握っているが、民主党からもオバマなどが賛成に回ったために成立した。

フィクション

関連項目

参考文献

  • ジェイムズ・バムフォード(瀧澤一郎訳)『パズル・パレス-超スパイ機関NSAの全貌』早川書房、1986年。ISBN 4-15-203317-7
  • ジェイムズ・バムフォード(瀧澤一郎訳)『すべては傍受されている-米国国家安全保障局の正体』角川書店、2003年。 ISBN 4-04-791442-8
  • パトリック・ラーデン・キーフ(冷泉彰彦訳)『チャター-全世界盗聴網が監視するテロと日常』NHK出版、2005年。ISBN 4-14-081076-9

注記・参考資料

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外部リンク

  • NSA(英語)

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